松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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ゴッドエデン
滴、アリア、未来。3人の女シード


 

豪炎寺修也―――否、イシドシュウジは言った。

 

「これからは女子の中学サッカーも盛んになるだろう」

 

何気なく放ったその言葉には、どこか確信があるようだった。

もし根拠があったなら。

それは何か。

どこでその可能性を見出したのか。

彼の直近の活動履歴はただ1つ。

そして、その中でそれを目撃できる場所があるとすればそれもただ1つ。

フィフスセクターという組織の中で、女子を目にすることが出来る場所。

それがあるとすれば、それは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッドエデン。

下層。

私はそこにいる。

 

この施設のシードにはランクがある。

A~Gまで7段階。

ランクが上がる事に上の階層へ上がり、訓練の難易度も遥かに増す。

誰もが高みを目指すことを大人達に促される。

しかし、多くの者が過酷な訓練に耐えられず、心を折る。

それでもFランク以下には誰もなりたくまいと避ける。

 

 

Gランクは……殺処分だから。

 

 

「次、陸奥(むつ)

「……はい」

 

私の名、陸奥(むつ) (しずく)が教官に呼ばれる。

私は返事をしてみんなの前に出て、訓練コースを前にした。

ここはFランクシードの訓練場。

でも……私の本来の実力は、Bランクは優に到達している。

だから、このランク帯の訓練は余裕を持ってこなせるわ。

 

「陸奥、クリア。いい調子だ。ここ最近はミスなしだな」

「……ありがとうございます」

 

しくじったわね。

程よく手を抜くつもりが、今日は"1番手"だったから。

同じグループのシード、皆がこの訓練を行って怪我をする前に、訓練コースを教官の目を盗んで破壊しながら進んでいたのが仇になったわ。

ついそっちに夢中になって、集中力を欠いた。

故に完璧にこなしてしまったわ。

 

「次のテストで昇格も視野に入ってきた。励めよ」

「はい」

 

私は真顔で頷いた。

一瞬、顔を顰めそうになった。

危なかった。

私は、この層に残って皆が処分にならないようここに滞在して、できる限り多くの崖っぷちのシードを助けたい。

だから昇格させられたら困るのよ。

 

―――そう、思いながら次の出番の子に順番を譲った時。

 

「……本日の訓練はこれまで!!」

「は?」

 

私は教官の一言に目を見開いて振り向いた。

まだ私が1回しかやってないのに、訓練が終わった……?

そんなはずは無い。

これまでそんな予定が組まれたことなんて、一度もなかった。

有り得ない。

教官の顔を見る。

彼は私を睨んでいた。

そして、私がそれに気づくと、彼は目を逸らしてから後ろを見上げる。

私もそれに釣られて上を見た。

 

すると。

 

『―――Fランクシードの諸君、覚えているか?私だ。牙山だ!』

 

「……!?」

 

私たちの練習場を見下ろせるほど、高いところにある監査室。

そこに姿を現し、マイクを使ってスピーカーから声を張ったのはゴッドエデンの総監督教官。

彼がわざわざこんな下層の訓練場まで来るなんて、そうそうない。

あるとすれば……それは。

 

「ま、待って……なんで?この1ヶ月、彼らはミス"0"よ!?」

『……!』

 

私が皆を掻き分けて叫ぶと、牙山教官は私を冷めた目で見下ろした。

まさか……私のしてきたことは……!

 

『Fランクシード。いや……これも能力詐称。本来、Bランク以上相当の陸奥滴よ。貴様のしてきた悪あがきはバレている』

 

「……!」

 

私は目を見開き、震える。

その様子を見て彼は口角を上げた。

 

『これより!!この訓練場"にいる"Fランクシードを掃討・処分とする!』

 

「なっ……!?」

「そんな!嫌だー!」

「なんでだよ!ここ1ヶ月成績よかったのに……!」

 

『それはそこの陸奥滴によって詐称された結果に過ぎない。君達に、ここの訓練を耐えられる能力はない!よって、今、この場にいる陸奥滴以外のシードを処分とする!』

 

「……っ!~~~~~~~~っ!!」

 

顔が蒼白になった。

私の……私の……!私のせいで、全員が……!

何人かは処分されるほどは酷くない。

なのに、私のせいで……!

