「白竜くん!……っ!!」
振り返ると、そこは酷い光景だった。
白竜くんはボロボロ。
ただそれよりも気になるのは……青銅くんや帆田くんを中心に他のメンバーが凄まじい有様なこと。
それを目にしただけで嫌な察しがついた。
「まさか……!」
「そうだ。貴様の考えている通りの展開が先程まで繰り広げられていたぞ。死地に飛び込んでくるバカの割には、中々洞察力があるな貴様は」
「……っ!」
再び前を睨むと、彼らは悪趣味な笑いを浮かべていた。
こいつら……!
間違いない。
アンリミテッド・シャイニングの処分よりも、白竜くんが優先なんだ。
だから、青銅くんや帆田くんを最初に狙って彼に守らせた。
あとは白竜くんから当たりに来てくれる。
標的が自ら身を差し出してくれる。
効率的ってわけだ……!
「性格悪すぎでしょ!」
「それを言うならここのシードの質が悪すぎる。フィフスセクターが用意した最高の環境で、貴様らは何をしていた?」
「はぁ!?」
「……頭の悪い女だ。所詮女か。俺の言いたことがわからないか?」
「……!」
なるほどね。
そういうタイプか。
いちいち鼻につく奴ってか……!
彼は口角を上げる。
「あそこまで追い込むカリキュラムを用いて、この程度の粗悪品しか生み出せぬとは、貴様達の怠慢を置いて他になんと表現する……!」
「命をかけたことの無い坊ちゃんが。この島に来たこと、後悔させてやる……!」
私の返しに彼は鼻で笑う。
魔狼アモンと、帝王の如く威圧感を有する彼の化身が鋭い視線を交錯する。
そんな一触即発の雰囲気に。
「よせ……長門」
「……!白竜くん!大丈夫!?」
青銅くんに支えられてフラフラと立ち上がる白竜くんに、私は化身を引っ込めて駆け寄った。
近付いて私はビックリする。
彼が私にこれほど弱々しい表情を向けたことが無いから。
「奴らはお前が敵うような相手ではない!何をしに来た!」
「何って白竜くん達を助けに……!」
「奴らに目をつけられたら最後、狙われ続ける。逃げるしかない。お前は逃げるんだ……!」
「……!」
目を見開く。
ありえない。
白竜くんがこんな後ろ向きなことを言うなんて。
こんな弱気な彼は、見たことない……!
「そこまで……追い詰められたんだ。そうなんだ、あの君が。沢山傷つけられたんだ」
「……っ!……悪いことは言わん。お前程度1人加わったところで変わらん。消えろ」
「そうだ。お前など必要ない!俺達はお前とは格が違う!」
「俺達でさえこのザマだ。お前なんていたところで……!」
みんな、みんな弱気になってる。
プライドを口にしてるのは、多分口癖になってるから。
それだって、植え付けられたものだ。
許せない。
みんな、言葉とは裏腹の表情を浮かべてる。
こんなに苦しそうなのに、「助けて」も言えなくなっちゃったんだ。
大人が、都合のいい時だけ彼らを持ち上げたから。
彼らに自尊心を強制したから……!
「もういいよ。君達の意思なんて関係ない。私は、私がやりたいことをする」
「お前がなぜそこまで……!」
「助けたいから」
呟く。
1拍置いて、顔だけ振り返り、また重ねる。
「助けたいから。助ける」
「……!」
白竜くんは声を出そうとして、詰まった。
私は返答がないことをいいことに身体の向きを戻して、一方的に意思だけ残して前に進む。
立ちはだかるは11人の化身使い。
その全員が冷たい目で、冷徹な笑みを見せている。
怖くない。
こんな困難、こんな無謀、こんな冷酷、こんな難"題"。
いくらでも"乗り越えてきた"。
「そうだ。乗越えてきたんだ……!」
下ろした腕の先で、握り拳を作る。
思い出せ。
そうだ。
前は1人だった。
1人でやれてた。
元々は1人だったんだ。
それが流れでチームに入って、仲間を得て。
ただそれだけ。
前は1人でできたんだから、また1人でできるはず。
あの時と、同じ気持ちでやればいい!
「……!そうか。貴様、あの時奴らと戦っていた女共の1人か」
「あの時……?」
何の話かわからないけど、私のこと知ってる……?
奴らって……あ、アンリミテッド・シャイニングのこと?
……!
ってことはあの試合を観てたんだ。
それで私を……もう面は割れてるんだね。
だったらどの道逃げても無駄か。
「馬鹿め。自ら首を突っ込み、やられにきたか!」
「まだやられると決まってない!」
「決まっているさ。我らはフィフスセクター最強のチーム。お前1人で勝てる道理はない」
「そんなの関係ない……!」
私は依然として対峙する。
すると、彼はふんと鼻を鳴らす。
「そこまでして敵だった奴らを守るとは、どこまでも愚かな女だ……!」
「別に守りに来た訳じゃない。戦いに来たんだ!」
「戦いに来ただと?」
「そうだ!ここにいる皆、生きる為に毎日戦ってきたんだ!」
そう。
やることはあの頃と変わらない。
理不尽に奪われるなら、戦うしかないんだ。
生きる為に。
「お前達が私達の命を狙うなら、私達の生存本能でお前達を食ってやる……!」
「……!」
後ろで皆が反応したのを感じる。
ここにいる全員、理不尽に立ち向かってきた。
命をかけてきた。
生きるために戦った、生存本能の塊だ。
それがゴッドエデンのシードなんだ。
……暫く忘れてた気がする。
でも、今は想起した。
私達は、処分なんてされない!!
「面白い。モルモットにも意地があるとでも?」
「ある!」
「ほう。ならばやってみろ。このドラゴンリンクに勝てるというのならな!」
11人全員が臨戦態勢に入った。
敵は化身使い、11人。
それでも!
「いくぞ!全員纏めてかかってこい!」
私は挑む。