新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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チャプター21

 

チャプター21 イザベラと言う少女

 

今まで見てきた人間とは少し違いますわね……久遠様の教え子で私が気に入ると言ったのも嘘ではなかったと言う事ですわね。とは言え、まだ観察段階っと言う所ですが……

 

「あんまり口に合わない?」

 

「え?ああ。いえ、そうではありませんわ」

 

お腹が空いているだろうと色々用意してもらった物に手を伸ばしていなかった事に気付き、違いますわと返事を返し用意された食事に手を伸ばす

 

(……変わった物を食べてますわね)

 

食事と言う必要がないので物を食べた事はないが、人間って言うのは面白いものを食べている。私はそんな事を考えながら食事を進めるのだった……

 

「私達は街を出ると言う方向性で動いているが、このデパートの悪魔から攻撃を受けている。ゆえにその悪魔を撃退してから街を出ると言うことになるんだが、イザベラ。お前が契約している悪魔はなんだ?」

 

なるほど私の攻撃をこのデパートに隠れている悪魔の攻撃にしたと言うことですか……ここはまだ私の勢力が伸びているエリアではないので、ほとんどが野良悪魔なので私を見て動揺する悪魔も少ない。急に私が乗っている車を攻撃しろっと言われたので何を考えているのか判らず困惑したが、恐らく久遠様はこの建物の中で何か目的があるのだろう。そう例えば……

 

(甘さを指摘するとか……?)

 

悪い人間ではないだろう、悪魔としての本来の姿ではなく人間に化けている私に欲情して襲って来た人間は何人もいた。無論それらは全て殺し、配下に餌として与えた。悪魔が出現し、弱者となった人間と、己の欲に忠実な人間。どちらも愚かで醜悪で見るに耐えない存在だが、久遠様の教え子と言う4人はこの状況だと言うのにまだ優しさを残している。それはきっと久遠様による物が大きいと思う……だがいつまでも甘さを残していてはいけない、その甘さは利用される事になるだろう。そして久遠様はそれを良しとしていないからここで何か目的があるのだろうと判断する

 

「私が契約しているのはカハクですわ。おいで」

 

【こんにちわーカハクだよ?よろしくね!】

 

蝶の羽を持つ民族衣装に身を包んだ小柄な女の悪魔が私の目の前に現れる。あの人間達が連れている悪魔と同レベル程度の悪魔を選んで連れて来た。本当はもう少し強い悪魔や勇ましい悪魔も居たのだが、それは私の好みではないので、私に忠実かつ、口が堅いカハクを連れて来たのだ

 

「カハク……確か中国の民謡の精霊だったかな?」

 

【うん。そうだよー】

 

楓とカハクが話をしている。4人の中でも楓は別格と言えるMAGを持ち合わせている、それになんと言うのか判らないが、あって間もない上に人間だが好感を抱き始めている自分がいる。悪魔に好かれ易い体質なのだろうか

 

「イザベラさんはドレスで動きにくくないですか?着替えとかはありますけど」

 

「いえ、大丈夫ですわ。心配してくれてありがとう」

 

このドレスは私の体の一部なので着替えるという事は出来ないので大丈夫だと美雪に言うと久遠様がフォローをしてくれる

 

「寧ろ普通の服の方が動きにくいかもしれないぞ?向こうではずっとドレス姿だったもんな?」

 

「ええ、ドレス以外は着た事がありませんし、違和感をどうしても感じてしまうと思うんですよ」

 

そうですかと呟く桃子と美雪。私の事を気に掛けてくれるのは判るが、正直少し鬱陶しいですわね。まぁ人間の姿をしているのが問題だとは判っていますが、出来ればあんまり干渉して欲しくはない

 

「食事も終わったし、身体も十分に休めた。そろそろこのデパートをどうやって進むか話し合おう」

 

ぱんぱんっと手を叩く久遠様の言葉に頷く楓達を見ながら、デパートとか言う建物の中を見つめる

 

(異界になっている?)

