「シズク!なんで……」
「もう前半も終わりでしょう。話はハーフタイムでするわ」
シズクはそう言って会話を遮断してポジションに入った。
センターバック。
無言の圧力でそこを陣どる彼女に、帆田くんは渋々ポジションを空け、メンバーチェンジも行った。
でも、試合再開と共にすぐにブザーが鳴る。
「話すわ、全てを」
ベンチにドカッと座り、腕を組むシズク。
こっちが囲んで問い詰める前に彼女は、"言わなくても貴方達が聞きたいことはわかる"とでも言うように瞼を閉じる。
そして、片方だけ開けた。
「まず、彼らドラゴンリンクのプレイヤーを傷つけるのではなく、点を決めた理由はあれよ」
「……!スコア、ボード……?」
顎で指すシズクは無言で頷く。
なんでボードを見て、ゴールを決めようと思ったのか、それを話してくれた。
「向こうはともかく、アンリミテッド・シャイニングが点を決める意味は1つしかないでしょう。勝つ為、それしかないわ」
「そっか。だから、追加点を入れたんだ」
「えぇ」
今度はクールに返すシズク。
軽く頷くと、髪を弄り目を逸らした。
そんな彼女に、白竜くんも問いかける。
「俺からも聞かせてもらおう。なぜ、俺達を助けに来た?」
「……」
「危険だとわかっていたはずだ。リスクを承知で乗り込むメリットが理解できん」
「……」
シズクは黙りこくったまま。
しかし、やがて、髪を指に通して整髪をやめた。
「……皆に、とても止められたわ。でも、私には絶対に助けに来なければいけない理由があった」
「それって私の事?」
全員の注目が私に集まる。
みんなの言いたいことはわなる。
"自分で言うか?それ"、だ。
でも、私シズクの私に対する気持ちだけはなんか自負しちゃうんだよね。
彼女は私を見つめてから目を伏せて、静かに頷く。
「そうね」
「へへっ。大好き」
「やめなさい」
抱きついたら押しのけられて拒絶された。
素直に肯定したと思ったら、スキンシップは素直じゃないんだねー。
それともみんなに見られてるから恥ずかしいのかな?
「別に照れちゃいないわよ」
「え~。またまた~。てかエスパー?」
「……」
シズクがちょっとウザそうに顔を顰めた。
この辺りにしとくか。
「……シズク。私の事、なんで助けに来たの?」
「……」
シズクは黙り込む。
リスクを犯してまで私を救いに来た理由。
ヴァルキリアの皆は私がアンリミテッド・シャイニングの救出に乗り出すことを反対してた。
確かにシズクは私の後に続こうとしてたから少し期待してたけど、アリアには止められてたし。
彼女は瞬発的に感情的になることはあっても、冷静さを取り戻せば理性的に判断できる人だ。
なのに、この試合に乱入してきた。
どうして、来てくれたのか……どうしても気になる。
「私は、ヴァルキリアを裏切った。皆を……裏切ったんだよ?なのに、なんで……」
「馬鹿ね。そんなのアリアが勝手に言ってたことよ」
「えっ?」
シズクはため息をついて、私の目を真っ直ぐ捉える。
「あのね。貴女、そもそも裏切っちゃいないわよ。アリアに何言われても、ヴァルキリアを作ったのは私。ヴァルキリアのルールは私よ」
「それって……」
「言葉のままよ。貴女、ヴァルキリアじゃないなんて言ってたけれど、貴女は私が最初に選んだヴァルキリア。いわば、ヴァルキリアの象徴とも言える選手。貴女は必要だし、何があったって取り戻しに来るわ」
「……!」
知らなかった。
シズクがそんなに私を大事に思ってたなんて。
胸が、熱くなる。
「さて、説明はここまでよ。後半開始が迫ってるわ。それまでに、作戦を伝えましょう」
「……!その口振り、もう立案できているというのか?」
「えぇ。もちろん」
シズクが当たり前のように言い切って、皆が驚愕する。
この短時間で凄まじい考案力だ。
しかも前半、ドラゴンリンクの相手をしているうちに得た気付きから点を決める頃には次の展開を思いついていたらしい。
でも、シズクってゲームメイクは特技の中では扱いが下の方だったはず。
実際アンリミテッド・シャイニング戦では手詰まりになってたし、こんなに早く立案するタイプでもなかった。
さっきのドラゴンリンクを圧倒したプレイイングといいシズクに一体何が……。
「作戦も何も、前半の最後みたいにお前が2体の化身で無双すりゃいんじゃねーの?」
「確かに。あのゴールキーパーから点取れるし、それでいいじゃん。白竜でも破れなかった奴だよ」
帆田くんと青銅くんが口々に意見する。
シズクがドラゴンリンクを打ちのめしたあのプレイイングに、惹かれたんだ。
あれができるなら小細工などいらないと、彼らは告げている。
だけど、シズクは首を横に振るう。
「ダメよ。あれは関節が外れるくらい加減をせずに撃ったから入っただけ。あんなの何度もできないわ。つまり再現性がないのよ」
「シズクの化身でドラゴンリンクに対抗するのも無理だと思う。バアルもベリアルも出力が高いから多分10分も持たない」
「そうね。私もさっきは短絡的すぎたわ。残り45分は考えて攻めないと、勝ち目はないわよ」
私が補足した内容は正しかったみたいで、シズクはそれを取り入れて説得した。
帆田くんと青銅くんは顔を見合せてなるほど、と片方が腕を組んで、片方が腰に片手をかけて嘆息しながら納得する。
全て、彼らも見た光景だから飲み込みやすい。
「安心しなさい。私はミッドフィールダーでも戦力になるわ。それに、彼から奪える得点能力は火事場の馬鹿力。元々ないものよ。最初からないものなら、あってもなくても変わらないでしょう」
そう告げてシズクは立ち上がる。
もう後半が始まる。
ドラゴンリンクもぞろぞろと出てきた。
その動きを一瞥して、シズクは皆に伝える。
「作戦は単純よ。まず―――