 

「ふざけるなー!」

「どういうことだよ!?」

「よく分かんないけどお前のせいなのか!?」

「嫌だ!なんで俺たちが処分なんだ!処分されるならお前だろ!お前がなんか悪いんだろ!?」

 

「……っ!」

 

頭を抱えてしゃがみこみ、震える者。

私を糾弾して現実逃避する者。

けれど、私を責めたところでこれから行われる地獄は変わらない……!

 

『今から1人のシードに君たちを処分してもらう!彼女は今、最も才覚の芽を出している者!彼女の能力を試す実験体として、君達を採用した!光栄に思うといい!君達は、"究極"のサッカープレイヤーを生み出す―――"礎"となるのだ!!』

 

「……っ。1人の……"シード"?」

 

私が眉間にシワを寄せると、また高い位置に、今度は壁の一部が扉となってスライドし、そこに1人の影が立っていた。

彼女はゆっくりと照明に晒されに、歩み。

その姿を表す。

女性。

私が中学二年の年齢で、恐らく彼女はそのひとつ上。

金髪碧眼。

アメリカ人。

 

『彼女こそが、究極に到達しうるある現段階最強のシード!ゴッドエデンのプラン目標に最も近い存在!ランクは―――"Sランク"!』

 

Sランク!?

Aが上限でしょう……!

シークレットポジション!!

 

『名は―――アリア・オイゲンだ!』

 

「……ふん。Fランクってのは掃き溜めだな。こんなところに落ちるヤツの気が知れないぜ」

 

「……!」

 

見下ろすアリア・オイゲン。

その足元にはサッカーボールが。

それ以外は何も無い。

一体、何をするつもり……?

 

『アリア・オイゲンは特殊能力に目覚めている。その名も"ブレイク"。彼女の特殊なシュートに直撃した者は、サッカープレイヤーとしての機能が停止するのだ!』

 

「なっ……!?」

 

なんですって!?

 

『故に、我々は彼女をこう呼称した。―――"破壊者(ブレイカー)"と!』

 

「……あのダサい名前、正式名称だったのか。まあいい。要するにここにいる奴らを処分すればいいんだろ?」

 

「……っ!」

 

牙山教官の叫びを無視して、アリア・オイゲンが私たちを……いえ、私以外のシードを見下す。

彼女はサッカーボールを転がす。

足を振り上げる。

 

「まずは、1人」

 

アリア・オイゲンがシュートを放った!

凄まじい速度。

凄まじい威力。

狙いは私の後ろにいた男の子のシード!

させない!

シュートコースに割って入れるわ!

 

「馬鹿か。話を聞いてなかったのか。私のシュートに触れたものは機能停止になる」

 

「……っ」

 

「つまり、直接止めに足を出したら……お前の足がお釈迦だぜ?」

 

「~~~~~っ!!」

 

私はアリアの言葉に目を見開く。

彼女のシュートをカットしようとしたが、その動きが止まった。

それにより回避など不可能な鋭いシュートが目標のシードに直撃する。

 

「うわぁぁぁあ!あぁ……!あぁぁ!?痛い!痛いぃぃ!!」

 

「ひっ……!」

「うわぁぁぁ!」

 

私の足元に転がる男の子。

外傷は見当たらないが、直撃した腰を抑えて悶え始める。

周りのシードもそれを見て逃げ惑う。

しかし、このフロアに出口なんてない。

内部へのダメージ。

これが"ブレイク"……!

直接は止められない。

どうする!?

 

「次は奥のヤツだ。いくぜ」

 

「……っ!」

 

次の標的に目をつけるアリア。

私は考えを巡らせる。

そんな時、ちょうど足元にさっきアリアが飛ばしてきたボールが転がってきた。

 

……これよ!

 

「2人目!」

 

「そうはさせないわ!」

 

「……!?」

 

私は、アリアのシュートに、シュートを打った。

彼女が描く弾道上にボールとボールが衝突するように計算して。

狙いはジャスト。

アリアのシュートは目標に到達する前に、私のシュートに阻まれた。

 

「シュートしたボールにボールを当てた……?なんてコントロールだ。ランク詐称だとしてもBランク想定だろ?誤計測もいいとこだな」

 

「これ以上はやらせないわよ」

 

「お前……!ほざけ!」

 

私を睨んだアリアは、懲りずに次弾を放つ。

私はまたそれを妨害する。

アリアはキッ……!とまた私を睨んだ。

さらにもう1発放ち、違う標的を狙う。

私もさっき彼女が撃ったボール、つまり私が撃ち落としたシュートを拾いにいき、それを駆けた勢いのまま蹴った。

結果は、さっきと同じ。

 

「……っ!また!間違いない。この技術にこの再現性!お前、Aランク相当か……!」

 

「さぁ?でも、だとしたらもう誰も潰せないわよ」

 

「……っ!」

 

顔をしかめるアリア。

しかし、すぐにハッとして用意されたボールに足をかけた。

今度は2球。

何をするつもり?

