松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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剣城優一さんとサッカーしました

 ゴットハンドから試合の流れはこっちだね。円堂さんが投げたボールは敵に取られたけど松風君がワンダートラップで奪い返し、その後の2人もアグレッシブビートで難なく抜いた。そして、なんとかプレイを続行してくれるデュプリ達のパス回しでボールが繋がり、フェイ君へ。フェイ君が私へボールを回した。

 

 あっちには化身アームドがあるからね。突破力でいえば同じくできる私に回しきたのは戦力的判断だね。

 別に私が優れているとか自負してるわけじゃない。もちろん自信はあるけど正直フェイ君も私と同じ実力を持ってるよ。

 ま、今はそんなことどうでもいいか。キーパーのザノウに向けてシュートを撃つよ。

 

「くくく、行かせないと言ったはずだ」

「ん? また?」

 

 あら。またクオース君が来たよ。どうやら徹底的に私を担当してるみたいだね。

 私だけに付いてきてる感じかな。まあでもここは負けられないね。

 

「ヒートタックル!」

「うわあああ!」

 

 ……案外アッサリだった。私のドリブル技で突破。

 本気で彼だけで私を止めるつもりだったのかな? よく分からん。まあ今ので戦略変えてくるかもね。

 あ、ちなみにヒートタックルは私のシード時代にいきなり聖帝様が教えてきた技。

 

 聖帝様。名をイシドシュウジというフィクスセクターのお偉い様だ。最初あの方が私に話しかけてきた時はほんとにビックリしたけど色々と教えてくれたんだよね。実はシュート技も教えてもらったんだけど習得できないまま聖帝様の予定により中断になった。

 

 ま、今でも練習してるけどね。いつか完成させる予定。

 っていかんいかん。試合中だよ、試合中。

 いつの間にか私の前に敵が立ち塞がってた。

 言わんこっちゃない。

 

「ここは通さん」

「行かせないよ!」

「……ッ!」

 

 メダムとクオルだったかのガードが思いの外硬い。確かクオルは松風君のアグレッシブビートで突破された筈だけど戻りが早いね。

 さすがの実力だよ。突破するのは難しいね。

 

「未来、こっちだ!」

「松風君」

 

 松風君がフリーで上がってきている。メダム君とクオル君を抜こうと思えば抜けるけど強行手段より当然松風君にパスする方がシュートコースもちゃんとあって良いのは誰が見ても分かる。

 ここは無難に松風君にパスだね。

 

「分かった。松風君!」

「おう!」

「くっ……!」

 

 私のパスが松風君に通る。

 私をマークしてたせいでそのパスも松風君も妨害できないクオルが悔しそうに声を漏らした。

 

「頑張って、松風君!」

「あぁ! 真マッハウインド!」

 

 松風君の必殺シュート。

 ホーリーロードを乗り越えて進化した風を纏うその技はプロトコルオメガのゴールへと真っ直ぐ向かっていく。

 

「キーパーコマンド03!」

 

『ドーンシャウト』

 

 ザノウの必殺の衝撃が松風君の真マッハウインドの威力を封じようとする。

 

「ぬわああああああ!?」

 

 でーもーマッハウインドの勝利! 

 やったね、さすが松風君。

 

「凄いよ、天馬!」

「うん! 自分でもこんなに加速するなんて思わなかった!」

「ん」

「あぁ!」

 

 あ、松風君とフェイ君がハイタッチしてる。

 いいなぁ。

 

「未来!」

「え?」

 

 あれ? 松風君、今度は私のとこに来たよ。

 

「未来もハイタッチしよ?」

「い、いいの……?」

「もちろん!」

 

 松風君が両手を上げて微笑む。

 ……もう、ズルイなぁ。

 

「ありがとう、松風君……」

「礼を言う必要なんてないさ。未来のおかげで点を取れたんだ」

「違うよ、私と松風君で取った1点だよ」

「……そっか。そうだよね!」

 

 私も松風君と一緒に微笑み合う。そう、これは2人で取った1点。

 ううん。2人どころじゃない。

 フェイ君やデュプリのみんな達、円堂さん……11人で取った1点。

 次から取る点数だってみんなそう。だから私が一人で取る点数なんてないんだよね。

 

