朦朧とする意識の中で、千宮司くんが私を見下し告げる。
お前が余計なことをするからお前の守りたいものは傷つくんだ、と。
その言葉を聞いて、皆のことを思い出した。
シズクも、こんな気持ちだったのかな。
皆を守ろうとすればするほどそれが裏目に出て、皆を危険に晒す。
辛かっただろうな。
でも、なんでかな。
シズクと同じ行動を取ったんだと思うと。
彼女と同じ正義感が私の胸の内にもあるって思うと。
なんだか……ちょっと嬉しいかも―――
「起きろ、バカ!このままじゃ白竜が……!」
「……っ!!」
その一言で、覚醒した!!
目をカッと開いて飛び起き……ようとしたら激痛が走ってすぐに身を戻す羽目になった。
しかも意識がハッキリしたら瞬間、酷い頭痛と目眩、嘔吐に襲われた。
身体も神経がなんか痺れてるし、頭もなんか熱くてクラクラする。
何より視界が安定しない。
気持ち悪い。
上と下がわからない。
地面どっちだろ……おえっ。
「~~~~~~っ!」
「まだ……起きるな……恐らく脳震盪だ……。俺のことは……気にするな。この程度で、究極たるこの俺が……!倒れることは……!」
「……っ!はくりゅ……う、くん……!」
顔を上げられない。
でも、状況は見なくてもわかる!
白竜くんが、無防備な私を守るために盾になってるんだ……!
早く回復しなきゃ。
このままじゃ白竜くんが……!
何か、何か対策は……!
1ミリも動けない私にできること!!
―――そうだ!!
「化身ドローイング!」
「……!これは……」
アリアがやってたやつの見様見真似だけど……!
まだ私の化身パワーはかなり残ってる。
それを全て白竜くんに渡せば、少なくともこの包囲網からは抜け出せるはず!
「抱き上げるぞ」
「……!」
私の腹に腕が回される感覚がする。
視線だけ動かすと白竜くんが覗いてくれた。
全然置いていってよかったのに……というか白竜くんが助かればと思って化身パワーをあげたんだけど、今ここで求められてるのは瞬時な判断と早さ。
時間を短縮するには受け入れるのが1番スムーズだと思ったから、揉める時間も勿体ないと思って頷いた。
そしたら私の身体が完全に地面から離れて宙に浮く。
もう力が全然入らないし、100%白竜くんの力で持ち上げられた。
彼は片腕で私を抱え、腰で固定する。
そのまま物凄い抵抗をくらったと思ったら一瞬で移動し、景色が変わった。
敵は消えて、皆がいる。
「大丈夫か?意識はあるか?痛みはないか」
「……うん」
私は抱えられたまま小さく頷く。
その後、そっと降ろしてくれた。
正直脳が揺れて激痛走ったし、脳みそがグチャグチャになった感覚に襲われて死ぬかと思ったけど、そんなもの呑み込んだ。
そんなことよりも、優先すべきことがある。
自分で自分の状態はわかる。
もう私は戦えない。
ドラゴンリンクはだいぶ消耗したと思うけど、アンリミテッド・シャイニングはそれより何倍も酷い。
こんな状態じゃ疲弊したドラゴンリンクに渡り合うことも難しい。
だから、ここは逃げた方がいい。
それを伝えなきゃ。
「撤退する!この場を離れるぞ!」
「……っ!」
白竜くんが私より先に口を開いて告げた。
まさか彼も同じことを考えてたなんて。
あの白竜くんが、負けを……。
「なにっ!?だが、奴らが……!」
「負けを認めるというのか!俺達は究極なんだぞ……!」
「そもそもどこに逃げるっていうんだ!俺達はシードで、ここはゴッドエデン。全てフィフスセクターの管理下だぞ!?」
「そうだよ!逃げる場所なんてない!」
皆の反論もご最もだ。
でも、もう認めないと手遅れになるくらいに結果は出てる。
ここでプライドは自殺への切符だ。
それと。
