新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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分岐チャプター6

分岐チャプター1 ヤタガラス 異界 ひとりかくれんぼ その6

 

日が昇って周囲が明るくなって来たな……焚き火の前に腰掛けながら腕時計を確認する

 

(楓君とイザベラが突入して8時間……駄目だったか?)

 

ヤタガラスの2人と合流出来れば、いや、最悪の場合イザベラが全力を出す事で強引にでもあの屋敷を脱出できる計算だったが……最後の連絡から既に4時間……あれからトランシーバーやスマホにも何の連絡も無い。最悪の予想が脳裏を過ぎった時スマホの着信音が響く

 

「もしもし。無事か?」

 

『はい、ご心配をかけましたが、あの屋敷を支配していた悪魔の討伐は今完了しました』

 

スマホから聞こえてくるイザベラの声に安堵の溜息を吐く

 

「楓君は?」

 

『MAGと体力の消耗で今眠っています。あの屋敷はカラクリ屋敷であちこちに厄介な仕掛けがあって、楓で無ければ前に進むことは出来なかったでしょう』

 

イザベラの報告を聞いて笑みを浮かべる。楓君はこの悪魔の闊歩する世界に適合し、恐ろしいスピードで成長を続けている。その成長の早さと柔軟な対応力には驚愕の一言しかない

 

『屋敷の中は悪魔は既に存在していませんが、これだけのカラクリが集まった屋敷。しかもヤタガラスが捜し求める何かがあるそうなので久遠様達も捜索に協力して欲しいですわ』

 

「判った。美雪達を起こしたら屋敷へ向かう、どこにいるんだ?」

 

『1階の居間で待機しています。魅啝と御剣もいるので出来れば食料などを持ち込んでいただければ幸いです』

 

ヤタガラスの2人と共にいる。これは新しい情報を得るチャンスだ

 

「判った。食料も屋敷へと運ぶ、1時間ほどで合流するからしばし待て」

 

お待ちしておりますわと言ってイザベラは電話を切る。声に元気が無かったから、イザベラ自身も相当消耗しているのだろう……だが今回の事は明らかにプラスだった。楓君の成長を促した、やはり今回はヤタガラスに協力する事にして正解だった

 

「おはようございます、久遠教授。楓から連絡はありましたか?」

 

車から降りてきて桃子が目を擦りながら尋ねてくる。私は桃子に微笑みかけながら

 

「今悪魔の討伐に成功したそうだ。美雪と雄一郎君を起こして屋敷へ向かう」

 

私のこの一言で目が醒めたのか久遠先輩を起こしてきます!と車の中に戻っていく桃子の背中を見つめながら、私は雄一郎君を起こそうと思いテントへと足を向けるのだった……

 

 

 

この屋敷を異界としていた悪魔を倒したという安心感で眠ってしまったようだ、窓から差し込んでくる朝日に慌てて起きると

 

「おはよう、楓。お疲れ様……気分は悪くない?」

 

「おはようございます。楓君、お疲れ様でした」

 

「桃……それに美雪先輩」

 

桃と美雪先輩の姿に驚きながら周囲を見ると、イザベラさんは壁に背中を預け目を閉じていた

 

(そっか、そうだよな)

 

皆疲れているのに久遠教授達が起こしてくれなんて無理なお願いだったよなと反省しながら、起き上がりおはようと返事を返す

 

「おはようございます、楓様」

 

「おはようございます、御剣さん」

 

眠っている魅啝を護るように座っている御剣さんにおはようございますと挨拶をして部屋の中を見る

 

「久遠教授と雄一郎は?」

 

桃と美雪先輩がいるなら一緒にいるはずなのだが、姿の見えない久遠教授達の事を尋ねると美雪先輩が苦笑しながら

 

「その朝食の用意を、雄一郎君は念の為の護衛です」

 

異界化は解除できたが、まだ悪魔がいる可能性は高い。1人で行動するのは危険だよな

 

「待たせた……楓君も起きたか」

 

「おはようございます、久遠教授」

 

お盆を手に居間に入ってきた久遠教授に頭を下げると久遠教授は柔らかく微笑みながらお疲れ様と言う

 

「おはよう楓。大丈夫か?」

 

「ああ、少し疲れただけだから大丈夫だ」

 

