「8人集めたわ。2人を除いて全員アリアの処刑対象に入っていた子になるけれど」
「全員女か。狙いはやっぱり……」
「そうね。女のシードの方が立場が厳しいからよ。外の世界の中学サッカー部には派遣できないもの」
「それ前から思ってたけど女のシードって何のためにいるの?」
「……色々あるんだよ。とにかくメンバーについては賛成だ。シズクらしい」
「戦力的に大丈夫なの?偏見はよくないけど女だと男の子よりは身体能力落ちるし……」
「身体能力に関しては偏見じゃなくて事実ね。弱いとは思うけれど……」
「ふん。問題ないだろ。女だから劣ることはあっても、女だから弱いとは限らない。ミクはともかく私とシズクがいればある程度は戦える」
「いや、私もAランクシードなんだけど?なんで私は雑魚扱いなの?」
「お前はノーカンだろ。ノーコンだし」
「上手いこと言ったわね」
「は?別に上手くないから!」
さて、くだらないやり取りはこの辺りにしておきましょうか。
集めたメンバーが皆ポカンとしてるから。
私たちは改めて彼女達の前に立つ。
「私はシズク。貴女達がこれから所属することになるチーム、ヴァルキリアのキャプテンよ。そして、私の隣にいるのがアリア」
「どうも」
「副キャプテンよ」
「初耳なんだが」
アリアが私を2度見する。
知ったこっちゃないわね。
新メンバー一同は体育座りで私からアリアに視線を移す。
「それで、その隣がミク。書記よ」
「いや、初耳なんだけど。あ、だからホワイトボードあんの?じゃあ私達の名前書いとこ」
「おう。頼んだ……いや、字汚っっっったな!嘘だろ、お前」
「書記はたった今クビになったわ。他にやりたい人いるかしら?」
「えぇ……」
「不安。大丈夫か、このチーム」
顔を顰めたのは中国人姉妹。
確かチェンファとチェンナイだったわね。
私は2人に目配せする。
チェンファの方がそれに気づいた。
「あ、ご指名?だったら私がやろうか?私、日本で生まれ育ったから日本語大丈夫だよ」
「おい。日本語マウント取られてるぞ、日本人。大丈夫か」
「わ、私ゴッドエデン育ちだし……」
「あぁ。だから、読み書きできないのか」
「そうそう」
「その割に私よりサッカー下手だな」
「うるさい」
隣が喧しいわね。
「とりあえずチェンファ、頼めるかしら」
「はーい」
チェンファが手を挙げて承諾してくれた。
そして、隣はまだやってるわね。
「ゴッドエデンって日本?」
「知るか。私に聞くな」
「そろそろいいかしら?」
「あっ」
「うっす。全部こいつが悪いっす」
「全部擦り付けるじゃん」
いつまでやってるのよ。
まあもういいわ。
「さて、私達の自己紹介は終わったから貴女達も―――」
「アリア!アリアってあの時のお姉さんだよね!」
「絶対そうだよ!あの時のお姉さん!」
「綺麗な目だもん!忘れないよ!」
「髪も綺麗!」
「えっ。あ、あぁ……お前たちあの時の……」
中学生にも満たないであろう子供たちが4人、アリアの元に寄り付く。
彼女たちは全員この前アリアがマシンから守った子供たちね。
だから、満面の笑みで懐かれてる。
「アリアと同じチームなんだね!」
「わーい!」
「チームに入れるシードは凄いんだよね?しかもアリアと同じってすごーい!」
「アリアめちゃくちゃサッカー上手かったもん!私達も期待されてるのかなぁ」
「お、お前らちょっと落ち着け……」
あら。
珍しくアリアが戸惑ってるわね。
助け船は……出さないでおきましょう。
子供たちも喜んでるし。
「なんかご機嫌?」
「そうね。久々に癒される光景かもしれないわね」
「あはっ。確かに」
ミクが私の隣にちゃっかり寄ってきて2人で微笑み合う。
「私、ユノ!」
「私、ユカ!」
「私、ユマ!」
「私、ユナ!」
『よろしくね!アリア!』
「お前らそんなややこしい名前だったのか……」
アリアが顔を顰めてる。
そこに。
「おい。もういいか?」
『……!』
1人、ドスの効いた低い声でアリアを睨みつけていた。
Cランクシード。
霧島 紗永ね。
「お前は……えっと」
「サエだ。ハッ。名簿見てんじゃねえよ。まあそんなこったろうと思ったがな。いちいち潰した奴の顔なんて覚えてねえか?」
「……!」
アリアがサエの言葉に目を見開く。
私は知ってる。
サエはただ1人、Cランク棟でアリアに対抗していた。
「おい、シズクとかいったか」
「えぇ」
「誘ってもらったところ悪いが……あたしは降りるぜ」
「……」
まあこうなることは想定済み。
彼女をリストアップした時から。
あとは、アリア自身がどう向き合い、解決するか。
「待て!私の事が嫌なら私が降りる。お前は残るんだ。そうすれば立場は安泰だ。チームに所属してるシードはある程度守られる!」
「……んだよ、今更更生したってか?守る?どの口で言ってんだ。それに簡単に降りるとか言ってんじゃねえよ。そこのチビ共をそれこそ守るにはお前の力が必要なんじゃねーのかよ」
「……!そ、それは……」
確かにアリアの力は必要。
だから、私もミクも彼女を引き入れた。
サエもただ頭ごなしに否定してるわけじゃない。
出ていくなら自分の方だと、それが彼女の正しさなのね。
「とにかくあたしは降りる。あたしはそいつのせいで仲間失ってんだ。こんな奴のいるチームになんか入れっかよ……!」
「おい……!」
「え~!待ってよ~!サエもチームに入ろーよー!」
「そうだよ~!」
「っるせ!ついてくんな!」
立ち去るサエの後を追いかけるユノ達。
アリアも私を一瞥してから後を追う。
私も行こうかと思ったけど残ってる子もいるし……置いてけぼりを食らってる子もいるのよね。
「えっ、と。何事?全然状況がわかんないんだけど。てか私まだ自己紹介してないんだけど。何この冷遇」
「ごめんなさい。貴女はアスカね。Cランク。足の速さと体力が武器。タフネスでスプリンター、貴女とサエは保護目的でもあるけど能力も期待してるわ」
「えぇ~、なんかそんな褒められると照れるなぁ~」
アスカが後頭部を撫でる。
明るくて、いい子そうね。
性格も事前に仕入れた通り。
これも協調性の評価点で期待していたところよ。
「私、ミク!よろしくアスカ!」
「おっ。よろしくしく~。元気いっぱいじゃん。いいね。私、あんた好きかも。仲良くしようね、ミク」
「うん!」
アスカが手を差し出して、その手を見てミクの表情が一気に満開になる。
2人は握手した。
これは想定外ね。
二人の相性が良さそうなのは有難いわ。
「さて、アリア達を追いかけましょうか」
「ま、さすがに放っておけないか。了解。ついてくよ。チームにも入るわ。サエ?って子はなんか事情ありそうだけど、私はないし。基本的にこの話、メリットしかないっしょ」
アスカは立ち上がって色々払いながらサムズアップした。
これであとはサエだけね。
さて、どこまで行ったのやら。
さっそくキャプテンとしての仕事ね。