ストライカーのアリアが稼働するラスト10分まであと50分。
それまで時間を稼ぐ。
今度は攻勢にも意欲的に力を入れるし、私も攻撃に参加する。
「シズクって個人プレイできるの?」
「あら。見くびってもらっては困るわね。帝国戦で言ったでしょう。私の一番の得意は」
「ドリブル!そっか、言ってたね」
「えぇ。そうよ」
覚えてたようね。
寧ろ私は本来個人技の選手。
ゲームメイクは親戚に教えてもらっただけよ。
「くだらん」
「……!」
私とミクが所定の位置につくと目の前の白竜は早速吐き捨てた。
そして、私達を睨む。
「思い上がるな。お前達の技術など通用せん。あんなマグレは二度続かん」
「あら。こっちもさっきまでと同じようにはいかないわよ」
私と白竜くんが対峙する。
同時に、ホイッスルが鳴り、白竜くんは飛び出した!
「不意を突いた程度でいい気になるな!」
「魔狼アモン!」
「……!」
聖獣シャイニング・ドラゴンと共に進軍する白竜くんを進行ルートを、ミクが化身を出して阻む。
「邪魔だ!」
「じゃあどかせてみろ!」
叫び合う2人がぶつかる。
シャイニング・ドラゴンとアモンが衝突した際に発生する余波が人工芝を揺らした。
「お前たちを叩きのめしてオイゲンを引きずり出す!お前たちに用はない!」
「つれないわね。残念ながら、もう少し付き合ってもらうわよ」
「なっ……」
白竜くんが呆気にとられる。
その反応も当然。
ミクがパワーで踏ん張り、白竜くんを足止めしている隙に。
私は化身・虚無魔神ベリアルを出現させて横入りした。
突如割り込んできた足が2人で維持していたボールをカットして、右サイドへと転々と跳ねていく。
そして、そこは彼女のランニングルート。
「いきなり指示が飛んできたと思ったらマジでボール来やがったぜ……!」
ボールを拾ったのはサエ。
予め王者のタクトで指令を出し、彼女はその通りにポジショニングと駆け込みをしてくれた。
事前に動いていたからこのフィールドで誰よりも早く反応でき、サエの足でも掻っ攫えた。
この光景を見て驚いているのは私とミク以外の全員。
「この期に及んで雑魚を使うだと!?」
「今だからこそよ。だって、意識してなかったでしょう?」
白竜くんの発言が証明している。
取るに足らない相手だと思ってノーマークだから、出し抜ける。
ここまで私達3人以外が試合に関わってこなかったことがこの効果を生み出したのよ。
「トラップしたらすぐパスだろ?ほら。これがご注文の品だぜ、大将……!」
「あら、どうも」
サエはアンリミテッド・シャイニングのオフェンス陣の間を縫う、正確で速いワン版のパスを通す。
その先に高速で走り込み、足を伸ばして受け取るのは私。
一気にディフェンスの前まで飛び出た。
「馬鹿な!?なんであんな奴がこんなパスを……!」
まだ彼らはサエやアスカの特技を目撃していない。
彼女達は得意能力のピックすれば、その項目だけはAランク級。
だから、取るに足らない相手だと思っていた中で、突如目撃すれば驚くのも無理はない。
「エンペラーナイト」
私は化身ドリブル技でディフェンスを突破。
そして。
「来い……!」
「ティアードロップ!」
キーパーの蛇野くんと1対1。
私の必殺シュート。
当然、これだけでは彼に勝てない。
だから。
「ウルフボルケイノ!」
「シュートチェイン……!」
ミクが駆け込んできてシュートにシュートを重ねる。
計算上はこれで決まる!
「それがお前たちの必殺技か。程度が低い!」
「……!」
「なっ……貴方、いつの間に……!?」
瞬きの間に私とミクのチェインシュートの前に白竜くんが立ち塞がった。
ミクはそれを見て目を見開くと、ウルフボルケイノを放ったあとの体制から着地したと同時に自陣に全力で戻る。
けれど、間に合わないよ!
「必殺技とはこういうモノのことを言うんだ!はぁ……!」
「……!」
彼が腕を振るうと私達のチェインシュートは白と黄金のハリケーンに巻き込まれ、彼の胸元へと導かれた。
さらに彼は飛び上がり、風が纏わりついたボールも彼を追う。
ボールは足元へ。
彼が放つシュートは……!
「はぁぁぁ……!ホワイト……っ!ハリケーンッッッ!!」
「……っ!ミク!」
その技を視認したその時から、私は王者のタクトで指示を飛ばす。
皆は避難させ、私とミクはシュートの軌道上へ。
これは超ロングシュート。
私とミクのブロックは十分間に合うはず。
遠距離で威力が落ちることも考えれば、私とミクのクッションを挟むのも踏まえてアリアはセーブできる計算よ……!
「来るわよ!虚無まじ……っ!?きゃあっ!?」
「シズク!」
「ふん。お前達に止められるものか!」
私は化身を出すのも間に合わず、シュートに巻き込まれて吹き飛んだ。
速い上に威力が高すぎる!
こんなものをブロックするなんて現実的じゃないわ……!