 

この建物の一部が変質して行っているのを感じ、この建物の中に何がいるのか?と思わず眉を顰める。異界を作り出せる悪魔となればそれなりの強さを持つ悪魔だろう。無論私の敵ではないが、それなのに私を呼び寄せた。それはつまり

 

(人間を護れと言う事……)

 

久遠様と一緒にいる事が出来るのは嬉しいですが、人間のお守りですか……正直気が重いですわね……私は深い溜息を吐きながら久遠様の話に耳を傾けるのだった……

 

 

街から脱出する前の最後の壁となったデパートからの攻撃。それを止める為にデパートを進んでいるのだが……今まで悪魔には遭遇していない。

 

「悪魔出てきませんね」

 

「非常階段だからな。最上階から降りていけば悪魔に遭遇すると思うぞ」

 

エスカレーターはバリケード封鎖されており、エレベーターは破壊されていたので使うことが出来ず。仕方なく非常階段から最上階を目指して移動している。8階建てのデパートを階段で上っていくのは正直骨だが、この道しかないので贅沢を言う事も出来ない。悪魔が現れないだけ良かったと思うべきなのだろう

 

「ふう……ふう……つ、疲れますね」

 

「そ、そうですね」

 

今現在は4階まで昇って来たが、桃と美雪先輩の顔に強い疲労の色が浮かんでいる。久遠教授は額に少し汗が出ている程度でイザベラさんは涼しい顔をしているが、少女である事を考えれば体力的に消耗しているのだろうがそれを我慢しているんのだろうと判断する

 

「久遠教授。1度休憩しますか?」

 

「……そうだな。少し休むか」

 

悪魔の姿も今の所見えない。5階の踊り場に出た所で休憩しますか?と尋ねると久遠教授もそうしようと言うので踊り場に荷物を置いて階段に座り込んでタオルで汗を拭う

 

「大丈夫か?楓」

 

「心配ない。そりゃお前と比べれば貧弱だけど、それなりに体力はあるほうなんだぜ?」

 

野球部の雄一郎と比べれば体力や腕力は劣るが、それでも文系にしては体力はあるほうなんだぜと言いながら背負っていたリュックからペットボトルを取り出す

 

「桃、美雪先輩。水分補給をしてください。久遠教授とイザベラさんもどうぞ」

 

今持ち運んでいるのは水とメルコムの店で買った魔石やチャクラドロップと言った道具に乾パンやチョコレートバーと言った携帯食料に、探索で使うであろうヘッドライトに懐中電灯、方位磁石と悪魔に壊される可能性を考慮して、予備のプロテクターなどを1セット。水を除けばそれほど重量がある訳ではないが長い階段と言う事で俺が運び、雄一郎が鉈を持ち先頭で歩いている。悪魔に遭遇するまでは悪魔を召喚せず、MAGを温存する事になっている。悪魔を召喚すれば、体力や脚力も上がるが強力な悪魔と戦うと判っているので素の体力で上って来ているからか体力の消耗が激しいように見える、エレベーターが使えれば楽なんだけど、破壊されているので使うことが出来ないのが悔やまれるな

 

「あ、ありが……とう……」

 

「す、すいません……ふう……結構きついですね」

 

水のペットボトルを受け取り、荒い呼吸を整えようとしている桃と美雪先輩。それに対して久遠教授は非常階段の壁に背中を預け数回深呼吸するだけで息を整えていた。遺跡発掘などを行うので体力は男性にも引けを取らないのだろう、しかし俺が驚いたのはイザベラさんだ。ドレス姿でしかも足元はハイヒール……どう見ても長距離移動にも運動にも適していない格好だ。それなのに息も切らさず汗もかいていない……

 

「何か?」

 

「あ、いえ。その息も切らせていないし、汗もかいていないなって思って」

 

俺がそう呟くとイザベラさんはああ、それですかと呟き

 

「久遠様が言ったでしょう?私の父も久遠様と同じく学者でして、良くフィールドワークにはついて行った物ですわ。それに護身術も嗜んでいるのでこの程度では息も切らしませんわ」

 

イザベラさんの説明にそうですかと返事を返す、仮に身体を鍛えていたとしてもこれだけ階段を上ってきて息も切らさない物だろうか?と言う疑問は残るが、それを口にして雰囲気を悪くする訳にも行かず。納得はしてない物の判りましたと返事を返し

 

「桃、美雪先輩。息は整いましたか?」

 

「あ、うん。大丈夫、もう出発出来るよ」

 

「ご迷惑をかけました」

 

2人ともさっきよりも大分顔色が良い、10分程度の休憩ではそこまで回復したとは思えないが、いつまでもここに立ち止っているわけにも行かない。なんせ、もし悪魔が襲ってくれば、上と下から挟み撃ちにされる。多少無理をしてても屋上に辿り着きたい……2人とも多少無理をしているが大丈夫と笑う。それはこのままここにいる危険性を判っているからだろう