 

「ハッ。これも止められるなら止めてみろ!」

 

「上等よ!」

 

また同時に撃つ。

何度やっても同じ。

撃ち落とした。

でも、同時に視界にもう一筋のシュートが映る。

 

「……っ。ま、まさか……!」

 

私は振り返った。

後ろには誰もいなかった。

1弾目はフェイク……!

私は誰もいない背後を守っていた!

本当の狙いは、即座に放つ次弾……!

 

「うわぁぁぁーーーー!!!」

「待って……!」

 

逃げ惑う他のシードの背中にシュートが迫る。

私は手を伸ばしてそっちへ駆け、アリアは口角を上げる。

 

そんな時、戦場に舞い降りた1人の影。

 

「うおっ。危な」

 

『……!?』

 

その子は、当たり前にアリアのシュートを足で直にトラップした。

ブレイクに直接触れたのに苦しむ素振りどころか表情ひとつかえない。

 

"ブレイカーの攻撃に触れたものはサッカープレイヤーとして機能停止する。"

 

彼女は、触れた。

でも、壊れた様子はない。

キョトンとした顔で辺りを見渡す。

 

「あれ?ここどこ?なんか別のフロア来ちゃった?」

「貴女……」

「ん?」

 

彼女がようやく私に気づく。

どうやらここには迷い込むできたようね。

 

「あ、シード?シードだよね?ここにいる子供だし。いや……大人ですか?すみません、身長低いし私と同じカッコしてるからつい……」

「大丈夫、シードであってるわ。子供よ。顔が整ってるから大人に見えるかもしれないけれど」

「自分で言うんだそういうの」

「だって、事実だもの」

「自己肯定感太陽まで行っちゃってるじゃん」

 

何の話よ、これ。

 

「それより、貴女。さっきのシュート蹴り返してなんともないの?」

「えっ。いや、なんともないけど……えっ。何?あれ蹴ったらなんかあんの?」

「ないならいいの。凄いわね。どうなってるのかしら。確かにあれを受けたら……いえ、今はいいわ」

「良くない良くない!えっ。何?あれ蹴ったらどうなるの!?えっ、怖っ!教えてよ!」

「えぇ。後で教えるわ。今は―――」

「いやいやいや!今教えてよ!えっ、何?怖っ!怖いって!」

 

うるさい女ね。

別に蹴ったって呪われないわよ。

なんで足に向かって祈ってるのよ。

 

「……お供えとかいるかな?」

「貴女、馬鹿なの?」

 

バカね。

状況見なさいよ。

貴女が察し悪くて一生待たせるからアリアが顔を顰めてるじゃない。

 

「おい。そのふざけた女、潰していいか?」

「えぇ。お願いするわ」

「私って共通の敵なの?まじ?」

 

冗談はこの辺りにしておきましょうか。

私は彼女を見る。

 

「見たらわかると思うけれど、あの上にいる女のシードにこのフロアのシードは潰されている真っ最中なの。しかも、彼女を止められるのは私と貴女だけ」

「大ピンチじゃん。ヤバ。ウケる」

「貴女、緊張感とかないの……?」

 

この子、なんだかどうも苦手ね。

まあいいわ。

 

「とにかく協力してくれないかしら?貴女、名前は?」

「私?長門 未来だけど……」

「そう。私はシズク。貴女はミクね。ミク、協力してくれないかしら。私、ここにいるシードを彼女から守りたいの」

「……!」

 

未来が目を見開く。

私が指さした先にいるアリアを見上げた。

そして、また周りを見て……視線は私の瞳にまで戻ってきて力強く頷く。

 

「おけ」

「次ふざけた返事したら引っぱたくわよ」

 

