「長門。お前なら奴からゴールを奪えるか?」
「……!」
隣の白竜くんに尋ねられて、私は目を見開く。
その質問をするってことは自分は決められないと言ってるようなものだ。
私に委ねるしかない、できれば私に打開して欲しいという懇願。
確かにパワーだけなら私の方が上だし、それをゴールへぶち込めるなら、彼も破れるかもしれない。
でも。
「どうだろ。他の妨害無しでフリーで撃つのと、ちゃんとミートできたらワンチャンって感じかな」
「つまりフリーで撃っても貴様のパワーを全て込めつつ正確さも確保できるとは限らんという訳か。まるで成長がない」
「一言余計なんですけど……!?」
いや、まあぐうの音も出ないけどさ。
白竜くんの言うことも一理あるし。
やっぱり絶対決まるとは断言できないんだよね。
数回撃って1回くらいは完璧なハイパワーシュートを撃てるとして、それでもそもそもそんなにシュートの機会が無いと思う。
まず母数を確保できない。
となるとガチャを引いてる余裕はない……んだけど。
「でも、ゴール決めるならガチャ引くしかないよね」
「あぁ」
ただこの試合、別に勝つことはそんなに大事じゃないんだよなぁ。
とにかく相手の化身パワーを削らないといけない。
向こうの目的もこっちのゴールより私達自身みたいだし。
優先順位はやっぱり。
「1点でも決めれば、相手は動揺する。できれば2点欲しいけど。だから、ゴールは狙うよ。でも」
「あぁ。わかっている。まずは奴らから化身使いを減らす」
そう。
化身を使える時間は限られてる。
特に前線のフォワード4人と中央ラインに属するミッドフィールダー2人はだいぶ消耗してるはずだし、化身パワーもそろそろ尽きる頃合い。
先決なのはこの6人のガス欠狙い。
6人も化身使いが減れば、あっちの攻撃力はかなり下がるから皆を傷つけられにくくなるし、その分私たち側の化身使えない組も機能できる。
一石二鳥ってわけ。
「いくよ!白竜くん」
「いいだろう!」
私と白竜くんが手を組んだ。
Aランク棟の皆が聞いたらひっくり返るだろうな。
「魔狼アモン!」
「聖獣シャイニング・ドラゴン!」
狼と竜の咆哮が轟く。
2人で協力して化身使い6人を無力化する!
「えっ!?」
……っと思ったけど!!
目の前の光景に目を疑う。
だって!
「魔女 クィーンレディア!」
「番人の塔 ルーク!」
「ディフェンダー……!なんで!」
後列にいたディフェンダーの2人が何故かフォワードより前に飛び出してきた。
スタートと同時に上がってきてたの!?
「奴らはお前がフォワード4人を攻略したのを目の当たりにし、フォワードの体力低下に目敏く気付いていたんだ!」
「……っ!」
そうか!
だから……!
「俺達の思考は見抜かれている……!」
「当然だ。お前達如きが考えることなど手に取るようにわかる」
「……っ!!くっ……!」
白竜くんが気づき、千宮司くんに指摘される。
甘かった。
我ながら単純すぎた。
こんな時、シズクなら……!
「……っ!」
ダメだ!
一人でやるって決めたんだ。
一人でできるって豪語したんだ。
他力はやめろ。
自分で考えなきゃ。
このイレギュラーの対策を……!
……っ。
どうすればいいの!?
「くだらん!俺が叩き潰す!」
「白竜くん……!」
白竜くんが前に出て迎え撃った。
確かに彼なら化身2体は相手できる!
「せぇぇぇやっ!!」
「なに!?」
「ぐあっ!?」
「……っ!」
シャイニング・ドラゴンが吠えた!!
突進でクィーンレディアを怯ませ、尾っぽで叩きつけて撃退。
その間にルークを掴んで邪魔と進行の阻止をしてたけど、クィーンレディアがやられたのを見てその拘束から抜け出して後退しようとする。
けれど、そのまま逃がすシャイニング・ドラゴンじゃない。
もう片方の竜爪を振り下ろし、斬撃にかける!
怯んだルークは今度は手のひらで叩かれ、地面に打ち付けられる。
よし、これで邪魔なディフェンダーを排除できた!
……いや、違う。
白竜くんにやられて隙だらけのディフェンダー。
先に狙うは、こっちだ!!
