新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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チャプター22

 

 

チャプター22 デパート探索その1

 

 

このデパートは以前何回も買い物に来てたけど、薄暗い中で悪魔が出てくるかもしれないと全く別の建物に思えてくるから不思議だ。周囲の物陰などに怯えながら歩いていると、久遠教授が口を開く

 

「出来る限り早く7Fに降りよう。この場所はエレベーターに近い、雄一郎君が偵察してくれた情報を無駄にする訳にはいかないからな」

 

久遠教授の言葉に頷き、音を立てないように細心の注意を払いエレベーターから離れる。コカトリスという悪魔は話に聞いてだけだけど、石化させる能力や毒を持つ悪魔と正面から戦う事なんて出来る訳も無い、楓と雄一郎君を先頭にしてエレベーターから離れる。幸いな事にコカトリスがエレベーターから出てくることは無く、安全にエレベーターから離れる事が出来た事に安堵の溜息を吐きながら暗いデパートの中をゆっくりと進む。屋上から入って来たので、今は屋上駐車場への通路を歩いている段階だが、暗がりで何処から悪魔が出てくるか判らないので恐ろしくて仕方ない

 

「嫌な感じだな。街から出たいと思っているのに、こんな遠回りしかも死ぬかもしれないと来た」

 

状況は劇的に悪くなってきていると呟く久遠教授。それは私も判っていた、これだけ悪魔が闊歩して何時死ぬかもしれないと言う状況で全員で生き残る事ができている。それがどれほどの幸運かなんて考えるまでもないだろう

 

「ですね、本当ならこのデパートの捜索だってしたくない所ですよ」

 

悪魔の襲撃があるかもしれないと判っているのだが、黙って捜索する事が出来ず声が出てしまう。久遠教授に注意されると思ったが、久遠教授も喋っているので久遠教授でもやはり暗がりで危険な悪魔が居ると判っている場所を捜索するのは怖いんだろうなと思った。

 

「デパートの案内板とか無いか?それがあればどんな物が販売しているか判って、捜索の目処が立つと思うんだが」

 

「各階層の階段の所にあるかもしれないですけど……バリケードとかがあるかもしれないですね」

 

久遠先輩の言葉にそうかもしれないと私は思わず呟いた。するとイザベラが私を見て

 

「どうしてそう言えるのですか?桃子?」

 

皆に注目されているのに気付き、小さくなりながら私は口を開いた

 

「えっと8Fはどっちかって言うと、子供の遊ぶ施設とか……そう言うのとか、ヒーローショーとかやってる場所だから生き残る事を考えると……そのあんまり重要じゃない場所だから……悪魔の侵入とかを防ぐなら……たぶんここの階段は閉鎖していると思う」

 

ゴムボールのプールとか、100円での動物の乗り物とかがあるエリアだから重要性は殆ど0だから、閉鎖してると思うと言うと楓は顎の下に手を当てて

 

「確かにその通りかも知れないな。生き残る事を考えれば、ここは全然重要なエリアじゃない。コカトリスの巣が近い事を考えれば、生存率を高める為に閉鎖するのは当然だな」

 

「となると、階段を見つけても7Fに降りるのは難しいかもしれないって事か……」

 

デパートの中には入れたが、もしかするとまた屋上を通って非常階段で7Fに戻り、悪魔の注目を引くかもしれないが扉を破壊して中に入るしかない

 

「……とりあえず進んでみよう。まだここはその遊びの施設に入っているわけでもない、まずは先に進んで見ようか」

 

今はまだ屋上からデパートの中に入ったばかりなので、デパートの中に入っている訳ではない。久遠教授の言葉に頷き、大きな扉を開けて私達はやっとデパートの中のフロアに足を踏み入れるのだった……

 

 

 

「暗いな……」

 

頭にヘッドライトをつけているが、それでもなお暗い。本来なら子供の笑い声に満ちて居る筈の8Fは静寂に静まり返っていた……あちこちに隠れ場所があり、悪魔が潜んでいる可能性が高く前に進むには正直足が竦む

 

「見た感じではやはりバリケードが作られているな……となると7Fに降りるのも難しいかもしれないな」

 

「久遠教授?見えているんですか?」

 

目を細めて暗がりを見つめている久遠教授に見えているのですか?と尋ねると職業柄なっと言う返事が返ってくる。遺跡などの捜索をしているから夜目が効くのかもしれないと思いながら

 

「どんな感じのバリケードですか?」

 

「ショーケースか?いや……遊具かもしれないな。長い何かを立てて、その間に物を詰め込んでバリケードにしているようだな……あれならば悪魔を使うまでもなく、人力で撤去出来るかもしれない」

