新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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第3章 市街編その2 悪魔憑きと悪魔使い
チャプター16 


 

チャプター16 繁華街へ

 

 

悪魔の出現により、今までの人間の法は全て過去の物となった。必要なのは権力でも金でもない、必要な物はただ1つ……それは力。力ある者が正しい、それだけが今の法律だった

 

「うっぜえんだよ!!このデブがぁッ!!!」

 

「ひぎゃあ!?お、俺にも……た、食べ物を……わ、分けて……くださいよぉ……」

 

「だかーらー?言ってるだろ?お前みたいなデブに分ける食べ物は無い訳。寧ろお前が居るとくさいから、早くこのデパートから出て行ってくれる?」

 

「死にたくないだろー?ほれほれ!逃げろ逃げろッ!!」

 

「ひ、ひいいいいっ!!!」

 

拳銃を向けられた男性は頭を抱えて、その太った身体を揺らしながら必死に走る。そしてそんな男性を嘲笑う若い何人もの男。その男達は嘲笑いながら太った男性を見て

 

「ぎゃははは!ばっかでー!これはモデルガンですう」

 

「本物の弾丸なんて勿体無くて使えるかよおっ!」

 

階段の方へ巨体を揺らしながら走る姿を見て、男達は馬鹿にするように笑い続けていたが、モデルガンの照準を走って逃げている男の背中に合わせて

 

「あ、た、いたい!や、やめてくださぃぃ……」

 

その背中にBB弾を打ち始める男達の後ろでは家具売り場から運んで来たのだろう。大きなソファーに座り、ショーツのみを身につけたアイドルを自分の隣に座らせ、その胸を乱暴に揉みながら、酒を飲んでいた

 

「ひ、ひうう……」

 

「なんだ?俺に文句でもあるのか?なんだ俺様だけじゃ満足出来ないか?あいつら全員の相手をするか?ん?他にも女は幾らでも居るんだぞ?」

 

そのソファーに座る男こそが、このデパートの支配者だった。この男に気に入られているから、彼女は他の女性と違い、ベッドも与えられ、暖かい食事も採る事が出来ていた。だがもしこの男の気分を損ねれば、男の手下達に囲まれて乱暴されるのはわかっていた。勿論、今もこの男に胸を揉まれ、そして夜にはこの男に抱かれていた。だが大人数に犯されるのを恐れたアイドルは少し待ってくださいと、男に胸を揉むのを止めてくれと頼み。脇を締めることで胸の谷間を作り、そこに酒を注ぎ

 

「お、お飲みください……私は貴方の物ですからぁ……」

 

「くく、ははははは!!良い心がけだ、やっぱりお前を俺の物にしたのは正解だったな!!!」

 

男は高笑いしながら、アイドルの胸の谷間に口をつけ酒を飲み始めた、最初はこのデパートも最初は何人かの警察官や警備員が居て、その人達が指導者となり共同生活を行いながら、救助を待つ。その方向で纏まっていたのだ、だがそれを良しとしなかった者が居た。こればっかりは運が悪かったと言えるだろう……この日このデパートではアイドル達が訪れるイベントが開催されていた。アイドルを一目見ようと思う男は多く、そのイベントがあったからこその警備員だったのだが、悪魔の出現により陸の孤島と化したデパート。生きたければ物を食べるしかない、ならばその食べ物を独占すれば?そう考えた馬鹿な若者により警察官と警備員は寝ている間に撲殺され、拳銃や警棒と言った物を全て奪われた。そしてその奪われた武器を手にした若者達は暴走を始めたのだ

 

「い、いだいいい!!」

 

「あーちくしょう!俺15点だわぁ」

 

「このへたくそー!あれだけ的がでかいのになんで外すんだよ。今度は俺の番だ」

 

「「「ぎゃはははははッ!!!」」」

 

彼らの傍若無人な行いを止める物は居ない。それはあの男性と同じく、この男達の慰め物になっている女性達も

 

「きもいわぁ……あんなの早く死ねばいいのに」

 

「だよねー!きっもちわるいーッ!!」

 

男達に気に入られて、服を着る事を許されたアイドル達が声高々に男を罵倒する。例え同じ立場の弱者だとしても、自分よりも弱い者を罵倒し、そして強いものに媚を売り自らの身の安全を確保する。仮に好きでもない男に抱かれたとしても、従順にしていれば、風呂にも入れる。ベッドでも眠れる、食事の心配も無い。ならば身体を穢されても、生きて行ける方が良い。そう考えて男達に従順となった女性はまだ良い、男達に気に入られている間は強者でいることが出来るのだから、だが男達に反抗的なアイドルや女性は彼女達の様に服を着る事は許されず、そして食べ物を得る為には男達の劣情を満たす必要があった

