新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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チャプター20

 

 

チャプター20 悪魔憑きが潜む場所

 

黒龍塾の悪魔使いと名乗る門脇勝巳、原蒼汰と名乗る2人組みはウロボロスに所属していると告げて去って行った……私としてはモリーアンや、ウンディーネと言うかなり高レベルの悪魔を使役している事に驚いたが、いいタイミングで出会ってくれたと私は内心感謝していた。楓君達は甘いと思っていたが、それを口にすることは出来ず。いつそれを教えるか、いつそれを見せるか?と思っていたが、勝巳と蒼汰は楓君達に現実と言う物を教えてくれた。瓦礫の腰掛け思案顔の楓君達を見ながらわたしはゆっくりと口を開いた

 

「私は殺しを是とするつもりはないが、勝巳と蒼汰の言っている事は間違いではないと思う」

 

恋人を、妹を、姉を、妻を……悪魔に殺されたならまだ仕方ないと思えるだろう。だが同じ人間に、しかも自分の性欲を満たす為に傷つけられて、黙っていられる訳がない。復讐を望むのは当然の事だと思う、殺したいと思っても仕方の無いことだと思う。それは当然の感情の発露と言えるだろう

 

「ただ闇雲に殺しや人を傷つけるのは良しとする訳じゃない。それをしてしまえば悪魔と変わらないからな」

 

項垂れている楓君達は私の言葉を聞いて顔を上げる。顔色は決していい物ではない、だが今までのように流されるまま来たのではなく、何かを考える表情をしていた。楓君がゆっくりと顔を上げて搾り出すように口を開く

 

「判っていたつもりだったんだと思います……悪魔で人が殺されるよりも人間同士で醜い争いが起きているって……それを見てきたのに、そんな事はないって……思いたかったんです」

 

人間を信じたいと思うのは悪い事じゃない、だが今は容易に人を信じて良い世界ではなくなってしまったのだ。楓君達は何度も見てきているのだ、自分の性欲を満たす為に襲い掛かって来た人間の姿を……

 

「判ってるさ、私だってそこまで馬鹿が多いとは思ってなかった。信じたいと思う気持ちは間違いではないさ……それよりもだ、今は動きたくないと思うが、勝巳と蒼汰の攻撃で人間や悪魔が離れている内に移動しよう」

 

悪魔も人間の気配も無い、今のうちに移動しようと声を掛けるとのろのろと車に乗り込む楓君達。私はそれを見ながら、目の前の氷の塊と竜巻に破壊された建物を見て

 

(黒龍塾……いやウロボロスか……)

 

ルイの言っていた民間の悪魔使いの組織……あの野郎、一番大事なことを黙っていたな。確かに民間の悪魔使いが主に動いているだろう。だがその影には間違いなく高位の悪魔の存在が見え隠れしている、そうで無ければモリーアンなどと言う高位の悪魔をこの短時間で従える事など不可能だ

 

(接触して見る必要があるかもしれないな)

 

黒龍塾は山を越えた隣町にある。1度接触してみる必要があるかも知れないなと思いながら、私は車を繁華街の中を走らせる。リリムに渡したイザベルへの手紙、それをイザベルが手にしているのなら楓君達に必要な現実を知らせる事ができる……悪魔使いに成れなかった、出来損ないが辿る末路を……ルイを易々と信用してはいけないと言う事を教えておくべきだろう

 

(ルイの奴も動いているみたいだしな)

 

ルイにちょっかいを掛けられて、楓君達を奪われる訳には行かない。だから悪魔召喚の危険性を、そしてそのリスクを改めて知らせるとしよう……そしてその上で楓君達が選ぶ道と言うのを聞いてみようと思いながら私は車を走らせるのだった……

 

 

 

