デスマーチ以前から始まっていた偽世界漫遊記 作:もうだメンタル
朝か.....。
僕たちは今日も今日とて街を目指して荒野を進む。確か原作では八日目にしてやっと村らしきものが見えて来るはずだったが、僕らは二人だ。一人では暇をつぶすのも楽ではないがもう一度言う、僕らは二人だ。初期ステータスに差はあるものの二人ならばできる範囲が一気に増える。鬼ごっこや持久走、速さ対決にエトセトラ。人間は退屈な時間ほど長く感じ充実した時間ほどあっという間に感じると言うが、原作の半分の日数、つまり四日目にして村らしき場所に到着した。その間通り過ぎた『竜の谷の結界壁』の感触はなんともくせになりそうな感覚だった。
しばらく歩くと戦士の砦と言うエリアに入った。やはりと言うか、人はおらずあるのはボロボロの壁や民家らしきモノ、風化し原型をとどめていない建物跡に街道から村へ向かう脇道にたてられた粗末な道標。サトゥーさんはそれを見て____
「読め、ん?『エニケイ村へようこそ』『セーリュー市まで32km』『カゾ王国まで105km』って読める! ……というか日本語か!」
____なんて突っ込んでいたが平常道理だろう。
ほんの5分ほどで畑の向こうに村が見えてくる。細い脇道の左右に広がる畑は少なくとも1年以上は放置されているように見受けられる。畑は雑草が生い茂っている。
遠目で見てもわかったようにどの家も倒壊している。位置的に考えて「魔物やドラゴンなどに襲われて放棄された村」ってところだろう。
人骨などは見当たらないが慌てて逃げ出したのだろう、農具や収穫かごがポツポツと落ちている。
何を思ったのかサトゥーさんは放置されたクワを手に取りおもむろに農地へ突き立てる。僕もそれを真似してやってみる。すると____
<「開拓スキルを得た」
<「耕作スキルを得た」
うん、思った通りのものがログにでる。やはりイージーモードだったか。
ついでに雑草も抜いてみる。
>「草刈スキルを得た」
刈ってはない、抜いただけだ。
防風林らしき林に入り、斧を取り出して適当に木を倒してみる。
>「伐採スキルを得た」
次は何をやろうか、むしろ発想を試されている気がする。
土がむき出しになっているところに行きクワで地面に数式を書く。
『1+1=2』と。
>「算術スキルを得た」
ふむ、これがokならば『E=mc²《イーイコールエムシー二乗》』。
>「逸失知識スキルを得た」
特殊相対性理論の有名な関係式は逸失知識ですか。
高飛びスキルとか手に入ったらシャレていて面白いのに……。
今度は棒人間をサラっと描く。
>「絵画スキルを得た」
絵描きさんに怒られそうだな。
続いて井を書いて○×を交互に書いていく子供の頃の遊びをしてみる。
>「遊戯スキルを得た」
なんていうか何でもアリですか?
気を取り直して次に行ってみよう。
家の裏手に燃え残ったマキがあったのでナイフで少し削って棍棒にしてみる。
>「木工スキルを得た」
>「武器作成スキルを得た」
さらにストレージから革紐を取り出して棍棒の取っ手に巻きつける。
>「革細工スキルを得た」
小枝を束ねたような箒っぽいもので削り屑を掃いて端に寄せる。
>「清掃スキルを得た」
そろそろネタが尽きてきた。ネタを探して村を探索していると共同墓地兼土着の神を祭る祠を見つけた。
干し肉をお供えするのもアレなので、杯に竜酒を注いだものにした。
>「祈祷スキルを得た」
>「称号:信仰篤き者を得た」
う〜ん。スキル取得のつもりはなかったんだが、......良しとしよう。
ネタもなくなってきたし、スキル獲得にも飽きてきたのでこの辺でお開きにして村を出る。
街道に出たあたりで地平線に夕日が沈む。久しぶりに年甲斐もなくはしゃいでしまったようだ。と言っても身体の年齢的には高校一年生くらいなのだが。
道標にあった通りにセーリュー市の方向へ疾走する。朝日が登り始める頃には広域マップ内にセーリュー市全域が収まっていた。
やっと人里だ。