サムズアップする未来。

ほんと、ぶん殴ろうかと思ったわ。

でも、彼女を味方にできたのはデカイ。

私たちは2人、敵を見上げる。

 

「Aランクシードが2人……ってとこか。いいね。弱いやついたぶるより強いやつ潰す方が好みだ」

 

『……!』

 

アリアが飛び降りてきた。

私たちの前に降り立つ。

同じ視点。

 

「先にお前たちを潰す。Aランクに邪魔されながらじゃやりにくくてしょうがない」

「あら?だったら今日はもう切り上げたら?働き方改革よ」

「残念。私は仕事を残さない主義でな。残業カードも切っちまった」

「……」

「……」

 

どうやら引かないようね。

やるしかない。

私たちは対峙した。

 

「いくぞ!こいつが私の必殺技―――"フェアリーショット"だ!!」

『……!』

 

高く飛んだアリアの背中に妖精の羽が生えて右足から放たれるシュート。

蹴ってからラグすら発生するほど矢のように軽いテクニカルミート。

なんて繊細な技術力!

絶妙なコントロールに鋭さ。

私じゃ触れたらその時点でお釈迦になる……!

 

「うおりゃぁぁあーー!!」

「なっ……!?」

「……!?」

 

アリアのフェアリーショットを"直接"蹴り返す者あり。

未来……!

 

「よっしゃあ!」

「……っ!」

 

吠える未来。

強烈なシュート返しを回避したアリア。

後ろに逸れた球を驚愕した様子で目で追った。

動揺してるわね。

 

「バカな!Sランクシードの必殺シュートだぞ!?」

「なんてパワー……!これが未来の力?」

「パワーだと?……っ!」

 

アリアが私の言葉に反応してから、ハッとする。

彼女は未来を睨んだ。

 

「だったらコイツでどうだ!魅せてやる。最強のシードの化身をな……!」

『……!化身……ッ!!』

 

私も未来も目を見張る。

そのワードは現代のサッカープレイヤーの誰もが身構える。

アリアの背後から湧き出るオーラ。

具現化し、姿形を形成する。

それが。

 

「魔神 アガレス!!」

 

クロコダイルの化身。

魔神アガレス 顕現……!!

 

「こいつも蹴り返せるか!長門未来……!」

「……っ!」

 

アリアが化身を出した状態でシュートを放つ。

未来はそのシュートを蹴り返そうとするけれど……。

 

「ぐっ……!うわあぁぁぁーーー!!」

「未来!」

 

未来が吹き飛ばされた。

なんて威力。

未来のパワーでも抵抗できない。

パワーもテクニックも備えている。

最強のシードと豪語するのは伊達じゃない……!

 

「あ……?」

 

アリアが未来を負かして満足げにしていたら、唐突に耳元を抑えた。

インカムに何か伝達事項が入ったみたい。

指示を受けて、改めて私たちと向き合い、未来に目を向ける。

 

「お前がどこから来たかわかったぞ、長門未来。上層のAランク棟だな?今日は機材の故障関係で下層での臨時訓練だった訳か。道理で私のシュートを返せるわけだ。こんな底辺にそんなシードがいるはずがない」

「……っ!」

「……!」

 

未来が苦虫をかみ潰したような表情で再び立ち上がり、私は驚いた顔で彼女を見る。

未来はAランク"相当"ではなく、本当にAランクシード……!

ゴッドエデンでいうAランクといえば、もうかなりシードとして育成は完成間近。

外の世界の中学サッカー部に出向されるのも、フィフスセクター直属のチームを与えられるのもゴッドエデン出身じゃA怖いランクに至ったシードのみ。

未来には現時点でその資格がある……!

 

「フィフスセクターに逆らうなんて、馬鹿なヤツらだ。特に、Aランクシード。長門未来。お前みたいな中途半端に強いやつに反乱されちゃ迷惑なんだよ。だから、ここで潰す」

『……!』

 

どこからともなく放たれたボールがアリアの足元に狙いすましたように転がってくる。

自身の足元まで到達したそれを足で止め、彼女は未来を睨んで宣言した。

私達も身構える。

しかし、彼女の標的は1つに絞られてる。

 

「馬鹿力オンナ!まずはお前からだ!」

「……っ!」

「未来!」

 

アリアが化身シュートを放った。

狙いは未来!