 

「判った。じゃあ出発しよう、桃子も美雪もイザベラもあんまり無理をするなよ」

 

久遠教授の出発の言葉に頷き、俺と雄一郎は再び荷物を背負い階段をゆっくりと上り始めるのだった……

 

 

 

イザベラさんか……見た感じ俺達と同年代っぽいけど、喋り方や雰囲気から自分よりも遥かに年上に見える。ヨーロッパの貴族の娘らしいが、これが貴族の人って言う感じなんだろうか

 

「ここもか……やっぱり屋上まで行かないと駄目だな」

 

非常階段からデパートの中に入れないかと思い、扉を確認しているがしっかりと封鎖されており開く事は無理そうだ。悪魔を召喚すると言う事も出来るが、それではデパートの内部の悪魔を呼び寄せる事になる。だからそれは屋上まで向かってそれでも封鎖されていた場合の手段だ

 

「6階がこれだと、7階と8階も多分同じだろうな」

 

「ああ、やっぱり屋上まで行く必要があるな」

 

桃子や久遠先輩の体力の事を考えて、どこかでデパートの中に入れないか?と思ったが、やはり屋上まで行かないと無理そうだな

 

「桃、美雪先輩。大変だと思いますが、屋上まで頑張ってください」

 

「う、うん……が、頑張るよ」

 

「は、はい。ありがとうございます……」

 

声に元気の無い桃子と久遠先輩が心配だが、悪魔が出てこないだけ今はまだ安全って言える。悪魔出てくる前に屋上に向かおうと思い

 

「楓、俺は先に言って様子を見てくる。桃子達を頼む」

 

「……気をつけてな」

 

単独行動は危険だが、もしもの事を考えれば先に行って様子を見ておくことも必要だ。魔法を使える悪魔が屋上付近に陣取っていたら全滅の可能性もある、俺はコロポックルを召喚し桃子達が上って来るのを待っている楓に背を向けて、階段を上り始めるのだった……

 

「コロポックル。あの悪魔は?」

 

【うむ、コカトリスじゃな。聞いたことはあるか?】

 

コロポックルの問いかけに名前だけはと返事を返す。屋上を我が物顔で歩く巨大な鳥……尻尾は蛇となっており、この距離でも鋭い爪が足元に生えているのが判る。それにゲームとかで見るコカトリスならば石化と言う能力を持っており危険だ

 

【コココ】

 

鳴きながら屋上を歩き回っていたコカトリスは暫くそれを続けると、破壊されているエレベーターのほうに向かっていく……壁に背中を預け、安堵の溜息を吐く。破壊されたエレベーターは人間が壊したと思っていたんだが、悪魔の巣になっていたのか……

 

【見つからなくて良かったぞ。コカトリスは縄張り意識が強い、見つかれば唯ではすまなかった】

 

俺1人では到底戦うことが出来ない強力な悪魔の存在。見つからなくて良かったと心の底から思い、非常階段の所の壁に背中を預け、楓達が上って来るのを待つのだった……

 

 

 

 

屋上の方が安全か確認してくると言って先に階段を上って行った雄一郎君の事を心配しながらも、私や桃子さんが足を引っ張っていることが判っているから心配だと口にすることも出来ず。無言で階段を上っているとやっと8階の文字が視界の隅に写る。やっとここまで来たと思わず安堵の溜息を吐く

 

「ふう……やっとですね、久遠先輩」

 

「そ、そうですね。桃子さん」

 

体力はあるほうだと思っていましたが、流石にデパートの8階まで上るのは辛いですね……

 

「やっとか……ふう、流石に歳かな。疲れたな」

 

「そんな久遠様はまだお若く綺麗です!いつまでも私の見本ですわ」

 

イザベラさんは母さんを相当尊敬しているのか、母さんに対しては敬語ですね……とは言え、母さんが見本って言うのは判る気がしますけどね……私も母さんのように、綺麗で強い人になりたいとずっと思ってますから

 

「雄一郎。大丈夫か?」

 

「ああ、流石に少し生きた心地がしなかっただけだ」

 

先に進んでいた雄一郎君が楓君と共に階段を下りてくるが、その顔色は悪く何か合ったのだと一目で判った

 

「雄一郎君。屋上に何か悪魔がいたのか?」

 

