松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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アンリミテッド・シャイニング篇⑦ 究極!化身バトル

 

先行、アンリミテッド・シャイニング。

白竜くんの足元にボールが転がされる。

 

「ふん。俺を恐れて引っ込んだか。逃げれば仲間がどうなるか、その目に焼き付けるがいい……!」

「……っ!来るわよ!!」

 

キックオフと同時に一直線に飛び出した白竜くん。

狙いはアリアではなく、私たち。

標的をアリアが守りたい対象つまり弱者に変更した。

引きずり出すと言っていた時から何となく嫌な予感はしていたけど、予測していた選択肢の中でも1番最悪なものを選んだわね。

それすなわち脅し。

仲間を傷つけられたくなければ、前線に出てこいと。

問題なのは、彼はまだアスカ達との力量差を把握出来ていないということ……!

 

「お前たちのような雑魚が一生お目にかかれない究極の化身を見せてやる!」

「……っ!あぁ、もう……!」

 

私は走り出す。

間に合わないでしょうね。

本気も本気すぎるわ。

彼ほどのプレイヤーが彼女たちを相手に化身まで出すなんて。

やりすぎもいいところよ!

 

「はあっ!」

 

白竜くんが飛び上がる。

もはや常人が使う化身のように紫のオーラは出ない。

初手から神々しい光のエネルギーが眩しいくらいに発光して地面から出現する。

もはや形作ることもない。

はなからその姿が具現化している超上位の化身の特徴……!

白竜くんの背後から伸びる長すぎる胴体。

神秘的な程に煌めく白く大きな両翼。

甲高く轟く龍の息吹と咆哮。

ドラゴンはその存在感を誇示するように私達の前にその身と頭部を大きく広げる。

これが……!!

 

 

「これが究極の化身!!"聖獣 シャイニングドラゴン"……!!」

 

 

『―――――――――ッッッッ!!!!!!』

 

 

シャイニングドラゴンが吼える。

肌がひりつくほどの衝撃と圧が私たちを襲う。

圧倒的な存在感。

これほどの化身、私とミクですら直面したことはない。

となれば当然、アスカ達からすれば想像すら超越している……!

 

「アスカ!サエ!」

「……ぁ……えっ……は?」

「なっ……ぁ…んだよ、これ。デ、デケェ……なんてもんじゃ……!」

 

白竜くんのシャイニングドラゴンと真正面から対峙してしまったアスカとサエが突っ立ったまま硬直している。

いけない。

白竜くんが最初からこんなに全力で突っ込んでくるなんて想定外。

彼のスピードを前にしたら両ウィングのアスカとサエは逃げる時間がない!!

 

「さぁ、お前たちの力を見せてみろ!」

「え、ちょ……っ!速い!間に合わない!これ相手にすんの!?」

「無理に決まってんだろ……!ちくしょう、ちくしょう。またかよ……!!」

 

目の前の強大な力が迫り来て、唖然とするアスカとサエ。

本人たちももう逃げられないのがわかった。

またしても襲う残酷な力量差に彼女たちは為す術もない。

もうこのままシャイニングドラゴンに振るい払われて再起不能になるしか―――

 

「2人はやらせない!!」

「……!長門……!!」

『ミク!!』

 

こっちの陣地に突撃してくるシャイニングドラゴンと白竜くん。

彼とアスカやサエの間に割って入った影の正体は長門 未来。

白竜くんと対峙する元競争相手。

彼も瞠目する。

彼女は背中から紫のオーラを出現させ、化身を具現化させる。

 

「来い!私の化身……魔狼 アモン!!」

 

『オオオオオーーーーーーーーーン!!!』

 

高らかに吠えるアモン。

シャイニングVSアモン!!

