「定刻。試合を開始する。言っておくが、これはフィフスセクターによる公正で神聖な試合だ。前のように12人で挑むような無粋はするなよ……?」
「……!!」
ポジションについてすぐ。
千宮司くんが私達を見下した発言をぶつけてくる。
白竜くんが前に出た。
「いいだろう。当然だ。新田を外して長門をフォワードに入れる」
「失敗作のモルモットもさすがにサッカーのルールは弁えているようだな。腐ってもフィフスセクターのシードか。その名をこれ以上汚すなよ?」
「……」
千宮司くんを睨みつけて白竜くんは戻ってきた。
言葉はいらない。
あとは実力で示せばいい。
私も白竜くんの肩を持つ。
「勘違いするなよ。12人相手でも俺達は負けない」
「だが、ルールも守れぬ奴にフィフスセクターを名乗る資格は無い」
「これはフィフスセクター同士の内部試合。そこに不正があってはいけない」
「逆に言えばお前達を逆賊ではなく、まだフィフスセクターとして扱っている。寧ろ感謝しろ」
口々に告げるドラゴンリンクの面々。
私達はそれらを無視してストレッチに従事する。
改めて、フォーメーションを確認する。
「とりあえず、私と白竜くんが2トップ。帆田くんをMFに下げて、青銅くんをセンターバック。化身使い3人を中心に攻めていくって認識でいいよね?」
「あぁ」
白竜くんが頷く。
向こうは化身使いが大量にいるし、攻められた時の為にも化身使いは前線に固めておきたいという考え。
これでドラゴンリンクに対抗する。
「この試合。奴らはゴールより俺達を狙ってくるだろう。だが、俺達はゴールを狙う」
「うん。もう相手を無力化することは考えなくていいね。点決めて勝てば解決になったんだから」
「妨害を受けながら勝ちに行くのか……キツイな」
「点取りに行くのはいいけど、そもそも決められるの?あのゴールキーパー、かなり固そうだけど」
白竜くん、私、帆田くん、青銅くんで集まって試合直前最後のミーティング。
確かに青銅くんが言うように千宮司くんからゴールを奪うのは容易じゃない。
話は単純になったけど、難易度は上がった。
「とにかくパスを繋いで私がガチャ引くしかないかな」
「長門。俺達の高速パス回しについてこれるか?」
「フィニッシャーが私なら最後に受けるだけでしょ。なら多分いける」
相手もフィフスセクターの上澄みだから皆がレベルの低い私に合わせる余裕はない。
アンリミテッド・シャイニングのパスの速さは相手目線で経験済みだからその凄さを知ってるけど。
正直あの中に入って前線にボールを運ぶのは無理。
最後にボールを受け取るのもできるか怪しいけど……そこはもう腹を括るしかない。
できなくてもできるって言って、やらなきゃこの状況は覆せない。
「ポジションに散れ!俺達は再び究極の地位を取り戻す。わかっているな!」
『おう!』
作戦会議は終わり。
気合いは充分。
それを確認した千宮司くんが手を挙げる。
「それでは試合を開始する。アンリミテッド・シャイニングの最後の運命を決める試合をな」
「最後なんかじゃない。行くぞ!」
ホイッスルの代わりに千宮司くんの腕が下ろされた。
最初はアンリミテッド・シャイニングボール。
私が白竜くんにボールを渡して、スタート!
「先制する!」
『精鋭兵 ポーン……!!」
白竜くんが飛び出して、迎え撃つフォワード4人。
相変わらず一つ覚えのように化身が4体出現する。
それを見て急ブレーキ。
白竜くんのバックパス!
「ボールを運べ!」
「了解!」
「化身使いはセンタリング!」
「わかった!」
「あぁ……!」
ボール運びは帆田くんに任せて私達3人の化身使いが敵陣中枢まで走り込む。
帆田くんがフォワードの化身4体を前にした段階で、またバックパス。
ミッドフィールダーの銀座くんが受け取り、篠山くんと併走する。
そして、彼らも敵の前線へ到達したと同時に青銅くんへパス!