勝巳か……先ほど衝撃的な再会をした勝巳の事を思い出すと肘が痛む。あいつと出会ったのは高校1年の時、初めて地区大会の決勝に進んだ時だ。その時は控え投手だったが、1年でベンチに入れただけ良かったと思っていた。その時のチームは打撃も守備も非常に強く、甲子園に出場出来るとTVや雑誌で取り上げられるほどの強さだった。だが地区大会の決勝で当った黒龍塾。そこで俺は上には上が居ると言うことを嫌と言うほど思い知らされたのだ……1回で先輩が9失点の大量失点をしたと言う事と負け試合だったと言う事で試合の雰囲気を学ぶと言う名目の敗戦処理投手としてマウンドに上がった。無論俺もボコボコに打たれたが、勝巳は俺と同じ年なのにレギュラーで4番を打っていた。どこに投げても打たれると思わせるような凄まじい威圧感を持っていて……結局その試合は勝巳の満塁ホームランで負けて、先輩は自信喪失をして退部。他にいい投手が居ないと言う事で俺は投手としてレギュラーになったが、どの地区大会でも黒龍塾は優勝し、その先導力となっていた勝巳を抑えればと思い無理な練習をし、そして俺が肘を壊す原因となった地区大会の最終回1対0で勝巳へ回り、スライダーの多投で指先のマメを潰しながらも投じた1球は真ん中に入り、ツーランホームランで破れ俺は肘を壊した。それ以降克己に会うことはなかったが、まさか悪魔使いになっているなんてな……知り合いが生きていた事に喜ぶべきなんだろうけどな……どうしても素直に喜べない気持ちが強いなっと思わず苦笑する

 

「黒龍塾ですか……確か隣の学区全寮制の学園でしたよね?」

 

大分時間が経って精神的に回復して来たのか、久遠先輩が黒龍塾の事を久遠教授に尋ねる

 

「ああ、校風も厳しい上に、文部両道を生徒全員に課し、恋愛もご法度と言う学園と言うよりかは刑務所と言っても良いかも知れないな」

 

黒龍塾の厳しさは全国でも有名だが、プロのスポーツ選手を目指す者や、東大などへ進学を求める生徒で毎年凄まじい数の新入生が訪れるが、半年足らずで中退する生徒が大半を占める。

 

「黒龍塾に民間の悪魔使いの組織……か……久遠教授どうします?」

 

「悩む所ではある。正直な所神無市を出ても、行く当てもない。どこか目的地を決める必要はあるが……」

 

街を出て、海か山の方へ向かいながら安全な拠点を探すというのが当面の目的だったが、それをしても生き残る事は出来るが悪魔出現と言う自体に対しては何の解決にもならず。問題を先送りにしているだけだ

 

「1度黒龍塾のウロボロスなりヤタガラスに接触する必要があるだろうな」

 

車を運転しながら今情報を持っているであろう組織の名前を出す久遠教授。ヤタガラスには楓の妹を名乗る魅啝がおり、ウロボロスには勝巳がいる。正直俺としてはウロボロスに接触する事は控えたいと思う、勝巳と会うとどうしても感情的になってしまいそうだ

 

「楓は正直あんまり魅啝には会いたくないよね?」

 

「……まぁ。うん……だな。なんか凄い勢いでメールとか来るんだよな……」

 

電話番号とメールアドレスを教えたのは失敗だったと呟く楓。俺から見ても魅啝と言う少女は楓に執着している、何をしでかすか判らない相手に接触するのは出来れば控えたほうが良いだろう。となれば……道は1つか……

 

「黒龍塾を当面の目的地とする。しかし情報を得て、生存者の話を聞くという方向性で行こうと思うが良いか?」

 

もしかしたら同級生が保護されているかもしれない、それに今の情勢を知るにはどちらかの組織に接触する必要があるのだから、危険性の高いヤタガラスよりもウロボロスの方が良いだろう。勝巳に関しては俺が我慢すればいいだけだし、それに黒龍塾に向かったからと言って勝巳に会うとは限らないしな

 

「全員何かに掴れ!!」

 

久遠教授のその怒声に反射的に車のシートを掴む。次の瞬間ジェットコースターかと思うほどの横殴りの衝撃が車を襲ってくる

 

「きゃあああッ!!」

 

「くっ!桃ッ!!久遠教授!どうしたんですか!」

 

突然の横殴りの衝撃に悲鳴を上げる桃子の手を掴んだ楓が久遠教授に何があったんですかと尋ねると久遠教授はハンドルを回しながら

 

「デパートから悪魔の攻撃だ!直撃する訳にはいかない!!それよりも舌を噛むぞ!黙ってろ!!」

 

久遠教授の荒々しい口調に驚きながらも口を噤み、久遠先輩がシートベルトをしてそれを掴んでいるのを見て、久遠教授は大丈夫だと判断し、俺は歯を食いしばり、左右から襲ってくる凄まじい衝撃に耐えるのだった……