「屋上と言うか、エレベーターですね。コロポックルが言うにはコカトリスって言う悪魔が住処にしているみたいです」

 

コカトリス……ですか?確かヨーロッパのほうの……伝承でしたっけ?と思い出しているとイザベラさんが説明してくれた

 

「ニワトリの頭部、竜の翼、蛇の尾、黄色い羽毛を持つ怪鳥で、凄まじい毒をもっているとされますわ」

 

毒をもつ悪魔がエレベーターに潜んでいる……毒の言葉に顔から血の気が引くのが判る。毒なんてどうやっても対処できないんじゃ

 

「……見つかると危険だな。となるとエレベーター付近には近寄らず、ピクシーやリリムに偵察して貰いながら移動することになるか」

 

【それが良いと思うの。コカトリスは縄張り意識が強い、見つかれば襲ってくるのは間違いない】

 

見つかれば襲ってくる鳥の悪魔……これからデパートを捜索すると言うのに、知りたくない事を知ってしまった。いや、行き成り襲われる前にそう言う悪魔が居ると判っただけ幸運と思うべきなのかもしれないですね

 

「確か、毒ではなく、石にする呪いを持つという場合もありましたわね。視線も吐息も危険ですが……そう、確か草食でしたわね」

 

草食の悪魔ですか……その情報が何か役に立つとは思えないですが、デパートならどこかに観葉植物とかが飾ってあるかもしれないので、それで注意を引く事が出来るかも知れないですね。あくまで可能性ですが、助かる可能性を少しでも上げるために覚えておいて損はないでしょう

 

「ピクシーとリリムの偵察では、3階辺りに強力な悪魔の反応があるらしい。となると5フロア階段で降りていく事になるが、生存者によってバリケードで迷路になっているから思うように進む事が出来ないのは明白だ。デパートの内部に入ったのなら逸れないように全員で固まって移動する、下手をするとこのデパートの中で一晩過ごす可能性もある」

 

このデパートの中で一晩……思わず喫茶店での悪魔の事を思い出し、恐怖と嫌悪感で身体が震える。悪魔が出てきてから暗所恐怖症や閉所恐怖症になりつつあるので、出来れば日が出ているうちにデパートを出たいと思ったがそれは無理かもしれない

 

「大丈夫ですよ。楓や雄一郎君が助けてくれますから」

 

だから大丈夫ですと笑う桃子さんにつられて笑うと、楓君と雄一郎君が私達の方を見て

 

「桃子や久遠先輩達が教われないように頑張ります。だから安心してください」

 

「絶対守りますから」

 

力強く言う2人にありがとうございますと返事を返し、私達はそれぞれ持っていた鞄から荷物を取り出し、デパートを探索する準備を始める

 

「イザベラさんはどうします?武器はちょっとないんですけど、軽いプロテクターとかならありますけど?」

 

「……あまり美しくはないですが、身を守る為なら仕方ないですね。貸して貰います」

 

手足につけるプロテクターを身につけるイザベラさんですが、美しさを優先する辺り、貴族と言うのはやはり私のような一般人とは価値観が違うのでしょうか?と思った

 

「武器はまぁ日傘がありますし、護身用のべレッタもありますので心配ありませんわ」

 

銃……外国の人ってそんなに容易に銃を持ち込めるものなのでしょうか?それとも元々イザベラさんの持ち物ではなく、彼女を護衛していた人の持ち物を受け取って使っているのでしょうか?そんな疑問が頭を過ぎるがその言葉を飲み込み、手帳や方位磁石を鞄から取り出し、桃子さんと一緒にデパートを探索する準備を整える

 

「では屋上に出てデパートの中に入る。言っておくが、エレベーターには決して近づくな。良いな?」

 

母さんの警告の言葉に頷き、私達は屋上にコカトリスが居ないのを確認してから。駆け足で屋上を駆け抜け、ヘッドライトをつけた楓君と雄一郎君を先頭にしてデパートの中へと足を踏み入れるのだった……

 

 

そしてそこで私達を待っていたのは、悪魔使いに成り損ねた者が辿り着く、余りに醜悪で残酷な現実を見る事になるのだった……

 

チャプター22 デパート探索その1へ続く

 

 




今回はインターバルの話なので少し短めとなります。次回からはデパート探索で話を続けていきます。何階を捜索しているとかで続いていくので、よろしくお願いします。次回は戦闘メインで書いていきたいですね、後は女神転生の交渉の要素を出せたらとか思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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