 

久遠教授の言葉を聞きながら必死に目を凝らすと、ぼんやりとだが色んな物が積み上げられてバリケードになっているのが見える。あれを撤去するとしても、結構な時間が掛かるかもしれないが悪魔を使って扉を破壊するよりかは音も出ないだろう。

 

「このフロアがどうなっているか、それで決めましょう。悪魔が居るのなら時間を掛けるのは危険ですわ」

 

イザベラさんの言葉に頷くが、ここまで暗いと悪魔の襲撃に気付かない可能性が高いな。進むだけでも怖いな……

 

「美雪先輩、ピクシーに偵察をお願いできますか?」

 

「は、はい。わかりました、ピクシー……お願い」

 

【OK!すぐに行ってくるよ】

 

美雪先輩がスマホを操作するとピクシーが姿を見せる。ピクシーにこのフロアの偵察をお願いし、ピクシーが戻るまでは行動せず、どうやって進むのかを話し会うことにする

 

「楓、ヘッドライトだけじゃ視界が不安すぎるぞ」

 

「そうだな……」

 

明かりが消えているだけならヘッドライトで見通せると思ったのだが、黒いカーテンと木材で窓を封鎖されているので完全な闇の中だ。ヘッドライトや懐中電灯だけの明かりだけでは進むのは危険すぎる

 

「そうだな……カソとカハクの炎で明かりを作るというのも手だが……」

 

「火災の危険がありますね」

 

「それは少々……いえ、かなり危険ですわね」

 

火事になれば逃げる事が出来ない。カソとカハクの炎でたいまつを作るのも確かに1つの手段だと思うがリスクが高すぎる。いずれ作る必要があるかもしれないが、いきなり作る訳には行かないか。もう少しこのデパートの構造やバリケードの位置、視界が狭いなどのリスクを考えた上で作ることにしよう

 

「窓を破壊するのは?」

 

「そっちも危険だよ、桃……外から悪魔が入ってくるかもしれないし、コカトリスが気付くかもしれない」

 

「あ。そ、そうか……うーん……」

 

暗い所が急に明るくなれば悪魔と言えば気になるだろう。それに外から悪魔が進入してくれば、挟み撃ちになる危険性が高い。かと言って走り抜ける事ができる距離じゃないし、更に言えばあそこ以外にもバリケードがあるかもしれないので走って足を取られたり、ぶつかったりして負傷する事を考えるとそれも出来ない。時間を掛けて調べていくとしても、早く街を脱出したいのに時間を掛けるようなこともしたくないしなぁ……やっぱりピクシーが戻ってこないとどうやって進むかなんて決めようがないか……

 

【ただいまー。えっとね、ここら辺に居る悪魔はノッカーとかの弱い悪魔だから、スパルトイとリリムを出せば怖くて襲ってこないと思うよ!】

 

思うって事で確定ではないが、それで何とかなるならと思い久遠教授と共にスパルトイとリリムを召喚する

 

【ウォオオオ!!!!】

 

「おい!馬鹿止めろ!!コカトリスに気付かれるだろう!」

 

召喚されたスパルトイの咆哮にコカトリスが気付くだろう!と怒鳴るとスパルトイは空虚な目を俺に向けて

 

【アンズルナ、しょうかんしゃ。オソロシイあくまのけはいはシナイ。ザコちらしをしただけだ】

 

スパルトイはそう笑うと盾を構え俺達の前に立ちゆっくりと歩いていく

 

「見た目は骸骨だが、知性はあるようだな。頼りにしてもいいかもしれないぞ」

 

「です……ね」

 

喋りも片言だが、今の行動を見ればスパルトイの知性が高さは良く判った。骸骨だからと言って馬鹿ではないのかとスパルトイの評価を改め俺達はスパルトイに先導されデパートを進むのだった

 

「本当に悪魔出てきませんでしたわね」

 

「気配はしますけどね」

 

スパルトイの咆哮が効いていたのか、悪魔の気配はするが姿を見せることはなく、俺達の進む方向から慌てて逃げるような音がしていたから、よほどスパルトイが恐ろしかったのだろう。

 

【さて。ドウスル?しょうかんしゃ、このかべ……ふんさいしていいのか?】

 

バリケードの前でどうする?と尋ねて来るスパルトイ。確かにスパルトイの力ならば簡単に破壊出来るだろうが……

 

「余り音を立てて気付かれても困る。ちょっと待機で」

 

ココロエタと返事を返し、俺達の後ろに移動するスパルトイ。俺達が調べている間背後を護ってくれると言う事だろう、指示をしなくても行動してくれる。俺はもしかするととんでもない当りの悪魔を呼び出したのかもしれない