「青銅!」
「魔宰相ビショップ!」
「精鋭兵ポーン!」
青銅くんに繋がると予測し相手のミッドフィールダーが先手を打って化身を出し、ボールが渡る前に接近する。
パスを受け取ると、青銅くんは精鋭兵ポーンで対抗。
既に目前までビショップが迫っていたため、パスを出す余裕はない。
ポーンとビショップが衝突する。
「クソ!邪魔だ……!」
「ドラゴンリンクに化身で勝てると思うな!」
「鉄騎兵ナイト……!!」
「させるか!魔狼アモン……!!」
青銅くんがビショップに手こずって足を止めている間に。
もう1人のミッドフィールダーが化身を出して横槍を入れようとしていた。
そこに並走して私も化身を出し、青銅くん達が競り合ってるボールに対して同時に突っ込む。
「青銅くんサポート!でやぁ……!」
「なに!?」
「しまった……!」
私が一歩先に介入できたのを見て、青銅くんが胴体を引いてくれた。
それを利用して私は身体ごと前のめりに空いた空間に飛び込んで、ボールをパワーで掻っ攫いそのまま走り抜けすぐに踵で急ブレーキ。
サイドラインギリギリで右足を倒して壁を作りボールをキープ。
身体は逆に流れ左手はついて半スライディングブレーキ。
そして、即座に体を起こして化身使い2体が奪いに来たところで逆サイドにパス。
これでミッドフィールダー2人を引き付けながら次に繋げた。
「帆田くん!」
「は!?おい……!」
「……っ!?」
帆田くんが目の前を通過した私のパスを目で追ったあと、鬼の形相で私を睨む。
ちょうど私と白竜くんの中間ポジにいたから渡したけど、パスが通らなかった。
なんで!
「魔女クィーンレディア!」
「鉄騎兵ナイト!」
「魔宰相ビショップ!」
「煩わしい!聖獣 シャイニング・ドラゴン……!!」
フリーになったボールを巡って4人の化身使いが群がり、集結する。
3体の化身が向かってくるが、白竜くんはものともせず自身の力に絶対の信頼を持つ。
シャイニング・ドラゴンは3体の化身よりも大きく、全てを薙ぎ払う。
「うわああっ!?」
「ぐあっ!」
「馬鹿な……!?」
「俺はお前達とは格が違う!!」
ナイトを尻尾で叩きつけ、ビショップを龍爪にかけ、クィーンレディアを突進で吹き飛ばした。
そして、すぐすま私を探し、もう1人のディフェンダーを引きつけるために帆田くんを使う。
「次は零すなよ」
「ミスをしたのはあいつだ……!」
「ごめん!次は大丈夫。ちょうだい!」
帆田くんでワンクッション挟み、ディフェンダーの接近を確認してからのワントラップ&右パス。
私は足を伸ばす。
けど……。
「ちょ……!」
「バカ!下手くそが!」
「ごめん……!でも、なんで……!」
せっかくフリーのゴール前、チャンスだったのに。
目測を間違えて足が届かなかった。
ボールはラインを超えて相手のコーナーキックになる。
最悪。
ゴールを決められるかどうかもガチャなのに、そもそもシュートにありつけない。
ゴール前までは来れたのに、それが余計にもどかしい。
パスが何故か通らない。
私のパスなんて大したことないから帆田くんが取れない理由はないし、帆田くんのボールは前言とは違って少し調整してくれてたのに取れなかった。
なんで?
原因がわからない……!
「ハッ。何をやっている。パス回しもマトモにできないのか?」
「……っ!」
千宮司くんに鼻で笑われてバカにされる。
でも、今回はぐうの音も出ない。
相手のコーナーキックが始まる前にみんなで集まる。
「なんでパスが繋がらないんだろ?」
「そんなのお前が下手くそだからに決まってんだろ」
「いや、俺と青銅とのパスは上手くいっている。原因は他にある」
「あれじゃない?俺と白竜は長門とAランク棟で一緒にやってたからお互いのサッカー知ってるけど、皆は初めて連携するからじゃ」
『……!』
青銅くんの一言に一同「それだ」と目を見開いた。
そっか。
白竜と青銅くん以外は私との組み合わせだとお互いのリズムを掴めてないんだ。
だから、連携できない。
「……じゃあ、私たち3人だけで攻める?」
『……』
全員が渋い顔をする。
当然の反応だ。
化身使いは絶対先頭に立たなきゃいけない状況だから3人がピックされるのはマスト。
その上で連携が必要ならもうそういう展開になる。
けど。
「3人だけで……ゴールまで運べるの?」
「そ、それは。多分。見た感じフォワードの4人はまだ完全に化身パワーが回復してる訳じゃなさそうだし、私1人で抑えられると思う」
「ミッドフィールダーの4人はどうするんだよ」
「……俺のシャイニング・ドラゴンなら4体まとめて相手をすることも可能だ。だが」
それだと残る化身はディフェンダーとキーパーの3体。
ディフェンダーは帆田くん、笹山くん、銀座くんでマークするにしても……最後のフィニッシャーは。
「俺があのゴールキーパー破るの?本気で言ってる?」
「……っ」
まあそうなるよね。
ってなるとこの戦術はなし。
とはいえ他に何も代替案は……。
「……!そうだ!」
私は閃いたことをみんなに告げた。
そしたら白竜くんと青銅くんがこれでもかというほど嫌な顔をした。