「ご、ごめん。アリア……。私、足引っ張っちゃって」
「……!」
ポジションに戻る際に申し訳なさそうなアスカに声をかけられたアリア。
アリアはそんな仲間の気持ち、気にしている様子に気付くと拳を作って彼女の胸に預ける。
「気にするな。いい反応だ。成長したらまた頼むぜ」
「……っ!うん!」
アスカに笑顔が見えるようになる。
アリアは不敵に口角を上げ、頷いた。
彼女たちはポジションに散る。
アリアがフォワードに戻ると、相手のエースは背を向けている。
「同点だと!?ありえん、こんなことは断じて!」
「そうでもないさ。まだまだいくぜ?」
「……っ」
スコアボードを見上げてわなわなと震える白竜くん。
怒りや悲しみよりも動揺というのが何とも彼らしいわね。
さしずめ、こんな結果有り得ないといったような思考回路かしら。
そんな彼の背中に声をかけたのはアリア。
彼はその声に振り返って、不敵な笑みを浮かべるアリアを目にし、表情を歪める。
次はアンリミテッド・シャイニングからのスタート。
でも、もう展開は読めるわね。
「俺達が負けるはずがない!俺達は究極なんだ!」
「おいおい。まだ負けてないだろ。追いつかれただけだ」
「……っ!」
白竜くんが力に身を任せて私達の陣地を強行突破しようと飛び出してきたものの、その行く手をアリアが阻んで即効でブレーキをかけることになる。
白竜くんは左右に揺れ、アリアを抜こうとするが彼女に隙はない。
「くっ……!」と唇を噛むのは白竜くん。
そんな彼にアリアは語りかける。
「そんなに負けるのが怖いか?」
「黙れ!」
「いや、わかるさ。怖いよな。安泰だと思っていた地位がそうじゃなかったと思い知るのは」
アリアの言葉に白竜くんは瞠目する。
彼女は知っている。
ついこの間まで白竜くんと同じ立場だったから。
そんな彼女が抱いたあの頃の感情が、今になって暴露される。
アリア……。
「そこに至るまでの過程を考えると割に合わないくらい脆いよな。ほんと、信じられないさ。奴らが強いてきた癖に、捨てるのは一瞬だ」
「オイゲン……」
「共感はする。だが、同情はしない。お前は自らその自尊心にかまけて私に勝負をしかけてきたんだ。だったらこれは自己責任ってやつじゃないか?」
アリアの言葉が彼に突き刺さっていく。
彼はどんどん苦悶の表情を浮べる。
「俺はお前達とは格が違う。究極なんだ……!」
「そうか。なら究極ってのは2番目って意味か。初めて知ったぜ!」
「なっ……」
アリアが白竜くんからボールを奪って抜いた!
そのまま切り込んでいく。
「シズク!」
「……!」
アリアの呼び掛けに彼女と併走していた私は頷いた。
彼女のだすパスを受け取る。
私は顔を上げ、全体を見渡した。
そして、ゴール前へ向かって走るミクを視認した。
ゴール前へパスを出せば、ミクに繋がる!
「ミク!」
「よし!」
ミクがパスの落下地点に駆け込む。
けれど、私の視界の端に白い残像が映る。
「行かせるものか!」
「お前がな」
パスカットを狙ったのは白竜くん。
しかし、彼が加速した先を回り込んでアリアがその道を阻む。
彼は急ブレーキをかけて表情を歪めた。
「どこまでも俺の邪魔をする気か!」
「ご名答。そいつが私の仕事なんでね!」
白竜くんはアリアが止めてくれている。
今なら彼の妨害は加わらない。
ミク!
「決める!アルティメット・ランチャー……!」
「サーペントファング!ぬおぉぉぉぉぉ……ぉぉぉおお!?」
決まった!
キーパーの蛇野くんはまたしてもミクのアルティメット・ランチャーのスピンを止められなかった。
ミクのシュートはゴールへ突き刺ささり、これで……!
ヴァルキリア 3 - 2 アンリミテッド・シャイニング
「逆転……!こんな低ランクシードを集めた弱小チームが、俺たち究極のアンリミテッド・シャイニングに逆転だと!?」
白竜くんがまたしても愕然とする。
しかし、彼はすぐにその感情を怒りに変換して矛先を私達のゴールへ向けた。
つまり次のホイッスルが鳴ってからの彼らの攻撃も、予想通りの始まり方。
「認められないんだよ!お前達が俺達に勝つことなんざ。俺達は究極なんだ……!!」
「シャイニングドラゴン……!」
「ラス1か。ここで止めれば終わりだぞ。シズク!」
「……えぇ。わかってるわ」
聖獣シャイニング・ドラゴンを出現させて強行突破を選んだ白竜くん。
どこまでも脳筋ね。
でも、こっちも対策は練ってある。
アリアの叫びに私も頷く。
彼が化身を使えるのはこの1回が最後。
ならば、こっちも出し惜しみする必要はないわ……!