 

「あれくらい知性があって、協力してくれる悪魔を狙って召喚できれば、戦力になるんだがな」

 

「睦月の事もありますしね」

 

制御出来ず暴走した悪魔の事もある。むやみに悪魔を召喚することは出来ないが、もし召喚出来るのならばスパルトイのような指示がなくても行動してくれる悪魔だと行動しやすいかもしれないですねと久遠教授と話しながらバリケードを調べる

 

「楓君、母さん。ここに扉見たいのがありますよ、一応外には出れる作りにはなってるみたいです」

 

「となると、これだけのバリケードだ。相当数の生存者が居る可能性もあるな」

 

かなり巨大なバリケードだ、これを数人で作るのは不可能に近い。だからそれこそ10人、20人と居る可能性があるな

 

「ピクシー、リリム。人間って見つけたのか?」

 

【んーぱっと見ただけだから判らないよ】

 

【私もですね。悪魔を探して移動したので、人間までは少し】

 

悪魔が居る事は判っているが、人間の方は判らないか……出来ればまともな人間が居ればいいんだけどなとリリムとピクシーの報告を聞いて溜息を吐く雄一郎に本当にそうだよなっと呟きながら、俺達はバリケードに備え付けられた扉を潜り抜け、7Fへと降りていくのだった……

 

 

「ぐっふうッ!!!!」

 

「雄一郎!!くそっ!!美雪先輩!久遠教授!雄一郎をお願いしますッ!!」

 

7Fに降りたと同時に悪魔の襲撃があった。身構えるよりも真紅の炎が走った、そう思った瞬間俺の身体は大きく弾き飛ばされた。楓の悲鳴にも似た声がやけにハッキリと聞こえた

 

「ピクシー!ディアを!」

 

【う、うん!判ってる!】

 

久遠先輩とピクシーの声がまるでエコーが掛かったように聞こえる。こんなに近くに居ると言うのに、その声がはっきりと聞こえない

 

「雄一郎君!意識をしっかり保て!桃子!変われ!私が前に出る!」

 

「は、はい!」

 

久遠教授と桃子の焦った声が聞こえたと思ったのだが、俺の意識は全身に走る激痛に耐える事が出来ず、そのままゆっくりと闇の中へと沈んで行くのだった……

 

「う……」

 

どれほど意識を失っていたのか判らない、数分なのか、それとも時間なのか、まだ全身に走る痛みに耐えながら身体を起す

 

「雄一郎君!良かった、意識が戻ったんですね!」

 

「よ、良かったぁ……な、ナジャもピクシーもありがとう」

 

【い、いいよ。ふーふー、流石にちょっと疲れたけど……】

 

【し、死なないで良かったよ……本当に】

 

久遠先輩と桃子の安堵の声を聞きながら頭を数回振るう。目の前がぼんやりと霞むが楓達が戦っているのが見える

 

「くっそ!カソ!お前も来い!」

 

「楓君!無茶は止めろ!悪魔の2体召喚は危険だ!!」

 

押し込まれているのか、楓がスパルトイに加えてカソを召喚した。それを静止する久遠教授の声が聞こえた瞬間俺は久遠先輩と桃子の制止を振り払い、楓達の元へ走りながらコロポックルを呼び出す

 

「コロポックル!マハ・ブフだ!」

 

【ぬう……ええい!あまり無茶をしてくれるなよ!契約者!!】

 

氷柱の嵐が目の前で起きたと思った瞬間。ただでさえ重い身体が更に重くなるがそれを根性で耐える

 

「雄一郎!馬鹿!休んでろ!」

 

「うっせえ馬鹿ッ!お前こそさっさとカソを引っ込めろ!!」

 

青い顔をして馬鹿と言う楓に逆に馬鹿と叫び返しながら、目の前の悪魔を睨みつける

 

【ヒホ?生きてタホー】

 

【案外丈夫な人間だね】

 

【驚いちゃった!】

 

かぼちゃ頭にランタンを持った悪魔がひらひらと宙を舞いながら笑い、その隣を天女みたいな姿をした悪魔が口元を抑えながら笑い、その足元を小さな少女の悪魔が飛び跳ねながら笑う。恐らく俺を火球で吹き飛ばしたのは、あのかぼちゃ頭の悪魔だろう

 

「久遠教授……じょ、状況は?」

 

がんがんと痛む頭に顔を歪めながら久遠教授に状況を尋ねる。楓は俺に戻れ、休んでいろと叫んでいて話にならないから、この中で1番冷静な久遠教授に尋ねる

 

【ぬっぐう!ち、チカヅケヌ!!】

 

