チャプター23 デパート探索その2
デパートの構造を知っているノームの案内で前に人間が隠れていたという場所に案内された。そこはデパートのイベントで呼ばれたアイドルや俳優の控え室だった。バックヤードの扉を潜り、そしてその更に奥にある従業員の為のフロアにある、8畳程の部屋が1つと警備員用の6畳ほどの部屋が並んでいた
【どう?悪魔も少ない道を通って来たから敵もいなかったでしょ?】
これで信用してくれた?と笑うノームにああっと雄一郎が返事を返す。契約したから裏切れないと言う事は判っていたが、やはり襲って来た悪魔と言うことを考えると、やはり心のどこかで信用は出来ない物があった。だけど今回の事でノームが味方だと良く判った
「中はそれほど荒れていないようだな、寝袋が少しと毛布。それと食べたであろうカップラーメンのゴミ……後はアイドルの衣装がおかれているくらいだ」
「こっちはあれです。警備員の鍵とセキュリテイコードとかですね、防犯カメラは壊れてるみたいですけど」
監視用の設備が多いが、俺と雄一郎で休むには十分すぎる広さだ。寝袋は無いが、仮眠用の毛布とかも置かれているので、身体が冷える事もない
「不本意だが、ここで少し休憩していこう。時間によっては捜索を中断して、明日再捜索だな」
強力な悪魔を倒さなければ、このデパートを脱出する事が出来ないのだから体力もMAGも充実させる必要がある。予想外の長丁場になりそうだなと苦笑しながら判りましたと返事を返すのだった……
「暖かい物って言うのは安心しますわね」
「そうですね……ふーふー……甘いってのも本当安心します」
ここら辺は悪魔も少ないのか、自販機などもまだ生きており。災害用なのでお金を入れないで飲み物を手にすることが出来た、それぞれ思い思いの飲み物を飲みながら、これからの事を話し合っていた
「強力な悪魔が陣取っているのは3階。現在地が7階っと」
見取り図なんて物はないので、大学ノートに箇条書きで入手した情報をメモしていく。今すぐ見返す必要がある訳ではないが、こうして書いておけば覚えやすいしな
「その強力な悪魔ってのがどのレベルか判らないが、少なくともデパートの中の悪魔よりかは強いだろうな」
「でしょうね。そう思うと、私達だけで倒せるかが不安ですね」
街を出たいだけなのに、勝てるかも判らない強力な悪魔と戦う。それだけでも不安なのに、デパートの中の悪魔は今まで戦ってきた悪魔と違い、明確な知性を見せ、連携までしている。正直言って、今までのような行き当たりばったりでは死者が出るのは間違いない
「不安材料は多いが、このデパートの中を知るノームがいる。彼女に話を聞くことで、ある程度情報を対策を練れるのは大きい」
【まっかせてよ!契約したからね!契約者さん達が生き残れるように全力で協力するよ!】
胸を叩きながら笑うノーム。確かにデパートの構造を知っている悪魔が味方に居ると言うのは助かるよな、どんな物があるのかって警戒しながら進むよりもずっと気が楽だ
「そうと決まれば、楓君、それとイザベラ。一緒に来てくれ、雄一郎君達は少し休んでいてくれ」
「どうしたんですか?」
俺とイザベラさんだけを呼んだ理由が判らず。どうしたんですか?と尋ねると久遠教授は通路の先を見て
「この先に食堂があるだろう?そこで食料があるかどうかを見ておきたい、一応チョコレートバーなどは持ってきているが、空腹を満たすと言うよりかは、非常食としての意味合いが強い。何かあるなら見ておきたいじゃないか」
それなら皆でと思ったが、久遠教授は桃子達を見て心配そうな顔をして
「MAGをかなり消耗している3人を動かすのは得策じゃない。それにあんまり遠いと言う訳でもない、3人で十分に見てこれる」
「確かにそうですわね。では楓、行きますわよ」
「あ、はい。判りました、じゃあ桃、美雪先輩。雄一郎、見てくる」
鉈を手に取り、久遠教授とイザベラさんと共に俺は控え室を後にして、食堂に向かって歩き出したのだった……
久遠様と楓と共に歩きながら私と楓だけを久遠様が連れて来た理由を考えていた。いろいろな事を考えることが出来るが、1番可能性が高いのはあの3人から引き離しその間に精神操作をすることでしょうか?
