松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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VS帝国学園③ リミテッド・オーバー5

 

「ライトニングスピア!」

「はぁぁー!……ふん」

 

『雅野止めたぁ!これで18連続セーブ!』

 

「デスゾーン!」

「皇帝ペンギン2号!」

「―――アガレス」

 

『オイゲン。連続31セーブ!!』

 

後半開始。

互いに1歩も譲らない攻防。

守りの帝国も御門くんと龍崎くんの無力化により攻め手がないから攻撃に人数を割いている。

その影響で私達も攻撃しやすくなってる。

アスカの体力に任せてシュートは一任。

そして、アスカのシュートは決まらないことが前提。

故に両者共に無得点のまま後半15分。

 

「ちょ、ほんとにこのままでいいんだよね?」

「えぇ。作戦は試合前に言った通りよ」

「おい、その作戦だが……ほんとうに上手くいくのか?試合前から思ってたが博打すぎると思うが」

 

相手のコーナーキックのタイミングでアスカとアリアが私に少し寄ってきて、アリアに指摘される。

私は彼女を一瞥してすぐに視線を戻す。

 

「……大丈夫よ」

「おいおい。根拠は言ってくんねえのかよ……」

 

盗み聞きしていたサエがげんなりする。

作戦は試合前に伝えてある。

けど、皆は不安を抱いていてそれは伝えたその時から気づいてる。

伝えたタイミングで反感も買ったけれど、私が現状考えつく対帝国の攻略プランは私の案を除いて他はない。

今の私たちが帝国の守りを崩すには……博打しかないのよ。

 

「相手の攻撃はワンパターンだ。多少攻撃に人数を割いてもなんとかなる!」

「攻めて攻めてここで決めるぞ!」

『おぉ!』

 

帝国も気づき始めてる。

それがわかった号令。

ゴールを守り、腕を組む雅野くんが私に目をつけてるのも気づいてる。

やはり違和感は見抜かれる。

 

 

―――試合開始直後以外、私が前線に一切上がってないという違和感は。

 

 

「デスゾーン!」

「光の鉄拳!」

 

帝国の攻撃。

デスゾーンに対してアリアがパンチングで弾く。

ボールはフィールドに戻り……その先に駆け込むのは、"御門くん"!?

 

「確かにお前は無敵のシードだが、その必殺技には弱点がある!」

「何!?」

 

アリアが指摘されて初めて動揺する。

私も耳を疑うけど……それよりも驚いたのは、彼が稼働しているということ。

帝国のシードは4人。

その内の2人が化身使い。

そして、彼らの心はアリアが折ったはず。

なのになぜ、彼らが攻撃に参加しているというの……!

 

「コウテイペンギン7!貴様の必殺技は正面に対しては滅法強いが、サイドからの攻撃に弱い!」

「……!クソ……!」

「……っ!!アリア!」

 

私は叫ぶ。

アリアは超反応で化身を出して左サイドに突っ込んできたシュートをキックでカットして弾く。

マズイ、これは相手の思う壷よ……!

 

「―――そして、貴様もさすがに化身の力を使い果たしたところだ」

「なっ……!」

 

アリアが瞠目する。

無理もない。

彼女がその瞳で捉えたのは意気消沈していたはずの龍崎くん。

彼は化身を出して足を振り上げている。

そのまま落ちてきたボールを……シュート!

しかもその弾道を追いかける御門くん……!

 

「シュートチェイン!!」

「くらえっ!黒き翼レイブン、レイブンクロウ!!」

「止める……!」

 

アリアもアガレスを出して対抗。

少し圧されたけど難なくクリア。

けど、またボールをフィールドに戻してしまった。

それも右に流れた。

これが帝国の狙い……!

私の王者のタクトが予測した通り……!