心配そうな雄一郎に大丈夫と笑うと、雄一郎はあんまり無理をするなよと言いながら手にしたお盆を机の上に置く

 

「ベーコンを軽く炒めて、味噌汁とご飯を炊いた。卵があればなお良かったんだがな」

 

そうは言うが、この状況でこれだけの物を食べれるだけありがたいと思わない

 

「魅啝様。朝食ですよ?」

 

「……う、うん……判った」

 

ぼんやりと目を覚ました魅啝がずりずりと近寄ってきて、俺の隣に座る。これはもうほとんど本能に近いんじゃないか?と苦笑しながら久遠教授の用意してくれた朝食に箸を伸ばすのだった……

 

「つまりヤタガラスはこの屋敷に何かあると?」

 

「……はい。私と御剣をこの場所に送り込んだという事は、相当な物があると思います」

 

朝食の後。久遠教授が魅啝にこの場所に来た理由を尋ねる、御剣さんは難色を見せたが、魅啝は俺の恩師と言う事で素直に久遠教授の質問に答えている。俺やイザベラさんは1度聞いた話なので、久遠教授達の話し合いには参加せず

 

「あ、契約数が3になっていますね」

 

「私は3のままですが、元から契約数が3だったからでしょう」

 

悪魔の契約数を増やす方法とラーニング中になっていたスキルの確認などをしながら、久遠教授達の話し合いを聞く事にした

 

「それは物資か?人間か?」

 

「……判りません。この屋敷へとしか言われていないので」

 

物静かな魅啝の返事を聞いた久遠教授は御剣さんを見て

 

「お前達を邪魔者として排除しようとした可能性は?」

 

「ゼロではないと思いますが、ヤタガラスもそこまで馬鹿ではないでしょう。私達がいなければ神堂の手の者は全員撤収します」

 

未熟な人員しかいないヤタガラスが私達を捨て駒にするとは思えないと断言する御剣さん。その意見は俺も賛成だ、正直魅啝も御剣さんも俺達よりも遥かに強い。そんな2人を捨て駒にする意味が到底あるとは思えない

 

「その言い方ですと貴方達はヤタガラスとは関係ないように思えるのですが」

 

「事実関係ありませんから、現当主。つまり魅啝様の母君様の命令なのでヤタガラスに協力しているだけですから」

 

俺に話したのと同じ内容を話す御剣さん。ヤタガラスではあるが、ヤタガラスではない。それが魅啝と御剣さんの立ち位置らしい

 

「ではその。ヤタガラスの人が選民思想をしているというのは?」

 

「……私達はそれを知りません。私達の直属の部下はほとんど神堂の人間ですし、初めて皆様を案内したヤタガラスの支部も私と御剣が責

任者で、ヤタガラス直属の人間はほとんど居ませんでした」

ウロボロスから聞いたヤタガラスの話。それを確かめたかったのだが、ヤタガラスの行動とは関係ない魅啝と御剣さんでは達哉さんたちの話が真実なのか虚偽なのか判断する事が出来ない

 

「じゃあ、1つ俺から質問だ。ヤタガラスじゃない、あんた達の目的は何なんだ?」

 

「簡単です。悪魔を呼び出し続けている門を閉じ、悪魔のこれ以上の召喚を防ぐ。それが私と魅啝様の目的であり、神堂家の願いです」

 

その真摯な響きを伴った言葉に御剣さんが嘘をついてないと判ったのか、久遠教授はそうかと呟き

 

「判った。お前達の言う事を信じよう、私達もこの屋敷の捜索をするが……問題ないな?」

 

「……構わない。私はお義兄様の味方だから、貴女達も信じる。それに私も知りたい、私と御剣をこの場所に送り込んだヤタガラスの真意を」

 

お互いに話し合いを終え、この屋敷にある何かを探す為に協力するという約束をした俺達は食休みを終えてから、再びこの屋敷の捜索を始めるのだった……

 

 

 

楓達が捜索していた異界の時よりかは狭いらしいが、それでも膨大な面積を持つこの屋敷の捜索はかなり難航した。不幸中の幸いは犠牲者などの遺体が無く、更に悪魔も出現しないと言う事だ。

 

「この屋敷を作った奴は馬鹿なのか?」

 

