「魔女クィーンレディア!」
「……!」
コーナーキックからさっそくディフェンダーの護巻くんに渡り化身が出現。
そこからまた化身シュートのパス!
「うわああ!?」
「ぐあっ!」
「かはっ……!?」
ディフェンダーからミッドフィールダーへ。
ミッドフィールダーからフォワードへ。
化身シュートのパス。
その弾道にいた青銅くん、帆田くん、銀座くんがやられる。
次はポーンによる笹山くんを狙ったパスルート!
「おらよっ!」
「貰った!」
「なに!?」
私は化身を出して胸トラップでパスカットして笹山くんを守った。
でも、目的は化身シュートのパス回しによる攻撃を防ぐことじゃない。
わざわざセンターラインまで後退してパスルートに介入したのは、私がボールを保持するため。
「よし!いくぞ!」
『……っ!!』
私がボールを足元にキープし、宣言すると。
アンリミテッド・シャイニング全員がギョッとしてサイドラインに向かって散開していく。
さっき倒れた青銅くんたちも慌てて身体を起こし、悲鳴をあげながらなるべく私から遠いラインへ避難した。
青銅くんに至っては身を伏せて身体を震わせ、嵐が過ぎるのを耐え忍んでる。
そんなアンリミテッド・シャイニングの異常な行動を前にして、さすがのドラゴンリンクも私からボールを奪いに行こうとした足が止まる。
「なんだ?どうした?」
「こいつら一体何を……?」
「……?」
当然ドラゴンリンクは困惑。
全員が両サイドに寄ったアンリミテッド・シャイニングの面々を見渡している。
千宮司くんですら訝しむこの異様な光景、状況。
私はただ1人、フィールドの真ん中で深く息を吸い、化身を引っ込める。
「……!こいつ、化身を……」
「何をするつもりだ?」
私が目を瞑ると、千宮司くんの警戒する声が聞こえる。
こういう時に私の雰囲気を感じ取って、嘲笑しないところはさすが。
でも、ここで見下した態度を取らないってことは結局私のパワーの、その余波だけで危険を感じる程度の人なんだ。
じゃあ―――"私がこれからやろうとしてることもきっと通じるね"。
「……!」
開眼。
ドラゴンリンク全員が一定上距離をとって私を観察している。
全員が油断せず化身を出す判断を下した。
いいね。
相手がちゃんと怠慢のない強者って助かるわ。
全員全力ならこっちも遠慮しなくて済むよね。
まあ、力加減なんてできないんだけど。
「……」
また、深く息を吸う。
私は今、この瞬間だけ。
アリアに言われたことを、約束を破る。
"全力で蹴るな。持ってるパワーを全て込めなくても超威力のシュートになる。そして、力を抜けば真っ直ぐ飛ぶはず"
ごめん、アリア。
言いつけを今日は守りません。
私の中の制限を……全て解除する!
「リミッター・オフ!!」
「うわあぁぁ!?」
宣言すると、青銅くんが頭を抱えながら発狂する。
たださえ縮こまってたのにさらに身体を小さくしている。
ドラゴンリンクがビビる。
私の筋肉が凝縮される。
ビキビキと音を立て、今まで抑えていた力が体全体に浸透する。
そして。
「ハイパワー・メガバズーカ!!」
即興で考えた適当な必殺技の名前を叫ぶ。
やることはとにかく加減無しで全力で蹴る!以上!!
足を振り抜くと、バゴォォン!!と爆発的な音が響いた。
狙いは正面の鉄騎兵ナイト……なんだけど、明後日の方向に飛んでいった!
