松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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私達が次に逃げ込んだ先は、デカイ排気管。

人1人が入ってもギリギリ立ち上がれるくらいはある。

薄暗くて逃げ場がないし、進行ルートも一本化されてるけど、ここに来たのも理由はある。

それは排気管を伝っていけば外に出られるし、何より見つかりにくいから。

向こうもまさかホントにそんなネズミみたいなルート辿るとは思ってないだろうしね。

んで、排気管に入ってすぐ青銅くんに手渡されたのが。

 

「これ、アンリミテッド・シャイニングのユニフォーム……?」

「そっ。ヴァルキリアのユニフォームボロボロだからとりあえずこれに着替えて」

 

アンリミテッド・シャイニングのユニフォーム。

確かに私のユニフォームはボロボロでところどころ破けてるけど……。

 

「いいの?私がこれ着ても」

 

先々進む白竜くんの背中を見ると、無言の圧があった。

多分認めてくれてるんだと思う。

おそらく、多分。

 

「……前に言っただろう。チームにいれてやってもいいと」

「へぇ~、私補欠かぁ?じゃあ次の試合出れないなぁ」

「なっ。それは忘れろ……!」

「あははっ!冗談だって」

 

反応見たくてちょっと揶揄っちゃった。

私は……ユニフォームをそっと抱きしめた。

誇り高き彼等にとって、本来そう簡単に易々とは渡せないものだってわかってる。

なのに貸してくれた。

少しは認められたのかなっていうのも嬉しいけど、仲間として受け入れてくれたのがもっと嬉しい。

このユニフォームは、あんまり汚したくないな。

 

「てかこれ、どっから持ってきたの?」

「逃げる途中に寄り道して回収した」

「俺達もボロボロだったからねぇ」

「そっか。確かに」

 

目が覚めて皆を見た時、なんとなく違和感あったけど正体がわかった。

皆、体は傷だらけだけど格好は清潔感があった。

つまり。

 

「俺達はその場で着替えて古いのは捨てた」

「そ。だから、長門も着替えて」

「この先に分岐が見える。そこで一度休憩する。サッカーができるくらいには回復しておけ」

「了解」

 

指示に頷く。

こうして動けるようになったけど、またドラゴンリンクと試合するにはもう少し休まなきゃいけない。

この辺りで交代制で回復に努めるのは賛成。

とりあえずまずは着替える。

ヴァルキリアのユニフォームは……嫌だけど次立ち去る時には置いていくしかないかな。

できるだけ丁寧に畳んでおいた。

さすがに命には還られないから。

でも、皆を裏切ったわけじゃ……いや裏切ってるか。

 

「……」

 

私がヴァルキリアのユニフォームを撫でてると、白竜くんが後ろから見つめてた。

私はその視線に気づいて振り返り、彼と頷き合う。

ここからは時間勝負。

どんどん手際よくこなしていくしかない。

 

「ちなみに予備のユニフォームも2着だけだけど回収してきたから、今着てるのも汚さないようにとか思わなくていいよ」

「お前には多少身体を張ってでも戦ってもらうことになる。……悪いが」

「わかった。ホント、身体のことは気にしなくていいから。その心配の方が本当に要らない。こっちこそ悪いけど、そういう事ならこれボロボロになるまで戦うね」

 

アンリミテッド・シャイニングのユニフォームを着て、彼らを守れるなら余計な気は遣わないでおこうと決めた。

次も全力で戦う。

その為に今できることは……。

 

「回復に専念するの、最初私だよね?じゃあお言葉に甘えて……就寝!!」

「うわっ。こいつ、返答聞かずに爆速で寝た!」

「とんでもねえ女だな……」

 

呆れてる帆田くんの声を最後に、私は一瞬で眠りについた。

さっきも寝たけど正直まだまだ睡魔がやばい。

命の危機から緊急回避するための寝落ちと、疲労や状態からの回復に努めたい就寝はまた別。

ぶっちゃけまだまだヘトヘトだったからすぐ夢の中に行けた。

次、起きた時。

私の腕は上がるようになってて身体の硬さは取れてた。

あとは柔軟とストレッチ、軽い運動とアップをして状態を確認する。

 

「よし……!ドラゴンリンクと戦えるかはわかんないけど、少なくともサッカーはできるくらいにはなったと思う!」

「ならば、移動するぞ。次の分岐で休憩する者を変える」

 

合理的だ。

同じところに留まるのは得策じゃない。

私は頷いてみんなも同意してついていく。

道中、ドラゴンリンクに勝つためには、という話になった。

 

「よかった。諦めてないんだ」

「当然だ。俺たちは―――」

「究極、でしょ?わかってるよ」

 

白竜くんが私を一瞥して鼻を鳴らしてまた前を向いた。

でも、彼の表情を見てるとどこか満足げだ。

 

「正直、長門だけじゃなくてあいつも来て欲しいんだけど」

「あいつ……?」

「ほら。白竜が執着してたあの女」

「……!」

 

