白竜くんが最後に触ったからヴァルキリアボールで再開される。
「アリア……!」
「……」
私がアリアにパスを出すと、彼女は無言で頷いて受け取った。
既に彼女の前には白竜くんが立ち塞がっている。
「さぁ、第2ラウンドといくか」
「面白い!」
もはやこの試合は2人の独壇場。
レベルが高すぎて他は介入できない。
アリアがドリブルを始めると白竜くんはプレスをかける。
「……っ!」
「どうした?随分苦しそうじゃないか」
「なんだと……!」
アリアから中々ボールを奪えない白竜くん。
2人の攻防は周囲アリアの優勢で、アリアはボールキープしている。
彼女の指摘通り、アリアの動きについていく白竜くんの表情はどこか苦悶。
おそらく彼は……。
「お前は散々私の仲間を馬鹿にしていたが、そんな奴に体力を奪われた気分はどうだ?」
「……っ!黙れ!」
「ハッ。感情に流されてプレイが荒いぜ」
忍耐がなく突っ込んだ白竜くんの隙を利用してアリアが抜いた!
アリアは一気に加速して白竜くんも高速移動で追いかける。
けれど、彼の瞬発力は明らかに前半の威力に比べてその陰りが見える。
現にアリアに追いつけない!
「くっ……!ありえん、この俺が!」
「残念だったな。体力を使い切ったお前じゃ自慢のスピードもご破算だぜ。今は私の方が速い!」
アリアが一気にディフェンスラインへ!
DFがカバーの為に駆けて、白竜くんが後を追う。
アリアはシュート体勢。
ただ、化身シュートもフェアリーショットも技を放ってる間に白竜くんが回り込める。
彼のシュートブロックを受けることになる。
いくら体力差があっても白竜くんのブロックとDFのブロック、蛇野くんの技を前にしたらアリアのシュートでも……!
「アリア!」
「心配はいらない。王者のタクトもいらない。私が持ってる技は何もパワーシュートだけじゃない」
「えっ……?」
「……!仲間も知らんシュートだとっ!」
私と白竜くんの驚愕を受けても、それを流し、アリアは見たことのないシュート体勢に入った。
それは陸上のスターティングポジション。
その構えを取る彼女に"何か"が降ってきて、憑依する。
私には妖精に見えた。
ただの妖精じゃない。
まるで戦神のような完全武装した沢山の剣を纏し、クイーン。
彼女は地を蹴りスタートを切ると同時に、自身の進行方向へ低空飛行でボールを山なりに蹴り飛ばす。
「なに!?」
「あれは……!」
「これが私のスピードシュート!強い奴ってのは、例え仲間相手でも手の内は晒さないもんだ……!」
ボールがゴール前に落ちようとしている。
ディフェンスラインより内側。
ディフェンスの反応すらも間に合わない。
そこに一直線に、閃光のように誰も彼も置き去りにして斬り込む妖精。
―――招来。
―――"妖精女王"。
「インビテーション・ティターニア……!」
速い。
いえ、速すぎる……!
白竜くんに追い付けさせない高速弾丸。
鋭くスピンのかかったボールはまさに女王剣士の特攻。
剣の先を敵へ向け、突撃する戦士。
アンリミテッド・シャイニングの誰もがブロックに間に合わず、目の前を目に止まらぬ速さで横切った彼女にDFが瞠目した。
インビテーション・ティターニアはゴールへと向かう……どころか、気づいたらネットに"突き刺さっていた"。
「なっ……ぁ……」
「馬鹿な!」
蛇野くんは動けなかった。
アリアのシュートが速すぎて反応できなかったのね。
ゴールは決まり、私達ヴァルキリアサイドも私含め驚きで動揺を隠せない。
私達はまだ歓喜にまで到れてない。
感情が追いつかない。
彼女は私達仲間ですら置き去りにしてしまった。
フィールド全体が驚愕で言葉に詰まる中、1人だけがゴールに背を向けて、歩き出す。
「まずは1点、取り返したぜ」
不敵に口角を上げるアリア。
彼女がスコアを指さすとその数値が変動した。
ヴァルキリア 2 - 2 アンリミテッド・シャイニング