 

「再戦だ!!」

「くどい!!」

 

衝突する2体。

その間にアスカとサエはサイドへ逃げる。

それを背中越しに一瞥してミクは白竜くんと再び向き合う。

が、前を見たその瞬間。

 

「愚かしい!お前では相手にならん!」

「ぐあっ……ぁ……!?」

「ミク!」

 

シャイニングドラゴンにタックルされたアモンが吹き飛ぶ。

当然ミクもアモンに引っ張られるように転がり倒れ伏せた。

その光景に逃げ切ったアスカとサエが思わず目を疑う。

 

「おい、マジか!ミクが力負けかよ!?」

「そんな……!嘘でしょ!?」

「……っ!」

 

地に身体をついたミクが表情を歪める。

彼女は苦しみながらもすぐに顔を上げて白竜くんの方を振り返った。

彼の背中は既に自陣深くに侵入。

ミクは立ち上がろうとして1度挫いてから、地を蹴って彼を追いかけた。

けれど後からついていって追随できる進撃速度ではない。

白竜くんは既にヴァルキリアサイドの半分まで侵攻中。

ミッドフィールダーが彼と対峙するところまで来ている。

 

「く、来る……!来ちゃう!どうしよう!速い!」

「桁違いのスピード!間に合わない。絶対絶命。シズク……!」

「……っ!」

 

逃げながらチェンファとチェンナイから縋るような視線を送られる。

えぇ、わかってるわよ。

私がやらなきゃ、私が戦わなきゃ皆散ってしまう。

皆と彼じゃ勝負にもならない。

私なら対戦として成立ぐらいはする。

でも、足が竦んで動けないのよ。

怖いのよ!

だって、こんな強力な化身に直面したことないもの……!

 

「うわーん!こっちに来るよー!」

「怖いよー!」

「シズクたすけて!」

「……っ!……っ!!」

 

背中越しに子供たちが逃げ惑う声が聞こえる。

シャイニングドラゴンの迫力に腰が抜けて動けないのが見なくてもわかる。

ここで。

この戦線を私が少しでも時間を稼いで維持しなければ。

守りたいものを守りきれない……!!

 

「うえーん、アリアー!」

「バカ!こっち来るな!サイドへ逃げろ!シズク、気持ちはわかるが頼む。戦ってくれ!お前が突破されたらチビ達が……!」

「わかってる!わかってるわよ……!!」

「どうした!怖気付いたか!!」

『……っ!!』

 

喚き騒ぐ私達を見て滑稽だったのか、猛追する白竜くんが私達を嘲笑するように口角を上げる。

私もアリアも鬼気迫る形相で彼を睨む。

もう目前まで来てる。

私も今からじゃ逃げられない。

 

「シズク!」

「~~~~~~~~っ!」

 

あぁ、もう!

わかってるわよ!

腹括ってやるしかないのは!

 

「ぅぅぅ……ああぁぁッッ!!」

「……!化身!!」

 

私の背中から伸びる紫のオーラが化身を形作り、白竜くんが見上げて"やっと"警戒する。

えぇ、気づいてたわよ。

ヴァルキリアの才能組3人の中で私だけが白竜くんに舐められていた。

理由は単純、"知らないから"。

ミクとは知人。

アリアとはライバル。

じゃあ私は?

彼と何も接点がない。

だから、侮られ、化身を使えるとも思われてなかった。

私はアリアとミクを押しのけてキャプテンをやってるというのに。

どうせ砕け散るなら気持ち入れるわ。

舐めんじゃないわよ!!って!

 

「例え負けると分かっていても……!」

「……!」

「虚無魔神!ベリアル……っ!!」

「化身使いか。面白い!」

 

白竜くんが不敵に笑い、シャイニングドラゴンとベリアルが衝突する。

結果は。

 

「あぁ……っ!!」

「脆い!こんなものか!」

 

シャイニングドラゴンの尾っぽに私とベリアルは一瞬で叩きつけられた。

ベリアルは儚く散り、その姿を保てなくなる。

化身が消えると同時に私も地面に何度も身体を打ち倒れ伏せた。

なんて出力差。

やられた後は、動けない……!

 

「……っ!」

「ふん。そこで寝ていろ!」

 

白竜くんが去り際に私に吐き捨てる。

シャイニングドラゴンはまるで妨害などなかったかのように勢いを緩めず進撃していく。

身を起こせない私は小さくなっていくその背中を苦しい表情で睨みつけることしかできない。

ここまで来られたらもう、彼が進む先にいる私達の最後の砦に縋ることしか……!