ミクが叫ぶのが聞こえるけど私は宙に舞い、暴風に振り回されている。
地面に叩きつけられるまでかなりかかるでしょう。
その間にもハリケーンの脅威はゴールへと向かっていく。
「……っ!」
「長門!お前にも止められはせん!砕け散れッ!!」
ミクが正面でホワイト・ハリケーンを捉えて、待ち構える。
それを見た白竜くんが吠えるが、ミクは強ばるだけ。
私も彼女がどうするつもりかはわからない。
荒れ狂うハリケーンの中で、両腕で顔を庇いながらその隙間で彼女を覗き込む。
あのシュートはブロックが間に合わない。
技を出している隙も、化身を出す余裕もない。
ミクときっと私と同じように……それしか未来はない!!
「ミク……っ!」
「大丈夫!怖くない。寧ろ、白竜くんは私の才能を怖がってたんだ。白竜くん程の人が恐るほどの力が私にあるなら……!」
「……!何をする気だ!?」
アリアが彼女の背中に疑念を向けるのと私の気持ちは全く同じ。
あの子は何かしようとしている。
嫌な覚悟を決めてる。
私もアリアも心配しかしない。
でも、私達は介入できない。
やらせるしかない、彼女の考える通りに。
「この技を何度も見てきた。私は知ってる。怖くない。怖く、ないんだ!」
「ミク……!」
私は叫ぶ。
明らかに強がってる。
避難してホワイト・ハリケーンがフィールドを呑み込んでいくのを皆が見つめている。
その先にいるミクに不安の目線を向ける。
皆、怖い。
彼女を失うのが。
本人もきっと怖がってる。
じゃなきゃあんなに口にしない。
それでも、彼女は立ち向かおうとしている。
私達、全員の為に……!
「かかってこい。ハリケーン!」
「……っ!奴は、まさか!?」
ミクの思惑に気づいて白竜くんが正気を疑う。
彼すらも動揺するミクの考え。
ミクは、身体を大きく開き……ホワイト・ハリケーンをその胸に受け止めた!?
「なっ……!ミク……!」
「うわあああああ……!!」
「馬鹿!嘘だろ……!」
「何っ!?」
私が心配し。
ミクが白目を剥きながら唸る。
それでもホワイト・ハリケーンはせき止められている。
ミクの思わぬ行動に動揺するアリア。
ホワイト・ハリケーンを受け止められたことに驚く白竜くん。
ミクは耐え続ける。
「ぬ、ぬおおおお!ああああ……っ!!」
ミクがかかとを浮かせると一気に押し込まれる。
けど、すぐに持ちこたえてもう一度足を地につかせて踏ん張ると、シュートも留まる。
その代わり、周囲の地盤は変わる。
その光景を前に、アンリミテッド・シャイニングの面々は……。
「は、白竜の……」
「ホワイト・ハリケーンを止めてやがる……。は、初めてそんな奴を見たぜ……」
「あいつ……っ!やっぱり化け物だ!」
ミクの異常性を訴えるのは彼女と訓練を共にした青銅くん。
彼は後退りする程に慄いている。
「ぬ、ぬああああああ……っ!!うおあああああ……っ!!」
「ば、馬鹿な……」
白竜くんが愕然として着地したと同時に膝から崩れ落ちる。
彼のその反応こそが解答。
そして、視覚的にもホワイト・ハリケーンの威力は見る見るうちに削られていっている。
荒れ狂い、唸り、地面を何度も抉る暴風砲弾が。
やがて……微風となる。
「……」
「ほ、ほんとに止めやがった……あの威力のシュートを……」
嵐が止み、ミクがトラップしたボールはポトリと落ちた。
彼女は立ち尽くし無言でその存在感を示す。
誰もが衝撃を受けて気づかなかった。
けれど。
「……っ!……ミク?」
地面に叩きつけられた私が苦しみながらもなんとか身を起こし、ミクの異変に目を向ける。
それでやっと皆が察知した。
ミクは―――気絶している!
「あいつ……!」
『今だ!』
「俺が取る!」
「……っ!クソ!ミク、起きろ!!」
静寂から一転。
アンリミテッド・シャイニングがフリーになったボールを求めて動き出す。
その中で飛び出すのは白竜くん。
アリアも動こうとしてやめる。
彼女が飛び出せばゴールが空く。
迂闊には動けない。
だから、呼びかけるしかない。
「ミク!」
「貰った!」
「……!」
叫ぶアリア。
迫る白竜くん。
目前まで接近したその時。
ミクの眼は開花する。
「牙狼咆哮!」
「なに!」
突如現れた化身・魔狼アモン。
見上げて驚愕する白竜くん。
ミクは足元をゴールに向かって化身技シュートで放った。
あの子……!
「ミクのやつ、気絶したフリだったのか!」
「ミク……!白竜くんをギリギリまで寄せ付けて……!」
「くっ!小癪な……!」
超ロングシュートのお返し。
いえ、これは!
「威力が弱まった!パスね!」
私が気づいてすぐに身を起こし、パスの着地点に到達する。
ボールをトラップして、ディフェンス前。
「エレクトロライン!」
「なっ……!」
私はドリブル技でディフェンスを再び突破。
またしてもキーパーと対決。
今度は白竜くんは間に合わない。
今度こそ1対1。
蛇野くんとの真っ向勝負なら勝機はある!
「キングスラン―――っ!」
ホイッスルが鳴った。
私は必殺技を中断する。
これで……前半は終了。
私達は、1点を損して、ミクの頑張りを得点に繋げられなかった。