「未来」

「あ、うん……」

 

 そういえば忘れるところだったハイタッチ。

 松風君が用意する両手に私もそっと合わせる。

 

「いえーい!」

「い、いえーい……」

 

 なんか恥ずかしい。でもそれを軽く上回るくらい嬉しい。

 スタジアムに鳴り響くパンッ、という音以上に私の心拍数も上がる。

 

「よし、この調子で行こう!」

「あぁ!」

「……うん」

 

 松風君の声でフェイ君も気合を入れる中、私は松風君と触れた手を見つめる。

 

「……初めてだなぁ。ハイタッチするの」

 

 実は生まれて初めてなんだよね。ハイタッチしてもらえるのも。こうやって誰かと喜びを分かち合うのも。

 だからちょっとぎこちなかったかな……。

 

「未来、どうしたの?」

「あぁ、ごめんごめん。この試合絶対勝とうね」

「うん!」

 

 そうだ、今は試合だ。

 松風君が私に与えてくれるものは私が彼を見つけたその日から沢山ある。でもその一つ一つに立ち止まってはいられない。

 今私がここにいるのは松風君の役に立ちたいから。そして、私のためにもサッカーを消させたりしたくないから。

 なら止まってる暇なんてない。

 

「よし」

 

 覚悟を決め直して私は自分のポジションに向かう。私が進むのはひたすら前。

 絶対に勝ってみせる。

 

「クオース。長門 未来はお前が止めろ。準備はいいな」

「御意。くくく……」

 

 アルファとクオースが何か話してる。

 まあどんな策を用意しようが私達は絶対に勝つつもりだけどね。

 

『1対0! テンマーズ優勢でプロトコルオメガ、一気に攻めあがっていく!』

 

 再び試合は再開して実況の通り、アルファからレイザに渡されたボールをレイザが高く遠く蹴り飛ばしてアルファが上がってくる。

 こっちに一気に攻め込んでくるつもりだね。

 

「来るぞ!」

 

 フェイ君が叫ぶ。私も急いで戻ろうとするけどアルファが通るより後に動いてしまった。これは間に合わないかも。

 予想通り、もう1人攻めあがっていたエイナムがボールを空中で拾い、アルファへパス。

 ノーマークのアルファはシュート態勢に入った。

 

「シュートコマンド01」

 

『スピニングトランザム』

 

 ひえっ……必殺シュートじゃん。ゴットハンドを破る為にあっちも円堂さんに対して本気で来たか。

 でもきっと円堂さんは止められる。

 なんだかそんな気がするんだよね。

 

「今度も止める……!」

 

 ……っ! まさか……あれは……。

 円堂さんから溢れ出るこの威圧感は覚えがある。それは私がゴッドエデンの訓練で生み出した時に。

 

「この力の圧力は……」

 

 アルファも気付いた。この時点で私もアルファも確信したかも。これが円堂守だって。

 このシュート、絶対に止めるよ。

 

「はあああああああああああああ!」

 

 私達の予想通り、円堂さんから溢れ出るオーラが形となって現れた。

 

「魔神グレイト!」

 

 化身だ。

 それを見たと同時に私は逆方向に走り出す。

 

「よし……!」

 

『おーっと!? 長門がゴールに向かうのを止め、敵陣に向かうぞ! 化身を出した円堂ではアルファのシュートを止められないと悟り投げ出したかー!?』

 

 違うっての、なんでそうなるの。まあいいけどさ。

 私は全力で走るだけ。

 私の仕事はシュートを入れて点数を取ることだから! 