 

「あん……も、もういいでしょう?食べ物を分けて頂戴」

 

「ひいっ……お、お願いだから……もう、食べ物を分けてよぉ……」

 

「んーまだ駄目だな!ほらこっちに来て胸を揉ませろよ」

 

「んじゃあ俺は目の前で生着替え。ゆっくりやってくれたら食べ物分けてやるよ」

 

銃等で女性達を脅し、半裸を強制した、淫らなポーズや言葉を言わせて、そしてそれこそ慰め物になる事で女性達は食べ物を分けて貰い、その命を繋いでいた。男性や子供は目の前を過ぎったや、俺を睨んでいたそんなくだらない理由でリンチされ殺された。そしてモデルガンで追い回されている太った男性が生きていたのは男達の気紛れだった、女性を殴って顔が崩れたら萎えるそんな理由で、気分次第で殴る為だけにあの男性は生かされていたのだ。この若い男達は気分次第で人を殺し、食べ物と交換で女性を犯し続けていた男達にもうまともな倫理観など無く

 

「おっほ!見てみろよ!今朝デパートから放り出した逃げようとしたアイドル!外に居る男達に捕まってるぜ!」

 

「マジマジ!ぎゃははは!!本当だ!やっぱり全部服を剥ぎ取って、身体に落書きしまくったからなあ」

 

「アイドルもああなったらお終いだよなあ……醜いおっさん達に輪姦されて、でもよお?悪魔に喰われるよりかはマシじゃね?」

 

性的には貪り食われてるけどなあっと下品な笑い声がデパートの中に響き渡る。そしてその笑いを聞いて女性の顔が引き攣る、逃げようとすれば殴られながら犯されるか、全員で気絶するまで犯される。そしてその後は全裸のままデパートの外へ投げ出される。そうなったら後は悪魔に喰われるか、外に居る男に犯されるか。その二択しか残されていない、だから女達は男達の要求を聞いて、羞恥心に顔を歪めながら半裸の格好で過ごし続ける。このデパートの中に既に常識なんてものは存在せず銃を持つ男達が絶対の君臨者として、己の欲望のまま支配しているのだった……

 

「くそ、くそ……じ、銃を持ってるからって偉そうにして……こ、こうなったら」

 

銃を向けられて逃げた男性は2階まで駆け下り、誰も追いかけて来ていない事を確認してから狭い部屋の中に飛び込み

 

「守護霊様、守護霊様。どうか私の呼びかけにお答えください」

 

魔法陣も無い。ただ都市伝説で見た呪文を一心に唱え続ける

 

「どうか私の前にその姿を現し、私をお守りください」

 

悪魔が呼び出される条件を満たして居なかった。本来なら悪魔なんて現れるはずも無かった……だが悪魔が出現しやすくなっていた神無市の今の状態が男に味方した

 

【ウボオアアアアア】

 

「は、ははは!!やった!やったぞ!!俺の守護霊さまだああッ!!!」

 

現れたのは悪魔とは言い難い、ぶよぶよの身体をした溶け続ける悪魔。その悪魔は目の前の召喚者を見るとその目を真紅に輝かせ

 

「やった、やった……おごぼおおおおおッ!?!?しゅびゅひゃいじゃまあああああ!?」

 

大口を開けて笑っている男の口の中に飛び込んでいく。口の中に液体の悪魔が潜り込んだ事で、この男は目を白黒させ、悲鳴を上げるが、悪魔はそんな事はお構いなしで男の口の中に飛び込んでいく。そして悲鳴が途絶えた頃、この男性の身体は倍以上にふくらみ、白目を向いて気絶した男性だけがその場に残されるのだった……

 

 

 

ヤタガラスの支部だと言う神社を出て、昼前に俺達は神無市の繁華街に着く事が出来たのだが、行き成り繁華街に向かう前に情報収集をと、瓦礫や、横転した車のせいで遠回りを何度もしなければならなかったが、神無市を見渡す事が出来る展望台に訪れていた。

 

「死体も車の気配も無し、悪魔も居ないのはここを占拠する価値が無いと判断したか」

 

悪魔が存在するにはMAGが必要だ。俺達と契約しているカソ達は俺達が生きていれば、MAGが供給されるので人間を襲う必要が無いが、他の悪魔は違う。存在を維持すためにMAGを……つまりは人間の血液や魂を摂取しなければならない。共食いで補う事も出来るらしいが効率が悪いので人間を襲うのが1番効率的かつMAGも確保出来るらしいのだ

