試合再開と共にアリアが飛び出し、トップスピードで敵陣に突っ込む!
「精鋭兵ポ―――何!?こいつ、速い!!」
「鉄騎兵ナイト!」
「魔宰相ビショップ!」
「ふん。化身を出すしか脳がねえって分かってたらその予備動作のうちに前線はスピードで突破できる。もう少し頭を使え」
フォワードが化身を出し切る前に中枢まで侵入したアリア。
精鋭兵ポーンが出現した頃にはそれを後にし、鉄騎兵ナイトと魔宰相ビショップを迎える。
フォワードを置き去りにしたのを見て、すぐに次のミッドフィールダーが化身を用意した。
それには感心する。
「さすがに訓練されてるだけのことはある。判断もいい。……が、ここまで化身を使いすぎだ。化身の性能も落ちてる」
「なっ……!」
アリアは白竜くんを使って、パスを出し、鋭く深く突き進んで化身の合間を突破する。
化身2体の後ろで白竜くんからの返球を受け取り、さらにドリブルで走り込む。
「鉄騎兵ナイト!」
「魔宰相ビショップ!」
「番人の塔ルーク!」
「魔女クィーン・レディア!」
「ハッ。まあ、それしかねえだろうな。お前達には。そらそうだ。お前ら、数の理で圧倒するしか攻略法がなかったんだろ。アイツらに勝ってるところなんて、それくらいだからな」
もう2人のミッドフィールダーとディフェンダーの2人。
全員が群がってきて、アリアは嘲笑する。
でも、目は笑ってない。
心底呆れてるんだ。
彼女は、跳躍して化身より高く飛び、包囲から抜ける。
「どいつもこいつももうバテバテじゃねえか。化身パワーを消耗しすぎて動きがトロイぜ。ま、アイツらとシズク達を相手にしてきたんだ。当然か」
「確かに貴様の言う通りだ。だが、キーパーは比較的疲労しにくい。ゴールを割るのはここまでのようにはいかねえ……!」
上空のアリアを前に、千宮司くんが構えて威勢を吐く。
そんな彼を冷めた目で見下ろし、アリアは鼻を鳴らす。
「その通りだ。お前は正しい。だから、1人で破る気なんて、毛頭ないんだよ」
「ホワイトォォォ……ハリケェェェーーーーン!!」
「なに!?」
アリアがさらに上空へ、オーバヘッドで出したパスを白竜くんが放つ。
そして、地上に素早く着地したアリアが超加速。
妖精女王が甲冑と剣を身に纏い、アリアに憑依して暴風弾に斬撃を加える!
「インビテーション・ティターニア!」
白竜×アリアのシュートチェイン!
ゴッドエデンにこれ以上の組み合わせは2人の化身の掛け算以外に存在しない!
「無駄だ……!賢王キング・バーン!」
最後の関門。
私達が散々苦しめられた最強のシードの、最強の化身がアリアの前にも立ち塞がる。
白竜×アリアVS千宮司!!
「キングッッッ!!ファイアッッッ!!」
「認めるさ。確かにあんたは最強のシードだ。だが、サッカーは個人競技じゃない。もっと真面目にチームを作っておくべきだったな」
アリアが背を向ける。
……と、同時に千宮司くんが身体ごと押し込まれた。
もはや、衝撃すらない。
ブザーだけが、鳴り響く。
アンリミテッド・シャイニング 5 - 4 ドラゴンリンク
「クソ……!」
千宮司くんが膝をつき、地面を殴る。
そして、キッ……!と一切余裕も笑みもない気迫でこちらを睨む。
その態度を確認したアリアがポジションに戻りながら、白竜くんと、シズク達にも聞こえるように告げる。
「おい。備えろ。次の奴らの攻撃。厄介なのが来るぞ」
「なに?」
「……そのようね」
白竜くんは訝しみ、シズクはなんとなく察しがついたように遠くにいる千宮司くんを見る。
こっからじゃわからないけど歯ぎしりしてるんじゃないかってくらい、ここまでなかった悔しさを彼は露わにしている。
多少こっちが優勢でも揺るがなかった彼の余裕が崩れた。
それが……千宮司大和の一切遊びのない本気が、襲い来る合図となる。
「お前達、どけ!!」
『……!?』
ドラゴンリンクのキックから始まるターン。
ゴールキーパーの千宮司くんが猛スピードでセンターラインまで到達し、仲間からボールを奪った。
皆が困惑する中、護巻くんの「お、おい!千宮司……!?どうした!」という言葉さえも無視。
誰よりも上手いドリブルでアンリミテッド・シャイニングの最初の関門、アリア・オイゲンを一切避けようとせず、真っ向から挑む。
「勝負だ!俺を個人技だけと言ったな!ならば、俺1人の力で貴様を打ち破る!」
「……正直言って、やり合う前から降参なんだが。やるしかないか」
現実主義者のアリアは、千宮司くんの実力を正確に分析し、自身との差も自覚している。
嫌そうだけど、すぐに切り替えて本気のディフェンスで臨んだ。
つまり、千宮司VSアリアという超高次元の神々の戦い。
「ゆくぞ!」
「来い!」
互いに化身は使わない。
必殺技もなし。
テクニックにモノを言わせた小手先の力比べ。
アリアが化身を使わず、ドラゴンリンク全員を突破したことがよほど気に食わなかったらしく、千宮司くんも同じやり方を採用してきた。
2人は誰も入り込めない技術力の高さを見せつけ、ボールを奪い合い、やがて……千宮司くんがアリアを翻弄し抜いた!
