現代への移動中、フェイ君が松風君に色々説明している。松風君の過去で話してた内容の復習くらいは私が交代してあげたけど話が進むとなると私にも分からないところが出てくる。
まずはアーティファクトかな。私達がこれからやることというのはいったらアルファ君達の妨害。つまりは歴史が改変される前に飛んで彼らを止めることなんだよね。
でもその為にはアルファ君達プロトコルオメガが飛んだ時代に行かなければいけない。それにアーティファクトが必要となってくるのだ。
アーティファクトっていうのは道標みたいなもので、行きたい時代に関連するものや繋がるものをキャラバンにセットすることでその時代に行けるようになるのよね。で、私は完全に理解したけど松風君があれだ。
完全に脳内パンクしてる。
「えっと……アーティファクト? が必要なの?」
「そういうこと! 円堂守の時代に関係するものがいいんだけど……」
フェイ君は手っ取り早く話進めてるけど松風君は完全理解はできてないなぁ。
円堂守のアーティファクトってこの中で松風君が一番知ってそうだよね。だから、松風君には一番理解して貰わければいけない筈なんだけど……。
フェイ君が割と適当、というか彼にとっては当たり前のことだから松風君が話に付いていけてるとちょっと思ってる節があるね。
仕方ない。あまり説明が得意な方かは分からないけど私がちょっと教えてあげよう。
「松風君。アーティファクトってのはね、車のナビみたいなものだよ。ナビには目的地の情報を与えないといけない。その情報がアーティファクトってこと」
「目的地の情報がアーティファクト……? フェイの話と合わせると……行きたい時代に関連するものをナビに情報として与えてルートを検索してもらう感じ?」
「そうだね。その理解で間違いないよ」
「そっか。良かったぁ。未来の教え方が上手くて助かった!」
「え、そうかな……」
我ながら微妙な気もしたんだけどまあ理解してくれたからいっか。他者からみたら観点が違うしね。
で、ここまで理解できたなら松風君が自然と円堂守のアーティファクトを導き出してくれるはず。
「そうだ! サッカー部の旧部室だ! あそこは円堂監督が初めてサッカー部を作った場所なんだ。何かあるかも!」
ほらね。
てことですぐにタイムジャンプすることになった。現代に戻って雷門サッカー部の旧部室に訪れる。
「あれ? 前に来た時と違う……」
旧部室の外見を見てすぐ松風君が違和感を訴える。ま、何が起こってるかは大体理解出来るけどね。
とりあえず松風君に導かれるまま私達も旧部室の扉を開ける。すると、そこには埃っぽい物で溢れている室内があった。
「えぇ!?」
「どう見ても物置だね……」
「悪いけど昔から使ってそうには見えないねー」
これには松風君もビックリ。
うん、フェイ君の言う通り、完全に物置だね。
「円堂監督はこの部室は自分たちが来るずーと前からあったって言ってた。だから、きっと何かある筈なんだ!」
なるほどね。円堂守が来る前からあったならそれ以前のものが保存されている筈。円堂守がいた頃より前にサッカー部があったっていうし、それ関連のもので円堂守と繋がりのあるものがあるかもしれないね。
ということでレッツ掃除。何か関連のありそうなものを探してみることに。それにしても物置だからね、埃っぽくて最悪だよ。
「うっ……ゴホッ!」
「大丈夫? 未来」
私が咳き込むと松風君が心配で声を掛けてくれた。
あぁ……優しいなぁ。
「うん。大丈夫だよ、アーティスト絶対に見つけようね!」
「うん!」
「それにしても本当にここにあるのかー?」
「天馬によるとその筈だけど……ゴホッ。埃っぽいね……」
ワンダバが何に使うかわからない木材を運びながら不安を漏らし、フェイ君は私みたいに咳き込んでる。まあ確かにそれらしいものは見つかってないね。ワンダバが不安になってくるのも分かる。
けどここで一声上げるものがいた。
「ちょっと待って! これは……」
松風君が何か見つけ出したっぽい。
そして、彼の元に集まると……『サッカー部』と記された看板があった。これには私やフェイ君、ワンダバも。
「あぁ……!」
「これって……!」
「おぉ……」
「やった! これだよ!」
みんなで歓喜し、アーティストはその看板になった。
「アーティスト、セット完了」
アーティストを見つけ次第すぐにキャラバンに乗り込んだ私達。あ、ちなみに散らかした物置の物はちゃんと片付けたから。私ガサツじゃないし、松風君達もいい子だからね。
放置なんてしない。ないったらない。
私なんてこの前のプロトコルオメガとの試合だって強引には突破せずMFもDF全部華麗に避けたからね。嘘じゃない、ホントです。
話がズレた。
さっそくタイムジャンプです。
「上手くいくかな……」
「なんとかなるさ、でしょ?」
「ふふっ……そうだね」
あ! ちょっと私が目を離した隙に抜け目のないフェイ君め!
