「えっ。じゃあ何?俺たち被弾損ってこと?」
「ほんっっっっっっとごめん!!いや、マジで!!この通り!!」
「ふざけんな!!」
「頭のネジ外れてんのか!」
「お前、なんか人として欠けてんだろ!」
「死ね!」
私が土下座を披露すると、なぜかボロボロのアンリミテッド・シャイニングの皆様からお叱りという名の罵詈雑言を浴びせられる。
全員痛みを抑えながら私を睨んでる。
本気で怒ってらっしゃる。
まあ私のシュート被弾するとマジでクソ痛いらしいし、ホント相当嫌だったんだろうなぁ……。
そういえばあのアリアですら「お前ふざけ……っ!~~~っ」って蹲ってたっけ。
何はともあれ、味方も巻き込みまくって点も入りませんでしたじゃ作戦として破綻してる。
「うぅ、マジでごめん。意味ない作戦だった」
「……本当にそう思うか?」
「えっ」
まさかの擁護。
白竜くんだ。
「本来3人でゴール前までボールを運ぶ想定だったが、長門1人で済んだ。これを利用しない手はないだろう」
「いや、でもあのシュートはそもそもゴールに飛ばないんだって……」
「ならば違う技を撃てばいい。貴様はオイゲンに矯正されたのではないのか?」
「あー……」
なるほど。
そっか。
そらそういう指摘になるよね。
皆も確かにって顔してる。
んー……。
そうだよね、皆"知らないもんね"……。
「それが……そういう訳にもいかないんだよね」
「……?なぜだ」
「いや、私ほんと器用じゃなくてさ。フルパワーならフルパワー。制限するなら制限するでメリハリつけないとダメなんだよね」
皆がポカンとしてる。
あぁ、えっと。
だからつまり……。
「ゴール前でいきなり力を抑えるってのができなくてさ。だから、他の技を使っても外れると思う」
「なん、だと……!?なんと使えん奴だ」
「もうちょいオブラートに包もうとか本音隠そうとか思わなかった?」
あんまりにも率直すぎる白竜くんの罵倒。
まあぐうの音も出ないけどさ。
「長門がシュート撃てないならどうする?誰が撃つ?」
「……俺が撃つしかないだろう」
白竜くんがつぶやく。
そうなるよね。
けど。
「千宮司くん……破れるの?」
「俺は究極だ。負けはせん」
強気な言葉とは裏腹に、視線を落とす白竜くん。
多分自信はあるけど確証はないんだ。
私も白竜くんなら、って期待しちゃうのはある。
「長門が無理なら白竜がやるしかないよ」
「あぁ。悔しいが……俺達のチームにお前達以上のストライカーはいない」
「……!」
「……」
私は目を見開いて帆田くんを見た。
彼はそっぽを向いた。
耳が赤い。
私は白竜くんを見ると、彼は無言で鼻を鳴らし腕を組んだ。
青銅くんを見ても「当然でしょ」みたいな勝気な顔をしている。
そうか。
皆……私を認めてくれたんだ。
嬉しいな。
でも。
「ダメだよ、皆。状況に流れちゃ。私、皆みたいに努力してない。だから、私を仲間にしちゃダメ。認めちゃ……ダメだよ」
「……!」
私の言葉を聞いて白竜くんが瞠目する。
しかし、すぐにキリッとした目に戻って私に鋭い視線を向ける。
「ならば、俺達がそのユニフォームをただのシードに貸したと思っているのか?」
「えっ……いや、それは……」
そんなわけない。
アンリミテッド・シャイニングは誇り高きゴッドエデン至上の究極のチーム。
そのユニフォームは神聖で腕を通すことは、彼らと同じくらいの実力と誇りが必要。
「……!」
私は気づく。
そうだ。
なのに彼らは貸してくれた。
それは緊急時だから?
