※注意事項※
この話は現在鷺沢文香さんが長野で長期のロケをしているので喜多見柚視点にてお送りします。
宮本フレデリカは可愛い。
宮本フレデリカの登場シーンが少ないけどそれでも可愛いので初投稿です。
以上三点をご理解頂ける方はお進み下さい。
「ふん、ふん、ふふん、ふふふんふんふー♪」
ターゲットを目視した。ふふ、こちらに気がついてすらいない。馬鹿な奴だ。これから貴様を待ち受けるのは地獄も生温いほどの恐怖だというのに…………!
…………なに? 無駄口はいいから黙って追えって? ちぇっ、わかってますよー。
「ふるふるぅ〜、ふーん……あんたが私のとぅてぃってーんっ♪ フフ-ン!! \フンフンフフフ-/ ↑↓ミヤモト↑↓ フ-ンフ-ンフ- フフフ フンフフ- フフフフフン♪」
しかしなんだあの鼻歌は。聞いているだけで不安になってくるぞ。どうやって発音してるのか全くわからん。
え? ああ、ターゲットは特売の豚バラ肉を上機嫌で振り回している。オーバー。
「〜〜〜♪〜〜〜〜♪」
────いきなり口笛にシフトしただとぅ!?
…………く、くくく、奴め、どうやらこちらの動揺を誘う気らしい。大きく盛り上がる直前で謎の鼻歌を口笛によるマスピに変えやがった。クソっ! ダラララララ(アッフゥフン!)、カモカテペテー(ニラノカオ-リガスル-)、ダラッダッダラッ(メンタ-イコ-)の続きはなんなんだ! めっちゃ気になる! なんで一度オーケストラの指揮者みたいな動きをしたんだ!? 完全にサビに入る時の動きだったじゃないか!
…………はっ、いかん、奴の思惑に乗せられてはダメだ。落ち着け、落ち着け、平常心だ…………。ふぅー、はぁーっ────よし。
あっ、ごめん見失った。
「ごめんて」
「さすがに許されざるにゃ!?」
アタシ、喜多見柚はフリーの探偵…………あ、うそうそ。こんなんでもアイドルやってます、いぇいいぇい。
「いやね、あれは卑怯だと思うわけよ」
「遊んでたからじゃないかにゃ」
「それとこれとは別、それとこれとは別」
先日、前川みくちゃんとPサンからの依頼により、標的の追跡をしていたわけなんだケド。これがアイドルの仕事なのかどうかはこの際置いておいて。
見るものといえばデスクと観葉植物くらいしかないような簡素な事務所の一角、ガラステーブルを囲むソファに座りつつ、輪っかになって作戦会議の真っ最中なのだった。
残り少ないりんごジュースをズゴズゴと吸い上げ依頼主たる二人と向き合う。お行儀悪いですよとちひろさんに叱られつつ、成果の発表。まあ、行動範囲が少しわかっただけでそれ以外はスカなんですけどもネ!
「対象の追跡は失敗だねぇ。てかさ、本当にあの子スカウトするの? 関節あるのか怪しい動きしてたよ?」
「ぶっちゃけ可愛ければ関節とか材質とかどうでも良いと思います」
「思ってたより重症だったにゃ!?」
「アタシも流石に無機物はちょっとねぇ……」
「合成樹脂姉貴はセーフですかね?」
有機物でもモノホンはアウトじゃないかな。アタシポリエチレンドロイドも裸になったらただのマネキンだと思うのだ。元は石油。うん、アウトで。
「…………んー、と。たしか、読モなんだっけ」
ガサゴソ、とソファーすぐ後ろのラックから最新のファッション雑誌からいくつかめぼしいものをペラペラとめくってみる。
前前前世から思っていたが、アタシの感性がついて行けていないのか世界の感性が遅れてるのか、そこら辺は分からないが、一体ダサ可愛いって何なのだろうか。ダサいの何が可愛いんだろう? 可愛いとダサいは両立するのか?