また松風君が喜びそうな励ます言葉言っちゃって……。フェイ君って松風君へのポイント上げ上手すぎない? そりゃ初対面でもすぐ馴染めるわけよ。
私は……うーん……フェイ君には適わないなぁ。はぁ。
「じゃあ行くぞ!」
なんだかフェイ君に負けた気のするままワンダバの一声で私たちの気も引き締まる。ていうか私も松風君の隣座りたいなぁ。
でもフェイ君がガッチリガード。
あれか、君あれなのか。ごめんなさい。なんでもないです。
でもいいなぁ。羨ましいなぁ。
「ワームホール周期確認! タイムルート検出開始。座標軸照合。タイムジャンプ5秒前!」
ギャラバンが宙に浮かび、ワンダバの一声一声に私達の緊張感も増していく。
「タイムジャアアアアンプ!!」
そして、ワンダバの叫びでタイムジャンプです。
11年前。
円堂守が雷門中に初めて投稿した日にタイムジャンプ成功。ワンダバが思わず感嘆を漏らすほどの綺麗な桜が舞ってる。
いやー綺麗だねー。おっと、桜に見とれてる間に円堂守君が登場。
いや、円堂守さん? 正直呼び方に困ってたんだよね。今まで呼び捨てだったけどさ。まあ今は円堂守さんでいいや。かなり歳上だしね。
彼が校門に現れて影から除いてた松風君も反応する。
「あれは……円堂監督!」
「いや、今の彼はまだ監督どころかキャプテンにもなっていない。それどころか……まだサッカー部にも入ってないよ」
「まあ入学式だしねー」
松風君の言葉を訂正するフェイ君。
ていうかさっきから私がただノリに合わせて頷くだけになってる。これはまずい。松風君の私への印象が薄くなりそう。
だが、ここで問題がある。
私松風君好き過ぎてコミュニケーション能力が落ちてる。
あれだよ。好きな人にはドキドキし過ぎて思ったこと話せないっていうあれ。あれあれあれ。あれあれってもうなんか語彙力まで落ちたな私。
学力的にもやばいかも……。
まあそんなことはどうでもよくて円堂守さんを追いかけていくことにした。
「監督じゃない円堂監督かぁ」
「どうしたの? 天馬」
「これから円堂監督が雷門サッカー部を作るんだね」
「うん。なにも邪魔が入らなければね」
こんな不穏な会話をスタートとしてね。まあ邪魔が入るのは確定だよね。
そうじゃなきゃ現代のサッカー部がおかしくなるはずが無い。それはさておき円堂守さんの後を付いていく私達。入学式が終わってさっそく職員室に向かった円堂守さんがサッカー部の入部を希望するとまさかのこの学校にはサッカー部はありません返し。
これには松風君も。
「えええええ!?」
「だからいちいち驚かないの!」
って円堂守さんと全く同じタイミングで同じ驚き方してたけどフェイ君に叱られた。可愛すぎか。お姉さんもうキュン死しそうだよ。
ちなみにワンダバは暇なのか自分の毛繕いしてる。こっちも可愛い。
で、円堂守さんはその後松風君のお姉さん? 的存在のアキさんと共にサッカー部を作る。あのボロくさい物置を部室にするらしい。
ていうかアキさんよ。既に松風君のお姉さん枠陣取ってるのマジですか。くそ、先越された。
まあ別に狙ってたわけじゃないけどね。なんとなく。
ここから先は付けてたけどそんなに問題なく進んだので割愛。しばらく時間が経って夕方の下校時間になりました。その帰り道も私達はついて行きます。
「円堂くんがサッカー部を作るんだね」
「あぁ!」
帰り道も仲良く話す円堂守さんとアキお姉様。ワンダバがあのふたりは恋人関係なのか松風君に尋ねてフェイ君に呆れられてた。
だが、フェイ君、実はそれ私も知りたい。
まあ言い出さないけどね。
「サッカー部ができたら色々やりたいことがあるんだ。フットボールフロンティアっていう大会があって――」
「無駄だ」
……来たよ。
松風君、フェイ君、ワンダバ。皆も気付いて一気に表情を硬くする。
円堂守さんの言葉を遮った冷たい声。視覚的に捉えてもやはりアルファだった。前回までは君付けだったけど私あの子のことそんな好きじゃないからやめた。
まあどうでもいいね。
「ん?」
「雷門にサッカー部はできない」
円堂守さんに淡々と言うアルファ。てか唐突過ぎ。
円堂守さんキョトンとしてるじゃん。
「木野の知り合い?」
「ううん、私知らない」
「サッカー部はできない」
しつこいなアルファ。あれか、ロボットなの? 君。
割とエルドラドの命令には従順みたいだしね。
そう思うのも無理はない。
「なんで決めつけるんだ? 分かんないだろ! サッカー部は作れるさ! 本当にサッカーが好きなやつらが集まれば!」
お、いい事言うねー。
「サッカーが好きなやつなどいない」
また君はそういう事言う……。
いちいち否定的なのイライラくるね。もう乱入して勝負したいくらい。
まあフェイ君もまだ飛び出さないし勝手な行動はしないけどね。
「居ない……何言ってんだ。サッカーが好きなやつならいるさ。ここにな!」
「円堂くん……!」
凄い返し。やっぱ言うことは違うんだね。
この時から凄いみたい、円堂さん。
そして、アキお姉様もうっとり。
なんかいいねー。和む。
「まもなく嫌いになる」
「俺はサッカーを嫌いになんてならないぞ」
「そうか……」
『ムーブモード』
まずい! なに和んでるの私!?