「ハッ。どこ蹴って―――ッ!?う、うわああああああ!!」
ミスキックと判断して右サイドに流れたシュートを拾いに行こうとした聖城くん。
しかし、直後に近づいたことを後悔する。
もう既に正面逃げられない。
真っ直ぐ捉えて初めて、迫り来る恐ろしい砲弾の性質を認識した。
傍から見て侮っていたが、その威力を目の当たりにし、それが生きてきた中で体験したことのない球威だったことに手遅れになってから気づいた。
狂気の殺戮砲丸をもはやくらう以外の選択肢はない。
聖城くんは恐怖に支配され、焦燥した表情で首を横に振るう。
しかし、彼の制止とは裏腹に、現実は無慈悲にも彼の胴体をぶち抜きその上"クラッシュ"した。
「がはっ……!?」
シュートは聖城くんの身体をバネに彼を弾いて方向転換。
彼は豪速でぶっ飛び、ベンチに背中から突っ込んだ。
ガシャン!!と音と埃が立って、ベンチがグチャグチャになり聖城くんの姿がそのがらくたの中に消える。
足だけがプラーンと外に投げ出されていた。
『……は?』
聖城くんの末路を見て唖然とするドラゴンリンク。
でも、呆けている場合ではない。
聖城くんの身体を壁に跳ね返ったシュートはまたフィールドに戻ってきてる。
その弾道はミッドフィールダーへ。
「お、おい!待て……!」
「うわあぁぁ!?来るなぁ!!」
「なっ……!?」
はい。
被害者2人追加。
弾丸が視界を横切ったと思ったら2人が目の前から消えたから千宮司くんが認識できていない。
目の前から忽然と消えた2人に瞬きを何度もする。
彼が恐る恐る2人の行方を見渡し、探すと……。
「ハヒッ……フヒュ……ッ」
「うっ……ぐっ、助け……っ!」
うわ、なんか片方やばい声出てる。
芝に倒れ伏せた2人。
もう片方が力なく伸ばした腕は地に落ちる。
「なっ……!?は!?」
一瞬にして3人がノックアウトされて立ち上がれなくなった。
当然化身も消えた。
つまりドラゴンリンクは化身を3体失った。
千宮司くんは瞠目したあと、信じられないものを見るような目で私を見る。
「あ、どうも。ざっとこんな感じです」
「いや、は?は!?き、貴様一体何を……!?」
あー。
千宮司くん、完全に混乱してる。
全く状況を飲み込めてない。
生き残った……じゃなくて、まだピンピンしてる他の面々も目の前の悲惨な光景に慄き、私に畏怖の目を向ける。
いや、そんな化け物みたいな扱いしなくても。
「さすが長門。人を殺めてもケロってしてる……」
「いや、命まではさすがに奪ってないから。多分。え?死んでないよね……?」
嵐が過ぎ去ったのを確認して身を起こした青銅くんが私の態度にドン引きしてる。
なんかそう言われると心配になって特に酷い有様の聖城くんを遠目で確認しちゃったじゃん。
正直こっからじゃわかんないけど足がピクピク動いてるし多分大丈夫でしょ。
……どうしよう、死後痙攣とかだったら。
「とりあえずこれで3人消えたね。いや、勝てばいいんだったっけ。じゃあ戦力3体の化身分削れたね。あ、白竜くん。そこのボール拾って私に寄越して」
「相変わらずの化け物め。もはや怪獣か。なぜこいつが野放しにされているのか未だに理解できん」
「兵器所持違反とかじゃないの?普通檻にいるでしょ、こいつ」
「君たち味方だよね……?」
なんか白竜くんと青銅くんに酷い言われようなんですけど。
あと私人間です。
とりあえずまた私にボールが渡ったので……。
「さぁ~て、と」
「ひっ!?」
「こっち見んな!」
「おい!なんだあいつ!ドーピングしてんのか!?」
「化け物め……!ちくしょう」
いや、まだトラップしただけなんですけど。
なんで私が悪者みたいになってんの?
ま、これから慈悲なく撃つけどね。
「貴様ら……!こんなことが許されると思っているのか!?何だこいつは!?やめろ!やめさせろ!これはサッカーだぞ!?」
千宮司くんが慌てて制止を呼びかける。
もはや懇願の域だ。
はえー、あんなプライドの塊みたいな人でも追い込まれるとこんな慌てふためくんだ。
てか白竜くんと青銅くんは千宮司くんの物言いに「わかる」みたいな感じで深く頷くのやめれる?
君たち、どっちの味方なの……?