 

「はぁ……はぁ……と、とりあえずは何とかなったが、このままだと街から出ることが出来ない」

 

地下駐車場に滑り込んだ所で久遠教授がそう呟く、方角的に街を出るにはあのデパートの前を通るしかないが、凄まじい勢いで攻撃して来る悪魔がいる以上それを何とかしなければ街を出ることが出来ない。つまりあのデパートへ向かい悪魔を倒すと言うことだ

 

「全員で準備をして、デパートへ向かうぞ」

 

深刻そうな声色の久遠教授に判りましたと返事を返し、俺達は車から降りて悪魔と戦うための準備を整え、デパートへ向かって歩き出すのだった……

 

 

 

あれが久遠様が育てている人間ですか……開いていた傘を閉じ、周囲を警戒しながら歩いている人間達を見つめる。見たところ凡人っと言う感じだが、1人だけこの距離でも別格だと判るMAGを放っている人間を見て、あれが久遠様が育てている人間だと判断する

 

【すいませんでした、イザベル様】

 

「構わないわ。久遠様の頼みですもの、このくらいは引き受けますわ」

 

久遠様の乗っている車を攻撃すると言う事で細心の注意を払い魔法を使った。久遠様の頼みでも久遠様を攻撃すると言うのはとても心苦しい物だった。手加減なんてした事がないから余計に気を使ったと溜息を吐きながら

 

「それよりもリリム。早く久遠様と合流しなさい」

 

【は、はい!それでは失礼します!】

 

私に背を向けて久遠様のほうに向かっていくリリムを見送りながら振り返り

 

「久遠様の乗り物に近づく野良悪魔と人間を全て駆逐しなさい。いいですか、久遠様の所有物に傷をつけることは許しません」

 

【【【【ハッ!】】】】

 

私の指示に返事を返す配下の悪魔になら行きなさいと指示を出したが、動き出さずどうしたのだろうか?と見つめ返すと先頭の悪魔……ランダが立ち上がり

 

【久遠様の所有物にあの人間は含まれますか?それなら、一部はデパートとか言う建物に向かわせるべきだと思うのですが】

 

……ふむ、確かにその通りですわね。さてどうしましょうか?と考えていると久遠様から念話が届く

 

(イザベル、私はデパートの中で少し楓君達から離れる。その前に合流するなら紹介してやる、その場合暫く私達に同伴してもらう事になるが、どうする?)

 

人間と一緒と言うのは正直お断りですが、久遠様と一緒なら……私は即座に合流しますと返事を返しランダに

 

「暫く私は久遠様と行動を共にします。ランダ、それと私の拠点で私の帰りを待っているヘルとセイオウボの3人でこの街での勢力を強める事を考えなさい、他のベルの悪魔が出現したら随時報告に来る事良いですわね?」

 

私も含めたベルの悪魔は同じベルの悪魔を冠する悪魔と殺しあうことでその力を開花させていく。不死バルドルはその能力を持たないので無視しているが他のベルの悪魔が出てくると危険なので見つければ報告に来るようにと指示を出す

 

【畏まりました。ではイザベル様、お気をつけて】

 

ランダの言葉に誰に物を言っているんですの?と睨みつけ、私は久遠様と合流する為にその場を後にするのだった……

 

 

 

デパートの中に侵入する前にスパルトイの契約データを見る事にしたのだが、カソとは違い魔法は使えないが、凄まじい能力を持っていることが判った

 

闘鬼 スパルトイ ランク4

 

所持スキル

 

ギロチンカット

 

一文字切り

 

両腕落し

 

※十文字切り

 

ラーニングスキル 剣の心得 契約者の剣を扱う技能を上昇させる 現在習得率25%

 

耐性 物理・闇

 

弱点 光

 

 

物理スキルが多く、俺に剣の技術を与えてくれるスパルトイの存在は実にありがたい。カソと同時に召喚するとMAGが直ぐに枯渇するので同時召喚は無理だが状況に応じて悪魔を切り替えることが出来たのは大きい

 

「悪魔が増えると戦術も増えるか……俺も契約出来るのならば契約を増やすべきだろうか?」

 