 

「でも繁華街はそうはいかないんでしょうね」

 

美雪先輩の言葉に久遠教授がそうだと頷く。海と山に囲まれた立地の神無市は観光や、避暑地として有名な場所でありつつ、神無大学付属高校があるなど勉学にも有名な街だった。俺は学校に通いながら思ったものだ、観光と勉学全く異なる物を街の特色として、ここまで大きな街にした市長の手腕は素晴らしいと、だがそれが今や生存者の脱出を妨げる壁になるとは何と言う皮肉だろう。

 

「陸の孤島みたいになっているしな。良く考えないと脱出すら難しいな」

 

雄一郎の言葉にその通りだと頷く、海にしろ、山にしろ、この街を脱出にするにはこの繁華街を抜けなければならない。本来なら別の場所からも出ることが出来るだろうが、展望台やTV塔が倒れているのを見たので、そっちの道は通れない。消去法として繁華街が残ったのだ。

 

「他の街へ向かうというのもリスクがある、だが山や海でサバイバルをすると言うのも当然リスクがある。だがこのまま街へ残るよりかは安全と言うのも事実だ」

 

ホームセンターなどで入手した。キャンプ用品の数々は山や海で生活する可能性を考慮して集めた物だ。仮に他の街へ向かうとして、その途中で道路が通れなかったりすれば、引き返し、山や海でサバイバルをしながら救援を待つ。その可能性も考慮し準備をしたのだが、悪魔が居る環境ではリスクはやはり高い。だがガソリンスタンドで出会った男達のように、自分の欲望を満たすためだけに街を徘徊している連中に見つかる可能性を考えれば、街中もリスクは高い。この場に留まるにも、別の街に行くにもリスクが高い状況……それならば移動すると言う選択をするのは間違いではない。この街にヤタガラスなんていう地下組織があるのは、それだけ悪魔が出現しやすい立地だからだろう。留まるのは危険だと思って間違い無い筈だ

 

「でも繁華街を通るのは危険なんじゃないですか?」

 

「それも承知している」

 

桃の質問に久遠教授が腕を組み、溜息を吐きながら言う。ここまで来るまでの間にビルやマンションの上から瓦礫などを投げてきて車を止めようとした人間が何人も居た。その止める目的は言うまでもないが、久遠教授や桃達を狙っての物だ。

 

「このような状況でまだ自身の肉欲を満たそうとするとは呆れ果てて物も言えん」

 

ここまで見かけた生存者はほぼ男性。女性を見かけては居ない、それは生存者同士助け合うべきなのだが、その相手が女性を襲っているという可能性を如実に示していた。リリムやカソを車の屋根の上に召還する事で攻撃を受けなくなったが、高校やホームセンターがある地区でこれなのだ、雑居ビルや、デパートなどが並ぶ繁華街。そして街を出るためには通らなければならない場所だが、悪魔の出現も多いと聞く。脱出できず、留まっている生存者が多いのは容易に想像がつくし、車で通れば狙われやすい。正直別の通路で脱出出来るのならば、繁華街は決して通りたい場所ではないのだ

 

「だが通らなければ、街を出ることは出来ない。幸い展望台の望遠鏡などは無事だ、それで少し街の様子を見てみよう」

 

久遠教授の言葉に頷き、念の為にヤタガラスから貰った武器ではなく、メルコムの店で買った鉈を持ち展望台へ向かう。ヤタガラスが用意した武器は切れ味などが異常でとてもではないが、俺達では使えないと思ったのが最大の理由だ。もし使うとすればもっと戦いになれた時になるだろう

 

(そんな時が来なければいいと思うけどな)

 

俺達はあくまで学生だ。そんな俺達が使うには危険すぎる武器、それを使うようなことにならなければいいがと思いながら、階段を上っていく。悪魔の出現を警戒したが、悪魔は出現せず。あっさりと最上階の近くまで登ることが出来た

 

「やはり人間の死体などが無ければ悪魔はいないか」

 

血痕も何も無い。だから最初からこの場所には悪魔は存在しない、悪魔が出てパニックになっているのだから展望台からは人は逃げ続けていたろう。だから悪魔は逃げる人間を追いかけてこの場を素通りしたと言うことか……

 

「となると繁華街は」

 

「悪魔の巣窟だろうな」

 

顔を青褪めさせる美雪先輩の言葉を引き継いで、久遠教授が顔を顰めながら呟く。生存者は皆逃げる為にきっと悪魔が出てすぐはTV塔や電波塔のある方向からの脱出を試みただろう。だが悪魔によって破壊され、道が断絶されたので繁華街へと逃げ始める。そうなれば人間がひしめき合い、思うように移動は出来ず悪魔に襲われる。