「アモン!!」
「……っ!なるほど。シャイニング・ドラゴン!」
白竜くんが私の行動を見て秒で察した。
すぐにバックアップに入る。
妨害が入らないようにシャイニング・ドラゴンに他の化身をせき止める役割は任せて。
私はディフェンダー2人に向かって化身シュートを放つ。
まずはこの2人を行動不能にする……!
「何!?」
「こいつら……!躊躇いなく……っ!!」
ディフェンダー2人が顔を顰める。
どの口が!!
「先に仕掛けたのはそっちだ!それに、こっちは命がかかってるんだ!いけぇ……!!」
「―――無駄だ」
「……!?」
視界の端に侵入してきた人物に、私は瞠目する。
ディフェンダー2人に向けたシュートの弾道に、割り込んできたのは……ゴールキーパー!!
キャプテンの千宮司くん……!!
「なっ!?バカな!キーパーだと……!?」
フォワードやミッドフィールダーの足止めをしている白竜くんが振り返って驚く。
私も信じられないものを見る目で千宮司くんを見た。
「どうやってゴールから一瞬でここまで……!……っ!まさか……!」
「そうだ。俺はフィフスセクター創設者・千宮路大悟の息子。つまり、最古にして最初のシード。誰よりも長く組織に鍛え上げられたこの俺が、フィールドプレーヤーの能力を備えていないとでも本気で思ったのか!!」
千宮司!!
創設者!?
千宮路大悟……!
そうだ、ずっと聞き覚えのある名前だと思ってた。
彼の苗字。
シードたるもの、その名前は何度も聞かされる。
それにゴッドエデンにだって数回くらいは本人が視察や声明の為に訪れてる。
私も2回だけだけどその姿を目の当たりにしたことがある。
あの人、創設者の息子……!?
だから、とっておきのチームにして最強それが息子のドラゴンリンクってわけ!?
じゃあ……ずっと気になってた、監督不在の要因は……!
「我らの指揮官は創設者・千宮司大悟。最高権力直属のチーム!つまり、俺達に狙われるということは……それは!フィフスセクターにおける"絶対の決定"だ……っ!!」
「~~~~~~~~~~っ!!」
思ってたより事が大きかった!!
まさか、そんな……!
じゃあここで抵抗したところで……!
―――いや、だとしてもそんなの受け入れられない!!認められるか!!
「ふざけるな!!ゴッドエデンのシードは都合のいい玩具じゃない。処分なんてされてたまるか!!」
「馬鹿め。決定だと言っている。お前達の意志など関係ない。使えないモルモットは、不要だ……!!」
「……っ!?」
私のシュートを直接触れにいった!
しかも!
「お前達に無力化できる化身使いなど、ドラゴンリンクには存在しない。お前が散れよ……っ!!」
「なっ……!」
「長門のシュートを蹴り返しただと……!?」
シュートを返された……!
しかも威力が増してる!
このプレイヤー……強い!!
「負けるもんか!」
「身の程を弁えろ。実験動物風情がフィフスセクターに適うものか……!」
アモン VS キングバーン!!
千宮司の化身シュートをキックで受ける。
しかし。
「ぐっ……うぐっ……!」
「長門!」
「うわああああ!?」
私の表情から察して白竜くんが駆け寄ろうとするも、他の化身使いに阻まれる。
その間に私は押し負けた。
キングバーンがアモンを殴りつける!!
「うあっ!?あうっ!?うぐっ……!うっ……!」
「長門!!」
「~~~~~~っ!」
白竜くんの叫びは聞こえてるけど、返事できない!!
アモンは消失して、私は地に伏せた。
私のシュートを蹴り返したからその威力も込だけど……千宮司の力、えげつない!
強すぎる。
私じゃ勝てな……っ!
「……っ!」
認めちゃダメだ。
そう思って、動けば喉が避けて血反吐を吐きそうになのを我慢しながら立ち上がろうとする。
でも、腕に力が入らない。
四つん這いから身体を起こせない……!
「いいザマだ。これでわかったか?俺達には勝てやしないと……!」
「……!」
私が顔だけ振り返って険しい表情を向ける。
けど、千宮司くんは何処吹く風。
しかも。
私が弾いたボールを拾ったのは……またしても彼!
「まずは乱入者の排除から終わらせる。その後、じっくり!お前が守ろうとしたものを壊してやる……!!」
「……っ!させ、ない……!」
私は抵抗するためにまた力を込めるけど。
立ち上がれない……!
その様子を見て、千宮司くんが口角を上げる。
「消えろ!
「……!!」
「長門!」
凶弾が、無抵抗の私に迫る。