またこのパターンだよ。
あぁ……進展ないなぁ。
「大変だ!」
「僕達も行こう!」
「うん!」
フェイ君達も油断してたみたい。慌てて走り出す。
アルファの高性能ボールの光にみんなでギリギリ飛び込んだ。
毎回これするのしんどいから今度から油断しないでおこ……。
うん、決めた。私は決めた。もうこんなことはない。
ないったらない。
そんな私の決意よりムーブ先の方が重要。
突如移動させられた場所は……サッカースタジアム? だね。
「フェイ……ここって?」
「フットボールフロンティアスタジアム。歴史では円堂守が日本一を賭けて戦う場所だ」
アルファ曰く円堂さんが倒されるのに最もふさわしい場所。フェイ君曰くフットボールフロンティアスタジアム。それが私達がテレポートされた場所か。
これは……松風君と同じだね。きっとここで円堂さんを潰すのが一番効果的なんだろうね。サッカーを嫌いにさせ、サッカーから遠ざけることに。
まあそんなことはさせないけどさ。円堂さんも混乱する中、アルファが試合をしたいと言い出す。これには円堂さんも混乱を増すばかり。
いや、当たり前でしょ。君段階飛ばし過ぎだよアルファ。
そこに私達も駆けつける。
「円堂監督! ……じゃなかった、円堂さん!」
あ、言い間違えた。仕方ないよね。うん。
で、円堂さんの元にやってきた私達は事情を説明する。主に松風君が円堂さんに積極的に話しかけてね。
首を傾げるばかりの円堂さんだけど松風君はなんとか分かってもらおうとして説明している。
まずは見知らぬ人がまた現れて困ってる円堂さんに自己紹介して、サッカーが危ないことを説明する。でもそんなこと急に言われても相手は困るばかりで……。
松風君はとにかくサッカーを失いたくない気持ちを一心に伝える。
大好きなサッカーは守りたいって。
そしたら……
「分かった!」
「信じてくれるんですか!?」
「サッカーが好きって言ってるやつの言うことは信じるさ! 好きなものには嘘をつけないからな!」
伝わった。うん、それでこそ松風君。
それにやっぱり凄いね、円堂さん。
何が凄いかって言われると上手く言えないんだけど……やっぱり何かを感じる。敢えて言うならサッカープレイヤーとしての勘、かな。
「試合やるよ。やってやる!」
円堂さんのこの一声で試合が決まる。アルファも私達の存在を上司から確認したらしく、パラレルワールドで戦った相手って認識したみたい。
円堂さんが人数について疑問を漏らすとフェイ君がデュプリを披露。
松風君がみんなサッカーが大好きな仲間だと説明してくれる。
で、円堂さん私を見ました。
これは私も自己紹介しないといけない流れだね。
「えっと、私は――」
「長門 未来! 未来もサッカーが大好きな仲間です! 凄いストライカーなんですよ」
「え? 松風君……?」
え? え? 松風君が私を紹介してくれた?
しかも凄いストライカーだって……あぁ、もうこんなことでこんなに喜んじゃうなんて。でも嬉しいなぁ。
あぁ、もう……! そんなに言われちゃ期待に応えるしかないでしょ!