捜索を始めて30分。俺は思わずそう呟いた、回転する壁に天井に隠された階段……どう考えても馬鹿としか思えないのだが

 

「いや、馬鹿と言うのは早計だな。これなどは中々興味深い資料だ」

 

古い本を手に笑っている久遠教授と楓……その資料とやらでこの悪魔の大量発生の原因を知れるなら良いんだけどな

 

「ちなみにその資料の内容は?」

 

「悪魔に関する資料だ。興味深い記述が多い」

 

悪魔に関する資料……か。ヤタガラスがこの場所に御剣さん達を派遣した理由がその資料の回収だったんだろうか

 

「……お義兄様?興味深いのは判りますが、まずは捜索を続けましょう?」

 

「え?あ、ああ。そうだな、久遠教授。行きましょうか」

 

だなっとバツが悪そうな顔をしている久遠教授と楓。よく似ている2人だよなと苦笑しながらこのあちこちに仕掛けが隠された屋敷の捜索を再開するのだった

 

「ここまで捜索をしましたが、他にもまだ見つけてない仕掛けがあるかもしれないですね」

 

イザベラさんが周囲を見ながらそう呟く、1階、2階を捜索し見つけたのは本ばかり。確かに稀少な本かもしれないが、それだけを探してここまで来る価値があるか?と言う疑問が残るし、ここまで隠し部屋などに本等を隠した意味も判らない。時間稼ぎか何かをしているように思える

 

「でも結構私達探しましたよ?」

 

「ええ、ピクシー達にも協力して貰いました」

 

桃子と久遠先輩がもう仕掛けは無いんじゃないかな?と言う。悪魔も動員しての捜索だ、もう探せる所は全部探したと思うんだが

 

「魅啝と御剣さんはここの来るときに何か聞いてないんですか?」

 

ヤタガラスから派遣された2人なら何か知っているのは?と思ったのか楓がそう尋ねるが2人は小さく首を振るだけ

 

「ヒントが無いな……さてどうしたものか……」

 

何か手掛かりがあればそれを基点に捜すことも出来るのだがと呟く久遠教授。ここに何かある可能性は高いんだけどな……とは言え手掛かりも無しで長時間ここにいるのは危険すぎる。いつまた悪魔が現れるか判らないから

 

「ん?久遠教授あれ……蔵じゃないですか?」

 

ふと見つめた窓の外。建物の外からでは気付かなかったが、木の板で作られた壁に隠された小さな蔵が見える

 

「蔵?……1階の窓は全部確認したんだが気付かなかったな」

 

「ですね、こんな所にもカラクリとは、正直呆れを通り越して感心しますわ」

 

イザベラさんが苦笑しながらそう呟く、今のこのご時勢によくここまで仕掛けを施すなと苦笑しながらも、あそこに何か手掛かりがあるかもしれないと思い。全員で2階から1階に降り庭へと向かう

 

「本当に何も無い風に見えるね」

 

「ああ。正面から見たんじゃ気付かない、上から見たときだけ気付く用に配置されてるんだな。この鏡」

 

楓が何も無い空間に手を伸ばすとコンコンっと言う軽い音が跳ね返ってくる。楓の言うとおり、この場所に鏡があるようだ

 

「悪魔で破壊しましょう。危ないので下がってください」

 

俺と楓が悪魔を召喚しようとするよりも先に御剣さんが前に出て銀色の筒を構えると、MAGを放出しながら悪魔が姿を現す

 

「ゾウチョウテン、目の前の壁を破壊しなさい」

 

【……便利屋ではないのだがな】

 

鎧を身に纏った巨体の人型が腕を振るうと甲高い音と共にガラスが砕け散り、隠されていた蔵が姿を現す。御剣さんはそれを確認すると悪魔を筒の中に戻す。俺達のスマホとも、ウロボロスの腕につける機械とも違う、その召喚方法に思わず御剣さんの手元を見つめると御剣さんはああ、そうですかと笑いながら

 

「封魔管と言うんですよ。日本古来の悪魔を封印する道具なんだ」

 

そんな物もあるのかと正直驚いた。俺達が知っている日常の裏ではこんなにも非日常が広がっていたんだなと改めて実感する

 

「とりあえず蔵の中を調べてみよう、その結果しだいでは別の方向を考えないとな」

 