 

「違う……あいつ、俺がシュートを止めることを信じて、俺からボールを貰えることを信じて走ってるんだ……!」

 

 円堂さんは察した。これだけで理解できたなんて才能ある。

 そう、私は円堂さんが絶対に止めるって信じて走る。

 流れは信頼からできる。

 

「絶対に止める! グレイトザハンド!」

 

 アルファの旋風を纏うシュートを魔神グレイトがマジンザハンドの容量で止めようとする。

 アルファのシュートはやがて減速し、円堂さんは完全に止めた。

 

「やった……やったぞー!」

 

『なんとアルファの超絶シュートをキーパー円堂、見事にキャーッチ!? 今度のテンマーズは凄い!』

 

 まだまだ。驚くのは早い。

 これからを見てから腰を抜かしてもらいたいね。

 

「未来!」

「はい……!」

 

 来た。円堂さんが思い切りボールを投げる。

 速攻だ。

 

「くっ……! ザノウ、攻撃を警戒。メダム、クオース、クオルは長門未来の動きを阻止せよ」

「「「「了解」」」」

 

 アルファが的確な指示を出す。そのせいでメダムとクオル、そして、まーたクオースが私の進行ルートを妨げに来た。

 それにしても三人掛りか、きついねー。ここはやっぱ化身アームドだね。

 一度クォーズの前で止まって私も円堂さんみたいに溢れる力を形にする。

 

「魔狼アモン!」

 

 私の化身ちゃん。魔狼アモンは強面の狼として私の元に現れる。

 その牙や爪は強靭で、なんとも攻撃力のありそうな漆黒の狼である。

 こう見えて案外シャイなのよ。はい、嘘です。

 さてアームドしますか。

 

「アーム――」

「音速のバリウス!」

 

 へ? け、化身……? 

 私の前に化身が現れた。天空の支配者鳳凰じゃない。アルファはもっと後ろにいる。え、じゃあ誰が……? 

 

『なななんと! MFクオース、化身を出したーー! これには長門も驚きで固まる!』

 

 ちょ、べべ別に固まってないし!?

 嘘です。本気でビックリしました。まさかクオースが化身使いだなんて……。私のマークに付いてたのはそういうことだったのか。

 なるほどね。ま、アームドはできないっしょ。

 

「アームド!」

「アームド……くくく!」

 

 えええええええええ。できるんかい。化身アームドできるの……うそーん。

 しかもちゃんと失敗とかせずに纏ってる。私は驚いて1回失敗しちゃった。

 やば、もう一度アモンを出す。

 

「アームド!」

「ふっ……馬鹿め」

 

 私でもそう思うよ。予想外の出来事なんてあって当然なのにそれに心乱してアームド失敗なんて最悪だね。

 せっかく円堂さんに繋いで貰ったボールなのに無駄にするかもしれない。私、最低だ。

 

「はあ!」

「くっ……!」

 

 音速のバリウスを取り込み纏ったクオースが私からボールを取ろうとぶつかってくる。私もそれに対応するけど出遅れたせいで劣勢気味。

 これはちょっとマズイ。

 

「ぐううううっ!?」

「ふっ! 貰った!」

 

 やばい、ダメだ。

 取られる……! 

 

「未来、こっちだ!」

 

 ナイス松風君。自慢のスピードで誰より早くここまで上がってきた。

 私はクオースとの勝負を止め、松風君にパスをする。

 

「松風君!」

「あぁ!」

 

 パスは繋がった。フリーの松風君は攻めていく。

 けどその道を塞ぐクオルと他のDF。

 

「ここから先は絶対に行かせないよ!」

「絶対に突破する!」

 

 通せんぼされる松風君だけど胸に手を当てて秘める力を解き放つ。

 

「アグレッシブビート!」

「うわああああああああ!?」

 

 難なく突破。でもマズイ、クオースが向かった。

 私も当然追い掛けるけどさっき押し負けてよろめいたせいでスタート遅れた。これじゃあクオースには追いつけない。

 

「ふっ!」

「うわっ!?」

 

 シュート態勢に入ってた松風君。それをクォーズに妨害され、ボールはフィールドを出る。

 これは完全に私のミスだ……。最悪。

 

「ごめん、松風君……」

「ううん。大丈夫大丈夫。取り返していこう!」

「うん。ごめんね……」

 

 松風君は優しいから許してくれるけど私自身はそれに甘えちゃダメだ。

 ちゃんと反省しなくちゃ。

 もう油断なんてしない。化身アームドできたってそれ以外がダメになっちゃ足りないよ。

 もっと……もっと……強く居なきゃ。

 

