後半が始まる。
その前に。
「言っておくが、先程の点数は無効だ」
『……!』
千宮司くんの前置きに、こっちは全員睨みつける。
突然の訴えだ。
だけど、彼も根拠があるみたいでそっちが間違ってると言わんばかりに顔を顰める。
「当然だろう。試合開始前に告げたはずだ。試合は11対11でやると。その女が乱入してきた時、貴様たちのフィールドには12人いた。ルール違反だ」
「……そう。仕方ないわね」
千宮司くんの言い分は筋が通ってはいる。
シズクが受け入れてから、白竜くんを一瞥すると彼も頷いた。
シズクの「いいでしょう」という言葉と同時にアンリミテッド・シャイニングのスコアが減る。
アンリミテッド・シャイニング 1 - 2 ドラゴンリンク
「シズクが足を犠牲にしてまで入れた1点なのに……!」
「もう一度点を取ればいいだけの話よ。さぁ、気合い入れていきましょうか」
アンリミテッド・シャイニングのユニフォームに着替えて髪を耳にかけるシズク。
予備のユニフォームがあと2着余ってたからそのうちの1枚を彼女が着用した。
これでシズクもアンリミテッド・シャイニングの臨時メンバー。
究極の称号をかけた戦いに、加勢する。
まずはドラゴンリンクのキックオフ。
「精鋭兵ポーン!」
「……っ!」
さっそくフォワードが化身を出してきた。
正面で迎える白竜くんは顔を顰める。
しかし、彼が対応するまでもない。
「虚無魔神ベリアル……!」
「……っ!こいつ……!」
シズクが先頭に出て、化身を使って衝突。
長い試合をずっと戦ってきた相手と、ついさっき乱入したシズクじゃ……勝負は見えてる!
「貰っていくわ」
「クソ……!」
シズクがボールを奪った。
そして、彼女は化身を引っこめる。
「なに……!?」
「あの女、何をするつもりだ?」
ボールがセンターライン付近に入った時点で、フォワードとミッドフィールダー全員が化身を出している。
馬鹿の一つ覚えみたいにボールの位置で判断して、一斉に化身化身化身。
ボールが前にあるからオフェンス全員化身!って単純すぎる。
けど、それも彼らの体力と化身に対する特別なトレーニングの産物だ。
そんな彼らとは真逆に、大量の化身を前にしてシズクは自ら身体ひとつになった。
フォワードと千宮司くんが困惑するが、彼女にはちゃんと考えがある。
それは。
「王者のタクト」
シズクが指揮を振るう。
すると、アンリミテッド・シャイニングのオフェンス陣が彼女を追いつき、フィールドを駆け抜ける。
シズクは大きく瞳孔を開き、自身より前方のポジションニングを全て把握。
左サイドにキラーパスを出す。
「化身も出さずにパスだと!」
「愚か者め……!我らドラゴンリンクの化身軍団を前にして、パスが通るものか!」
「お、おい。どけ!ぶつかる……!」
『……!?』
1人のフォワードの声でパスカットしようとしていたフォワードとミッドフィールダーが、仲間が目前まで迫っていることに直前で気づいた。
もう少しで仲間内で交錯事故を起こしそうになったが、ギリギリブレーキをかけて止まる。
それはつまり、パスを拾おうとした足を止めたことになる。
シズクはこの為にパスの速度を速くした。
だから、彼らの間を……パスは素早くすり抜ける!
「なっ……!」
「しまった!」
「愚かなのはどちらだ」
白竜くんが読んでいたとばかりに高速でボールを追って、彼もまた彼らの間を縫って通過。
トラップして反転すると、おマヌケをした化身使い達が迫る前にシズクと同じ鋭く速いキラーパスを逆サイドに出した。
その先にも。
「鉄騎兵ナイト!」
「魔宰相ビショップ!」
「貰った!」
化身使いが2人、パスを奪おうとして同じ箇所に集まり、止まる。
今度は青銅くんが予定より早くパスをカットで拾い、また逆サイドへ。
「魔宰相ビショップ!」
「番人の塔ルーク!」
「白竜!」
また化身使いが交錯しそうになり、帆田くんが間を縫って前線へ繋ぐ。
パスが通り始めた。
シズクは不敵な笑みで頷き、千宮司くんが目の前の光景に動揺する。
「馬鹿な……!何故だ!なぜ奴らのパスが急に繋がり始めた」
「答えは単純よ。化身を使えば身体能力が上がり、素早くそして広く動ける。けれど、全員の守備範囲が広いと被るのよ」
白竜くんが出したパスに化身使いが3人群がってまた同じことが起きる。
シズクはその光景を顎で指して、口角を上げる。
"ほらね"、と。
「貴女達は化身を信頼しすぎている。化身に重きを起きすぎている。それが貴方達の弱点よ」
「なっ……!黙れ!化身は絶対だ。化身使いが11人いる我々こそが最強なのだ!」
「あら。だったらいつまでも堂々巡りしていればいいわ。化身は貴方達が思ってるよりも場所を喰い、フィールドは貴方達が思ってるより狭いものよ」
白竜くんのパスを拾いながら次のパスルートを一瞥するシズク。
彼女は、化身が群がる前に銀座くんを経由してさらに彼に指示を出す。
ゴール前に白竜くん。
しかもフリー。
「……っ!なぜ誰もいない!?」
「貴様達は俺達個人個人に化身をぶつけることに躍起になりすぎている」
「私達を潰すことばかり考えて、戦術のフォーメーションが疎かになってるのよ」
「そんなことは……!」
「あるのよ。そして、アンリミテッド・シャイニングのことを侮りすぎよ。貴方達がこれほど空間に余裕を持たせてくれるなら、速いパス回しを通すことが出来る」
そして、と彼女は続ける。
「これは、彼らが厳しい試練を乗越えて身につけたスピードがあってこその戦略。―――ゴッドエデンの頂点を舐めるんじゃないわよ」
「ホワイトブレス!!せぇぇぇや!!」
シズクのセリフを裏付けるように白竜くんが遂にどフリーで化身技を放つ。
その弾道に追いつくのは、それもシズク。
「なっ……!」
「雷斬り!」
「舐めるな!キングッッッ!!ファイアッッッ!!」
白竜くん×シズクの化身技シュートチェインVS千宮司くんの化身技。
さすがの化身技を2つ相手にするのは彼でも厳しい。
しかもこれまでと違い、ブロックは一切いない。
まるで、ここまで白竜くんがゴールを決められなかったのは、化身使いを複数相手していたからだと弁明するように、敢えて彼に撃たせた。
そして、次はこちらが化身を重ねる皮肉のやり返し。
全ては、白竜くんの力の証明とゴッドエデンの実力を示す為に―――。
「馬鹿な!?有り得ん!俺が圧され―――っ!」
千宮司くんの表情が歪むのを確認。
シズクと白竜くんは、無言でゴールに背を向け、静かにハイタッチした。
「ぐあああ!?」
千宮司くんを打ち破り、遂に真っ向からドラゴンリンクのゴールを破った!
アンリミテッド・シャイニング 2 - 2 ドラゴンリンク
「―――――――――っ!!」
白竜くんがガッツポーズを噛み締めるように振り下ろして、シャウトする。
いつもゴールを決めてもクールだった彼が、あれほど激情したのを見たことがない。
それほどに溜まってたんだ。
やっと彼の歯痒さも解消された。
やったね、白竜くん……!!