「状況に応じてじゃないか?睦月みたいな事になっても困る」

 

悪魔と契約できず、殺された睦月。確かに悪魔と契約する事は生き残る事に直結するだろうが、それと同時に死にも直結する。容易な考えで悪魔と契約するのは控えたほうがいいだろう

 

「その通りだな。私ももう1体と契約出来るがそれをしないのはリスクを考えての事だ、契約可能数が増えても容易に契約はするなよ」

 

今複数の悪魔と契約出来るのは俺と久遠教授だけだ、どういう条件で悪魔と契約できる数が増えるのかは判らないが、仮に増えても容易に契約するなよと警告する久遠教授に頷きながら、デパートの中に視線を走らせる。電気が消えていることを除けばかなり綺麗に見えるが、暗がりに慣れてくると、あちこちの家具などが運び出された痕跡が気になってくる

 

「悪魔も居るかもしれないけど、生存者も多いかもしれないね」

 

怯えた様子の桃に大丈夫だと声を掛けながらも、俺もその可能性を考えていた。さっきの避難所の事もあるが、生存者は皆で協力して助かるよりも自分の性欲などの欲望を満たす事ばかりを考えている。デパートの方角から悪魔の攻撃が無ければ、無視して早く街を出たい所なのだから

 

【終わったよー!】

 

【こっちも終わりましたー】

 

偵察に出ていたピクシーと先ほど合流し、そのまま偵察に回ってくれたリリムが戻ってくる。暗がりで生存者の気配が強いとなれば闇雲に動き回るのは危険と言う事で先にリリムとピクシーに偵察に向かって貰ったのだ

 

【悪魔は結構入り込んでいるみたい。種類までは判らないけど、結構強い悪魔も居ると思うよ】

 

【それと道に関してですが、バリケードが多く築かれていて、最短距離で進むのは難しいと思います。最上階も見てきましたけど、悪魔の気配はなかったので、恐らくデパートの真ん中のフロア辺りから攻撃してると思うんですけどそこらへんはバリケードが多いので、向かうためには1度最上階まで上って、そこから階段で進んで行く必要があると思います】

 

悪魔も入り込んでいて、バリケードで迷路みたいになっている……かなり厄介な条件が揃っていて思わず舌打ちをする。このデパートは8階建ての大型のデパートだ。アイドルや女優を呼んでのイベントも大々的に行う事もある……確か悪魔が現れた日も何かのイベントをやっていたはずだ

 

「バリケードで迷路になっていて、悪魔も多いか……」

 

久遠教授はリリムとピクシーの報告を聞くとなにかを考え込む素振りを見せる。俺としてはこのまま進むのは危険だが、このデパートに潜んでいる悪魔を倒さない限りは車で移動することも出来ない

 

「とりあえず私もリリムを1度帰還させる。楓君達も悪魔を帰還させてMAGを回復させてくれ、そして体力とMAGがある程度回復したらデパートの捜索を始めよう」

 

出来れば捜索なんかしたくないが、それを怠られば背後から悪魔に撃たれることになる。無事に街を出るにはこのデパートを捜索するしかないのだから反対なんて出来る訳もない。久遠教授の言葉に判りましたと返事を返し、デパートのエントランスに置かれていたベンチに座り、鞄からノートを取り出して

 

「久遠教授、美雪先輩も桃もこっちに来てください。どうやって進んでいくかってのを決めましょう」

 

暗がりで迷路となると背後から襲われる可能性も高くなる。今までのように、俺と雄一郎が2人で前に立って進むと言うのはリスクがありすぎる。どういう陣形で進むか話し合いましょうと声を掛けると、デパートの扉が開く音がして、咄嗟に雄一郎と鉈を持って桃達の前に移動するが

 

「待て!武器を構えるな、私の教え子だ」

 

久遠教授の言葉の後に続いて、周囲を警戒するような素振りを見せながら1人の少女が姿を見せる。この場には似つかわしくない紅いドレス姿の思わず息を呑むような美少女だった

 

「久遠様。ご無事だったのですね」

 

そしてその容姿からは想像出来ない流暢な日本語で久遠教授に話しかける

 

「ああ、君も無事で良かった。楓君、雄一郎君、美雪、桃子。悪魔が現れた時に私が遅れて来ただろう?覚えているか?」

 

