どうして、こうなったんだろう。
偽りの学園生活。
偽りの友人関係。
偽りの記憶。
迷いこんだ世界の裏側で始まった命懸けのゲーム。
そして運命は私、
くだけ散って床に転がる、先程まで自分の命令通り動き戦っていた人形をぼやけた視界で眺める。
胡散臭い誰かの声に言われるまま人形に命令していた私とあの人形。
何が違うと言うのだろう。
敵の人形に腹を貫かれて床に転がる私もあの人形も同じだ。
無力で、空っぽな…
「いや、だ。」
それは不意に零れた言葉。
意識して呟いたものではない。
それでも。
そうだ、終われない。
なにも分からず、なにも成し遂げず、空っぽのままで終わって堪るか!
「…き、たい。」
私は人形じゃない!
胴体を打ち貫かれて悲鳴一つ上げない道具とは違う!
「生き、たい。」
諦めてたまるか。
どんなに惨めで無様だとしても私は、
「私は!まだ生きていたい!」
消えかけの命にしがみついて足掻き続ける。
閉じかけた光へ手を伸ばす。
その手は、その叫びは、届いた。
「お前が俺のマスターか?」
男が、立っていた。
何故だか自分に似たものを感じる青年がいた。
いつからそこにいたのか。
なぜここにいるのか。
何者なのか。
疑問は尽きないが、私は彼の語った聞き慣れない言葉を反芻する。
「──マス、ター?」
「そうか、そうだよな。お前、
呆れたような納得したような声を出すと、奇抜なファッションの青年は片手で
数秒前まで私を殺そうとしていたモノを、余りにも簡単に。
「ならさっさと雑魚を片付けて、会話パートに入るとするか!」
赤い粒子を両腕に纏わせた青年がファイティングポーズを取ると同時に投げ飛ばされた人形も立ち上がる。
誰もいない世界に現れた、たった一人の味方。
痛みも孤独感も、もう感じなかった。
■
(とは言った物の、やっぱ
青年は相対する人形の動きを待ちながら自分の状態を把握する。
青年が考える原因は二つ。
一つはマスターの未熟さ。聖杯戦争のルールすら知らない『彼女』が
もう一つの理由は、明らかに
(ったく、どうなってるんだ?『
『
そのいずれにも属さないアルターエゴがマトモな存在だとは思えない。
場合によっては突然システム側から消去される可能性すらある。
「危ないっ!」
「っ!」
思考の海に埋没する青年を知らず、人形は刃その物である右腕を突き出す。
少女の叫びによって意識を戻した青年は間一髪でガードする。
(重いっ!いや、俺が軽いのか!)
レベルが下がったことによる勝手の違いが青年を惑わす。
この場を乗り切るために青年は叫ぶ。
(いつもの攻略法があてになんないなら、『永夢』は怒るだろうけど…)
「マスター!俺の操作任せる!」
「操作って、指示しろってこと…?」
「そうだ、お前がさっき負けたのはプレイヤースキルの問題じゃない。ここは協力プレイで一気にクリアだ!」
「…分かった!」
敵を殴りHPを削るattack。
攻撃を弾き次に繋げるguard。
防御を突き崩すbreak。
敵の手を読み、こちら側の手を着実に通していく。
白野が指示し、アルターエゴが行動する。
この先何度も繰り返されていく戦い方の原型がそこにある。
■
「行くぜっ!クリティカルヒットォ!」
「やった!」
アルターエゴの右ストレートが人形にクリーンヒットし、二人は勝利を納める。
これは
全て曖昧なまま、
長い、永いクロニクルは此処からスタートする。
「攻略完了だぁ…」
「あぁ、グッ、ううっ…」
くだけ散った人形と、倒れ伏しもがく男。
「バグスターウイルスに感染した気分はどうだい、マスター?」
「貴様ぁ…何を、考えている!?」
「凡人の君には分からない事さ。」
そしてそれを見下ろす、否、見下す男は笑う。
「マスターを攻撃して、貴様、聖杯が要らないのか…!」
「勿論、聖杯は頂く。だがぁ、君は必要ない!」
「…まさか、貴様は。いや、出来るのか、そんなことが!」
「私の神の才能に不可能などない!」
男が倒れ伏すマスターに手をかざすと、周囲の空間がぶれ始める。
「あはぁ、神であるこの私を従者にしようなどぉ冒涜にも程があるぅ!君には特別苦しみながら消えて貰うぞぉ!」
イレギュラークラス、アルターエゴが召喚された理由。
それは、SE.RA.PHに仇なす脅威への
総ての元凶が、今再び目を覚ます。
まあこの話も一発ネタですが。
感想、文法の間違いなどよろしければ。