そんなことを考えている間に発見。だぼっとしたハイウエストマムジーンズに白いシャツ。ピンクの縁の眼鏡を少しズラしてアクセントにウインク一つ。他のモデルも中々ハイレベルな雑誌だが、確かに彼女は一歩抜きん出てると思う。
そして何より────
「「────めっちゃ楽しそうだよね(ですよね)」」
意見が一致し、Pサンとハイタッチを交わす。
改めてそのページを見直す。とっても綺麗な笑顔でポーズをキメる彼女。暗い色の壁をバックにしているためか、対比で金髪が映える。ガイアにもっと輝けと囁かれちゃったのならしょうがないので、煽り文を適当に流し見てコーデのお値段を確認する。未だに洋服に1万円もかけれないアタシには少し重いかなってトコ。ちょっとため息。
「まあ、たしかにすんごく可愛いけどさ、他のモデルさんとかスカウトしちゃって問題にならないのかにゃ?」
「……ウン。カワイイ……ヤバイコレ……ハァ」
「まぁた語彙力先輩が溶けてらっしゃる」
まあ、そこらへんはゴールドマスターちひろさんにどうにかしてもらいましょ。それよりも、このカワイイbotと化したPサンをどうにかして現実世界に戻さなくては。フォロワーが数万人近くいる公式ツイで余計なこと言われでもしたら、恥ずかしいのはアタシ達だし。
まゆすきと1.7回/sで呟いていた時は流石のまゆさんも照れながら笑いつつ恥ずかしそうに泣いていた。ぽこぽことまゆすきマシーンを優しく叩く姿には非常に癒されたが。そのせいで未だに事務所のPCで『ま』と打つと予測変換のトップは『まゆすき』だ。どげんかせんといかん。ちなみにその次は『マ?』である。
気を取り直してぺちぺちと軽くビンタ。
「アッ! コッ→コ↓コ←コ↑コ⇔コ↘︎コ↙︎コ↖︎コ↗︎ヤッベエ!……カワッ……ウァ-カワイイ……」
ダメか、斯くなる上は。
「ぐさぁーっ!」
「完全な刺突音から頭に打撃のような痛みが!?」
これもいわゆる一つのジャジャン拳である。
なんにせよ、無事にPサンを現実世界に戻すことができたと言えよう。当の本人は何が起きたか把握しきれずに辺りを見回している。どんだけ没頭して居たのだろうか。若干ゃキモい。
「まあ、前川さん────みくの、心配も最もですし。どうしたものでしょうかねぇ」
「愛と平和とロックとメタルとフォーゼでなんとかするしかなくない?」
聞いてたんかい、と心の中でツッコミつつ。
なんとかすると言っても具体的には超融合的な何かでGOIN’‼︎にぐらいしかないような気もする。一枚捨てる手札はみくちゃんのネコミミでいいだろう。シルバードが一番好きなのだ。
「愛と平和とメタルはいるけどロックとフォーゼってにゃにさ」
「そら自分を曲げないお方よ」
「うっさい」
はっはっは、どすこいどすこい。じゃれるなじゃれるな。爪長いよみくちゃん、切って。
「さて、ここで唐突ですが、宮本フレデリカさんのスカウトプランなどにフィーチャリングしたディスカッションをスタートしたいと思います」
「腰低い系意識高い系男子だと……?」
本当に唐突に始まったのはそんな感じの会議。誘ってはいたもののちひろさんは業務が忙しいようで、何枚かの書類を抱えて資料室へと向かったそうな。
「何か意見のある柚は手を挙げてくれ」
ところでちひろさんは汗水垂らして働いてるわけだがコイツは仕事しなくていいのだろうか。そしてみくちゃんを無視してやるな。可哀想みがあって可愛いが、それはみくちゃんの領分ではないと思うんだ。
さておき、意見と言われましても。仕方なく手を挙げてみる。指される。
「やっぱギリギリまで体力を削ってねむらせるのが手っ取り早いでしょ。万全を期すならみねうち持ちとか、かげふみ、ありじごくじゃない?」
「デジモンじゃない -10点
ありふみ要素がある +100万点
オルガが死んだ -ナハノウボキ
総評:現実的に考えよう」
うるさい現実見て仕事しとけや。
時刻は9時を通り越した。宵闇が幅をきかせ、良い子はもう寝て、ねないこだれだと幽霊が悪い子を探す時間である。我々の様な良いアイドルもそろそろ帰宅の時間であり、普段ならプロデューサーが社用車で送ってくれる手筈になっている。
「遅い」
「遅いにゃ」
「アタシもー、お腹すいたーん」
社内に残されているのはどういうわけかアタシこと喜多見柚、前川みく、撮影帰りの塩見周子、そして業務に追われる千川ちひろの4人だけ。プロデューサーは一足先に年少組を自宅、もしくは女子寮に送り届けてもう帰ってもいい時刻。
退屈に身をよじらせてスマホをいじっているとピロピロと事務所の電話が鳴る。数秒もせずにちひろさんが出て、いくつか会話をしたと思ったら急にキレた。
「今からですか!? 何言って────は!? 何時だと思ってるんですかこのお馬鹿! ご自分でなさってください!」
ガチャン! そこそこ乱暴に受話器を叩きつけてため息を吐いた。
「…………どしたんちひろさーん。なんか手伝う?」
おお、行った。周子ちゃん勇気あるなぁ。しかし、ちひろさんは怒った顔を収めて、いつものスマイルで書類を片付け始めた。それについて行った周子ちゃんとちひろさんはパーテーションの向こうで一言二言会話を交わし、戻ってきた。詳しくは聞こえなかったが、周子ちゃんはクスクスと笑ってちひろさんはムスッとしている。Pサン関連で面白いことでもあったのかな?