さっき吹き飛ばされた影響で今、彼女と私は距離がある。

さらにアリアのシュートは早くて軌道上で妨害することは不可能。

私の反射神経じゃ追いつけない!

シュートは真っ直ぐ未来に向かう。

未来はダメージを受けた身体を、傷ついた腕を抑えながら何とか抑えながら起こして―――力を発揮する。

 

「はぁぁぁぁあーーーーー!!私も化身を出す!」

「何!?」

「……っ!未来!」

 

未来が叫ぶと同時に彼女の背後に化身が形作られる。

アリアも私も驚愕して目を見開いたけれど、よく考えれば何も不思議ではないわ!

未来はAランクシード。

それほど上級のシードなら、化身を使えてもおかしくはない……!

 

「これが私の化身!魔狼 アモン!!」

『……っ!』

 

未来が化身を出現させた。

魔狼アモン。

オオカミの化身!

 

「勝負だ!」

「ハッ。馬鹿なヤツだ。化身にも格ってモンがあるんだ。全部が同じ強さじゃない。私のアガレスはSランクシードの化身!お前のショボイ化身なんて、一瞬でねじ伏せる!」

 

アリアが豪語するけれど、そんなことはない。

未来の化身も強力!

現に彼女はアリアの化身シュートをミートして、競り合っている!

 

「……っ!蹴り返せない!」

「こいつ、私の化身シュートに耐えてやがる!」

 

未来もアリアも顔を顰める。

化身対決。

勝負は拮抗……とアリアは言うけれど、未来の方が圧されてる。

徐々に未来の利き足がシュートの勢いに押し返されてる。

このままでは未来が負けるのは時間の問題……!

 

「……っ。何か手は……」

 

私は悩む。

こうしている間にもミクは圧されている。

どうする。

どうすればいいの?

 

「……っ!」

 

そうよ!

私は思いついて駆け出す。

未来の背後から回り込んで―――"左足で未来の足を蹴る"。

 

「……!?シズク!?」

「あら。……っ!やっと私の名前を呼んだわね!さぁ、押し返しましょう。貴女のシュートブロックにシュートで後押しするわ……!」

「あっ。そういうことか!」

「えぇ!2人なら彼女にだって勝てる。これが私達の―――」

 

私と未来は頷きあう。

 

『ダブルバンシー!!』

「……っ!?」

 

化身シュートを撃ち返した!

フェアリーショットというシュート技を持つアリアを、妖精に見立てた妖精狩りモチーフの新必殺技。

私と未来、上級のシードだからこそ即興で必殺技を生み出せる。

そして、凄まじい威力の弾丸はアリアの腹を撃ち抜く……!

 

「がはっ……!?」

 

私と未来のシュートをモロに食らってアリアがうずくまる。

そのまま動かなくなった。

……おそらく気絶してるわね。

 

「勝っ……た?」

「そのようね」

「だよね。ここから起き上がられたらマジ無理だからよかったよ。いや、本当に強かった。上には上のシードがいるもんだね」

「そうね。と言っても私は実力を発揮しても貴女より下のランクなのだけれど」

「あー、なんかそんなこと言ってたね。でも、ぶっちゃけ私より上手いでしょ?」

「あら。そう思う?」

「うん。見ればわかる」

 

意外と目ざといわね。

じゃあ、隠す必要もないかしら。

 

「そうね。私、貴女よりサッカー上手いわ」

「謙遜とか知らないの?まあいいけど。……それよりこの後、どうすんの?」

「……」

「えっ。ノープラン?」

 

未来に見られて私は目をそらす。

彼女はマジ?ヤバと顔を顰めた。

 

「仕方ないでしょう。突然始まった蹂躙を止めることに躍起になっていたのだから」

「うえ~。じゃあ協力するんじゃなかった~!」

「もう遅いわよ」

 

本当に、もう遅いわ。

教官達が降りてきて私たちの元へ向かってくる。

おそらく処罰が下される。

私たちはフィフスセクターに逆らった。

だから、もう私たちに明日はない。

こればっかりは未来に申し訳ないことをしたと思うわ。

 

「ごめんなさい。私のせいで……」

「いいよ。協力したのは私の意思だし。私にも自己責任あるから」

「未来……」

 

私たちは肩を寄せあった。

これから来るであろうその終わりの時を、手の温もりを共有しあって覚悟を決める。

 

こうして、私たちのシードとしての人生は終わった。

 

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