火球・氷の飛礫に雷。絶え間なく放たれる魔法をスパルトイが手にした盾で防いでくれているが、徐々に押し込まれているのがわかる。そういつまでも持たないと判断した、だから余計に休んでいる場合ではない

 

「悪魔はそれぞれ氷に弱く、炎に強いジャックランタン。雷に弱く、炎に強いアプサラス、風に弱く雷に強いノームだ。お互いがお互いの弱点の魔法のガードに回り、有効打が取れない。さっきのマハブフもアプサラスが吸収してしまった」

 

スパルトイが前に進もうとしているのは魔法では埒が明かないと言う事だろうが、3者からの連続攻撃では流石のスパルトイも不利すぎる

 

「銃撃で狙おうにも、ジャックランタンが居るから途中で打ち落とされているのですわ」

 

銃を持っている久遠教授とイザベラさんだが、それも魔法で迎撃され届かない。仮に突撃して悪魔を1体倒しても残りの2体に潰される……状況はかなり不利だ

 

「スクカジャで突破って言うのはどうなんですか?」

 

「無理だ、あいつらは俺達の悪魔よりも強力な広域魔法を使ってくる」

 

カソを引っ込めた楓がそう呟く、有効な攻撃が出来ず。魔法を連射され反撃の糸口さえ見えない……これは冗談抜きで絶体絶命って奴なのでは

 

【そーれ!いっくよー!!!】

 

少女が飛び上がり、放たれた電撃にリリムが割り込み無効化するが

 

【ヒヒー!狙い撃ちだホ!アギラオ!!】

 

【きゃあっ!?】

 

電撃を無効にした瞬間。凄まじい火球がリリムを弾き飛ばす、前に出たその隙を逃さないためにコロポックルにブフの指示を飛ばすが

 

【無駄ですわ】

 

アプサラスが回り込み、ブフを吸収してしまう。3者がお互いに弱点を見事にフォローして完全にこっちの反撃の芽を摘んでいる

 

(久遠先輩と桃子は無理……か)

 

アギラオの直撃を受けた俺の治療でMAGを相当消耗したのか、青い顔をしている。ピクシーは小回りが利くが、火力が足りず、ナジャは補助魔法がメインなので攻撃に打って出る事が出来ない……

 

(こ、これは……)

 

反射的にポケットに手を入れて指先に当った何かを取り出す。それは冷たい輝きを放つ石……メルコムの店で買ったブフーラの魔法石だった

 

「ちっ!楓君フォローに回ってくれ、イザベラ!カハクを前衛にまわせ、ジャックランタンのアギラオを防ぐんだ!雄一郎君はアプサラスからのブフーラに警戒してくれ!」

 

ダウンしたリリムに魔石を与えるためにフォローしてくれと叫びながらも、矢継ぎ早に指示を出す久遠教授。だが悪魔がその隙を見逃すわけもなく

 

【やらせるかホー】

 

かぼちゃ頭がランタンを掲げるのを見て、殆ど反射的に振りかぶり右手で握っていたブフーラの石を投げようとしていた。肘は故障している、投げれるわけがない。もう投手としては絶望的だと言われたのだから……だが

 

(肘が……痛くない?)

 

腕を上げれば痛んだ肘が痛くない、まるで何の故障もないような……そう思った瞬間。俺は力強く踏み込みながら

 

「いっ……けえッ!!」

 

上半身を撓らせ全力で右腕を振るう。鋭い風切音が響いたと思った次の瞬間

 

【ひ、ヒホオおおおお!?!?】

 

ジャックランタンに命中したブフーラの石が輝き、ジャックランタンを貫く

 

「ゆ、雄一郎。お、お前……」

 

「楓!今だ!」

 

肘っと言い掛けた楓に今だと叫ぶと、後で説明しろよ!と叫びスパルトイに指示を出し、アプサラスに向かわせる

 

【ひっ!ブフー【オソイ!!!】ぎゃあっ!!!】

 

【ひ、ひいいいいッ!!!】

 

スパルトイの接近に気付いたアプサラスが魔法を放とうとするが、そうはさせないと言わんばかりに手にしていた盾をブーメランのように投げつけ、アプサラスの魔法をキャンセルさせる。それを見てノームが悲鳴を上げて蹲る、仲間が1人消えたそれだけで勝てる訳がないと思った3人の悪魔の連携はあっさりと崩れた

 

(ひ、肘が……どうして)

 

あれだけ何件ものスポーツ病院を巡り。野球はもう無理だと言われていたのに……ブフーラの石を投げる事が出来た。火事場の馬鹿力では説明など付くわけも無い……

 

