「……っ!」
相手のスローイングから化身シュートでパスを繋がれ、最後は化身シュートのチェイン。
蛇野くんのサーペントファングが突破された後、白竜くんがシャイニング・ドラゴンでカットした。
しかし、転々と転がるボールの先にも化身使い……!
「精鋭兵ポーン!」
「虚無魔神ベリアル……!」
追撃のシュートを今度はシズクがギリギリカット。
その先にも化身使い!
「ギャロップバスター!」
「シャイニング・ドラゴン!」
「精鋭兵ポーン!」
「サーペントファング!」
3人がかりでなんとかゴールポストで弾いた!
猛攻に耐える。
どこかでこの流れを断ち切らないと……!
「―――"賢王 キング・バーン"!!」
『……!?』
全員がその声に瞠目し、異常反応して振り返る。
最悪だ。
なんで千宮司くんが前線に……!
「全員サッカーが弱者だけの特権と思うな……!ドラゴンリンクの化身の猛威を、食らうがいい!」
「虚無魔神ベリアル!」
「シャイニング・ドラゴン!」
大慌ててで身を起こし、弾道上に白竜くんとシズクが乗り出し足を伸ばす。
千宮司くんが放つ化身シュートを2人がかりでシュートブロックする。
だが、それすら突破されその先にはまだ体勢を立て直してない蛇野くん。
「しまっ……!」
アンリミテッド・シャイニング 2 - 3 ドラゴンリンク
決まった……!
やられた!
「……っ!私が動ければ……!」
「まだよ!取られたら取り返す。すぐ切り替えなさい……!いくわよ!」
ただ眺めることしか出来ない私とは逆に、シズクは立ち上がってすぐに皆を鼓舞する。
皆が頷き、切り替える。
彼女の言葉の通り、こっちのスタートから一気にギアを上げてパスを繋いでいく。
「雷斬り……!」
ド低音で技名を口にし、放つシズク。
そこに駆け込む2人。
「シャイニング・ドラゴン……!」
「ポーン!」
白竜くんと青銅くんによる化身シュートのチェイン。
パワー不足なシズクのシュートにかさ増ししてくれる。
「キング・ファイア!ぐっ……!馬鹿な!ぐああ!?」
「よし……!」
入った!
白竜くんと青銅くんがガッツポーズをする。
シズクは冷静に汗を拭い、戻る。
次に備えてるんだ。
まだ同点。
この試合は、勝たなければならない。
引き分けは許されない。
アンリミテッド・シャイニング 3 - 3 ドラゴンリンク
シズクが加わって、両者の実力が互角になった。
あとは点を取り合うことになる。
「キング・バーン!」
「バアル!」
アンリミテッド・シャイニング 4 - 4 ドラゴンリンク
一方が決めれば、もう一方が取り返す。
この展開では、埒が明かない……!
「……っ!このままじゃ……!」
「勝てない!シズク……!」
「わかっているわ」
私と青銅くんが焦ると、シズクは制止する。
私達になんて言われなくてもゲームメイクをしている本人が1番理解している。
今やってるのはただの堂々巡り。
これを続けても、私達に未来はない……!
互角じゃダメだ。
もう一押しないと勝てない!
「―――それなら、私がいれば軍杯が上がるな」
『……!?』
残り23分。
ドラゴンリンクのキックで彼らの攻撃が始まろうとしていたその時。
フィールドの中央に突然何かが落ちてきた。
それは土埃を上げ、一度地面から跳ねて浮遊している。
妖精の羽を生やしたその少女は今度は舞い降りて、地表に足をつけた。
その声を、私達は知っている……!!