「未来? どうしたの?」

「う、ううん。なんでもないよ。さぁ行こうか」

「うん……」

 

 松風君を心配させてしまった。まあ私がスローインだったし、動かなかったのが問題かも。これも反省反省。

 ちなみにこの時私は気付いてなかった。私の表情が相当追い込まれていたことに。

 試合は私のスローインから始まる。だが、私が配置につくと。

 

「おーい!」

 

 スタジアムの何処からか声が聞こえた。その声がみんなにも聞こえたのか、試合は一時止まる。そして、スタジアムの観客席最上階に現れた人影は私達のところまで降りてきた。

 ……あれって。降りてきてハッキリした人相。もし、私の目に狂いがなければ私も少し知る人物。

 元シードの剣城京介君だ。けど何か違う。

 

「剣城!」

 

 松風君は完全に剣城君だと思って近付く。

 近付いてやっと気付いた。

 

「あれ……? 剣城じゃない……」

「俺は君の知ってる京介じゃない。京介の兄、剣城優一だ」

 

 剣城君のお兄さん? 自己紹介してくれてその存在が明らかになった訳だけどおかしいな。私の記憶が正しければ剣城君のお兄さんは足を負傷して歩けない筈なんだけど……。

 どう見ても普通に立ってるね。おかしい。

 やばい、早くも認知症? それか記憶改変でも受けたかな? 

 

 フィクスセクターに加入した時とか怪しい。嘘です、それ以降に剣城君に出会ったから関係ないね。

 ここまでちょっとふざけてたけどフェイ君のパラレルワールドから来たって説明で大体察しがついた。まあ今はフェイ君と同じく強力な味方って認識でいいかもね。お兄さん……優一さんもやる気満々だし。

 というのも試合に参加するという優一さん。そこにアルファが近寄る。

 

「お前は再修正される」

「それはどうかな」

 

 うわ、優一さん凄い低い声で言い返したよ。カッコイイ……。

 アルファが気に入らなくて気を込めたんだね。

 え? そんなことない、私がそう思いたいだけ? 

 そんなことはない。ないったらない。

 

 話がズレた。優一さんがFWに入り、キムロ君が役目を終えて消える。これでフェイ君の負担はまた減った。素晴らしいことだね。

 戦力は優一さんの分とフェイ君の分が上がった。

 ただプロトコルオメガはクオースという前回は見せもしなかった新手を見せてきた。これからの展開は優一さんがどれだけ上手いかに寄る。

 

 あ、ちなみに優一さんは私より歳上だよ。剣城君との年の差だけは知ってるからね。まあ今はどうでもいいよね。

 剣城君の兄だ。死ぬほど期待してやろう。

 彼ひとりで状況を変えれる力を持ってるとしてやっぱりクオースをなんとかしなきゃいけない。それは私の役目……。

 

「…………!」

「くくく……」

 

 今も尚奥の見えない夢見な瞳を歪めてくるクオース。

 どうやら優一さんが現れても私のマークは変わらないっぽいね。

 仕方ない、やってやろうじゃんよ。

 

『テンマーズ、キムロに代わって剣城優一が入りまーす!』

 

 実況のお声で優一さんがテンマーズのユニーフォームに身を包んでコートに入ってくる。

 一応私はMFだからこれでフェイ君と優一さんの2人のFWだね。

 私達の元にやってきた優一さんに真っ先に松風君が小走りで近寄る。

 

「俺、嬉しいです! 優一さんとサッカーできて」

「俺もだよ。何よりあの人一緒にプレイできるなんてね……」

「守りは任せてくださーい!」

 

 優一さんが自陣のゴールを見ると満面の笑みで手を振ってる円堂さんがいる。まあ確かにあの人とプレイできるって凄い誇らしいことだよね。

 で、優一さん何故か次に私を見つめてきた。

 え? なに。

 

「君には京介と同じものを感じる気がするよ。すまないけど名前を聞いてもいいかな?」

「長門 未来ですけど……」

「長門さんか。よろしく頼むよ」

「あ、はい」

 

 なんか普通に握手した。面と向かってみると剣城君と同じく強面なのにそこに絶対的な優しさが混じってる感じがする。鋭い表情なのに爽やかさがある。

 つまりイケメンだね。私は松風君の方が好きだけど。松風君の方が好きだけど! 

