「"アンリミテッド・シャイニング"……!」
「遂に来たか。と言いたいところだが早すぎるな」
「そうね。とはいえ、彼らがまだ何しに来たのか分からない以上、試合をすると決まったわけでは……」
「いや、するだろ。じゃなきゃがん首揃えて来ない」
「……よね。そうよね。えぇ、わかってるわ」
私は頭痛を抑えるようにこめかみに手を当てる。
本当に頭が痛い。
アリアの言う通り、早すぎるわ。
私たちはアリアを抜けば帝国学園と渡り合う事も難しいチーム。
なのにいきなりゴッドエデン最強のチームなんて飛ばしすぎよ。
本当に対戦しに来たというの?
ヴァルキリアと?
なぜ?いえ、理由は言ってたわね。
だから、理由となってるアリアが私より前に出る。
「で、なんだ?わざわざこんな下層まで降りてきて……そんなにお前の前任が私だったのが許せなかったか?だから潰しに来たのか?」
「くだらん。寧ろその逆だ」
「は?逆?」
アリアが決めつけたのは白竜くんが今ついてる地位の先代が女であることに憤っているのではないかという仮定。
でも、白竜くんは目を瞑り首を横に振って否定する。
それしかないだろと睨んでいたアリアからすれば困惑する。
しかも真逆だと言うのだから尚更。
白竜くんは目を開けると、アリアを指さし口角を上げ自信満々に鼻を鳴らす。
「喜べ。そして、感激するといい。俺は貴様をライバルと認めている!」
「そうか。そいつはどうも、あんがとな。よし、練習に戻るか」
「俺の話を最後まで聞け!!」
「あぁ?……。~~~っ。っるせぇな……」
白竜くんに手の甲を振って背を向けたアリアが呼び止められて、怠そうに顔を顰める。
あぁ、アリアって白竜くんみたいな自信家苦手なのね。
顔に出てるわ。
「そんな態度を取っていられるのも今のうちだ。既に明日。我々アンリミテッド・シャイニングと貴様らヴァルキリアの対戦―――"強化試合"が決定している!逃げられはせんぞ、オイゲン!」
『……っ!?』
全員が驚愕する。
アリアも足を止めて振り返り瞠目した。
だって、そうでしょう?
この試合に意味があるとは思えない。
あまりにも無理がすぎる。
アンリミテッド・シャイニングとヴァルキリアなんて勝負にならない対戦カード。
それが"強化試合"ですって……?
本気で言っているの?
「ハッ。何を強化するってんだ。力の差がありすぎてどっちにもメリットねえだろ。それに勝手にそんな試合組んでいいのかよ」
「教官の許可は既に取っている。強化試合というのはあくまで名目上だ」
「……!」
ハッキリと言いのけた白竜くんにアリアが目を見開く。
なるほど。
牙山教官はあくまでゴッドエデンの長。
アンリミテッド・シャイニングとヴァルキリアはゴッドエデンの管轄下で直系はゴッドエデンとなるチームだけれど、その所有権と諸々の権限自体は大元であるフィフスセクターの保有財産となる。
つまり、命令で戦わされた海王学園や帝国学園と異なり、アンリミテッド・シャイニングとヴァルキリアというフィフスセクターのチームの対戦は正式な申請がいる。
だから、"強化試合"という"テイ"が必要だった。
そうでなければ聖帝イシドシュウジの許可は下りない。
つまりこの試合に双方の"チーム"にメリットはない。
おそらく本当の目的は白竜くんの私情。
そうね。
さしずめ―――
"アリアと戦ってみたい"
そんなところかしらね。
「オイゲン!俺は貴様に対戦を所望する!無論、貴様に拒否権はない」
「じゃあ所望じゃないだろ。強制って言うんだよそういうの」
「貴様を倒し、俺が真に究極のサッカープレイヤーであることを証明するのだ……!」
「はいはい。究極究極。おや、お客さんいいっすね~。対戦しなくてもわかりますよ。マジ究極っす。ほら、私が太鼓判押してやるから帰った帰った」
「適当にあしらうな!」
アリア、白竜くんの相手をするのは相当めんどくさいようね。
でも、残念ながらここであしらえても意味はない。
「正式に組まれた試合なら引き受けるしかないわね。本当に拒否権がないわ。比喩抜きで。まったく」
「……!シズク」
私はため息をつきながらアリアを守るように白竜くんの前に立った。
彼は真剣な顔つきになって私と向き合う。
私も彼と真剣に対峙する。
「私がヴァルキリアのキャプテン、陸奥滴よ」
「アンリミテッド・シャイニングのキャプテン、白竜だ」
目を合わせる私と白竜くん。
私は彼を見上げ、彼は私を見下ろす。
先に口に開くのは私。
「対戦する上で、事前に一つだけ尋ねてもいいかしら?」
「いいだろう。なんだ?」
「この試合に負けて、私達に何か罰はある?いつも試合をすると処分という名の命をかけさせられるの」
「何?命を?……ふん。立場の危うい三流シードも存外大変というわけか」
「……」
「安心しろ。この試合に勝っても負けても何もない。それは約束しよう。そもそも貴様らが勝つことは到底ないだろうがな」
「だったら尚更よ。本当ね?言質とってもいいかしら?いざとなったら貴方を盾にするけど」
「構わん。好きにしろ」
白竜くんは目を伏せて受け入れた。
どうやら二言はなさそうね。
この試合はあくまで練習試合的な立ち位置ということかしら。
ここで言う公式戦的な扱いでないのならば、この試合の結果では何も起こらない。
とりあえずこれまでの試合と比べて背負うものは何もないということになるわね。
まあそれくらいの担保がないとこっちはやってられないからとりあえず最低限は確保できた。
本当に最低限ね。
人として当たり前の担保。
ほんと、ため息でるわね。
「では、明日の正午。ゴッドエデンスタジアムにおいて、試合を行う!せめて、逃げてはくれるなよ?」
「……!随分と安い挑発ね」
私の返答に白竜くんはフッと不敵に笑うだけで突風に巻き込まれアンリミテッド・シャイニングは消えた。