「よーし、じゃあいくぞー」
「お前ら止めろぉぉぉーーーーーーー!!」
「ふざけんな、お前がいけ!」
「あんなもんに近付けるか!」
「たが、このままじゃ撃たれ―――」
「ハイパワー・メガバズーカッッッッ!!!!」
おうおう、混乱の渦ですわ。
んでそこに容赦なくぶち込みますわ。
「うわあああああ!!」
「グギャアァァッッ!?」
「嫌だぁ……!!」
「助けて、千宮司……!」
「……っ」
悲惨な光景が視界を支配する。
次々と化身が凶弾に倒れていく様を目にし、千宮司くんの顔がどんどん青ざめる。
「ハイパワー・メガバズーカ!あっ。ヤバ」
「うわあああ!?バカ、誰狙ってんだ!!」
ミスって青銅くんに流れ弾が向かった。
そう、このシュートの弱点は別に敵にだけ牙を剥くとは限らないこと。
だって、そもそも狙ったところに飛んでないし。
なので……ごめんね、てへっ。
「~~~~っ!……っ!……っ!うっ、おえっ」
青銅くんが吹っ飛んで転がって涙を浮かべながら地面とキスしてた。
息できなくなったあと、過呼吸。
んで最後に嘔吐した。
でも、あれダメージ受けて吐いたんじゃなくて多分トラウマ想起したんだろうなぁ……。
前にも何回か当たってるからね。
「うぅ……最悪。なんでまた……ほんと、長門嫌い……」
「あぁ……いや、ほんとにごめん。大丈夫?」
さすがに可哀想になった。
ただ青銅くんの泣いてる顔ってなんか可愛くて色々刺激されるんだよね。
悪さ働いちゃうわ。
うん、じゃあ仕方ない。
わざとじゃないし。
「なんであのシュート受けて意識を保ってられるんだ……」
「フッ。俺達はAランク棟で長門のミスキックを何度も受けている。その過程で耐性がついたんだ!奴のシュートでダウンするなど、温い環境で育ったな!」
白竜くんの威張りに向こうがドン引きしてる。
てか私といたところを危険過酷地域みたいに言うのやめてよ。
……って、あまり強く言えないど。
「これがゴッドエデンだというのか……!俺は勘違いをしていた。こんな過酷な環境でシードを育成しているなど、生存者は存在するのか!?」
「おい」
目の前に沢山いるやろがい、と千宮司くんにツッコミを入れる。
人を殺戮マシーンみたいに言うんじゃない。
まだ1人も殺ってません。
あとアンリミテッド・シャイニングの皆も「ふざけんな!こんなのと一緒にすんな!」「こいつが特別!」「まだ教官の方が優しい」「こいつと同じ空間にいることに比べればゴッドエデンは天国だ!」とか言うのやめて?
「ハイパワー・メガバズーカ!!」
「ぐはっ!?」
「あっ」
今度は白竜くんが被弾した。
でも、なんか悶えながら笑ってる。
えっ。
壊れた?
心配になったけど寝転び咳き込みながら「勝てる!勝てるぞ、長門。お前のパワーで奴らに地獄を見せてやるといい……!」と叫んでる。
化け物には怪獣ぶつけろ的なこと考えてるでしょ。
そろそろ怒るよ?
「大体やりたくてやってる手段じゃないっつーの……。これしかないからやってんの!」
「うわぁぁぁ!?」
さぁ、ガンガン撃っていきましょうってことで。
暫くドラゴンリンク(※アンリミテッド・シャイニングを一部含む)の断末魔が響き渡った。
……気付けば、フィールドから化身の姿が完全に消えた。※味方も含めて
たった1体、ゴールを除いて。
「……っぁ!?」
「……っ!……っ!……おっ。綺麗になったね、ゴールまでスッキリ。じゃあ、あとは決めるだけだ」
「貴様……!我らドラゴンリンクの化身を……!俺たちは11人全員が化身使いなんだぞ!?それをただのノーコンパワーで……!」
「あー。いや、ほんと。全員化身使いは二度とゴメンなくらい大変だったわ。でも、もう誰もいない。……やっと2人きりになったね。キャッ」
「ふざけるな!!くたばれ、クズ女が!!」
HAHAHA。
悔しかろう、悔しかろう。
……クズは言い過ぎじゃない?
「よーし、じゃあいくぞ!ハイパワー・メガバズーカ!!」
「やめろぉぉぉぉ……ぉ、お……?」
「あっ」
私が足を振り抜くと、突如目の前を豪速球が横切って私と千宮司くんの視界からボールが消えた。
私達は同時に明後日の方向に飛んでいったボールを見て、ポカーンとする。
あっ、照明粉砕しちゃった。
備品って破壊したら請求とかされんのかな……いや、さすがに経費だよね?
いや、そんなことはどうでもいい。
私はゴールを前にするまで失念してたし、千宮司くんもシュートが放たれるまで忘れて咄嗟に身を庇っていた。
でも。
「……」
「……」
当たり前のようにシュートを外して、一瞬試合が止まる。
ここでおさらいしよう。
このシュートの弱点はなーんだ?
「馬鹿め。真っ直ぐ飛ばんならゴールには入らんだろ……」
「はい。仰る通りでございます」
多分自分にも言い聞かせてた千宮司くんの冷静な指摘に、さっきまでイケイケモードだった私も千宮司くんと同じく大量の汗をかいた。
そうじゃん、この作戦ゴール決まらないじゃん。