「これで……終わりですわ!!!」

 

【ガアアアア……】

 

日傘をフェンシングの剣に見立てて、鋭い突きでアプサラスを消滅させたイザベラさんに軽い恐怖を覚えながら、頭を抱え込んで、殺さないで殺さないでと繰り返し呟いているノームを見て

 

「どうする?」

 

「いや、それよりもお前肘……」

 

「判らん……急に動いたとしか……」

 

肘の事を尋ねて来る楓に判らないと返事を返し、必死に命乞いをしているノームを念の為にスパルトイやカハク達に囲ませ、逃げられないようにしてからどうします?と久遠教授に尋ねるのだった……

 

 

 

雄一郎君が投げたブフーラの石。それが間違いなく、逆転の一手となった。だが肘を故障して再起不能だったはずの雄一郎君の事を考えると悪魔との契約かそれともディアの効果かかと思ったが、何にせよ手札が1枚増えたのは大きい。さてと当面の問題は……

 

【お、お願いしますぅ、殺さないで、何でもするから殺さないで】

 

頭を抱えて命乞いを繰り返すノーム。戦う意思は既に無く、しかも少女の姿をしていると言う事もあり、桃子達も殺すのは可哀想だと言う

 

「えっと、ここまで命乞いをされると倒すのはちょっと……」

 

「襲われましたけど……彼女はそこまで攻撃して来たわけじゃないですし……」

 

3体で出てきたが、主に攻撃して来たのはジャックランタンとアプサラスでノームは基本的に見ているだけだった。攻撃して来たとしても、行くよーとかの声を掛けてきていたので遊びの延長くらいの気持ちだったのだろう

 

(どうするか……)

 

このデパートの悪魔なのだから、恐らくデパートの中を詳しく知っているはずだが、契約をしなければ何時寝首をかかれるか判らない悪魔を連れて行くわけには行かない。

 

「桃子、美雪、雄一郎君。契約悪魔数増えてないか?」

 

私は2体枠があるが、正直ノームなんていう下級の精霊と契約するつもりなんてないし、イザベラも勿論同意見だろう

 

「……命乞いとは、なんと無様な……」

 

【ですねー】

 

己の価値観と美意識を重要視する、イザベラにとって命乞いをする悪魔は唾棄するべく、醜く愚かな存在。私の命令があっても契約する事を拒むだろう。だから美雪達に尋ねると

 

「私は1体のままです。桃子さんは?」

 

「私もです」

 

「……あ、俺は2体になっています」

 

雄一郎君が手を上げる。何を基準にして契約数が前後しているのかは判らないが契約できるのなら好都合だ

 

「おい、死にたくないなら契約しろ。それなら見逃してやる」

 

【する!するよ!!わ、私、死にたくない】

 

涙ながら契約すると言うノームの前に雄一郎君がしゃがみ込み、スマホを操作すると足元に魔法陣が展開される

 

「じゃあ俺と契約だ。よろしくノーム」

 

【う、うん!地霊ノーム。コンゴトモヨロシクね!】

 

ノームが魔法陣の中に飛び込むと、魔法陣が光り輝き雄一郎君の契約悪魔にノームの名前が刻まれた

 

「さてと、ではノーム。お前に聞く、ここは悪魔の巣窟となっているが人間の休める所はあるか?」

 

私とイザベラはまだ余裕があるが、楓君達はMAGを相当消費してしまっている。今日中のデパートの攻略は諦め、どこかで休める場所は無いか?と尋ねるとノームは

 

【知ってるよ!この近くに人間が前隠れてたところがあるから、そこに案内するよ!】

 

「良し、聞いていて判ると思うが1度休憩する事にする。奇襲と集団攻撃でMAGを予想以上に消耗した、これは一度休まないとそれこそ全滅しかねないからな」

 

このデパートの中に潜んでいる悪魔のレベルは外の悪魔と比べて、恐ろしいまでに高い。更に連携を組む知性もあると来たら、これは一筋縄では行かない。このデパートの中を知っているノームに情報を聞いて、そしてその上で作戦を練り慎重に進んでいく必要がある。楓君達も同意見で頷いてくれたのでノームに案内されながら人間が隠れていたという場所に向かって歩き出すのだった……

 

 

 

チャプター23 デパート探索その2へ続く

 

 




女神転生で良くある命乞い会話からの仲間になりました。ノームは色々考えた結果女性型となりましたのであしからず、デパートの中の悪魔は知性が高く、連携を組むということで外の悪魔よりも厄介と言う風に設定しております。次回は休憩所で作戦会議、ゲームで言えばダンジョンの中の最初の回復ポイントと言う感じですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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