松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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アンリミテッド・シャイニング篇⑭ 完全習得キーパー

 

後半開始。

ヴァルキリアの攻撃。

 

「ミク!」

「あ、ごめ……っ!」

「……!」

 

初手のパスでミクがトラップミスした。

ボールは浮いて、当然それは隙となり見逃す彼ではない。

 

「ふん」

「しまった……!」

 

ミクが気づいた頃にはその背中を振り返るしかない。

ボールを拾い、爆進した白竜くんは化身を出現させ、ヴァルキリア陣内へと切り込む。

皆には最初から避難指示を出してる。

つまり、今彼の前を遮るものはない。

あるのは彼女への一本道……!

 

「思い知るがいい、格の違いを!キーパーのお前にトドメを刺してやる!」

「来るわよ!アリア!」

「……!」

 

アリアが構える。

恐らく白竜くんはアリアでも止められなかったあのシュート、"ホワイト・ブレス"を放つ。

アリアのメンタルはまだ完全には回復していない。

あれを止めなければ、本当にアリアはもうゴールを守れなくなる。

でも、私じゃ間に合わない!

 

「アリア……!」

「大丈夫さ。ミクが言ってただろ。私も自分で考えればいいんだ。私もミクに従う。あいつが示してくれた……道を走る!」

「意気込んでもどうにもならないんだよ!」

『……!』

 

白竜くんが白き竜と共に飛び上がる。

やがて、竜の咆哮が轟いた。

 

「くらいがいい!ホワイト・ブレス……ッ!!」

「アリア……!」

 

本日二度目。

またしてもアリアに襲い来る白竜くんの化身技。

大きすぎる力を前にして、アリアは。

 

「あの白い竜の息吹を止めるには……止めるには……止め、る……には?」

 

怖気付く様子は全くない。

それどころかどう止めるか思考を巡らせた。

その末に、"逆転の発想"に至る。

 

「……そうだ!ミクも得意のパワーシュートじゃなくて"脱力"した。私も逆のことをすればいいのか!発想の転換、だよな!ミク!」

 

アリアは閃いて顔を上げる。

 

「私は止めることに囚われすぎた!止めるだけが、ゴールを守る方法じゃない!完全に理解したぜ、ゴールキーパー!!」

 

口角を上げるアリア。

彼女に先程までの喪失感はない。

いつものアリア。

自信に満ちた……私達の最強プレイヤー!!

 

「このシュートは止められない……だったら!止められねえなら止めなきゃいい!!お前のシュートを後押しする!これでテメェは速度超過の脱線事故だろうが!!」

 

アリアは魔神アガレスを出現させて、ホワイト・ブレスに……"シュートチェイン"したッッッ!!!!

 

「なんだとっ!?」

『……!?』

 

白竜くんだけじゃない。

誰もが言葉を失う。

そんな発想普通は思いつかない。

ミクだけが1人、驚きながらも満足気に深く頷いていた。

 

「外れろ!オラッ!!」

「俺のホワイト・ブレスが……!!」

 

異次元に強力な化身技シュート。

その攻略法。

アリアは難攻不落、最強のホワイト・ブレスをアシストしてゴールの外へ追いやった。

強力な暴風弾がゴールの上を通過し、大きく照準が逸れて得点能力を失う。

その起動を見届けたアリアがフィールドには背中を向けて、低姿勢で着地しながらガッツポーズを振り下ろす。

 

「よっしゃぁっ!!これも立派なセーブだろ!!」

「ば、馬鹿な……」

 

アリアとは対照的にシュートの行方を眺めて立ち尽くす白竜くん。

でも、すぐにアリアの視線を感じてハッと彼女と睨み合う。

 

「くっ……!」

「ハッ。どうだ。まだゴールキーパーの私は死んじゃいないぜ」

 

表情を曇らせる白竜くん。

振り向きざまに指をさし、不敵に笑うアリア。

白竜くんからすれば、アリアを前線に引きずり出したかった中で、ゴールキーパーの継続が決まった。

不本意でしかないでしょう。

けれど。

次の瞬間、彼は、口元を緩める。

アリアは目を見開いた。

 

「フッ。素晴らしい!それでこそ俺のライバルに相応しい。次も楽しませてくれよ?」

「……あいつ」

 

負けたのに満足そうに去っていく白竜くんの背中を見つめて、アリアは違和感を抱く。

気付いたようね。

恐らく彼は……試合前からあまり精神状態が良くない。

たまに幻覚も見えているように思う。

今のもアリアに向かって言ってるようで、別の誰かをアリアに思いかぶせて告げていた。

"ライバル"という言葉を口にすることが多いのもそれが原因でしょう。

そもそもアリアに目をつけたのも多分目的と因縁が逆。

彼は……"代わり"を求めてさまよった果てに、アリアをその瞳に焼き付けてしまった。

まあ、私達には関係の無い話ね。

傍迷惑でしかないもの。

 

「さすがよ、アリア」

「あぁ。だが、この大金星はミクのモンだぜ。ここからは私の手で星を取りに行く」

「頼りになるわね」

 

私は彼女に微笑む。

アリアは二カッと歯を見せて明るい表情を見せてくれた。

私たちは、拳を作り手首を合わせた。

完全復活ね!

 

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