 

「もらった……!これで貴様は化身も必殺技も使えない!」

「しまっ―――」

 

またサイドへの攻撃。

必殺技が撃ち込まれる。

アリアの反応速度なら間に合うけれど、もう化身パワーは尽きたし、光の鉄拳を使うには御門くんの指摘通り正面でシュートを待ち構える必要がある。

けど、さすがに正面で捉えるのは間に合わない。

これは―――。

 

「やべ、決まっ……!」

「うそ……アリアが、失点?」

「お、終わ……った……っ。我々の作戦では0-0死守からの試合終了間際の1点先取勝利……」

「えっ。あっ、じゃあ」

 

皆がスローモーションに映るその景色を目にして絶望する。

そう、私が描いた作戦は1-0の未来。

それがこのゴールで途絶える。

結果は引き分け。

引き分けは帝国を下せなかったということになるから、私たちにとって負け扱い。

つまり、ヴァルキリアの半分以上は殺処分となる。

この瞬間、皆の脳裏に浮かんだのは。

 

 

―――終わった。

 

 

「……っああっ!!」

『……!?』

 

終わらせねえわよ!!

私がアリアより早くコンタクトポイントへ足を伸ばす。

化身も出してる。

アリアも私の姿を瞳に映して驚愕している。

超反応は彼女だけの武器じゃない。

私の足は……届いた。

 

カットされたボールはガンッ!!!と音を立ててゴールポストが弾く。

 

「おま……っ、反応天才かよ……!」

「馬鹿!ボールまだ生きてる!」

「……っ!」

「拾いなさい!王者のタクトッッッ!!」

『……!』

 

体勢を崩し、着地も疎かになり、地面に下半身から打ち付けるように滑り込んだ私からの支持。

ヴァルキリアは絶対的司令塔の号令でやっと呼吸を取り戻し、動き出す。

 

「フェアリーショット!」

「クソ!こいつ……!」

 

ボールに息を吹き込んだ最初のプレイヤーはアリア。

身体が横に流れた状態から、滑りながら足でブレーキをかけて、地面を蹴って跳んだ。

そして、ディフェンスラインまで飛翔して必殺ロングシュートによる長距離パス。

私がカバーに入ってゴールを守らずに済み、身体をゴール下に持っていけたおかげでできたプレー。

もちろんアリアの身体能力もありき。

ボールは前線へと運ばれる。

 

「キープ!私がキープする……!」

「ナイス、ミク!」

 

アリアのパスを受け取ったのはミク。

考えうる限り最適な人選。

アリアのシュートを受け取れて、尚且つボールキープだけなら誰よりも能力が上。

彼女がボールを持っていればまず競り合いは負けない。

小手先のテクニックがないから、間合いに入られたら簡単にボールを奪われるけど、まず間合いに入られない……!

 

「クソ!こいつ!ボールに届かない……!」

「なんだこいつは!ビクとも動かねえ。要塞かよ!」

「……そろそろ怒りたいんだけど」

「我慢しなさい。そして、よくもちこたえたわ。私に寄越しなさい、ミク!」

「……!」

 

ボールを保持し続けたミクか近距離でパスを受け取る。

そして、ゴールに向かって走り始めた私に彼女は瞠目した。

 

「え!?もう作戦実行するの?早くない?」

「……!」

 

ミクに指摘されたけど顔を顰めて無視する。

言われなくてもわかってる。

まだ後半は10分ある。

私の作戦に要する時間は5分。

さらにその作戦を試合終了5分前から発動するつもりだった。

だから、5分のズレが発生しているのが今の状況。

それでも今、このタイミングで実行に移らなければならなかった。

御門くんと龍崎くんの謎の再起から流れが変わった。

帝国のパフォーマンスが想定を超えたものになってる。

間違いなく、作戦を温存している場合ではない。

断ち切るならこのタイミング。

でないと……手遅れになるわ!

 

「行くわよ―――必殺タクティクス"リミテッド・オーバー5(ファイブ)"……ッ!!」

 

瞬間、私は加速する。

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