「ま、負けた……?俺達が……俺達の究極が……」
「白竜くん……」
唖然としてスコアを見上げて動かなくなってしまった白竜くん。
そんな彼に手を伸ばそうとするミク。
その肩を掴み、止めるのはアリア。
ミクが振り返ると彼女は冷酷に告げる。
「同情なんてするな。負ける方が悪いんだ。そもそもあいつから吹っ掛けてきたんだ。自業自得だろ」
「そ……!そんな言い方……」
「何言ってる。お前だってあいつを否定しただろ」
「否定はしてない!そんなつもりじゃなかったからちゃんと謝ったし……私は皆を、アリアを守りたかっただけだよ」
「そうか。ま、そういう事にしといてやるよ。今日はお前に沢山助けられた。ありがとな」
「アリア……」
礼をいいながら手を振る彼女の背中を、ミクは見つめる。
そして、再び白竜くんの項垂れる姿に視線を戻すけど……今度は彼女もその場を立ち去った。
哀愁漂う表情はしていたけれど。
「……」
私は忘れていない。
この試合は、聖帝イシドシュウジの観覧試合。
私は彼を見上げる。
「……!あれは……」
「どうした?」
アリアが私に尋ねてきて、私は一瞥する。
でも、私がすぐに視線を戻したのを見て、彼女もその視線を追って見上げた。
私達が見たのは……聖帝の隣にもう1人、見覚えのある人影。
白と赤が基調の派手なスーツに桜色の髪。
彼は確か……。
「フィフスセクターの創設者、千宮路大悟ね」
「そんなお偉いさんが練習試合なんざ見に来てたのか。最強のチームとやると何かと大事だな」
アリアも私も恐らく彼には1、2回くらいしか会ったことがない。
シードの全体集会で挨拶をしてるところくらいしか。
基本的に表に出てくるのは聖帝だからゴッドエデンに視察に来ることは珍しくなくても、私達を見つめるのは早々ないでしょうね。
正直目を凝らしてもシルエットしかわからない。
どんな表情で何を話して私達を見下ろしてるのか皆目検討もつかないけれど、まあ想像しても仕方ないわね。
「こんな試合を見て何が面白いんだかな」
「そうね」
「オイゲン……!」
「……!」
振り返ると、白竜くんが肩で息をしてボールを脇に抱えながらアリアを睨んでいた。
なんとなくもうその時点で何を言われるのか予想できるわね。
「究極である俺達が負けるなど断じて認められん!もう一度だ!もう一度勝負しろ!」
やっぱり。
「あ?やらねえよ。申請必要なんだろ?もう通らねえだろ。負け犬の我儘なんざ」
「ま、負け犬……っ!くっ……!」
言葉に詰まる。
白竜くんも認められないだけで、自覚はしてるんでしょうね。
「お、俺は……俺は……!究極なんだ!負けるはずがない!」
「究極、ね」
アリアが冷めた目付きになる。
もういい加減うんざりしてきたんでしょう。
ここらでハッキリさせとかないと、いつまでも執着されるのは目に見えている。
だから、私はアリアを止めない。
「誰が最強だの、どっちが上だの。悪いが興味ないんだ。だが……」
一度目を伏せる。
ゆっくり開いて、皆を、仲間を見渡した。
彼女たちはアリアにとって守るべきもの。
「皆を守るために最強である必要があるなら―――私が最強だ。この王座は"まだ"譲らない。椅子が欲しけりゃ奪ってみな」
「……っ!」
アリアが白竜くんに気迫を見せる。
それは貫禄。
事実ゴッドエデン最強だった者の本物の証明。
彼女はまだ、落ちぶれちゃいない。
白竜くんの究極で最強の座もまだ確固たるものではない!
「何度でも相手してやる。ただし、次からは試合形式だけはやめろ。それが条件だ」
「なに?」
「試合にも勝っちまって悪いな。勝ち逃げは許せないだろうが、許してくれ。あいつらはお前らと試合できるほど余裕がないんだ」
「……!」
白竜くんがアスカ達を一瞥する。
殆ど働いてない彼女達が疲弊している。
そのレベル感は彼なら一目で見抜けるはず。
雑魚なのはわかっていてもどれほど雑魚なのかは彼はわかってなかった。
でも、もう理解できるでしょう。
「試合をするなら私もなりふり構えない。仲間を守るためだ。お前にブレイクは通用しないかもしれないが、お前以外には通用するだろ」
「ブレイク……?」
「―――お前以外を再起不能にして、チームをガタガタにしてやるって言ってんだよ。その時お前は仲間を守り切れるか?」
「なっ……!」
白竜くんが瞠目する。
でも、文句は言わせない。
アリアは白竜くんにやられた事をやり返すぞと脅しているだけ。
自分のやったことを彼が自覚できるといいけれど、どうかしらね。
とにかく、今日はこれでお開きね。