―――アリア・オイゲンは長い金の髪を手に通してなびかせる。
「アリア!」
「オイゲン……っ!」
「あいあい。フルネーム、どうも」
私と白竜くんの反応とは裏腹に、アリアは淡々と冷めた返しをして適当に片手をあげる。
なんだか私達のことも、ドラゴンリンクのことも睨んでる。
あくまでどっちにも属したくない。
そう伝えるように。
「メンバーチェンジだ。誰でもいい。化身使いとFW以外の雑魚を抜け。私が入る。お前らのプライドを折る理由はそれだけで十分だろ」
「待ちなさい。貴女……」
「アリア!なんで……っ!なんで、来てくれたの……?」
シズクが乗り出す前に、私が先にアリアの傍に駆け寄る。
私が彼女を至近距離から見上げると、彼女は私とは決して目を合わせずに天井の方を見た。
アリアはアンリミテッド・シャイニングの味方をすることを1番反対してたはず。
そんな彼女がなぜ現れたのか、わからない。
返答を待つと。
アリアは、鼻を鳴らす。
「勘違いするな。お前を助けに来た訳でも、こいつらを助けに来た訳でもない。私が連れ戻しに来たのはシズクだ。キャプテン不在じゃ困るからな」
「……相変わらず、素直じゃないわね」
シズクが溜息をつきながらフッと少し笑う。
私もアリアに歩み寄って、彼女の言い分を肯定する。
「そっか。でも……ありがとう」
「……まあ、お前も一応戦力だからな。ついでに連れて帰ってやっても構わん」
「えっ?」
思わぬ言葉を貰った。
彼女はさらにそっぽを向く前に、ここに来て初めて私の身体を足の先から頭のてっぺんまで視認した。
一瞬顔を顰めたのは気のせいだろうか。
そういえば心なしか、私から逸らした視線の先がドラゴンリンク達に向けられている。
彼らがニヤついているから、もしかしたら凄い形相で睨んでいて彼女の気持ちに察しがついてるのかもしれない。
……全部、憶測だけど。
「……また乱入者か。どうなっている。この島は」
「……!」
千宮司くんが口を開き、アリアが反応する。
正面で彼女の顔を確認でき、千宮司くんが訝しむ。
「今度は何者だ?……いや、貴様は。そうか、あの時の……!」
目を見開く千宮司くん。
くくくっ……と口角を上げる。
あれは、高揚している表情だ。
感情が昂っている。
アリアの正体を看破したからだ。
フィフスセクターのシードは、強ければ強いほどより強い相手による刺激を求めている。
最強にして最古のシードである千宮司くんにとって、彼女の称号ほど魅力的なものは身内にはいない。
「ようやく現れたか。ゴッドエデン最強……!」
「ハッ。世間知らずの坊ちゃんが。パパは元気かい?残念ながら、私は2番目だぜ」
互いに不敵に笑う最強者2人。
アリアって、意外と自己肯定感が低い。
白竜くんを倒したのは、あらゆる条件を揃えてハンデを用意したからだ。
少なくともアリアはそう認識して、白竜くんを超えたという自認はない。
自分がゴッドエデン最強と呼ばれるのは納得がいっていない。
白竜くんも初めて知って驚いた目で彼女を後ろから見ている。
「お前らはこの島の1番と2番を敵に回したんだ。すぐに後悔することになる」
「そいつはいい。丁度この島のシードの質が低すぎて嘆いていたところだ。そろそろプロジェクトの集大成を見せてもらおう」
売り言葉に買い言葉を交わして、アリアが鼻を鳴らして千宮司くんに背を向ける。
銀座くんがフィールドから出て、私が右ウィング。
逆サイドに帆田くん。
センターバックにシズク。
そして、2トップに白竜くんとアリアというゴッドエデン二大巨頭がようやく並んだ。
いや、確か噂ではアンリミテッド・シャイニングと対になるチームのリーダーが本当のトップという話もあったけど……。
とにかくこの前までいがみ合ってた2人が手を組み、夢の実現を果たしたといえる。
「バテてるところ悪いが、少し協力してもらう。さすがにあれを20分間1人で相手するのは無理だ」
「そうか。貴様でも……。いいだろう。ただし、もう化身は使えん。あまり期待するな」
「ふん。はなから化身なんてアテにしたことはないさ」
「なるほど。だから、貴様は強いのか……」
アリアが屈伸しながら白竜くんを一瞥する。
私とシズクでも一瞬で見抜けたんだから、彼女も例外じゃない。
「えらく弱気だな。ま、安心しろ。試合が終わる頃にはうざいプライドを取り戻してるぜ。きっとな」
「……!」
言うだけ言ってすぐに前を見たから彼女の横顔を見つめることしかできないが。
まさかアリアが励ますようなことを告げるなんて、思ってみなかった白竜くんは目を丸くして動揺する。
故に何も言えず、とにかく試合に集中することにした。
アリアと共にドラゴンリンクを前にし、彼らと睨み合う。
「お前らか。ミクを散々虐めてくれたやつは」
「そうだ。随分かわいがってやったぞ。奴には散々手を焼かされた」
「だが、我らドラゴンリンクに逆らう者は何人たりとも許されない」
「それがフィフスセクターの内部なら尚更。故に完膚なきまでに叩きのめしてやった」
「奴は満身創痍。もはや死に損ないだ。そうなるまで我々が追い詰めたのだ」
「そうか。だったら帰ったらパパに泣きつくんだな。女を虐めたら女に虐められましたってな」
フォワード4人と言葉を交わしたアリア。
鬼の形相で彼らと対峙し、その凄みと威圧感に千宮司くんでもない彼らの格では圧倒される。
正直ビビってしまった彼らは後退りし、息を飲んだ。
そんな彼らに、アリアは告げる。
「遊びは終わりだ。ここからは、本気出さねえとパパに二度と会えなくなるぜ?」
アリアは、奥にいる千宮司くんに向けて言い放った。
責任は彼にある。
身内を痛めつけて楽しみ嘲笑う、それでいてその事を得意げに語るような連中を。
統制せず、それどころか同じ思想を持ち率いる彼を。
アリアは潰すと決めた。
かくして、ヴァルキリアの切り札を加えたこの一戦。
ドラゴンリンクとの戦いも終幕を迎える。
さぁ、クライマックスだ。