 

 大事なことだから2回言った。

 それはさておき剣城君と同じものを感じるとは如何程に。私剣城君と何か似てるとこあるかな……? 

 もしかしてシードってのを見破られたかな。それはありそう。

 

 とにかく私的には剣城君のような威圧感が自分にあると思えないので悪いけど優一さんの言葉には頷きかねる。

 ま、考えても仕方ないね。今は私にもやるべき事があるんだからそんな暇もない。

 優一さん以外ポジションに付いたし、私も付こう。

 

「長門さん。君は気負い過ぎている。今度は俺もいるからひとりで背負うな」

「え……?」

 

 優一さんが去り際にそれだけ残してポジションに付いた。

 口振りからして試合はちょっと前から見てたんだろうけど……。なんか複雑。

 別にそんな励ましてもらわなくても結構です。意地かもしれないけど私は私でやれる。やらなきゃいけないんだから。

 

『さあ試合再開です!』

 

 毎度同じ実況の声で試合が再開する。確か私からのスローインだったはず。

 ボールを貰ったらマントちゃんに投げた。

 

「ふんっ」

「なっ……!?」

 

 ああ、もうまたか! クオースに取られた。

 絶対に取り返す! 

 

「ほんと徹底してるね!」

「くくく……」

 

 くっ……そうやっていつも嘲笑うように口歪めて挑発してるつもり? 腹立つなぁ! 

 プレイスタイルは普通なのに強さは異常なとことかもね。ほんとに私を刺激してくれる。

 私がブロックも軽々避けるし、ボールを奪おうにも妙に器用で奪いにくい。ほんとなんなのこいつ。

 

「クオース。ネイラにパス」

「御意」

「あ……!」

 

 しまった。ボールを奪うことに集中して、必死で追いかけ過ぎた。

 プロトコルオメガの小さい覆面の女の子――確かネイラにパスが通ってしまう。

 また私のミス……くそ! 

 

「俺に任せろ」

「うわっ……!?」

 

 私が急いで戻ろうとしたら戻るまでもなく優一さんがネイラからボールを奪った。えらく簡単に奪う。さすがってとこかな。

 勝手に期待しまくってるからなんか安心……するのは早い。

 優一さんの前にクオルとネタンが進路を塞ぐ。

 

「ふっ……!」

「「……っ!?」」

 

 え、うそ。速い。

 ほんの一瞬の出来事だった。いつの間にか突破してた。うそでしょ? 

 その後のメダムとガウラだって軽く避けてしまう。凄い、これが剣城君のお兄さん……優一さんのサッカー。

 圧倒的だ。

 

「長門さん、天馬くん上がれ!」

「はい!」

 

 優一さんの指示に従う松風君。

 私も最前線に向かうけど……まあ当然付いてくるやつがいるんだよね。

 

 クオースとアルファだ。

 

「ザノウ、攻撃を警戒。クオースは私と一緒にやつらを妨害する」

「「了解」」

 

 ザノウは態勢を整え、アルファとクオースは私達の前に立ち塞がる。

 完全な守備態勢だね。

 

「天馬君、化身だ!」

「は、はい!」

 

 優一さんが松風君に化身を出せと命じる。

 私も同じ行動を取った。

 

「魔戦士ペンドラゴン!」

「魔神ペガサスアーク!」

「魔狼アモン!」

「天空の支配者鳳凰!」

「音速のバリウス!」

 

 叫びと共に現れる5体の化身。

 暗黒の騎士。

 双翼の魔神。

 凶悪な獣。

 天空の大鳥。

 蒼い巨体。

 

 それらが同時に顕現した。

 そして、

 

「「「「アームド!!」」」」

 

 私、優一さん、アルファ、クオースが化身と融合し、身に纏う。化身アームドである。

 ていうか優一さんできたのね。まあアレだけの実力を持っていれば不思議ではない。

 1人、化身アームド出来ずに放置状態だった松風君だが、フェイ君が叫び声を上げる。

 

「天馬! 君にも出来るはずだ!」

「分かった、やってみる!」

 

 え、そんなノリでできるの? マジで? いや、松風君が出来たら嬉しいけど……なんか複雑。

 私がどれだけ苦労して化身アームドを身につけたのか分かってない。

 でも出来てしまったよ、松風君。

 

「出来た! 俺にもできた!」

 

 えぇ……いや、喜ぼう。素直に。むしろ松風君の成長をなんで私は喜んでないの。

 ま、それは後回しだね。

 

「行くぞ! 松風君、長門さん!」

「「はい!」」

 

 優一さんが上空に蹴りあげたボールを追って松風君と優一さんが飛ぶ。

 私? 私は前に走ってるよ。

 うん、走ってる。

 

「はああ!」

「でりゃあ!」

 

 優一さんと松風君が2人で蹴ったシュート。真っ直ぐゴールへ向かっていくそれと並走する私。

 そうです、シュートチェインです。

 

「ウルフボルケイノ!」

 

 化身アームド2人掛りの強烈シュートをさらに加速させ、灼熱に包ませる私のシュート。

 そんな恐ろしいものがプロトコルオメガのゴールに迷いなく向かう。

 

「重機兵バロン!」

「GKも化身使いなのか!?」

 

 げっ、ザノウも化身使いなの。と思ったら松風君と同じこと思ってた。

 いや、多分みんな思ってたであろうけど。

 プロトコルオメガで化身が出せるってことは当然あれもできるよねー。

 

「アームド」

 

 やっぱり! 期待裏切らねえなこんちくしょう。

 ま、でも止められるとは思わないけどね。自信ある。

 

「ぐああああああ!?」

 

 秒殺。ってわけではないけどザノウは破った。

 まあ化身アームド同時通常シュートからの化身アームド+必殺シュートの上乗せで止められたらもうやってられないしね。心折れるわそんなの。

 でもザノウを倒して安心はできない。そう、まだアルファとクオースがいるのだ。彼らがシュートを止めようとザノウの代わりにゴールを守る。

 

「くっ……!」

「ぬぬ……!」

 

 お、これにはクオースも苦悩するのね。良かった。そこまで感情の読めない子ではなかった。

 ちょっと安心。そして、突破! 

 

「ぐああああああ!」

 

 その叫びはどっちのものなのか、あるいはどっちもか。

 そんなことどうでも良くてアルファとクオースは私達のシュートに力負けしてゴールにボールは確かに入った。

 

『ゴール! テンマーズ追加点を入れたー!!』

 

 イエス! 実況の熱いお声で興奮する。

 冷めないうちに松風君と優一さんとハイタッチしておいた。

 というかされた。戸惑ったけどこういうのもあるんだよね。お姉さんさっき学びました。

 

『無様だな、アルファ』

「申し訳ございません……」

 

 一方その頃お叱りを受けたアルファ。その後撤退すると私達に告げてまたあっちの試合放棄となった。ま、勝ちは勝ちだよね。

 毎回のごとく途中で放棄するから気持ちよくないけど。あれか、ゲームに負けそうになって電源切る子供か。もうまんま過ぎて笑いも起こらない。

 はぁ。疲れた。

 

「いいシュートだった」

 

 試合が終わってすぐ優一さんは私のとこにやってきた。その手は差し出されてる。普通……これって握手だよね。

 間違ってたら怖いから戸惑いながら手を取ると優一さんはニッコリ笑ってくれた。良かった、合ってた。

 これで違ったらめっちゃ恥ずかしい。

 

「ありがとうございます」

「君とサッカーすると京介を思い出すよ」

「は、はぁ……」

 

 また? 私と剣城君の共通点なんてほとんどないと思うけどなぁ。

 なんかずっと複雑な気待ちだ。

 

「あの……」

「ん?」

 

 実は気にしてることがあったから優一さんに声を掛ける。

 私がいつも立ち止まることだ。

 

「どうしたら貴方みたいに強くなれますか?」

「え……?」

 

 ああ、その時私はどれ程酷い表情をしてたのだろう。

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