悪魔のインパクトが強かったが、時間に厳しい久遠教授が遅れたのは覚えている。俺達の反応を見て久遠教授は穏やかに笑いながら

 

「彼女が尋ねて来ていたんだ。ヨーロッパで知り合った教授の娘でイザベラと言う、元々は広い領地を有する貴族の一族の出だ。ヨーロッパに帰ることは出来なかったようだが、無事で生きていてくれて良かった」

 

ヨーロッパの教授の娘……久遠教授は顔が広いのは知っていたが、まさか貴族とも知り合いだったなんて……正直驚いた。世が世ならばそれこそお姫様と呼ばれる人種だろう

 

「護衛の方がとても良く頑張ってくれました。それと……これのおかげかと」

 

イザベラさんが差し出したスマホには悪魔召喚プログラムの文字が躍っており。彼女もまた悪魔と契約した事で生き延びたのだと判った

 

「イザベラも疲れているだろう。少し早いが、昼食にしてそこからどうするか考えよう」

 

今まで1人で逃げて来たイザベラさんの疲労を考えると、5人で行動していた俺達よりも肉体的、精神的疲労は大きいだろう

 

「雄一郎、1回車に戻って甘いものでも取ってこよう。食料も持って来ないといけないしな」

 

「だな、久遠教授。少しの間離れます」

 

俺達がいては話も出来ないだろうと思い、雄一郎と目配せをし1度デパートを出て駐車場に停めてある車から食べる物を取ってきますと声を掛け、俺と雄一郎はその場を後にするのだった。その時背後から

 

「随分と汚れていますね、濡れタオルになりますが顔を拭いた方が良いですね」

 

「そうだね!じゃあ私が用意するね」

 

「え。あ、……はい、じゃあお願いしますわ」

 

楽しそうな桃達の声を聞いて、やっぱりあの場所を後にして正解だったなと笑いあいながら、駐車場へと向かうのだった……

 

 

楓達がイザベルと合流した頃、このデパートの3階では……

 

「「「「あ、ああ……ああん……」」」」

 

薄暗い部屋の中に女性の艶めいた声だけが響き渡る。彼女らは触手によって吊り上げられ、その全身を触手に埋め尽くされていた。声こそ発しているが、その目に既に理性の色はなく、触手から与え続ける快楽によって既にその精神を完全に壊してしまっていた……そして部屋の奥では

 

「い、いやあ……や、やめえ……ひぎいっ!」

 

「ここは僕の城なんだ、死にたくないなら、僕に従うんだよぉ……」

 

新たに女性を1人触手で吊り上げた男はいや、いやああっと叫びながらもその声に艶が混じっていく素振りを見て、満足げに頷きながらその場に座り込み

 

「お前達は僕を馬鹿にしたからぁ……いらない」

 

「え?がぼ!?げぼばあ!だ、だずげでええええええええッ!!!」

 

男はその巨大化した腕で女性の1人を掴み上げると、大きく口を開き無造作に女性の下半身から飲み込んでいく。肉と骨が砕かれる音と苦悶の悲鳴をあげて助けてと叫ぶ女性を見て、いらないと言われた女性達

 

「「「いやあ、いやああああああ!!!」」」

 

次ぎ殺されるのは自分だと判断し、男から背を向けて逃げ出すが男の背中から伸びた触手が女性達を捕らえ。恐怖を与える為かゆっくりと1人ずつ男の元へと引きずっていき

 

「いや、いやああ!やだ!し、しに……いだあああああ!やああ!いやああああ、じ、じにだくなあああいいいっ!!!」

 

男が再び女性を無造作に掴み上げ今度は腕からかじりつく、まるでスナック菓子のように食いちぎられた自分の腕と胸に女性は半狂乱になって叫ぶが、男はお構いなしにうるさいとでも言いたげに今度は女性の頭を食いちぎり飲み込んでいく……男の身体はゆっくりとだが確実に大きくなっており、コンクリートで出来たデパートの内装は徐々に脈打つ不気味な肉の壁へと変貌を遂げていくのだった……

 

 

チャプター21 イザベラと言う少女へ続く

 

 




デパートがダンジョンと化しております、この場所のボスは当然悪魔憑きの男。そしてイザベラと名乗り合流したベルの悪魔。次回は捜索と戦闘をメインに書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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