松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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「この先にグランドがある。そこで再戦だ」

 

そう言って千宮司くんが指をさしたのはグランドへ続く通路。

私たちが落下した訓練場広場の隣のエリアだ。

ていうか。

 

「あくまで試合形式に拘るんだ?」

「……確かに前の試合でお前達を圧倒し、試合形式の効果は十分に得た。これ以上試合をする必要はない。しかし」

「……?」

 

言葉に詰まってる訳じゃないけど、なんか千宮司くんのテンションが低い。

前回と違って興奮は抜きで、冷静沈着。

落ち着いてるっていうか、なんか業務上の態度だ。

淡々と喋ってるけど、どこか内に煮え切らない気持ちを抱えてる。

そんな感じがする。

 

「本来ならお前達を徹底的に痛めつけ、トドメを刺すのみ。だが、事情が変わった」

「事情……?」

 

千宮司くんが眉間に皺を寄せる。

この表情、納得いってない様子だ。

彼ほどのシードが自分の意思に削ぐわない決定をする。

ということは、彼にそれを強要している者がいる。

そして、そんなことができるのは……2人しかいない。

 

「ふん。あの男に、聖帝に感謝するんだな。奴が親父に取り合い、貴様らに救済処置が施された」

「……!救済処置?」

「そうだ。これから、試合をする。そこでもし俺達ドラゴンリンクに"勝つことができたら"お前たちの処分決定を撤回してやってもいい。そう、通達が出た」

「……っ!?」

 

私の後ろで白竜くんも瞠目する。

本当に温情だ。

なんで急に?

聖帝が千宮司くんのお父さんに頼んだって言ってたよね。

どうしてそんなこと……いや、今はどうでもいい。

とにかく、"そうなったのなら"これはチャンスだ。

 

「お前達が俺達に勝てば、フィフスセクター最強のチームを破ったことになる。つまりお前達の価値が再び証明され、育成プログラムが再開。命拾いするのだ。あくまでそんなことができうるのであれば、の話だがな」

 

さっきまで少しイラついていた千宮司くんがやっと嘲笑を見せ、私達を見下す。

なるほど。

確かに理屈は通ってる。

なんでかは知らないけど、聖帝は私たちの肩を持ち、屁理屈を捏ねたわけだ。

でも、決して簡単な事じゃない。

相手は最強だし、こっちの条件が変わっただけで向こうのやることは変わらず試合そっちのけで私たちを潰すこと。

つまり妨害ありの試合でそれを掻い潜って最強に打ち勝たなきゃいけない。

正直難易度鬼だ。

けど。

 

やる価値はある。

 

「OK。どのみちもう逃げらんないし」

「……」

「……受けて立つよ」

 

白竜くんが言葉を繋いでくれるかと思ってたけど、彼は俯いていた。

だから代わりに私が告げる。

この試合に勝てば皆、立場を取り戻す。

だってまた究極を目指すプランニングを再開するって、千宮司くんが言ったから。

頑張ればアンリミテッド・シャイニングは元通りになるんだ。

……皆のモチベが残っていればだけど。

 

「白竜くん、この勝負受けていいよね?」

 

一応確認する。

追い詰められてるから選択肢なんてないけど、キャプテンである彼にその意思があるのかどうか、このチームのことなんだから彼に最終判断を委ねなきゃいけない。

白竜くんは視線を落としたまま、顎だけ少し上げる。

 

「……あぁ。構わん。それで処分を免れ、仲間が助かるのであれば」

「そっか」

 

求めてた答えじゃないけど仕方ないか。

一旦代わりに私が意思表示して―――いや、ダメだ。

このままじゃ。

私はまた振り返って白竜くんの顔を伺う。

 

「ねえ。やっぱ違うよ。処分が嫌だから戦う。それだけじゃないでしょ、君たちは」

「……!」

 

白竜くんだけじゃない。

身を起こしたあと、白竜くんと同じように下を向いてたみんなもハッとして顔を上げる。

私は千宮司くんを一瞥して、彼が好きにしろといでも言うように顎で指図したのを確認してから、ドラゴンリンクに背中を向け完全に皆の前に立つ。

 

「生きる為に戦うのがゴッドエデンのシード。でも、皆はその中から選りすぐりで、その上の目的を見つけたんでしょ?だったらその余裕を見せてよ。また求めてよ。君達が抱いてた、本来の理想を」

 

天望を。

渇望を。

君達が目指し、異常な試練を乗り越えてきたのは。

 

なぜ?

 

「……っ!」

「目を覚ませ、アンリミテッド・シャイニング」

 

静かに告げる。

空気が変わる。

私の力を込めた瞳に皆が映る。

誰もが私に耳を傾け、瞠目し、私を見ていた。

 

本来、彼らと私の立場がこれほど逆転することはないし、決してあってはならない。

これが最後だ。

私なんかが皆の背中を押すのは。

 

だから。

今日だけ。

特別に、皆に。

 

告げる。

 

「究極を求めた先にある末路がこんなことだなんて、認めるな」

「……っ」

 

帆田くんが大きく瞳孔を開いて、私をその中に捉える。

彼は、息を飲む。

 

「運命を他人に委ねるな」

「……!」

 

青銅くんの顔つきが変わる。

 

私は鼓舞する。

やがてそれは、宣誓となる。

 

「与えられた使命じゃなく、自分達で望み、掴むんだ。―――その先にしかきっと皆の夢はない」

 

私の示す道は、既知のもの。

君達が辿ってきた軌跡。

その延長線。

新たなに提案するものじゃない。

想起を促している。

そうして行き着く先を、再び目指せるように。

 

「命令されたから、究極になるの?まだその使命を、自分の物にできてないの?応えろよ、アンリミテッド・シャイニング……!」

「……!!」

 

全員の、目の色が変わった。

それでいい。

 

「ふざけるな……!」

「お前に俺達の何がわかる」

「俺達は……!」

「究極なんだ!!」

 

皆が立ち上がる。

そうだ。

これこそがゴッドエデン最強のチーム。

私たちのエース。

究極のアンリミテッド・シャイニングなんだ……!

 

白竜くんもようやく顔を上げ、ゆっくりと私より前に出た。

そして、千宮司くんの前に立つ。

 

「この試合に勝てば。再びあの場所へあの日々へ戻れると、地位を取り戻せると、再び究極を目指せると。そう言ったな?」

「……あぁ。言った。二言は無い」

 

千宮司くんも高尚だ。

一度行ったことは曲げないし。

上からの命令を無視するような不義理もしなければ、卑劣なこともしない。

逆に言えばそれだけの誇りと、そんなことする必要がないという自尊心があるから。

力を持ってるものの品格と余裕だ。

それを見受け、白竜くんはこれ以上の敵なしと口角を上げる。

 

「面白い。ここで勝って、再び究極に返り咲く!」

「そうだ。それだ!お前達は究極だ!!必ず勝って、究極を取り戻す。行くぞ……!!」

『おう!』

 

白竜くんの宣言と、私の号令で皆が吠えた。

このチームでドラゴンリンクを倒す……!!

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