後半開始。
ヴァルキリアの攻撃。
「ミク!」
「あ、ごめ……っ!」
「……!」
初手のパスでミクがトラップミスした。
ボールは浮いて、当然それは隙となり見逃す彼ではない。
「ふん」
「しまった……!」
ミクが気づいた頃にはその背中を振り返るしかない。
ボールを拾い、爆進した白竜くんは化身を出現させ、ヴァルキリア陣内へと切り込む。
皆には最初から避難指示を出してる。
つまり、今彼の前を遮るものはない。
あるのは彼女への一本道……!
「思い知るがいい、格の違いを!キーパーのお前にトドメを刺してやる!」
「来るわよ!アリア!」
「……!」
アリアが構える。
恐らく白竜くんはアリアでも止められなかったあのシュート、"ホワイト・ブレス"を放つ。
アリアのメンタルはまだ完全には回復していない。
あれを止めなければ、本当にアリアはもうゴールを守れなくなる。
でも、私じゃ間に合わない!
「アリア……!」
「大丈夫さ。ミクが言ってただろ。私も自分で考えればいいんだ。私もミクに従う。あいつが示してくれた……道を走る!」
「意気込んでもどうにもならないんだよ!」
『……!』
白竜くんが白き竜と共に飛び上がる。
やがて、竜の咆哮が轟いた。
「くらいがいい!ホワイト・ブレス……ッ!!」
「アリア……!」
本日二度目。
またしてもアリアに襲い来る白竜くんの化身技。
大きすぎる力を前にして、アリアは。
「あの白い竜の息吹を止めるには……止めるには……止め、る……には?」
怖気付く様子は全くない。
それどころかどう止めるか思考を巡らせた。
その末に、"逆転の発想"に至る。
「……そうだ!ミクも得意のパワーシュートじゃなくて"脱力"した。私も逆のことをすればいいのか!発想の転換、だよな!ミク!」
アリアは閃いて顔を上げる。
「私は止めることに囚われすぎた!止めるだけが、ゴールを守る方法じゃない!完全に理解したぜ、ゴールキーパー!!」
口角を上げるアリア。
彼女に先程までの喪失感はない。
いつものアリア。
自信に満ちた……私達の最強プレイヤー!!
「このシュートは止められない……だったら!止められねえなら止めなきゃいい!!お前のシュートを後押しする!これでテメェは速度超過の脱線事故だろうが!!」
アリアは魔神アガレスを出現させて、ホワイト・ブレスに……"シュートチェイン"したッッッ!!!!
「なんだとっ!?」
『……!?』
白竜くんだけじゃない。
誰もが言葉を失う。
そんな発想普通は思いつかない。
ミクだけが1人、驚きながらも満足気に深く頷いていた。
「外れろ!オラッ!!」
「俺のホワイト・ブレスが……!!」
異次元に強力な化身技シュート。
その攻略法。
アリアは難攻不落、最強のホワイト・ブレスをアシストしてゴールの外へ追いやった。
強力な暴風弾がゴールの上を通過し、大きく照準が逸れて得点能力を失う。
その起動を見届けたアリアがフィールドには背中を向けて、低姿勢で着地しながらガッツポーズを振り下ろす。
「よっしゃぁっ!!これも立派なセーブだろ!!」
「ば、馬鹿な……」
アリアとは対照的にシュートの行方を眺めて立ち尽くす白竜くん。
でも、すぐにアリアの視線を感じてハッと彼女と睨み合う。
「くっ……!」
「ハッ。どうだ。まだゴールキーパーの私は死んじゃいないぜ」
表情を曇らせる白竜くん。
振り向きざまに指をさし、不敵に笑うアリア。
白竜くんからすれば、アリアを前線に引きずり出したかった中で、ゴールキーパーの継続が決まった。
不本意でしかないでしょう。
けれど。
次の瞬間、彼は、口元を緩める。
アリアは目を見開いた。
「フッ。素晴らしい!それでこそ俺のライバルに相応しい。次も楽しませてくれよ?」
「……あいつ」
負けたのに満足そうに去っていく白竜くんの背中を見つめて、アリアは違和感を抱く。
気付いたようね。
恐らく彼は……試合前からあまり精神状態が良くない。
たまに幻覚も見えているように思う。
今のもアリアに向かって言ってるようで、別の誰かをアリアに思いかぶせて告げていた。
"ライバル"という言葉を口にすることが多いのもそれが原因でしょう。
そもそもアリアに目をつけたのも多分目的と因縁が逆。
彼は……"代わり"を求めてさまよった果てに、アリアをその瞳に焼き付けてしまった。
まあ、私達には関係の無い話ね。
傍迷惑でしかないもの。
「さすがよ、アリア」
「あぁ。だが、この大金星はミクのモンだぜ。ここからは私の手で星を取りに行く」
「頼りになるわね」
私は彼女に微笑む。
アリアは二カッと歯を見せて明るい表情を見せてくれた。
私たちは、拳を作り手首を合わせた。
完全復活ね!