「いくわよ!」
『おう!』
「……!」
白竜くんの前に私達3人は躍り出て、彼は目を見開く。
もう大方全員予想はつくでしょう。
彼の化身を止めるのに、最後は案をこねくり回す必要はない。
ミクの頑張りは無駄にしない。
今この瞬間に繋ぐためにある!
さぁ、3人同時に化身を出すわよ!!
「―――――魔狼! アモン!!」
「虚無 ―――魔神 ベリアル」
「―――――魔神 アガレス!」
「くっ……!」
「シャイニングドラゴンが……!」
「止められた!」
三体の化身でシャイニングドラゴンの突進を受け止めた。
私達は力んでボールを奪いに行く。
すると。
「ならば!」
「……っ!来るわよ!!」
私達の勢いにボールごと押し戻された彼は、ボールをシャイニングドラゴンに咥えさせて飛び上がった。
もうこうなったら彼が何をするつもりか誰でも予測できる。
その予想通り……!
「くらうがいい!」
「くらわねえよ」
ホワイトブレスキャンセル!!
白竜くんが空中で横飛びになるのとは逆に身体を倒し、アリアはシュートが放たれる前に足を振り切った。
先にアリアがシュートを放ち、蹴りの体勢だった白竜くんの足にボールが当たって上に弾かれる。
ホワイトブレスは不発。
「小癪な!」
「ふん。ちんたら撃ってる方が悪いんだろ」
「ならば!!」
「……!」
いがみ合いながら両者、重力に従い地上に降り立つ。
だが、すぐに白竜くんは再び空中へ飛び立った。
まだボールは上空にある。
白竜くんが再度地を蹴った頃には化身は自動的に消えた。
あの消え方は引っ込めたのではなく、おそらく時間切れ。
白竜くんの化身パワーは底を尽きた。
そんな彼が次にやりそうなことと言えば……!
「化身など使えなくとも、俺は究極なんだ……!お前達の化身など、俺のホワイト・ハリケーンで吹き飛ばしてくれる!」
「やはりそう来たわね。貴方、やることがワンパターンなのよ。これまではそれが通用したかもしれないけれど、今回はそうはいかないわよ……!」
空に巨大なタイフーンが発生し、白竜くんが胸の前に風を纏ったボールを集約させ、神秘的な光を放つ。
彼はそのまま弾丸を蹴る。
「ホワイトッッッ!!ハリケーーーーーーーーーーーン……ッ!!」
「そっちが台風なら、こっちは雷雲よ!!」
「なに!?」
ホワイト・ハリケーンの弾道の前に立つのは化身を引っ込めた私だけ。
ミクは既にアモンの形を保てずに、片膝と片手をついて肩で息をして項垂れている。
彼女はもう十分に働いた。
ここからは私が身を張る番よ……!
「シズク!お前まさか……!」
「ゴタゴタ言ってないで走りなさい!貴方の進むべき道はどこ!?役目は何!?求めれられている仕事を果たしなさい!!」
「……っ!あぁ。わかった!」
アリアがこの場を私に任せてゴールへ向かって駆けていく。
白竜くんはその光景を見て再度驚く。
おっと。
こっちも見世物あるわよ!
着地してすぐ彼女を追いかけるか悩む前にちょっくら見ていきなさいよ!!
「来い、落雷」
「なっ……!?」
白竜くんが発生させた台風から雷が一直線に私に向かって落ちてきた。
私は背中を雷に打たれた。
けれど、ダメージはない。
その雷が私の背中から引きずり出す。
雷魔神を。
「私には2つ人格があり、それぞれの人格にそれぞれの化身を持つ。これが、私の二体目の化身―――」
私は青い稲妻が体内から排出し、目も青い光を宿す中。
彼の名を告げる。
「雷魔神 バアルよ」
「1人の人間に、2体目の化身だと……!?」
さすがのゴッドエデン最強様もお初にお目にかかる現象のようね。
私は口角を上げて、白い弾丸を迎え撃つ。
「雷切り!」
荒れ狂う暴風は雷撃を纏って中和された。
ボールの勢いは完全に止まり、私はそのまま2段階シュートを放つ。
「必殺技とはこうやって使うのよ。雷切り!」
「シュートをシュートで撃ち返した、俺のホワイト・ハリケーンだぞ……!?」
驚愕する彼は横切った青い閃光を目で追って振り返った。
彼が見てないことをいいことに私は鼻を鳴らした。
さぁ、カウンターといきましょうか。