それもある。
けど、それだけで彼らがユニフォームを容易く渡すはずがない。
……顔を上げると、3人とも私を見ていた。
「お前は俺達に認められたんだ。ま、今日だけだけどな」
「ウチは選考基準が厳しいからね。お前が究極に到達したとしても、それは一瞬かも」
「だが……間違いない。今、この瞬間だけは。長門未来。お前は俺達と共にある。究極のサッカープレイヤー―――いや、ストライカーだ」
芯のある強い瞳が私を映す。
「~~~~~~っ!」
私の胸の中に熱いものが込み上げてきた。
サッカープレイヤーとしては物足りない。
だから、今はストライカー。
というかこれから先、その先はないかもしれない。
私、努力しないし。
それでも構わない。
今、この瞬間だけでも彼らの誇りを借りることが出来るのなら。
―――こんなに頼もしいことはないから。
「凄いね。これ着てると凄く力が湧いてくるよ」
私はユニフォームに、胸に触れて瞼を閉じる。
彼らが血のにじむような思いをして掴み取ったもの。
決して、楽に腕を通してはいけないもの。
だからこのユニフォームに誓える。
彼らを守り通すこの意志を継続することを。
命をかけて彼らを助けることを。
「わかった。フィニッシュは白竜くんで。青銅くん、私から白竜くんにパス繋げるサポートしてくれる?」
「了解」
「決まりだ。行くぞ、俺達は点を取りに行く!」
『おう!』
白と黄色が基調のユニフォームを纏った4人が力強く頷く。
そして、散開。
作戦も覚悟も決まった。
あとは……攻めるだけだ。
「ふん。何を意気込もうと無駄だ。ドラゴンリンクには勝てない……!」
「ボロ雑巾で言われても説得力ないけどね」
相手のスローイング。
私達は配置につく。
言い返すと、千宮司くんが嫌な顔をした。
だったら最初から煽るなっつーの。
あとドラゴンリンクはメンバーチェンジ。
特にダメージが酷かった5人が一気に代わった。
これで化身使いが減ったかと思えば、多分控えから出てきたのも全員化身使い。
なんとなく感じる。
つまり向こうは化身パワーだけ考えれば回復しただけって訳だ。
めんどくさいな、本当に。
でもこれで間違いなく最後の弾なのは間違いない。
もう一度お見舞いしてやる!
「……っ。……?」
スローイングを待ってる間、何か身体に違和感を覚えた。
ガクッと一瞬力が抜けたような感覚。
おかしいな、今は最大限力んでるフルパワーモードなんだけど。
ま、いっか。
今は気にしてる余裕は無いから無視。
それにもう……言ってる間にボールが放られる。
「私が取りに行く!チャージ得意だから……!」
「任せた!」
私は跳躍して、向こうのディフェンダーも跳ぶ。
「もらった……!」
「ぐっ……!こいつ、硬……っ!」
ドラゴンリンクのボールを胸トラップでカットした。
空中戦にて、私の体幹を崩せるものはいない。
パワーで着地と同時に吹き飛ばして、私はボールをキープ。
すぐにパスルートを探すけど……。
「魔女クィーンレディア!」
「鉄騎兵ナイト!」
「……!」
私が着地したと同時に向かってくる化身2体。
さすがに判断が早い。
しかもあと3体は様子見してる。
下手に囲むと私のハイパワー・メガバズーカで一網打尽にされるから、その対策だ。
学習能力も優秀。
まあ、構わず撃つけどね!
「化身を蹴散らす!ハイパワー―――ッ!?」
『……!?』
私が足を振り上げたその瞬間、敵も味方も瞠目した。
明らかに起きた異変。
私の身体が一気に硬直したのは外から見ても丸わかり。
全身に走るひび割れのような激痛が私を襲う。
「ぐあっ……!?~~~~っ!……ぁ!」
「……!まさか……!長門、俺に寄越せ。パスだ!」
「馬鹿め。もう遅い!」
『……!!』
私がボールを落として身を覆ってる最中、白竜くんが状況を飲み込んで即座に行動を起こしたけどそれより千宮司くんが早い!
彼は一瞬で私に対して距離を詰めて……いや、初動の判断が良すぎる。
だから、白竜くんが遅れてるように見えた。
千宮司くんは私のハイパワー・メガバズーカが不発になり、激痛で私の動きが止まるのを予測してたんだ!