青銅くんの吐露に私は目を見開く。

誰かはわかった。

アリアだ。

白竜くんも振り返りはしなかったけど、少しだけ顔をこちらへ傾けている。

彼ですらちょっと期待してるんだ。

でも……。

 

「……アリアは無理だよ。私が行くのも1番反対してたのはあの子だから」

「なんだ。じゃあ長門だけか。頼りなっ」

「青銅くぅ~ん?」

 

ほんと、昔っから変わんないなぁこの子は。

ちょっと生意気すぎ。

てか私が来たってことはアリアも来るってそうやって縋ってたんだ。

彼らですら無意識に崇拝する絶対感。

私にもあれだけの支配力があれば……って、無いものねだりしても仕方ないか。

 

「アリアは来ないと思うし、それに今回来て欲しいのはアリアじゃないかも」

「何?」

 

あれ程のプレイヤーより来て欲しいプレイヤーなど存在しないだろ。

とでも言いたげな驚いた様子の白竜くん。

でも、冷静に考えれば白竜くん達も同じ発想に至ると思う。

 

「みんなも知ってるでしょ?ヴァルキリアのキャプテン、陸奥雫。あの子は二重人格でそれぞれの人格ごとに化身を1体持ってる」

 

そう。

シズク1人で化身を2体確保できる。

このデカさを理解できないみんなじゃないでしょ。

 

「向こうは化身の数が売り。それに対抗するにはこっちももっと化身を用意すべきだと思わない?」

「……!そうか。奴1人で化身が一気に2体増える」

「そういうこと。こっちにも5体化身がいれば圧倒的に攻めやすくなる」

「いや。それでも相手は倍いる。2体出せるからって意味ある?」

「だったらアリア呼んでも一緒でしょ」

「そうだけど……なんか私情入ってない?」

「……」

 

青銅くんはなんか納得してない様子。

正直最後の指摘は都合が悪くて押し黙った。

理屈をこねたけど……彼の言う通り、私は精神的に彼女が必要だから求めてるだけなのかもしれない。

試合中、何度も否定したのにやっぱり縋っちゃってる。

そうだ。

これじゃダメなんだ。

 

「やっぱりいない人に頼っちゃダメだね。それに、わざわざ来てくれるわけないよ」

「それもそうだ。そんなバカ、1人しかいない」

「……助太刀など必要ない。これは俺達の問題だ」

 

吐き捨てて前へ進む白竜くん。

強がりだろうけど、一理ある。

誰も助けてなんてくれない、それがこの地獄。

自分たちの力で切り抜けるしかないんだ。

 

「……!」

「どうしたの?白竜くん。急に立ち止まって―――」

 

先頭を歩いていた白竜くんが突然足を止めた。

 

―――直後。

 

「お前達!伏せるんだ……!!」

『……!?……!?~~~~~~~~っ!!」

 

大きな音が立ったと思ったら急に足場が吹き飛んだ!

凄まじい衝撃。

全員が宙に浮いたかと思ったら排気管の中であらゆるところを打ち付けて、最後は落ちていく。

そして、高所から地面に叩きつけられた。

 

「……っ!」

「くっ……!なぜこの場所が……!」

 

警告してくれた白竜くんだけが着地に成功して、他の皆は打ちどころが悪かったのか、悶えている。

私も警戒が遅くてかなりダメージを受けた。

でも、白竜くんの声を聞いてかろうじて敵の気配がある方を向いて顔だけ上げる。

すると。

 

「……っ!!皆、避けて!!」

「その場から離れるんだ、お前達……!!」

 

私と白竜くん、叫んだのは同時。

前を見て最初に飛び込んだ光景は、倒れ込むアンリミテッド・シャイニングに容赦なく化身シュートを打ち込もうとしていた者達。

白竜が飛び出す。

 

「シャイニング・ドラゴン!」

「ハッ。ネズミのあとはトカゲか!どこまでも陰気なヤツらだ!いでよ、キング・バーン!」

 

アンリミテッド・シャイニングが化身シュートの雨から身を呈して皆を護った!

だけど……!

その直後にキング・バーンの拳が振り下ろされる!

 

「ぐあっ!?」

「白竜くん……!」

 

私の目の前まで飛ばされた白竜くん。

そんな彼の姿を目にして、私は言うことの聞かない身体を震えながら起こす。

最初は片足をついて、その膝を支えにもう片足で地面を踏み込む。

あと腰を上げて……3段階でやっと立ち上がれた。

肩で息をしながら白竜くんより前に出る。

 

「……っ!……っ!皆はやらせない。もう一度勝負だ」

「見上げた女だ。評価してやろう。だが、散れ。お前達に逃げる場所などない。フィフスセクターからは逃れられんのだ」

 

千宮司くんが口角を上げ、視線を鋭くする。

私を口元を拭って、視線を返す。

 

「最初から逃げるつもりはない。休憩してただけだ!第2ラウンド、行くぞ!」

 

再戦の火蓋が、切られる。

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