(逸材と言えますしね)
楓はMAGがそれほど多いわけではない、だが回復スピードがかなり速いのだ。それによって、保有しているMAGよりも多くのMAGを使える。久遠様が引き込みたいと思うのは当然の事だ
「ふむ、まぁ予想とおりか」
「……ひでえ」
食堂の中は荒らされていた、そのあまりの汚さに思わず顔を背ける。良くここまで汚くした物だと思わず感心するレベルだ
「大丈夫ですか?気分が悪いんですか?」
「あ、い、いえ。大丈夫ですわよ」
どうやら身震いしているのを見られていたようで大丈夫ですか?と尋ねて来る、大丈夫ですわよと返事を返しながら周囲を見る。悪魔の姿と人間の死体はないが、ひっくり返った机や椅子、それに血痕などからここに隠れていた人間は恐らく悪魔の襲撃を受けて慌てて逃げたっと言った所でしょうか?
「久遠教授。この有様だと食料は無いと思うんですけど……」
「そう決断するのは早計だ、私はこれは想定の範囲内。私が探しているのは」
そう笑った久遠様はキッチンを指差しながら
「ここは従業員用の食堂だ。置いてある物は専門的な知識が無ければ操作出来ない調理器具ばかり、悪魔が襲ってくるかもしれない状況でそんな道具を使い料理を作るか?答えはNOだ。つまり食品と加工される前の状態。小麦粉や米を探してるのさ、小麦粉ならパンもどきは作れるし、米なら炊いて塩握りを作れる」
「あ、な、なるほど」
久遠様の言葉に納得したと言う素振りの楓を見ながら穏やかに笑う久遠様。よっぽど楓を気に入っているのでしょうね……少しばかり癪ですが、久遠様の物に手を出すつもりも危害を加えるつもりも無いのでその感情を己の中に押し込める
「では私はこっちを探すから、楓君とイザベラはそっちを2人で頼む」
そう言って離れていく久遠様は私にだけ聞こえる小さな声で
(楓君と2人で話をしてみろ。人間に対する偏見が少しは変わるかも知れないぞ)
……なるほど、私と楓だけを連れて来たのは、他の3人から離して2人だけで話をさせるためでしたか……それはつまり
(久遠様が重要視しているのは楓のみ、他の3人は楓が気に掛けているからっと言った所ですかね)
もし他の3人も重要視しているのなら一緒に行動していたはず。そうではないと言う事は重要視しているのは楓のみ、それは最悪の場合他の3人を見捨てても楓だけは連れて行くと言う事を示して居る筈……だからこそ私の偏見を取り除く為の指示……
「では参りましょうか」
「ああ、行こう」
良い機会だから楓がどんな人間なのか見極めようと思いながら、私は楓と共に食料を探す為に久遠様に背を向け歩き出すのだった……
イザベラさんと2人だけで行動か……なんと言うか天上人って感じで少し苦手意識があるけど、それを無くせって事か?と考えながら食堂の中を調べる
「調味料とかは殆ど手付かずですわね」
「使う物が無かったんじゃないか?」
机の上に残っている醤油やソースなどは手付かずだ。瓶に入っているので運ぼうと思えば運べるが、もし手にするのならば、塩や砂糖の方が良いよな
「……まぁこの状況ですから、料理をしようなんて考えるのは愚かと言うことでしょうかね」
「煙とかで気付かれる可能性もあるしな。でも現実的なのは料理を出来る人間が居ないじゃないか?」
悪魔が出現するような今の状態だ。食料などの取り合いに奪い合いは間違いなく起きていただろう、そして料理などをすればその匂いや煙で気付かれる可能性を考えて料理などは作らず、カップラーメンやパンなどで済ませていた可能性が高いと思う
「楓はこのデパートの構造は知っているのですか?」
「……うーん、正直あんまりかな。1階や2階とかは良く来たけど」
1階にはファーストフードなどの店があり、良く友人と遊びに来た帰りなどに来たこともある。2階は久遠教授に提出するリポートに使う資料を探す為に本屋などがあるので、良く来たと言えるが2階以上に来たことが無いので正直言って構造はあんまり詳しくは無い
「なるほど、では捜索には役に立たないですが、脱出経路は心配ないと」
「まぁ……うん。多分な」