なんで!?
「自分でもわかっていないようだな!そうかと思って仲間にも共有せずにいて正解だった。あれほどのパワーシュートがその身体で何度も撃てるものか!!」
「……!」
そうか!
私は前回の試合でかなり負傷してる。
外傷はケアしても、中身はボロボロのまま。
そんな状態で昔みたいにパワーを振り回すのは、限度があったんだ。
道理で違和感があったはずだ。
昔はどんなにパワーを発揮してもこんなことにはならなかった。
なった事がないから気付けなかったんだ。
経験してないことは予測できない。
千宮司くんは経験値が豊富だから、察知できたんだ……!
"最古のシード"だから……!
「……っ!」
「もう貴様に好き勝手はやらせん。デタラメなやり方もここまでだ!」
千宮司くんが迫る。
シュートを撃つならともかくフィールドプレイで彼に勝つことは無理。
かといって化身に囲まれてるからパスも不可能。
ボールを取られて攻められて、点を取られたらヤバい。
ハイパワー・メガバズーカを使えないんじゃゴールまでボールを運ぶ手段はあっても、白竜くんにシュートを撃たせることができない。
つまり点を取られたら追いつくことも厳しい。
どうする?
ヤバい。
どうしよう。
全てがスローに見える。
考えろ!
「無駄だ!お前にはできることはもう何もない。雑魚が考えを巡らせたところで何にもならないんだよ!身の程を知れ、女……!」
「―――っ!!」
千宮司くんが私からボールを奪おうと足を伸ばす。
その背景、ゴール。
キーパーが接近してるから、当然がら空き。
もし、今ここでシュートを撃つことが出来れば。
でももう目前まで迫ってる。
シュートモーションは間に合わない。
―――間に合わないなら、シュート以外でいれたらよくない?
他に選択肢は無い。
希望の道は、前にしか存在しない!!
ちょうど今、私のパワーは落ちている。
アリアが言ってた。
パワーを抑制しても私なら凄いシュートが撃てる。
アンリミテッド・シャイニングとの試合で証明した。
力を全く込めなくてもゴールは破れる。
なら今回もそれをやればいい!
シュートができないなら……"トラップ"だ!!
きっと私の有り余るパワーなら、トラップだって力一杯やれば得点能力が付与されるはず。
ボールを一回浮かせて、千宮司くんがその浮遊を目で追い、瞠目する。
そこからもう一段階。
力一杯・高速・力みすぎトラップ!
まるで早撃ち!!
これが―――
「"クイック・トリガー"……ッ!!」
「は!?トラップだと!?」
私は打ち上げるように足を振り抜くトラップを披露した。
ボールは凄まじい回転がかかり弧を描き、千宮司くんの顔の真横をカーブで通過していく。
しかも速く、力強い。
ディフェンスの護巻くんが千宮司くんの背後で反射で滑り込む。
彼の足はギリギリ弾丸に届いたが、化身を使用しても尚、そのパワーに押し込まれ圧される。
「……っ。なん……っ、だよ……!」
「護ま……!」
「なんなんだよ、お前……!!」
「……っ」
千宮司くんが振り返った頃には、遅い。
護巻くんの足が弾かれて、彼は私に理不尽でも訴えるように泣きそうになりながら狼狽した顔を向けた。
私はただ、真顔で彼を見下ろす。
そして、ボールは無慈悲に。
1度バウンドして、力強くゴールネットに―――"突き刺さる"!
『―――――――――――っっっっっ!!!!』
その光景を瞳に映した瞬間。
私はゴールに背を向け、ガッツポーズを振り下ろし、声にならない声で雄叫びを上げた。
そんな私に青銅くんは興奮して後ろから飛びつき、白竜くんと帆田くんも珍しく私に駆け寄り吠えていた。
ずっと変動しなかったスコアが、動く。
アンリミテッド・シャイニング 1 - 0 ドラゴンリンク
「これが究極のストライカーだ!私は今日だけ、アンリミテッド・シャイニングなんだ!!」
興奮で叫び、その弾みで出現した魔狼アモンの咆哮が。
轟いた。