 

「考えられる限り最悪の状況ですね」

 

生存者がいたとしても協力ではなく、こっちが持っている物資や、久遠教授や桃に美雪先輩を襲う事を考えている下種共。更には生存者や死体からMAGを得ようとする悪魔……素早く行動しなければ、生存者、悪魔の両方に狙われる。その可能性を知り、俺は思わずそう呟いてしまった

 

「だから素早く行動出来るようにここで繁華街の様子を調べてから行動する。出来る事なら、今日中に繁華街を抜けたい所だが、それも難しい。少なくとも2日は掛かる。その事は覚悟しておいて欲しい」

 

久遠教授の言葉に判りましたと頷き、展望台から繁華街の様子を伺うのだった……

 

 

 

展望台から繁華街を見ていた楓と雄一郎君が私には見ないほうが良いと言った意味を繁華街の近くに来た事で理解した

 

「……うっ」

 

噎せ返るような血の匂い。そして焼け焦げた遺体や、体の右半分が凍結し、苦悶の表情で息絶えている男性、胸に大きな穴が開き、呆然とした表情で倒れている女性……繁華街に入る手前だと言うのに、そこは死体の山だった。車から降りる予定ではな無かったのだが、長時間車の中にいていざと言うとき身体が動かないと困ると言う理由で車を降りて、少し移動してきたのだが、数分歩いただけでこの惨劇だ。もし私1人だったら意識を失っていたと思う

 

「桃、大丈夫か?」

 

自分の背中で目の前を隠しながら訪ねてくる楓の制服の裾を掴む。そして考えるのはどうしてこんな事になってしまったのか?それだけだ

 

「落ち着け美雪。動揺するな、叫ぶな。泣くな、見つかるぞ」

 

「は、はい……判っています」

 

震えた声で久遠教授に返事を返す久遠先輩。雄一郎君は鉈を手に周囲を警戒しながら

 

「コロポックル。悪魔の気配は?」

 

【今のところは無いの、ここら辺の死体は皆MAGが尽きておる。留まる必要も無い、逃げた生存者を探して追い掛け回しているんじゃろう】

 

悪魔の気配が無いのは良いけど、こんなに死体があると、怖くて怖くて、思うように移動なんて出来ない

 

「死体を観察する趣味は無いですけど、どうしてこんな死体ばっかりなんでしょうね?」

 

「切り裂かれた、殴り殺された、噛み殺された。それが高校で見た死体だが、これは違う。恐らく生息している悪魔が違うんだろう……魔法を使いこなす悪魔。それが繁華街に住まう悪魔の特徴なのではないか?」

 

淡々と話す久遠教授と楓の言葉を聞いていると、私の背中を撫でていたナジャが楓と久遠教授の方を見て

 

【でも契約しているから、耐性のある魔法は平気だよ?楓だと炎は大丈夫だけど、氷は駄目。雄一郎は氷に強いけど、炎が駄目。美雪は電撃に強くて、特に弱点は無いから普通。桃子は風の魔法に強くて、教授は電撃と水に強くて、光に弱い。それを頭に入れておけば、皆でお互いを護りながら行動出来ると思うよ。弱点を喰らったら下手したら死ぬかもしれないから、お互いにお互いを護ると思っておいた方がいいよ】

 

悪魔と遭遇し、魔法を使われたらその魔法に強い悪魔と契約している相手が盾になると言う事だ。ナジャの言葉に頷いた久遠教授は車に戻ろうと私達に声を掛ける。その言葉に頷き、車に戻り再び移動を開始する中。私は窓の外を見ないように頭を下げ、早く繁華街を抜けて欲しいと心の底から祈るのだった……

 

「今日はこれ以上の移動は危険だな」

 

久遠教授の言葉に思わず眉を顰める。繁華街の中ほどまで移動したのだが、それ以上の移動は危険だと久遠教授がが判断したのだ、その理由は言うまでも無いが悪魔の数の多さにある。出入り口のほうはまだ良かった、現れる悪魔が高校でも見た餓鬼や、カソと言った弱い悪魔だったから……だけど破壊されたコンビニやスーパーなどの看板や横転している車が目立つようになってくると、悪魔もその種類も強さを大幅に変わって来たのだ

 

【ジャックランタンに、ダフネにハーピーにヴォジャノーイにアプサラス……結構強い悪魔が目立って来たしね。それに夜にもなると悪魔も活性化する。日が暮れる頃には、移動は難しいよ】

