誰のためにベースは鳴る   作:ほおずきん

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こんにちは、ほおずきんと申します。

初めての連載小説の投稿になります。

至らない点もあるかもしれませんが面白いと思っていただけましたら幸いです。

ヒロインはひまりちゃんとなっておりますので可愛さが前面にでていて感じていただけたらなと、思います。


それではどうぞ!


俺と音楽と幼馴染

『幼馴染』それはお互いが幼少期から顔見知りであり、家族よりも多くの時間をともにすることがあるかもしれない。そんな密で濃い関係のことを言う。

 

 男同士、女同士でも幼馴染と呼ばれるらしいが、男女の場合が多くだろう。

 

 小学校で幼馴染と仲良くしているのを見るとクラスの一部の男子が、「お前ら付き合ってるんじゃねーの?」などとからかってきたり「そんなに仲がいいなら早く付き合っちゃえよ!」と交際をそそのかしてきたりといじりの対象になることがしばしばである。

 

 俺も幼馴染とそのいじりを経験してきた一人だった。

 

 当時小学生だった俺には幼馴染への恋心などは微塵もなく、”ただ家が隣のよくしゃべる友達”としか考えておらず、いじりに対する対処も適当に受け流して笑っていただけだった。

 

 やがて時は過ぎていき中学校へ進学する年齢になると幼馴染は女子校へ、俺は共学校へと進学してしまい俺たちは学校で顔を合わすことはなく高校進学まで時が過ぎ去ってしまった……

 

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 ――第1話『俺と音楽と幼馴染と』

 

 ――2年前

 

「ねーしゅう! 窓開けてよー! 大事な話があるんだよー」

 

 2階の自室で休んでいた俺の耳に聴こえてきたのは窓をドンドンと叩く音、それと窓に音が遮られ小さな声で何か喋っている幼馴染の顔。

 

 俺は立ち上がり窓を開けようと足を進め幼馴染へ一言。

 

「今は漫画を読んでいるんだ、後にしてくれ」

 

 ピシャリと窓を閉めてカーテンを勢いよく閉じる。よし邪魔者もいなくなったことだし快適に漫画が読めるな。

 カーテンを閉めるときに一瞬幼馴染の涙ぐんだ顔が見えた気がしないでもないが大丈夫だろうか……いや気のせいだろう。

 

 俺はその場に座り込んで読みかけていた漫画に手を伸ばす。するとまたもや窓がドンドンと鳴り響く。

 無視してもドンドン……さらに無視してもドンドン……その音は回数を増すごとに強くなっていき、我慢できないほどの音量になっていった。

 

「だー! うるせぇ! 集中してマンガ読めねぇじゃねぇか! それにご近所さんに迷惑だろうが!」

 

 再び立ち上がり文句を言ってると窓を開けた瞬間に「スキあり! とぉうっ!」と幼馴染は部屋へと飛び込んできた。

 

 部屋へと飛び込んできた幼馴染の名前は『上原 ひまり』

 

 ひまりは俺と幼馴染であり、家が真隣にある。こうしてなにかあると必ずと言っていいほどベランダをつたって俺の家のベランダへと侵入し窓を叩いては俺を呼び出す。

 いつか不審者として通報してやろうか考えたこともあるくらい頻繁に訪れる。

 

 ひまりはなかなかに明るい性格で周囲を盛り上げたりすることがとてもうまい。

 ただ一つだけ空気が読めないという難点があり、さきほども俺がごろごろしているところを窓越しにがっつり見ていたはずなのに部屋に上がり込んできやがった……なんつー空気の読めないやつ。いや俺の心が狭いとは言わないでくれ……自分の時間を邪魔されるのが大嫌いなんだ。

 

 ついでに付け加えていうとひまりは感動系のエピソードに弱くてすぐに泣いてしまうという涙もろく可愛い一面もある。

 先日も子猫が飼い主の家に帰るドキュメンタリーを視聴しておいおい号泣していた。

 これはもちろん難点ではなくむしろプラスポイントだ。

 可愛い女の子が可憐に泣いている姿、抱きしめてあげたいよな。

 ……抱きしめたことないけど。

 

 

 そしてそのひまりに『しゅう』と呼ばれている俺の名前は有地 柊史(ありち しゅうじ)

 何の変哲もないそこら辺にいる学生だ。

 

「で、ひまり、何の用だ? 俺マンガ読みたいから早くしてほしいんだが」

 