 

「アリア……っ!」

「ナイスファイトだ。よくやった。少し休んでろ、シズク」

 

カッコイイことを言っているけれど、アリアの冷や汗が凄い。

きっと内心は凄く焦ってる。

シャイニングドラゴンを間近で見たその瞬間に驚愕した表情を浮かべ、その後白竜くんが接近するごとに焦燥した様子を見せていた。

そんな彼女の脳裏には1つの思考しかない。

それは。

 

「私の化身じゃ……勝てない!!」

 

シャイニングドラゴンを睨んでアリアは歯を食いしばり、そんな彼女の口から絶望を覚えるセリフが零れた。

私達の前で初めて弱音を吐いた。

しかも言い切った。

彼女ほどのプレイヤーが言うならばそれは直感ではなく事実だ。

それでも、白竜くんを迎え撃つように腰を少し落として構えるアリア。

彼女の前から子供達は既にはけている。

白竜くんが突き進む先の視界に遮る者はもういない。

ガラ空きのディフェンス。

でも、ゴールは無防備じゃない。

アリアがいる。

いつもならそう言える。

それだけ絶対的な強さと信頼が彼女にはあった。

今日はそんな彼女でも……。

 

「ようやくこの時が来た。とは言わせん!ポジションを間違えた事を後悔するといい!」

「……っ!!」

 

出し惜しみはできない!

最初からキックで化身出す!

 

「魔神 アガレス!!」

「素晴らしい化身だ。だが、叩き潰す!」

 

白竜くんが片手を掲げボールを浮遊させる。

そのままシャイニングドラゴンが咥えて、エネルギーが蓄積される。

間違いない、化身シュートの予兆……!

 

「……っ!クソ……!」

 

アリアも気づいてる。

あれを打たれたら止められない!

ゴールが決まる!

 

「砕け散れ!ゴールキーパーの貴様では役者不足だということを、格の違いを教えてやる……!」

「―――魔狼 アモン!!」

「……!?」

 

高く跳び、シャイニングドラゴンの口元へと向かっていた白竜くんが背後から聞こえた叫びに驚愕し、思わず二度振り返る。

度肝を抜かれたのは敵の彼だけではない。

 

「ミク……!!」

「俺のシャイニングドラゴンに倒されてこれほど早く立て直しただと……!」

 

白竜くんもアリアも瞠目する。

そんなことお構い無しにミクは白竜くんの背中から化身で仕掛けた。

アリアはその姿を見てハッとする。

 

「挟み撃ちだ、ミク!」

「了解!」

「くっ……!貴様達!」

 

シャイニング・ドラゴンを挟んでアモンとアガレスが同時にボールを奪いに行く。

白竜くんも急な事態に対応が遅れた。

飛びかかったアモンを即座に払い除けたのはいいものの、間髪入れずにアガレスがシャイニング・ドラゴンを叩いてその口から零れるものがあった。

アガレスもその後に叩き潰されたが、もう遅い。

ボールは転々と転がり、ラインを超えてホイップルが鳴る。

 

「うっ……!ぁ……!」

「ぐあ……っ!」

「余計なことを……!」

 

共に地面に叩きつけられたミクとアリア。

白竜くんは膝をつきボールの行方を睨んで顔を顰めながら悪態をついた。

3人の様子だけ見ればミクとアリアの負けだけれど、結果はこっちの勝ち。

ミクの機転が窮地を救った……!

 

「悪い、ミク。助かった!大丈夫か!?」

「う、うん。平気、だけど……」

 

すぐに顔だけ起こしたアリアが最初に感謝とミクの心配を口にする。

ミクも痛めた箇所を抑えながらなんとか身体を少し起こしたけど、どうにも煮え切らない表情。

考えてることはわかるわ。

 

「ふん」

「……!」

「……」

 

ミクとアリアを見下して、白竜くんはポジショニングへ向かう。

彼が移動したのを見届けてからミクはその背中を悔しい表情で見つめる。

 

「今回は不意打ちだったら上手くいったけど、再現性はないかも。次はこうはいかない」

「……!」

 

アリアが目を見開いた。

そして、彼女も白竜くんを遠目に見て呟く。

 

「……そうだな」

 

それは2人の敗北宣言だった。

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