「狂戦士ディアベル!」
絶対障壁を破られ、打つ手がなくなった白恋中。
追い込まれた真狩くんは化身を使って"ランス・オブ・ブリュンヒルデ"に対抗しようとする。
そう、白恋中の化身使いは雪村くんが初めてじゃない。
真狩くんも使える。
ただ……。
「おいおい、まだ前半だぜ。もうバテちまっていいのか?お嬢さん」
「貴様……!」
化身ディアベルでタクティクスを崩そうとディフェンスに入った真狩くん。
その前に介入するアリア。
彼女の言うとおり、真狩くんは化身を使えるけど1回使えば体力を大きく消費し、残りのプレイ時間は殆ど機能できなくなる。
つまり、彼は化身を使えこなせていない。
その上彼の化身はドリブル型。
結局ゴールを決める決定力はない。
だから雪村くんの化身を戦力化することが急務だった。
ここで彼の化身というカードを切った時点で白恋中は白旗を上げたのと同義。
それ程までに彼らにとって真狩くんの化身は最終手段なのよ。
「そっちから絶対障壁を無力化してくれるなんてそんな美味い話はないぜ。遠慮なくお前には後半寝ててもらおうか!」
「……!しまった、そうか!こいつらのタクティクスは……!」
「ご名答。絶対障壁を破れるが、"確実"じゃない!諦めず障壁を崩さなければ後半で勝機はあったかもな」
真狩くんが後悔する。
不敵に笑うアリア。
ランス・オブ・ブリンヒルデは再現性があるけど成功率は低い。
主にアスカの着地。
最初の1回目で失敗したのがその証拠。
アスカの身体の強さをもってしてもミクのパワーはまだ受け止めきれていない。
ここで真狩くんが化身を使ったのは早計だった。
体力を温存し、絶対障壁を使用し続ければ成功する可能性もあった。
それを彼は自ら捨ててしまったのよ。
「魔神アガレス!」
「なっ……!?なんだ、この化身は!?」
「あれが……フィフスセクターの化身……!」
本日二度目の訂正ね。
フィフスセクターの化身がみんなアガレスくらい高出力だったらとっくに管理サッカーは完全に成されてることでしょう。
……なんてことはさておき。
アガレスとディアベルの対決は、もうどちらに軍配が上がるか分かりきってるわね。
「ぐはっ……!?こ、こいつ……!」
「ハッ。これで絶対障壁は使えないな。私でも突破できる!」
ディアベルを倒し、真狩くんをドリブルで抜いて進軍するアリア。
真狩くんの体力もそうだけど、化身バトルで負けた直後から絶対障壁を発動することは不可能。
特に相手はアリア。
彼女のスピードを考えれば抜かれた時点で間に合わない。
「まだだ!俺が止める!」
「……!」
そう言ってアリアの前に横入りして立ち塞がったのは、雪村くん。
アリアはドリブルをやめ、彼と対峙する。
「噂のエース君。いいぜ、試してやるよ。来な」
「なんだと……!俺を舐めるな!!」
雪村くんは激情型。
外見や北の環境とは裏腹にカッとなりやすい。
彼がアリアに突っ込むと、結果は当然、遊ばれる。
「どうした?そんなディフェンスで私からボールを奪うつもりか?」
「うるさい!必殺技をお見舞してやる……!」
「……!へぇ」
雪村くんの発した単語にアリアが反応する。
面白い、とでも言うように口角を上げた。
雪村くんは一旦距離を取り、ディフェンス技を仕掛ける。
「はぁぁー!アイスグランド……!」
「……!」
雪村くんが凍った地面を滑るとスケートのようにジャンプして、着地したと同時に爪先から凍結が始まった。
凍てつく現象はアリアに迫り……それは弾かれ、不発に終わる。
「なっ……!?そんな馬鹿な!?」
「いい技だが、練度がイマイチだな。ちゃんと練習しろよ」
「う、うるさい……!なら!」
「……ようやくか」
アリアが余裕綽々な態度から警戒態勢に移行する。
身構えた彼女の前に、大きく足を広げて直立する雪村くん。
彼は両腕を広げ、肘は曲げ、力んだ。
間違いない。
あれは、化身を出現させるための兆候……!
「アリア……!」
「わかってる。大丈夫だ。見せてもらおうじゃないか、フィフスセクターがお熱になってる化身って奴を……!」
制止しても、アリアは迎え撃つ気でしかない。
そんな彼女の前に上空へ向かって紫のオーラが伸びる。
「うおおおおぉぉぉーーーーー!!」
雄叫びを上げる雪村くん。
化身の形が構成され、あとは紫のオーラを剥ぎ取るだけ。
しかし。
「おおおおぉぉ、ぉぉ……ぉ、あっ……くっ……!」
「……ダメか。まあ話には聞いてたがな」
雪村くんの気迫をもってしても化身は真の姿を見せなかった。
それどころか途中で引っ込んだ。
やはり、彼はまだ化身を使いこなせていない。
アリアのアガレスで共鳴を起こしても出現しない、となるとかなり深刻ね。
彼の化身を呼び起こすには……当初の予定通り、彼と白恋を追い込むしかない。
窮地に立たされ、チームを救うために自らを奮い立たせる。
その中でその気持ちが、きっと化身を呼び起こす。
でも、彼はまだ気づいていない。
「なんで……なぜなんだ。どうして俺には化身が使いこなせないんだ……!」
本人も自覚あり。
膝を着いて崩れ落ちる。
項垂れて嘆く。
……そんなことしてる余裕、今はないけれど。
「馬鹿が。試合中だぜ?」
「……!しまった……!」
雪村くんが隙だらけの間にアリアが突破した。
そのままゴールへ一直線。
決めるは一瞬。
煌めけ、閃光。
「鬱陶しいディフェンスだ。いちいち構ってられるか。インビテーション・ティターニア!!」
「なっ!?ミドルシュート!?」
アリアは中距離から放った。
最強のディフェンスなら相手にしなければいい。
まるでそう告げるように、硬くて完璧なポジショニングのディフェンス陣の間を弾丸でぶち抜いた。
しかし。
「くっ……!いや、これは外れる!」
「クソ!」
アリアのシュートは角度をつけすぎて白咲くんの頭上、ゴールポストに弾かれた。
どこに撃ってもディフェンスは触れられるように完璧に位置取りがされていた。
彼らが足を伸ばせばカットされる。
故に、足が届かない高い弾道へ足元からかち上げ蹴った。
それがアリアのコントロールを狂わせた。
アリアですらも……白恋の守りは崩せない!
「……伊達に全国一って言われてないな。強引に行くのは無理だ」
「絶対障壁なしでも考えて攻めなきゃいけないわね」
汗を拭ってアリアの傍による。
彼女は私に同意するように頷いた。
絶対障壁を破られた白恋も手詰まりだけど、こっちも攻め手がない。
今でも充分追い込んでるけど、フィフスセクターの使者が来ると聞いていた白恋からすれば私たちはそこまで大層なものには感じない、今はそんな段階でしょう。
それでは困る。
一度は絶望し、雪村くんの奮起で覆してもらわなくてはいけない。
これで前半は終わり。
後半はさらに追加点をいれたいところね。