 俺がこういうとひまりは頬をむぅーっと膨らませてプンプンッなんて効果音が出そうな表情で俺に問いかけてくる。可愛い幼馴染のこんな一面も見れるとはやっぱり幼馴染は役得だな。

 

「もー! いったいしゅうはマンガと私どっちが大事なの!」

 

 なんだ、いったい何を聞いてくるかと思えばそんなくだらない質問か。新婚さんじゃないんだからまったく、それはもちろん……

 

「マンガに決まってるだろ」

 

 そんなうふふなことを思いながら俺がマンガと答えるとひまりはすかさずツッコんでくる。

 

「返答はやっ!? まさか私マンガに負けたのっ!? うぅ……」

 

 いいツッコミだ、やっぱひまりは漫才の才能あるなぁ……

 

「って! 私が大事かマンガが大事かなんてそんなことはどーでもよくてさー私バンド始めたんだよ!」

 

 結局どうでもいいのかよ……ちょっと涙浮かべて泣きそうになってたくせに。

 マンガをだらだら読みながらも俺はひまりの言葉に耳を傾け、問いかける。

 

「バンド? バンドってもしかしてあのギター弾いたり歌ったりの?」

「そうそう! ギター弾いたり歌唄ったり!」

 そういっているひまりはとても楽しそうにそして嬉しげに話していた。チラッと見ると案の定ひまりは楽しげな様子だった。

 

 バンドと聞くと男性グループが主で女性がいたとしてもグループに一人いて、その人たちがテレビ出演などをして活躍しているイメージが強いのだが最近はそんなこともないらしくグループ全員が女性でそれぞれかっこよくギターを弾いたりドラムを叩いたりし、メディア進出をしているらしい。

 

「で、メンバーは誰なんだ? またいつも通りのメンバーか?」

 

 いつものメンバーとはひまりのほかに4人女の幼馴染がいて幼馴染5人組をいつものメンバーと俺は呼んでいる。

 

「よくお分かりで! ほら、前に相談したでしょ? 蘭がひとりだけ別のクラスになっちゃって学校の授業もサボりがちでどうしよう……って。それでねしゅうにいろいろ考えてもらったり蘭以外のメンバーでどうにかできないかなって考えたりしてどうしようかって思ってたの」

 

 一度だけだがひまりに蘭について相談を受けたことがある。今まで幼稚園、小学校と幼馴染全員で同じクラスになっていたのだが、中学校進学で俺が離れ、今度は中学2年のときに蘭だけクラスが別になってしまったのだ。

 これがきっかけで蘭はクラスに居場所を見つけられなくなってしまい、授業をサボったりしてしまったらしい。もちろんこいつらが放っておくわけもなく心配してなにかみんなでやり始めようという魂胆らしい。

 

「んでみんなでできることがバンドっていう答えに行きついたのか」

 

「そうだよ! 私たちみんな初心者だけどみんなとならなんでもできる気がするよ!」

 

 なんかいつも行き当たりばったりで行動するやつらだったからあまり変わってなくてこちらまで微笑ましくなってしまうな。

 

「最初はね軽い気持ちでモカと私でひーちゃんバンドなんて言ってたら……つぐが『部活とかで忙しいかもしれないけどみんなで一緒に何かやったら蘭と一緒の時間増えるよね!』って言ってくれてさ!」

 

「へーよかったな、またみんなでいろいろできて」

 

「うんっ! それでねそれでね! ギターボーカルが蘭でーギターがモカでしょー巴がドラムやるって言っててーつぐがキーボード!」

 

 蘭ってば一人で歌詞書いてたんだよ、すごいよね! とか巴って商店街で太鼓叩いたりしてるでしょ! とかつぐは昔ピアノやってたしキーボードぴったりだよね! なんて言ってた。

 

 ひとりひとり幼馴染の名前を挙げていき担当楽器を説明してくれたひまり。

 

「へぇ、じゃあ余ったお前はベースってことか」

 

「余ってないよっ! ちゃんとみんなと話し合って決めたんだよ!」

 

 そう言っているので今日のところはそういうことにしておいてやろう。

 

 先ほど挙がったいつものメンバーはひまりだけでなく俺とも幼馴染だ。

 

 小学校までは6人全員クラスが同じでいつも6人でいることのほうが多かったが、中学生になった今は家が隣のひまりとしか喋っていない。

 