確かにゴッドエデンから抜け出すことも、この施設の中で一生を終えるまで隠れて過ごすことも不可能。
ゴッドエデンを建設したのはフィフスだし、構造は完璧に把握してるはず。
ワンチャンあるとすれば施設を出れば島自体には隠れ蓑はあるだろうけど……それも長くは持たないと思う。
1番は島を出ることだけど、子供だけじゃ……。
やっぱり、"詰み"でしかない。
だから、皆の言いたいことはわかる。
ただそれは長期的に見た話だ。
多分白竜くんが言いたいのは……。
「一度体制を立て直す!」
「……!」
「長門はもう動けん。俺もドローイングがなければやられるのを待つだけだった。確かに俺達は袋のネズミかもしれんが、一度身を隠し、体力を回復すれば……!」
白竜くんが力を込めて説得する。
彼の強化版シャイニング・ドラゴンは今も出続けてるけど、既に現段階で消えかかってる。
それはもう一目瞭然だから皆も見ればわかる。
そうなると、皆も納得するしかない。
彼の言うことが正しいって判断できる。
皆なら。
「皆、勝つため……だよ。次、勝つために。一旦身を隠すだけ。私達は……勝つんだ……っ!」
『……!』
皆が目を見開く。
もう、伝わったと思う。
彼らは優秀なアンリミテッド・シャイニングだから。
今なにが最適解かきっと理解できる。
「万全であれば……いや、せめて万全な状態で奴らに挑みたい。そういうことか。次は最初から長門もいるし、一理あるね」
青銅くんが賛同する。
えっ。
でも、待って。
それじゃダメ……!
「わ、私は置いていって……。お荷物な……だけ、だから……っ!」
「愚か者め。俺達だけで奴らに勝てると思うか?」
「……!」
確かに。
今回だってアンリミテッド・シャイニングは最初万全だった。
全快の彼らとドラゴンリンクが戦って、私が駆けつけた時にはあの状態だったんだ。
ってことはつまりメンバーや何かしら要素を変えないとまた挑んでも同じ結果が待ってるだけ。
悔しいけど、アンリミテッド・シャイニングだけじゃドラゴンリンクに勝てない……!
だから、私なんかでも貴重な戦力なのか。
それがわかったなら、ここもつべこべ言わずに返事は少なめでいこう。
「私を抱えてたら逃げれきれないかも……」
「構わん。どちらにせよ、お前を連れていかなければ同じ結末になる。少し延命するだけだろう」
「……そっか。ごめん。じゃあ、お願いしても……いい?」
「当然だ。女1人抱えるなど容易い」
そう言って、白竜くんは私をまた持ち上げる。
そして、キッ……!と体勢を立て直した敵を睨む。
「シャイニング・ドラゴン!!」
魔狼アモンのパワーも込めた強化版シャイニング・ドラゴンの化身シュート!
それが白竜くんを追いかけようとしてきたドラゴンリンクに向かって放たられる!
「……っ!小癪な!逃げる気か。させん!キング・ファイア!!」
「今のうちだ。行くぞ!」
千宮司くんが急いで前線に出てシュートを止めようとしている。
それを確認して、白竜くんは皆に号令をかけて私達はドラゴンリンクに背を向けた。
あとは全力で逃げるだけ。
きっとドラゴンリンクも簡単には追えない。
あっちも元気が有り余ってる訳じゃないし、さすがに化身ドローイングを受けた白竜くんのシュートは一溜りもないはず。
だから、千宮司くんが前に出てきたんでしょ。
彼じゃないと止められないから。
「……っ!どう?かな……」
「今のところ追われている気配は無い。かなり突き放しているはずだ」
「そっか……よかっ、た……っ」
吐きそうになりながら私は揺られ、皆と一緒に走り続ける。
このまま身を隠せる場所まで逃げ切れたらいいけど……。
「……」
私はいつの間にか意識が落ちていた。