「そっか。ストライカーかぁ! よろしくな!」
「はい……!」
『店の厨房かと思ったらどこかのサッカー場だああ!?』
円堂さんと握手した頃。またどこからか連れてこられた実況の人。
あの人にも日常があるというのに……哀れ。
ま、実況が欠かせないのは共感するしどうせ相手側に言ったところで聞く耳もたないだろうからこれにツッコミは入れない。
今は試合に勝つことだけに集中しよう。
『さあ! 再びテンマーズ対プロトコルオメガの試合だああ!』
「みんな! サッカーやろうぜ!」
そうそう、サッカーやろうぜはこうだよね。
うん、今度も勝つよテンマーズ! 私の大好きなテンマーズ!
試合開始のホイッスルでプロトコルオメガのキックオフ。アルファからエイナムへ。
すぐにアルファに戻されてこっちに突っ込んできた。
「行かせるか!」
「貴様のデータは収集済みだ」
「なっ……!?」
くっ……躱された。どうやら試合前に私の情報を調べたらしい。やってくれるじゃんよ。
アルファはそのまま攻め込む。松風君も避け、フェイ君はマークを2人付けてどんどん切り込んでいく。
……デュプリを痛めつけてね。
「うわあああ!」
「きゃあああ!」
ストロー君やマントちゃん他のデュプリ達も強引に突破していくアルファ。いや、突破が目的じゃなく明らかにファールにならないラインでデュプリ達を狙ってる。
しかもフェイ君の死角で! ワンダバも気付いたらしく明らかにこっちの戦力を削りに行こうとしてるわけね。
「待てよ、サッカーはそんなんじゃないぞ!」
「……」
苦しむデュプリ達を見て円堂さんがアルファを批判する。こんなの見せられてたまったもんじゃなかったらしい。
もちろん私も同じ。これ以上アルファを好きにはさせない。
「お前は行かせない」
「ん……?」
なんか私にもマークが付いた。えっと、クオース君だっけ?
ちょっと奥が見えない瞳を持った不気味な子だ。実はアルファの次くらいには実力を感じてた子だね。プロトコルオメガ内でいえばエイナムやレイザって子くらいには。
まあなるほどね、彼は実力持ちだから一人で私に付いた訳か。でもあんまり舐めないでほしいね。
「一人でどうにかできる程私は弱くないよ」
「……っ!?」
軽く抜いてやった。
ふふん、シード舐めちゃいかんよ。
アルファの近くまで行くと松風君も円堂さんに同意してる。
「そうだ! こんなのサッカーが悲しんでるよ!」
「お前……いいこと言うな!」
うんうん。松風君の言葉に円堂さんからもお褒めの言葉。私も素敵だと思うよ。
けどごめん、アルファがシュート態勢に入った。私はそれには追いつけない。
案外クオース君足止めになってたか……。舐めてたのはこっちだね。敵ながらアッパレだ、クオース。
だけど後で絶対にやり返すからね。
「ふん!」
アルファがシュートを放つ。ってディフェンスがら空きじゃん!?
あ、そっか。アルファがDFのデュプリ達もボコったのか。ほんとえぐいことやってくれるね。
デュプリの苦しみはフェイ君の苦しみ。フェイ君の苦しみ=デュプリの皆の苦しみ。デュプリはフェイ君の分身、だから感情だってある。感情のあるものに苦痛を故意に与えるのは良いことだとは百歩譲っても言えない。デュプリだからって痛めつけてはいいってことにならないことを後で絶対に教えてやるよ、アルファ。
だが、私の静かな怒りも置いといて今はアルファが放ったシュートだ。
松風君も追いつけていなくてアルファと円堂さんの1体1。この頃の円堂さんはまだサッカー部を作って初日で部員は0、部員がようやく揃ってキーパーとして成長した帝国学園戦は今から1年後だ。つまり今の円堂さんはまだそこまで到達してない。
そんな彼にアルファの強烈なシュートは止められるのか……。悪いけど不安だ。ここは1点諦めるしかないか―――。
「絶対に止める! サッカーが消えてたまるか! ゴットハンド!」
……え、ウソでしょ。
ゴットハンド? それって帝国学園でやっと身につけた必殺技じゃ……。何はともあれゴットハンドがアルファのシュートを止めた。
ワンダバによればタイムパラドックスの影響らしい。時空の共鳴現象がなんたらかんたら。
今は試合に集中したいからそういう難しいのは後で考えることにした。
そして、本人もビックリゴットハンドを出した円堂さんは
「今のって……」
唖然としてるみたい。なにはともあれこれでゴールに不安要素はなくなった。
あのサッカー界の超有名人の円堂守に不安を持つのは失礼かもしれないどそれもここまで。やっぱり凄い人だ。それは昔も変わらないみたいだね。
さぁ、私も頑張らなくちゃ。私にも出来ることはあるはずなんだから。