 まず最初にギター&ボーカルをやると言っていた美竹 蘭。

 彼女は100年以上も歴史のある華道の家元の一人娘に生まれた子で跡継ぎを期待されているが本人はさらさらそんなつもりはないらしい。学校をさぼっていた時期も父親と一悶着会ったらしいが何とかなったみたいだ。時折照れる姿がとてもかわいい。

 

 続いてギターの青葉 モカ。

 非常にマイペースな性格で蘭とモカは6人の中で一番仲がいい幼馴染といえるだろう。特に人の上げ足を取るのがうまく、よくほか4人をいじって遊んでいる節がある。

 

 3人目は宇田川 巴。

 彼女は他人を悪く言ったり恨むなど絶対しないやつだ。いわば姉御肌というやつでもしかしたら俺よりも男らしい一面があるかもしれない……

 なんというか俺も見習っていきたいな。

 

 4人目は羽沢 つぐみ。

 彼女は普通の女の子といっても過言ではないほど突出したところは見られない。しかし彼女は人一倍努力家で前向きである。

 俺たちは彼女の努力を一番近くで見ていたと言ってもいいだろう。他人が見て頑張りすぎないようにって言われているのを初めて見た人物でもある。

 

 5人目の上原 ひまり。

 先に言った通り可愛くて、とても真っ直ぐな女の子。

 そして重要なのがこの女の子『上原ひまり』

 

 ――――どうやら俺はコイツに恋をしているみたいだ。

 

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 この恋に気づいたのは中学へ進学してひまりがバンドを始めると聞いてからのことで、いつから好きになったのかはわからない。それが小学生の時なのかそれとも中学で離ればなれの学校になったからなのか、はたまたひまりがバンドを始めると言った瞬間からなのか。

 

 当時なにも熱中することがなかった俺にはベースを買って部屋で一生懸命苦労しながら弾いているひまりがあまりにも輝いていて眩しかった。ただただ真っすぐに突き進んでいるひまりに憧れていたんだ。

 

 そんなひまりを2年間も指をしゃぶってみていた俺はある決心をした。

 自分も何か熱中できることをしようと。

 

 ひまりの一生懸命な背中を追いかけるように俺も何か始めようと思い高校進学とともにラグビーを始めた。

 

 ほかにもボートや卓球、剣道に弓道初心者にできそうな様々な部活があったがラグビーを始めようとしたきっかけは、面白そうだったことが一つ。それとかっこよくなりたかったからだ。

 中学の時俺をよく面倒見てくれていた先輩も同じ高校のラグビー部に所属していて中学の時とは見違えるほどがっしりとした体形、程よい筋肉質になっていて俺もそんな風になってみたいと思ってしまったのだ。

 

 本心はもちろんムキムキになったらひまりが好きになってくれるだろう。とかいう安直な考えなんだが……

 

 幸い俺の高校では経験者はおらず初心者ばかりなのでそういうところも理由にすんなりと入部することができた。

 もちろん先輩も俺の入部を歓迎してくれた。

 

 

 そしてこのラグビー部へ入部するときに俺は初めてひまりを頼った。

 

 

 それまで俺がひまりの家に現れたことがなかったからか窓をたたいた時にカーテンを開いたひまりがお化けを見たような顔なのか不審者を見た時のような顔をされた。

 一応なんとかその場を収めることができ、ひまりに相談を持ち掛けた。

 

 相談したときはまだ体験入部の時で『えー! しゅうがラグビー!? 大丈夫なの? 吹っ飛ばされたりしない? 絶対痛いよー』

 

 なんて馬鹿にされもしたがひまりは俺の不安にも真剣に答えてくれた。

 今考えるとあれも心配してくれていたのかもしれない。

 

 それから部活で心配になった『やっぱり俺身体細いし大丈夫かなぁ』なんて悩みを言えば『人一倍食べてほかの人より大きくなろうよ!』だとか、『しゅうならやれるよ!』

 なんてひまりはどんなネガティブな俺の言葉も全部ポジティブに置き換えてくれて不安な俺を励ましてくれた。

 

 この太陽のようなひまりの存在が俺を大きく変えてくれたんだ。

 

 このとき俺もひまりを照らす太陽になろうと決心したんだ。




最後までお読みいただきありがとうございました。
お楽しみいただけたでしょうか。

次話も楽しんでいただけると嬉しいです。

それではここらへんで失礼いたします。
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