松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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アンリミテッド・シャイニング篇⑫ 才能の使い道は1つじゃない

 

「馬鹿な!?あんなシュートが決まる……だと!?」

「くっ……!」

 

帆田くんが愕然として、白竜くんがゴールからミクへと視線を移す。

睨んでくる彼に、ミクは仲間に持て囃されてる中、気付いて鋭い目を返した。

白竜くんは更に歯を食いしばる。

ミクはそんな彼から私たちへと意識を戻す。

 

「ミク……貴女、本当に凄いわ。向こうの陣地で戦うと言ったことを有言実行するなんて」

「それだけじゃない。ゴールも決めた。素直に認めるぜ。今のところ、この試合のMVPはお前だ。ミク」

「うん。ありがとう。でも、まだ終わってない」

 

汗を拭うミクはまだ臨戦態勢。

私たちも真剣な顔で頷く。

問題は、ここから。

それは私もアリアもわかってる。

 

「おいおい。あのよく分かんねーシュート撃ち続けたらずっとこっちの優勢に持ってけるんじゃねえか?」

「それどころか勝っちゃうかも!」

「いや、それはないかな。多分もう二度と撃たせてくれないと思う」

「だな。あのアルティメットなんたらは」

「アルティメット・ランチャーね」

「名前はいいのよ。ていうかそのダサいの気に入ってるの?やめなさい、恥ずかしいから」

「えー!いいじゃん。決まったんだし、いかすでしょ?」

「……続けていいか?とにかくあのなんとかランチャーは隙が多すぎる。だろ?」

「えぇ。さっきは向こうがミクの超危険パワーシュートを警戒してたから距離を取ってくれたけど、最初からあれを撃つと分かっていれば詰めてくるわよ」

 

アルティメット・ランチャーの弱点は足を振り上げてからジャストミートに集中するまでの間、溜めがあること。

しかもパワーシュートじゃないなら向こうは接近する際に警戒する必要がない。

それにミクは器用じゃないから構えてから放つまでに狙いを定めるラグが発生する。

その時間に接近されたら終わり。

技はキャンセルされる。

 

「少なくともミクが1人で戦うならもう撃つ余裕はないわね」

「次は接近戦に持ち込まれるだろうからな。だが……1人で戦えば、の話だ」

 

アリアの言葉に私は彼女に視線だけ向ける。

彼女もその視線を待ってたかのように迎える。

 

「まだ混戦の中ならあの技も使える。だが……ここから先もミク1人に戦わせるのか?」

「……ごめんなさい。今はそれしか」

 

私は俯くことしかできない。

アリアも表情が暗くなる。

 

「私も人のことは言えない。まさかイップスになっちまうとは。こんなんじゃ役に立ちそうにない」

「アリア……」

 

視線を落とすアリアにかける言葉はない。

慰められる立場じゃないもの。

それにしても、アリアが不能になったのはキツイ。

現状今戦力と言えるのは実質ミクだけ。

 

「大丈夫」

「……!」

 

私の心を読んだようにミクが告げる。

私もアリアも彼女に注目した。

それを受けてミクは顔を上げて強く頷きを見せる。

 

「これまで、アリアはみんなを守ってきた。気負いすぎてた。だから、もうこれ以上頑張るべきじゃないんだよ」

「ミク……お前」

「ずっと思ってた。アリアは私達を守ってくれるけど、アリアのことは誰が守ってくれるんだろうって」

「……っ!」

「やっと言える。今まで力が足りなくて言えなかったこと。今も……頼りないかもしれないけど、アンリミテッド・シャイニングに対抗できるのが今、私だけなら。言うよ」

 

ミクは真剣な表情で決意を口にする。

 

「アリアが皆を守るなら、私はアリアを守る。それでやっとヴァルキリア全員が守られる健全な形なんだ」

「ミク、貴女……」

 

いつの間にこんなに頼れる子になったのかしら。

いえ、わかってる。

きっと彼女を強くしたのは……。

 

「アリア。私に戦い方を教えてくれてありがとね。今度は私がアリアを助ける!」

「ミク……」

 