 

かぼちゃ頭にランタンを持った悪魔、女性に似たシルエットをしているが、髪や背中から木が生えた悪魔に、両手が翼の女性の悪魔、河童みたいな鬼に、羽衣を纏った女性の姿をした悪魔……姿形にしたって人間に近い悪魔が多くなって来ていた

 

「でも不思議じゃないですか?悪魔は襲ってきませんでしたよ?」

 

雄一郎君がそう呟く、確かに悪魔の姿は多く見たが襲ってくる悪魔は居なかった。その理由は何だろうか?私達が首を傾げていると久遠教授はもしかしてとつぶやき

 

「ヤタガラスが何かをしたのかもしれないな。繁華街を通って街を出ると言っていたから、その間でも安全になるように何か仕掛けをしていてもおかしくあるまい。コロポックル、そう言う魔法はあるのか?」

 

【エストマかの、一定時間悪魔を寄せ付けない結界魔法じゃ】

 

結界魔法……それがあったから悪魔に襲われなかったのかと納得したが、その結界の持続時間などは判るわけも無い、ここまで安全だったからと過信し、日が落ちた中繁華街を進むのは危険すぎる

 

【そっか、なんか嫌な感じがすると思ったらエストマか……】

 

【リリムは闇属性だもんね。破邪の呪文は苦手だもんね】

 

ピクシーとリリムが車の外を飛びながら、そんな話をしているのが聞こえてくる。悪魔にも当然だけど得意な事と苦手な事があるんだなっとそんな当たり前の事を考えていると車がゆっくりと停車する。どうしたんだろう?と顔を上げるとそこには、窓が割れていたり、建物が煤けていたりする中で比較的綺麗な建物の姿があった。3階建てのビルで、1階は車庫、2階は喫茶店、3階は看板で派遣会社の物だと判る。他の建物と違って窓が割れていないのが印象的だった

 

「ここで一晩を過ごそう。1階から2階、3階に上がる所をコロポックルの氷で封鎖すれば狂った馬鹿が侵入して来る事は無いだろうし、窓はバリケードを作れば、外から悪魔に侵入されることも無い。更に言えば氷の後ろにリリム達が見張っていてくれれば安全に眠る事が出来る。車も車庫に納めて、氷で塞げば破壊される心配は無い。それに悪魔が強いと言っても、これだけの建物は破壊されていない。だから寝ている間に生き埋めになる心配も無い理想的な立地だ」

 

久遠教授の言葉を聞いて確かにと納得する。ゆっくりと車庫に車を停めた久遠教授は後部座席の私達を見て

 

「雄一郎君と楓君には悪いが、荷物を頼む。食料と使い捨ての紙皿と箸とかを持ってきてくれれば良い。その間に私達で寝床とかの用意をする。頼めるかな?」

 

久遠教授の言葉に、雄一郎君と楓は大丈夫です。任せてくださいと笑う

 

「じゃ、私はもしガラスの破片とかあったら掃除しておくね」

 

「ですね。安全に眠れる場所を用意しないといけませんから」

 

私達には私達の出来る事をするよと楓に言うと、楓と雄一郎君は心配した表情で

 

「悪魔が居るかもしれないから気をつけてな」

 

「ああ、楓の言う通りだ。危険だと判断したら入るのは待ったほうが良い」

 

見た目は綺麗でも中に悪魔が居るかもしれないから気をつけてと言う楓。でも確かにその可能性はある。だけどここには死体も血痕の後も無い。だから悪魔が居ない可能性もある

 

「悪魔を召喚しておけば大丈夫だろう。楓君達こそ、狂った生存者や悪魔に気をつけるんだ。外に面しているから楓君達の方が危険なんだからな」

 

久遠教授の言葉に判りましたと返事を返す、楓と雄一郎君にこの場を任せ、ナジャ達を連れて2階の喫茶店に足を踏み入れた瞬間

 

「「えっ!?」」

 

「しまっ!?」

 

暗がりから伸びた何かに脚を捕まれたと思った瞬間。そのヌメヌメした感触に嫌悪の悲鳴を上げるよりも早く激痛が走りその痛みと衝撃で私の意識は闇の中へと沈んで行くのだった……

 

チャプター17 動く屍

 

 




今回は不穏な所で終わりました。女性陣のみと暗がりから伸びる何かでまぁ大体予想はつくと思いますけど、多分次回は微エロ?ッぽくなってしまうかもしれません。出来ればそう言うのは控えめにしたいですが、必要なので今後も書くことがあるかもしれませんね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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