松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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「馬鹿か!?いや、馬鹿だ……!」

「好きに言えよ。ほら、もう話は終わりだ。ささっと戻れ。ぶちのめしてやるよ」

 

顎で指図するアリア。

千宮司くんが狼狽しながら戻る。

うーん……アリアワールド全開だなぁ。

取り付く島もない。

アリアってシズクの指摘以外意見曲げないもんね。

 

「でも、アリア。どうするの?本気の彼ならあとは1回はゴールを奪える。もしくはゴールに篭城されたら点取れないわよ」

「……考えはある。3つくらいな。だが、多少時間を稼ぐ必要がある。15分もあいつと戦うのは無理だ」

「すご。ラスト数分なら倒す算段あるのか」

「何者なんだよ、こいつ本当に……」

「だが、それが上手くいく保証はあるか?確実な策でなければ俺達は……」

 

シズクが尋ねるのを筆頭に皆が集まってくる。

すると、彼らに馴れ馴れしくされるのが嫌なアリアが、死ぬほど嫌そうな顔をする。

 

「ハッ。誰がお前達のことなんか気にかけてるって言った?負けても2人を連れて逃げるだけだ。お前達を救う作戦が確実なわけねえだろうが」

「だとしたら困ったわね。勝手に乱入した私達も目をつけられるはずよ。試合に勝って聖帝の提案に便乗したかったのだけれど……」

「大丈夫だ。3つのうち1つは確実に点を決められる。安心しろ」

「凄い。当たり前のように嘘ついてたんだ……」

 

シズクが心配したら即暴露した。

アンリミテッド・シャイニングには変顔で威嚇してる。

仕方ないけど、変わりなく嫌いなんだなぁ。

本当に気持ちを入れ替えて助けに来た訳じゃなくて、シズクがいるから仕方なく来てくれてんだ。

いや、私も多分白竜くん達も有難いと思ってるけどね。

 

「それで?時間を稼ぐってどうするの?」

「シズクはあと1点とるか無失点に抑えるか、奴の限界はそこまでだと言っていたが、奴は両方できる」

「なんですって?彼にまだそんな余力があると?」

「ない。だから、絞り出すんだ。奴ならできる。だから、まずはその1点を取り返す。そしたら時間も稼げるはずだ」

 

アリアの言うことには根拠はないが、説得力はある。

私もシズクも、白竜くんでさえ息を飲んだ。

彼女にしか千宮司くんを正しく評価できないなら、彼女の評をアテにするしかない。

そして、彼女の言うことが本当だとするなら、恐ろしいことだ。

アリアなしじゃ勝てる相手じゃない。

彼女が来てくれなかったら引き分けをこっちから打診してたかもしれない。

 

「失点するのは前提かよ……」

「当然だ。奴を舐めるな。あんなに凄い奴は初めてだ。ちょっと震えるぜ」

「そう……貴女ほどのプレイヤーが。私達じゃ測れないわけね。実力が違いすぎるわ」

「だが、それはあくまで奴個人の話だ。試合は勝てる。とにかくまずは3つのうち、確実な策を使って点を取る」

「確実な策って?」

「シズク。お前、確か言ってたよな?3人で撃つだけの簡単なシュートだって。それが本当なら、この3人ならぶっつけ本番でもいけるはずだ」

「……!貴女まさか……!」

 

シズクが目を見開く。

アリアは静かに頷いた。

彼女の中にある考えの1つは、ヴァルキリア全員が知っているもの。

確かに私達3人で撃てば、ドラゴンリンクにも通用するかもしれない。

 

「けど、ミクは撃てるの?」

「……多分。1回くらいなら」

「充分だ。どうせミートはシズクが担当して、私がメインだ。お前は余ったパワーを添えるだけでいい。やるぞ、異論は受け付けない」

 

アリアの言葉に2人で頷いた。

彼女の言うとおり、反論している余裕はこちらにはない。

千宮司くんが本気を出した今、やるしかないんだ。

やらなきゃ、死ぬだけ。

それだけは回避したい。

そう思うなら、四の五の言うべきじゃない!

 

「賢王キング・バーン!」

「くっ……!」

「サーペントファング!」

 

アリアの予想した通り、千宮司くんは火事場の馬鹿力で得点した。

止められないとわかっていてもディフェンスのチャレンジはするアリア。

本当にいいプレイヤーだ。

ただし、今回は失点してしまった。

 

 

アンリミテッド・シャイニング 5 - 6 ドラゴンリンク

 

 

「よし。仕掛けるぞ。合図はシズクに任せる」

「わかったわ。でも、ボール運びは貴女がやりなさい。じゃないときっと彼が奪いに来る」

「だね。アリア以外は千宮司くんのディフェンスに対抗できないと思うし」

 

アリアは受け入れる。

きっと彼女がボールを持っていれば、ゴールに居座った方がいいと千宮司くんは判断するはず。

彼さえ飛び出さなければシュートを撃つまではもう何も問題はなく、滞りなく進む。

 

「王者のタクト!」

 

シズクの指揮でアンリミテッド・シャイニングの早いパス回し。

中枢まではそれでいいとして、あとはマークを振り切ったアリアに渡す。

 

「オイゲン!」

「いいぜ」

 

白竜くんのパスをアリアが受け取る。

ディフェンスも突破して、これで。

ゴールキーパーと1対1。

 

「愚かな。貴様は確かに強い。だが、1人では俺を打ち破ることはできない!」

「だから、何度も言ってるだろ。1人じゃないってな」

「……!」

 

アリアが告げると、同時に私とシズクが彼女の背後から駆けつける。

ゴールへ向かってくるから千宮司くんが瞠目し、困惑した。

アリア以外がゴール目掛けて何ができるって言うんだ。

そう言いたいんでしょ。

でも、こっちにも考えがある!

 

「いくわよ!」

「おう!」

「了解!」

「3人技か……!」

 

シズクの合図で私達3人が跳躍。

千宮司くんがその光景を確認して私たちの思惑を看破する。

キング・バーンと共に構え、私達を見上げる。

 

「これが私達の……!」

 

『"ヴァルキリー・アタック"!!』

 

「キング・ファイアッッッ!!」

 

ただ3人が同時に放つだけのシュート。

しかし、その3人に才能があり、高い実力を有していれば。

それは単純だからこそ、パワーが足し算で重なって、絶大な力となる。

力業の極みのようなシュートが千宮司くんに迫り、彼は化身技で対抗。

正直押し込めるかどうか、一か八かだったが。

やはりアリアの体力が千宮司くんに持っていかれたとはいえ大幅に残ってるのは、デカイ!

 

「なんだ!?このパワーは!奴らの何処にまだこんな力が……!」

「……!この威力……!」

 

シズクが何やら瞠目する。

彼女の反応に私もアリアも共感を覚える。

千宮司くんが今耐えているシュートは、ヴァルキリー・アタック想定最高値を明らかに超えている。

このシュートが、例えこの3人で撃ったとしてもここまでの力強さを発揮することは予測されてない。

つまり、特別なことが起こっている。

これがゴッドエデンという大きな実験場で起こる現象。

 

アリア×シズク×ミク。

 

この3人による、"化学反応"……!!

 

「有り得ん!これは……!ぐあああ!?」

 

千宮司くんが敗れ、ネットに突き刺さった。

よし、同点だ!

 

 

アンリミテッド・シャイニング 6 - 6 ドラゴンリンク

 

 

試合は、残り8分。

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