1階や2階は良く訪れていたので、構造や店の位置等は覚えている。だから脱出には協力出来るかも?と話しながら机の周りを調べながら保存庫の方に歩いていると足に何かが当る、死体とかじゃないよなと怯えながら下を覗き込むと
「なんだ?……これは……日記……か?」
皮の手帳が落ちており、ペンも近くに落ちていたので生存者の日記かもしれない。後で久遠教授にも見せてみようと思いながらそれを拾い上げる
「生存者の日記ですかね。情報収集には使えるかもしれないですわね」
「どんな生存者がいるとかも判れば更に良いしな」
悪魔の魔法で傷は治せるが、それ以外の病気の事も考えて医者とかが居ると良いんだけどなと思いながら
「そういえばイザベラさんはなんで久遠教授の事を久遠様って呼ぶんだ?」
ずっと気になっていたのでどうして様付けをするんだ?と聞いてみるとイザベラさんはとても嬉しそうに笑いながら
「あれほど強く、美しい方を私は知らないからですわ。強く、美しく、聡明で、広い視野で物事を見ている。尊敬に値し、そして師事するべきお方ですもの」
「確かになぁ……久遠教授は綺麗だし、それに色々なことを教えてくれるしな」
押しかけに近かったのに受け入れてくれて、高校生だと言うのに特別に研究室に入れてくれた。久遠教授が尊敬に値し、そして師事するべき人と言うのは俺も同意見だ
「じゃあイザベラさんのお父さんも有名な学者さんなのか?」
「まぁ有名ですわよ。機会あれば、そうですわね。楓が海外留学でもするのなら紹介しましょうか?」
今の状況じゃ絶望的だなっと思わず笑ってしまいながら、イザベラさんって喋り方と雰囲気で損をする人だなと思いながら保存庫の中身を調べたのだが、中身は殆ど空っぽで残っている物は殆ど無かったのだが、久遠教授の言う通り生米はそのまま残されていて
「良かった。これで何とかなりそうだな」
「ですわね。久遠様と合流しましょう」
食料を見つけることが出来たので久遠教授のほうに向かうと、久遠教授も生米を見つけたようで
「そっちにもあったか、好都合だな。ではここら辺の安全を確保してから、米を炊いて食事にしよう」
まだ他にもやる事はあるからと言う久遠教授の言葉に頷き、アイドルの控え室へと俺達は引き返していくのだった……
デパートを素早く捜索し、街を出る予定でしたが、デパートの悪魔は予想以上に強く時間を掛けてデパートの捜索を行う事になった
「ふう……これで大丈夫だな」
「バリケードとブフの氷。悪魔も生存者もこっちに来れないだろう」
「お疲れ様でした。楓君、雄一郎君」
仮眠を取る事も考え、バリケードで道を封鎖した。それはつまり今日の捜索は断念したと言う事だが、あれだけ強力な悪魔が大量に出現する事を考えればやはり無理は禁物なのでこの判断は正しいだろう。幸いこっちには従業員用のトイレなどもあり、調理施設もあるので拠点としては最適だろう。私は机などを積み上げて縛るのに使っていたビニール紐を片付けながらお疲れ様でしたと声を掛け、楓君達と共に控え室に戻る
「と言うと、4階は危険だと言うのだな?」
【うん、コカトリスの餌場になってるから危険だよ。でも時間で行動してるから、上の階とかに行ってる時に通れば大丈夫だと思うよ】
ノームにデパートの構造を聞いて、大学ノートにメモしている母さんは戻って来た私達を見て
「お疲れ様。今日はもう捜索はしない、ゆっくり休んでくれ」
「判りました。それで母さん、デパートの構造についてはどうですか?」
ノームに話を聞いてそれをノートに書いている母さんに状況を尋ねると母さんは顔を歪めながら
「生存者が固まっているのが3階らしい、ピクシーの偵察で強力な悪魔がいると言っていた階だ。恐らく生存者に関しては絶望的だろうな」
生存者には襲われかけてた事しかないが、それでも絶望的と聞くとやはり悲しいと思ってしまう。もしかすると今回はまともな生存者が居たかもしれないと思えば余計にそう思う
「次に6・5階はバリケードなどで入り組んでいる上に悪魔が多いらしい、バリケードの中は流石にノームも判らないらしいのでピクシーかカハクに様子を見て貰いながら移動だろうな。そして4階はコカトリスの餌場になっているので危険と言う事でそのままらしいが、コカトリスに見つかれば全滅は避けられない。時間で移動するらしいから、それでコカトリスが居ないうちに通り抜ける必要があるな」
