これが私たちのカウンター。
ここまでたった1人にやられてきた。
その白竜くんを完封させてのやり返し。
きっとこの奇襲にアンリミテッド・シャイニングは動揺で反応できない。
「よし!」
ミクがこっちを向いた姿勢で、最後の力を振り絞ってボールを受け取る。
彼女が振り返りドリブルを仕掛けようとすると。
背後からとてつもない威圧感を察知した。
「……っ!白竜くん!」
「あのふざけたシュートは撃たせん!」
彼も最後の力を振り絞ってミクの妨害をしにきた。
けど、彼は気付いてない。
ミクにもうシュートを撃つ余力は残ってない。
彼女が選択するのはパス。
それも、彼の背後にいる―――これまた気づいてない彼女へのパス。
ミクがボールを蹴ってきて、白竜くんはまさかと気付く。
「……っ!?しまっ―――」
「インビテーション」
背後に目の光が残像残す人影。
白竜くんが察知して振り返った頃には遅い。
ミクの前に回り込むのは間に合わなかった。
そもそも彼女は進行よりもパスを選んだ。
しかしそのパスは白竜くんの進行ルート。
それをラッキーとは思わずに、白竜くんはそこで勘づいた。
アリアは彼と併走していた。
白竜くんの死角にいたから、ミクがアクションを起こすまで知らなかったのね。
それに白竜くんは疲弊している。
視野が狭くなってても仕方ない。
そして、ミクにパスの指示を出しているのは私。
この試合を通して私が無意味な指示を出さないのは白竜くんも分かってる。
だから、ミクのパスに意味があると瞬時に判断できた。
でも、判断できた頃には遅い。
振り返った頃には、アリアは足を伸ばしてボールに先に触れ、前へ山なりに飛ばす。
そして。
「ティターニアッッッ!!」
一気に加速して競走から飛び出し、放たれるアリアの高速弾丸。
それは無情にも。
「サーペント……っ!!ダメだ、間に合わん!すまん、白竜!!」
「……っ……ぁ……!!」
空いた口が塞がらない、汗だくの白竜くん。
手を伸ばすも掴むのは空虚。
アリアはゴールに背を向けた。
得点が入る。
ヴァルキリア 4 - 2 アンリミテッド・シャイニング
次の攻撃はアンリミテッド・シャイニングから。
でも……
「……っ。……っ!くっ……!」
「ダメだ!白竜がバテてる!」
「白竜はガス欠だ!アタッカーを変えるんだ。帆田、青銅!」
「わかってる!」
明らかに試合についていけてない白竜くん。
その様子を目撃した帆田くん。
蛇野くんが指示を飛ばし、帆田くんと青銅くんがパスを駆使してボールを前線へ運んでいく方向でシフトした。
けど、それじゃ甘い。
彼らは失念している。
「化身で突破する!精鋭兵 ポーン……!」
「いや、お前じゃ役者不足だぜ」
「なっ……!お前は、白竜のマークをしていたはすじゃ……!」
青銅くんのドリブルを阻止しようと彼のカバーに入ったのはアリア。
そう、白竜くんがバテたことで彼女が彼に付きっきりになる必要がなくなった。
つまりアリアはフリーの状態。
こっちはミクがもう化身を出せないけど、問題ない。
アリアはまだ化身を使える。
普通の化身使い1人が相手なら……!
「魔神 アガレス!」
「しまった……!」
アリアが青銅くんからボールを奪った。
これで私もアリアも化身を使えるのはあと1回。
青銅くんはあと2~3回は使えるでしょうからやりくりが必要になるけれど……。
「必要ない。今から最後まで奴に介入させずにここで時間を稼ぐ!」
「……!」
私の心を読んだかのように宣言したアリアの元にアスカとサエが集結してくる。
前線にいた私とミクも含め、いつの間にかゴールを囲うようなフォーメーションに……ってこれはまさか……!
「そのまさかだ!借りるぜ、リミテッド・オーバー5!」
私のタクティクス!
シューターがアリアに成り代わり、彼女が主導で動く代替えバージョン。
残り5分、これで青銅くんを蚊帳の外にするつもりね!
「ぐっ……!」
「仕上げだ。いくぜ」
何度も放たれるシュートから必死にゴールを守る蛇野くん。
5分間耐え続けた彼にもようやくその時がくる。
「点は入れさせん!」
「白竜くん……!」
最後の最後にまさかの介入。
限界突破した白竜くんが滝汗を流しながらアリアのシュートコースにスライディングで滑り込んできた。
足を伸ばしてシュートをカットする気のようね。
しかし。
「遅せぇよ。インビテーション・ティターニア」
「なっ……」
まさかの早撃ち。
アリアの起点に白竜くんは間に合わず、目の前を通過するシュートを目で追うだけ。
ゴールサイドを狙った鋭い弾道に蛇野くんは飛び込む……けれど。
「入ったーーー!!ゴール!!」
「おい!しかもこれで……!」
シュートがゴールを破り、ネットに突き刺さってから2秒。
沈黙を破ったのは歓喜するアスカ。
そして、サエが気付いた通り。
―――長いホイッスルが、鳴る。
ヴァルキリア 5 - 2 アンリミテッド・シャイニング
私たちのアンリミテッド・シャイニングとの生きた心地のしない試合はようやく終着した。