「俺の勝ちだ!」
「だから、最初からそう言ってるだろ……。ゴッドエデンの中で1番なんておままごとの中に、フィフスセクター1なんざ大物は反則だろ」
徹底して負けを認めるアリア。
一目見た時からそう判断しているから、千宮司大和というシードの凄さをアリアほどの実力者なら理解できるらしい。
彼に比べればゴッドエデンの競争など子供の遊び。
ゴッドエデンはフィフスセクターの一部に過ぎず、フィフスセクターというのはもっと巨大で、奥深いもの。
故にドラゴンリンクというトップシークレットも存在する。
組織は複雑なのだ。
しかし、だからといって全てが劣っていると、そこまで譲ったつもりもない。
「これも言ったろ。チームスポーツだ。お前1人じゃ私達には勝てない」
「王者のタクト!」
「なっ……!」
白竜くんにプレスをかけられ、避けた先に帆田くんと青銅くんによるカット。
シズクが拾って、アリアに戻す。
千宮司くんはくっ……!と歯を食いしばる。
「まだだ!賢王キング・バーン!」
「……そう来たか。仕方ない。魔神アガレス!」
アリアが化身で対抗する。
衝突する2人。
結果は。
「ふん!貰った!」
「……っ!」
アリアがボールを取られた。
倒れはしないものの、後退りして膝をつく。
ボールを持った千宮司くんは反転。
ゴールを目指す。
「虚無魔神ベリアル!」
「精鋭兵ポーン!」
「……っ!聖獣……!」
「くどい!お前ら如きに俺様を止められる訳がないんだよ!!」
『……!?』
速い!!
千宮司くんはシズク達を相手にするまでもなく突破。
そして、それだけの実力があれば当然。
「散れよ!」
「ぐっ……!」
アンリミテッド・シャイニング 5 - 5 ドラゴンリンク
またしても追いつかれた。
アリアが加わっても、まだ互角……なんてことはない。
チームの実力は拮抗していない。
ちゃんとこっちの方が有利になってる。
正直アリアはドラゴンリンクをもろともしてない。
そこにシズクやアンリミテッド・シャイニングがいるから尚更。
だけど。
ただ1人、たった1人が特別で、彼が折れない限りはまだ勝率は傾き切れていないというだけ。
その男さえ諦めたら私達は確実に勝てる。
逆に言えば、彼さえ諦めなければドラゴンリンクは決して死なない。
「これが……っ!俺の……、力だ!俺が最強なんだ!!」
「あぁ。本当にそう思うよ。お前ほどこんなにサッカーが上手いやつは見たことがない」
アリアは肩で息をして、口元をユニフォームで拭いながら心の底から賞賛する。
それに対峙する千宮司くんは……明らかに消耗している。
さっきまではそんな様子なかったのに。
遂に最強のシードでさえ、疲労が見えてきた。
その様子が証拠だ。
アリアは最強の座が彼であることは認めるが、やはり試合では無意味だと否定する。
「お前は最強だ。それでも、お前1人じゃ限度がある。それはお前もわかってるんじゃないのか?」
「……あぁ、わかっている。だが、お前達も俺を簡単には倒せんはずだ。今、互いに不利益を天秤にかけている。そこで提案だ」
千宮司くんが指を立てる。
スコアは同点。
双方手詰まりで引き分けている今だからこそ、魅力的な交渉。
「引き分けで終わってやってもいい。貴様達の処分はなしだ。親父に進言してやる」
「あ?なんでそうなる」
「感情的な女だ。まあ聞け。我々も収穫はあった。この俺を本気にさせる程のシードがいたのなら、この島も捨てたものじゃないとな」
「どこまでも上からだな。気に食わねえ」
「だが、悪くない話だろう?少しは考えろよ。お前達も……馬鹿ではあるまい」
千宮司くんは息が切れながらも粘り強く訴える。
ここまで引かないとなると、思ってたより真剣だ。
けど、対するアリアは耳をほじくりながら明後日の方を向いている。
……凄い、毛ほども興味を示してない。
全く聞く気がない、受け入れる気がないのが丸わかりだ。
案の定。
「ハッ。冗談よせよ。笑わせんな。フィフスセクターの最強ってのは、逃げ腰も得意とはガッカリだ」
「なっ……!」
煽られたからじゃない。
アンリミテッド・シャイニング、いやゴッドエデン側からしても悪い話じゃないのに一切取り入る隙がないことに、彼は驚いている。
この女、馬鹿か?と。
だけど残念。
アリアの自認は、超天才。
私はウルトラスーパー賢い、世界で一番偉ーいアリア様だぞ、だから。
「くだらねえ話を持ってくるんじゃねえよ。お前もシードなら、最後まで戦え。自分の力を信じろ。自分が頂点である証明以外を目指すな」
これは、アリアのシードとしてのあるべき姿の自論。
そして、続けるのは彼女の信条。
「引き分けだと?両者にメリット?知るかよ、んなもん。是が非でも達成したい目標以外はどうでもいいだろうが。利口ならシードなんてやってねえんだよ」
アリアは、千宮司くんを睨む。
試合は終わらない。
まだ終わらせない。
望む結果を、掴み取るまでは。
「引き分けてたまるかよ。私が来たんだ。勝って、仲間を連れて帰る。それ以外はいらねえぜ」
Theアリア節。
ボールを力強く踏み、不敵に口角を上げる。
これぞアリア・オイゲン。
そして、我ら右に同じ……!