久遠教授の言ってる事は判る。ヤタガラスが探している人物、または物が既に持ち去られている可能性だ。もしそうならば追いかけるか、このまま見過ごすかなど考える事はたくさんある。出来ればこの蔵の中に何かあるといいなと思いながら蔵の扉を開く……だが俺の希望に反して蔵の中には何も無かった

 

「……持ち出されてしまったようですね」

 

「残念だね」

 

久遠先輩と桃子が落胆した様子でそう呟く。何かあるかもしれないと期待していただけに、余計にそう思う。だが楓は蔵の中を見て

 

「いや、違う。手掛かりは残ってる」

 

そう断言して暗い蔵の中に足を踏み入れ、俺を呼ぶ。何も無いと思うんだけどなと思いながら蔵の中に入ると楓は蔵の上に方に掲げられている円盤を指差して

 

「雄一郎。あれをとってくれ」

 

「あ、ああ。構わないが……」

 

時計と言う訳でもないし、稀少品だったとしても価値はないと思うんだがと思いながら楓に頼まれた円盤を手に取る。

 

「次はあっち」

 

「あ、ああ。判った」

 

反対側の壁に立てかけられた円盤を手にとって楓に渡す、これを後2回繰り返し。4隅に置かれていた円盤を全て楓の目の前に置くと楓は鉈の柄で円盤を叩く。するとがこっと言う音と共に円盤が半分に割れる

 

「それは?」

 

円盤が割れて4分の1になった欠片を組み合わせている楓にどうして気付いたんだ?と尋ねる。すると楓は苦笑しながら

 

「この屋敷が異界になってるときに似たような仕掛けがあって、これとこれを組み合わせてっと」

 

楓の手の中には模様の刻まれた円盤が握られていた。楓は良しっと満足げに頷きながら

 

「今度はこれをあそこに掛けてくれ」

 

差し出された円盤を受け取り、楓の指差した場所に立てかけると蔵のあちこちから歯車の回る音が響く。その音に嫌な予感を感じ楓と慌てて蔵の中を飛び出す

 

「こ、これは……」

 

歯車の回転する音と共に目の前の芝生が盛り上がり、地下へと続く階段が姿を現した……忍者屋敷か何かかよと思わず呟く

 

「と、とりあえずだ、この先に何かある。先に進んでみるとしよう」

 

引き攣った顔で言う久遠教授に判りましたと返事を返し、地下へと降りようとすると

 

「私が先行しましょう。楓様の恩師と学友に怪我をさせるわけには参りませんから」

 

安全を確認したらお呼びするのでお待ちくださいと言って御剣さんが俺と楓を手で制し、地下へ降りていく

 

「なんか御剣さんって執事みたいですね」

 

「……執事じゃなくて従者だけど……似たような者かな……」

 

物腰も丁寧だし、教養も武術の心得もある。不思議な人だよなと思いながら御剣さんが戻ってくるのを待つ

 

「……魅啝様、楓様。悪魔は居ませんでしたが……なんとも形容しがたい施設と人物が居ます。敵意は無いようなので来ていただけますか?」

 

施設と人物、それがヤタガラスが御剣さん達に探すようにと言ったものなのかもしれない。それが悪魔が出現するようになった今の日本から、平和な日本に戻す手掛かりになるかもしれない。そんな淡い期待を胸に地下へと降りた俺が見たのは、巨大なガラスの筒が並び、発電機などが並ぶ異様としか言いようの無い広い部屋と……

 

「ふっはははっはー!!!良いぞ!良いぞ!!!良いぞオオオオオオ!!!」

 

白髪に白衣のどこか訛りの混じった日本語を喋る男が高笑いする姿だった……俺達がドン引きし、この男が悪魔が現れる原因になったのでは?と言う考えが脳裏に過ぎったのは言うまでも無い……

 

 

分岐ルート 悪魔研究家ヴィクトルとの出会い(ロウルート)

 

 

 




今回は短い話となりました。ロウルートでのヴィクトルの出会いは異界となっていた屋敷の地下です。カオスルートではカオスルートでの出会い方を書いていこうと思っています。次回はヴィクトルではなく、カオスルートの話に入っていこうと思います、ヴィクトルとの話はカオスルートの後へとなりますのでご理解よろしくお願いします
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