宣言するミクにアリアは何も返せない。

縋るような目すら向けていた。

そして、俯いた。

アリア自身が1番わかってる。

ミクの言葉を有難いと思ってしまう自分が今、どれだけ弱ってるかを。

 

「ミク。何か対策はあるの?アルティメット・ランチャーは乱戦以外ではもう使えないわよ」

「正直ないけど……でも、さっきも言ったけど動きながら考えるつもり。私、思うんだ。私達ってまだまだできることあるんじゃないかなって」

「……?どういうこと?」

 

ミクの言ってることの真意が掴めなくて私は尋ねる。

彼女は少し考え込みながら口を開く。

 

「あー、説明難しいんだけど。まだ色々余地があるっていうかベストを尽くせてないと思うんだよね。今すぐ成長することはないけど、自分の能力を使って他にできることあるんじゃないかなって。才能の使い道は1つじゃないっていうかさ」

「……!」

 

私はまだピンと来てないけれど、アリアは違うみたい。

目を見開いて驚いた顔で頷いた。

 

「そうか。そういう発想か。考えてもみろ。今までミクがモノを考えながらプレイしてたことがあるか?」

「……!」

「いや、語弊があると思うんだけど。普段から何も考えてないみたいな言い方やめてくれない?シズクも急にピンと来たみたいな顔やめて」

「おい、うるさい」

「えぇ……」

「とにかく、そういうことだ。私達はこれまで役割分担をしすぎた。有能な奴が3人もいるのに勿体ない」

「そうね。ミクは今回普段しないことをしながらプレイして、新しい着想を得た。得意な私だけが発案すればいいと思っていたけれど」

「発想はそれぞれ違う。違う視点と感性を利用すれば思わぬ発想が生まれる」

「発想の系統という事ね。それと、ミクが言いたかったのは拡張性ね。確かに私達は才能を応用化してこなかった。1人1人が限定的な得意プレイに絞っていたことが裏目に出たのね」

 

ミクが何か言ってるけど一旦スルーしてアリアと意見を交わして発覚した。

私達は、これまで単純すぎたということが。

才能持ちが3人しかいないのに、それぞれが各々の仕事しか見てない。

こんな欠陥に気づかなかったなんて。

そうよ、3人とも全部やればいいのよ。

1人で考えるから詰まる。

1人で守るから潰れる。

でも、全員で負担すれば?

能力は足りないかもしれない。

けれど奇抜な意見が出るかもしれない。

何より個々の負担が減る。

1人でなんとかしようとするよりもずっと良い。

それに、ミクの言う通り私達は可能性を自ら狭めていた。

もっと自由にプレーしなければ、できることもできない。

できることに気付けない。

分担と拡張、これよ!

 

「"今すぐ成長することはないけど、自分の能力を使って他にできることはある"。"才能の使い道は1つじゃない"。良い言葉ね、気に入ったわ」

「おっ。マジ?やった。嬉しい」

「ミクのアルティメット・ランチャーを活かすためにも私もガンガン攻めるわ」

「私も……」

『……!』

 

アリアが呟き、私とミクが眼差しを向ける。

震える手。

恐る恐る握って、アリアは覚悟を決める。

 

「私も、試したい……っ。発想の転換。自分に出来ることの拡張。今一度、この力の使い方を考えたい。その結果、またゴールを守れるなら……!」

「アリア……」

「再戦させてくれ。また、ゴールを任せてくれ。今度こそあいつを止める!」

「本当にいいの?」

「あぁ。大丈夫だ、その結果倒れたとしても頼れる奴がいる」

 

アリアが口角を上げてミクに頷く。

ミクは向けられた信頼が嬉しくて、笑顔で頷き返したけれど……数秒置いて「ん?」と天を見上げる。

 

「ちょっと煽ってる?」

「めっちゃ煽ってる」

「あのさぁ……」

 

ミクがアリアを小突いてアリアが少し笑う。

その顔を見てミクは満足気に微笑んだ。

さぁ、方針は決まった。

 

「試して、守り切ろう!」

「えぇ」

「あぁ!」

 

口角を上げて頷く私と、拳を手のひらに打つアリア。

私達3人は敵を見る。

彼らもまた私達を睨み返していた。

 

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