6・5階は迷路で4階は強力な悪魔の巣窟。そして3階には強力な悪魔……街から出る為にこのデパートの悪魔を倒す必要が無ければ今すぐにでも逃げたいと思うほどに危険だ
「コカトリスが住み着き始めたのは最近だから、4階には元々人間が集まっている場所があったんだな?」
【うん。高級家具?とかそんなので暮らせるなんて~とか言ってたね。あーあと、女の人は言う事聞かない人は服を全部破かれて追い出されたり、好き勝手にされたりしてたかな?すっごい馬鹿そうな男とかが俺達がリーダーっだって叫んでて馬鹿じゃないって思ったよ】
前言撤回ですね。少しはまともかと思っていましたが、ここのは今まで居た生存者達の中でも1番酷い連中だったみたいですね
「……私もしかすると物凄く幸運だったかもしれないね」
「そうですね。私もそう思います」
高校で酷い光景こそ見たが、母さんや楓君達と合流し一緒に行動できている。それは間違いなく幸運だろう、もしこれで単独行動でもしていたら、それこそ私達も酷い扱いをされていたと考えれば幸運だったと言える
「本当に愚かで間抜けですわね。生存者同士で優劣をつけてどうすると言うんですか、助け合って逃げる。それが1番正解だと思うんですがね」
「本当ですね。なんか恥かしいと思いますよ、俺は……」
「だな。自分の欲望に忠実に動いて恥かしくないのか?」
楓君と雄一郎君が憂鬱そうに呟く。だけど彼らはずっと私達を護ろうとしてくれていた、だから他の人たちみたいにはならないと思います
「まぁそれだけ馬鹿が多いってことだ。今日はもう夕食をとって休もう、MAGも回復させなければ6・5階を突破出来ない。4階や3階の事を考えるのは後にして食事を作ろう。幸い塩は沢山ある、塩にぎりを大量に作って全員で分けて運ぶ事にしよう」
今進む事が出来ないのだから、今は安全に進めるように準備をしようと言う母さんの言葉に頷き、私達は6・5階の探索の準備として夕食を兼ねた塩にぎりを作る係(イザベラさんと桃子さんと私)とノームに話を聞いて、生息している悪魔に対する対策を考える楓君、雄一郎君、母さんに分かれてこのデパートの悪魔を倒すための準備に入るのだった……
楓達がこのデパートを攻略するための作戦を考えている頃。神無市の外れでは
「ここにベルの悪魔達が集結しているのか?」
「集結と言うかは、そうですね。魔界の門が開いているって感じですね。今後他のベルの悪魔が出てくるかもしれない、なので今の内に閉じる事が出来ないかっと言う事です」
白銀の鎧に身を包んだ女性とその隣に佇む翼を持つ赤い鎧姿の男性……人間の姿こそしているが、彼らもまた悪魔であり女神と天使と呼ばれる存在だった
「本当にベルの悪魔は居るんだろうな?パワー?お前はベルの悪魔が居るからと私を呼んだんだぞ?」
「調査の段階では間違いないですよ、アリアンロッド。確認されたのはベル・デル、それとイザベルの2体ですが。他にも出現するかもしれないですから調査を任されたのですから」
パワーと呼ばれた天使は天使の階級の第六位能天使に属し、悪魔と先陣を切って戦う役割を持つ天使であり、アリアンロッドと呼ばれた女性はケルト神話に登場する女神であり強力な力を持つ女神だった
「先遣隊は全滅しましたからね。アリアンロッドもどうか気をつけて」
「余計なお世話だ」
ふんっと鼻を鳴らすアリアンロッドにパワーは苦笑しながら失礼しますと頭を下げ、その場を後にした。そしてアリアンロッドもまたパワーとは別方向に向かって飛び上がった。その方角は、奇しくも楓達が調査しているデパートのある方角だった……
チャプター24 デパート捜索 その3へ続く
今回はインターバルとなりました、次回は先頭や捜索を書いていけたらと思っています。そして20話を過ぎて本格的にロウ陣営が出てきました。アリアンロッドがどう動くのかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします