松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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VS帝国学園② お前達は帝国じゃないだろ

 

『ミク。お前には、ストライカーとしての気持ちが足りない』

 

アリアは言った。

 

『お前。ゴールを決めたいとか自分が目立ちたいとか。そんな気持ち、これっぽっちもないだろ』

 

アリアは言った。

 

『そんな欲求じゃストライカーなんて務まらない。今のままじゃお前の才能は宝の持ち腐れだ。見るやつが見たら……怒るぜ』

 

そんなこと言われても。

そう、思ったけど息が切れてて疲れ果てて喉が引っかかってそんな言葉は出てこない。

それでもアリアは、私が回復するのを待ったりなんてしないで、畳み掛けるように―――言った。

 

『"快感"だ、ミク。まずはゴールを決めろ。そして、覚えるんだ。お前の最大欲求を。私にこんな好き勝手言わせるな。わかったようなこと言ってんなって突っぱねろ。それで吠えろ』

 

私は顔を上げた。

彼女は、青い瞳で私を真っ直ぐ捉えていた。

私は目を見開いた。

わかったから。

アリアの気持ちが。

私を信じてるんだって伝わったから。

だから、ここまで厳しくしてくれる。

興味を持ってくれてる。

 

『吠えろ、ミク。お前は―――"なんだ"?』

 

戻る現実。

回想は終わり。

目の前には化身使いの……敵!

 

「くっ……!貴様も化身使いか!」

「はぁぁー!」

「なっ……、何だこのパワーは!?ぐああ!!」

『……!?』

 

御門くんを突き飛ばし、彼といがみ合っていた雅野くんまでもが驚愕する。

私はボールをキープした。

でも、この後どうこうする能力は今の私にはない。

 

「もらった!」

「……!」

「ナイスカット!」

 

パスルートを探すさなか、すぐにボールを奪われた。

これで私たちの前半の攻撃は終わり。

シズクはそう言ってた。

そういう予定だって。

帝国の守りは全国でも屈指の固さ。

初見殺しの王者のタクトから、アスカの連打で開始15分を稼いだらさすがに何かしらでボールは奪われる。

帝国のプレイヤーがそれ以上私たちを自由にするわけがないから、その何かしらがなんであれ仕方ないって言ってた。

だから、ボールを取られても切り替えて相手の背中を追いかけて自陣に戻る。

 

「アリア!」

「……!わかってる!」

 

シズクが叫んでアリアが腰を落とした。

ウチのDFはザル。

帝国ほどの総合力なら簡単に突破してゴール前まで行かれる。

 

「今度はこっちの番だ!コウテイペンギン7!!」

「光の鉄拳!」

 

ぶつかり合う御門くんとアリアの必殺技。

アリアのパンチングは……凄い!

 

「ふん」

「なっ……!?俺のコウテイペンギン7が弾き返されただと!?」

 

御門くんの必殺技に対してはアリアの勝ち。

でも、光の鉄拳はパンチング技だからボールはフィールドへ戻される。

そして、それを敵が掻っ攫うこともある。

 

「だったら次は俺だ!」

「きゃあっ!」

「ユノ……!」

 

DFのユノが龍崎くんにボールを奪われた。

彼はそのままゴールへ向かい、力を込める。

 

「はぁぁー!来い、俺の化身!竜騎士テディス!」

「……!」

 

化身!

龍崎くんの化身シュート!

 

「はぁぁ!喰らえ、女ぁ!」

「光の鉄拳!!」

 

アリアは果敢に挑む。

衝突する拳と化身シュート。

少し圧されたけど、アリアが打ち勝つ!

 

「しゃっ!!」

「こいつ、俺の化身シュートを……!?」

「ならば化身技ならどうだ!」

「……っ!」

 

入れ替わるように御門くんがボールを奪って龍崎くんとスイッチ。

御門くんのきる手札はもちろん。

 

「黒き翼レイブン!レイブンクロウ!!」

「魔神アガレス!!」

 

さすがに化身技に対しては、まだキーパーのアリアは為す術を持ってないから化身をだす。

アガレスのキックでアリアはレイブンクロウの勢いを完全に殺した。

 

「なっ……!?バカな!俺の化身技が!?」

「ありえん!俺達は帝国の最大火力だぞ!!」

「お前たちは"帝国"じゃないだろ」

『……!!』

 

御門くんと龍崎くんが瞠目する。

相手ゴールで雅野くんが腕を組みながら少し反応して、目線を上げる。

ボールを足で蹴り上げて手元に収めたアリアは、ボールを片手で持って2人を少し鋭い目で捉えた。

 

「お前たちはフィフスセクターのシードだ。帝国には派遣されてるだけ。派遣先でイキってんじゃねえぞ。お前たちはフィフスセクター所属で、フィフスセクターの中じゃ下の下なんだ」

 

アリアは、2人に挑戦状を叩きつける。

"元"最強として。

 

「上には上がいるってこと教えてやるよ。帝国の坊ちゃん気取り共。―――お前たちは、大したシードじゃない」

「なっ……き、貴様……!!」

「こいつ、潰す……!」

「やってみろよ。化身使えるってだけのシードが」

『……!!』

 

2人はアリアの挑発にまんまと乗ってる。

言葉が出ないほど唇を噛み締めて、憤りは露わにしている。

アリアは2人にボールを返した。

 

「なに!?なんのつもりだ!」

「サービスだ。どうせ今日も時間稼ぎしなきゃならないからな。アスカが15分粘った時点でお察しだろ。そんなチーム状況だ。さぁ、遊ぼうぜ」

「貴様、後悔させてやる……!」

「何言ってんだ。身の程を弁えろ。んで喜べよ。お前たちレベルのシードが私レベルのシードと戦える機会なんて早々ないぜ?」

『……!』

 

アリアが指をくいくいと動かす。

御門くんが歯を食いしばったあと、アリアを睨んだ。

 

「……いいだろう。貴様がそんな大口を叩けるほどのシードか、この俺が試してやる!」

「だから、立場が逆だっての。まあいいか。今にわかる」

 

それから。

前半が終了するまで御門くんと龍崎くんの猛攻は続いた。

けど、時間が来た頃に朽ちていたのは攻めていた2人だけ。

龍崎くんは四つん這いになり過呼吸に。

御門くんは片膝をついて愕然と鉄壁の相手ゴールを眺めていた。

 

「ば、化け物だ……」

「ダメだ。シードとしての格が違いすぎる……っ!間違いない。こいつが最強のシードだ」

「残念だがハズレだ。それと、ゴールキーパーの私にそんな感想抱いてるようじゃまだまだだな」

 

そう言って、アリアはホイッスルが鳴ったと同時にゴールから離れてベンチへ向かった。

それでもやられた2人はそのまま。

あまりの屈辱と恐怖にプライドはもうなくなって、動けずにいる。

彼らが目で追うこともできないアリアの背中に、実況が彩る。

 

『オイゲン、脅威の22連続セーブ!!11連続セーブの雅野の倍あるのはわざと!格の違いを見せつけたぁ!』

「くっ……!」

 

顔を顰める雅野くん。

それを無視してアリアはベンチへ戻ってきたシズクに声をかける。

 

「シズク、向こうのシードはもうダメだ。使いものにならない。あとは帝国を倒しちまえば私たちの勝ちにしておいたぜ?」

「……っ!アリア、貴女……」

 

シズクにアイコンタクトだけしてアリアはタオルを手に控え室に消えていった。

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