「さっ、帰りましょう。柚ちゃん、みくちゃん。帰りの準備、して下さいね」
「……あ、もう出来てまーす、ケド」
「で、でもPチャンもいないし車もないにゃ?」
「私の車で帰ります。もうプロデューサーさんなんて知りませんから」
ツーン、とそっぽを向くちひろさん。ちひろさんがここまでとは、こりゃ相当だなぁと。今までの事例からして、ガチギレ案件は志希ちゃんの失踪について行って4日間姿を眩ませたときと、裏の駐車場でユッキと野球してガラスを割った時ぐらい。
そして今回のような呆れ半分の中ギレはクリスマスプレゼントに貰ったとか言って家なし服なし金なし身分証明書もなしと無い無い尽くしのイヴさんを拾ってきた時と、お年玉を貰ったと何処かからよしのんを拾ってきた時。今回もまた、カープのCS出場祝いに貰ったとか行って美波さんみたいな人を拾ってきたのだろうか。
まあそれも明日になれば正座させられたPサンの口から聞けるだろう。
「こんにちハロー! 宮本フレデリカでーっす!」
「少し早いですが、バレンタインにいただきました」
想像通りすぎてなんの感情も湧かなかった。
翌日の事務所にて、スーツで硬い床に正座しているPサンにぐしゃぁーっ! と寄りかかってダブルピースをキメているのは、先日話題に上がったばっかりの宮本フレデリカさん。フランスと日本のハーフだとか。
「いやぁ、昨日事務所へ戻る途中、一人で歩いていまして、夜道を一人は危ないだろうと思い声をかけたら何故かトントンと話が進んでアイドルをやってくれることになりました」
1ミリも理解できない……。やはり私ごときがPサンに勝てると思ったのが間違いだったか。
ちひろさんは未だにぷんぷんと怒りを撒き散らしている。書類をまとめる手は止まらないままだが。
「モデルの事務所はどうしたの?」
「やめた!」
「どこから通ってるの?」
「新宿だよー。デザイナーズマンションって言うの? スッゴい変な形してるとこ!」
「フレデリカ……フレちゃんって呼んでいい?」
「フレちゃんもフレちゃんのことフレちゃんって呼ぶから大丈夫だよー」
そんな感じで質問責めにされるフレちゃんとそれに巻き込まれるPサンを見ながら、隣に座るみくちゃんと目を合わせた。アイスを加えてちひろさんと話し込む周子ちゃんとも目が合い、互いに軽く笑った。
ここでフリージアを流せば綺麗に終わるんじゃないかなとか、適当なことを考えながらやはり愛と平和とロックとメタルとフォーゼが最強だったのだ、と独りごちる。みくちゃんにそれは違うよと突っ込まれるが。それはそれ。このテキトー加減が私の生き様なのだと、この時代に叩きつけてやる。
晴れ渡る秋空も、言っていた。そろそろ〆といたほうがいいよ、と。
続ける予定はありませんでしたがスカチケをフレちゃんに叩きつけた記念に書きました。
遊戯王ネタは好きです。一人合作ネタも好きです。キャベツは許さんけど好きです。昨日のうちに投稿できればタイトルは宮本フレデリカ浅利七海説にするつもりでした。
この話を一行でまとめる。
『宮本フレデリカ が なかまになった!』
以上です。