新訳女神転生(仮)   作:混沌の魔法使い

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チャプター4

チャプター4 脱出への壁

 

野球部の部室から帰って来た楓と雄一郎君の顔色が青を通り越して土気色になっていた。何があったのか聞きたかったが、久遠教授が話を聞くのは保健室に帰ってからにしようと言われたので何があったのか聞くことも出来ず。来た時と違い廊下を通って保健室へと戻ると楓と雄一郎君はそのまま流しへと走り戻し始める

 

「「うえええええッ!!おえっ!!」」

 

それを見て慌てて2人に駆け寄り背中を撫でる。何かあったのは判っていたけど、こんなに戻すなんて……よっぽど酷い何かがあったんだ……私は2人の背中を撫でながら力になれない自分が足手纏いにしか思えなかった……そして2人が落ち着くのは保健室に戻ってから15分後の事だった

 

「楓、雄一郎君。大丈夫?水飲める?」

 

ペットボトルを2人に向けて水を飲める?と尋ねるが2人は青い顔で首を振る、酷く消耗しているのが見るだけで判る。ここで何があったのか?と聞くと2人を更に追い詰めることになると思い、2人が話し始めるまで待つ事にし、その間にポットに水を入れたり、保健室から傷薬やバンドエイドと言った医薬品を鞄に詰めるなどをしていると2人が私達を呼んで何があったのか?を説明してくれた。それは受け入れがたい現実であり、そして2人がここまで追い詰められた理由として納得のいくものだった……

 

「そんな……雄一郎君……」

 

野球部の部室でチームメイトがゾンビになって襲って来た。それを必死で迎撃してカソの炎で焼いたと告げる2人の顔色は悪く、精神的に相当追い詰められているのが判る。楓は青い顔のまま私と久遠先輩に視線を向け

 

「桃も美雪先輩も覚悟しておいたほうがいい、友達がゾンビになっている可能性を心に留めて置いて欲しい。生き残るためには殺すしかない、じゃないと俺達が殺される……それを覚悟して欲しい」

 

どうしてこんな事に……悪魔にゾンビ、今までの日常が崩れて映画かゲームの世界で起きるような事が目の前で起きている。もう何回考えたか忘れてしまったが、どうしてこんな事になったのか?と思わずには居られないのだった……

 

【ケイヤクシャ。スコしヤスメ。オマエタチハシンシントモニツカレテイル。我とコロポックルがマモル、オマエタチハヤスメ】

 

【うむ。カソの言う通りじゃ、お前達は休め、何心配することは無い。契約者を得ているワシもカソも負けはせん、今は休め】

 

カソとコロポックルと言う悪魔が楓と雄一郎君を説得し、2人は今保健室のベッドで横になっている。明かりをつけたいところだがそれで悪魔を呼び寄せる危険性があるので保健室にあった蝋燭を明かりにする

 

「夜になると余計に恐怖心が増しますね」

 

「そうですね……」

 

時間としては夜の7時。普段ならまだ明るくて、人の賑わいがある時間だけど……今周囲にあるのは静寂だけ。時折外から響いて来る何かの歩く声や唸り声が恐怖心を更に煽る

 

「楓君と雄一郎君の分は残しておけば良い、美雪も桃子も何か腹に入れておけ」

 

日持ちしないおにぎりは優先した方が良いぞ?と差し出されたおにぎりを受け取るが……どうしても食欲が出ない

 

「母さん……駄目です。今は食べたくないです」

 

「私も……すいません」

 

楓が庇ってくれていたけど、血塗れの廊下等は嫌でも視界に入って来た。それらを思い出すと今はどうしても食欲が出ない。久遠教授もそうなのかおにぎりの包みを開けようとしたが机の上に戻す。それにどうせ食べるならここまで私達を護ってくれた楓や雄一郎君と一緒が良い、私がそう言うと久遠教授は納得したように頷き

 

「そうだな。確かに功労者を差し置いて先に食事するのは良くないな……糖分だけでもとっておこうか?」

 

飴の袋を開けて、私と久遠先輩に投げ渡してくる。それを両手で受け取り口に含む、イチゴ味フルーツキャンディの子供っぽい味だがそれが妙に懐かしく、そして美味しく感じたのはきっと失われた日常の味だからだと思った……

 

 

 

うっすらと目を開け、見慣れない天井にどこだ!と一瞬混乱したが直ぐに保健室だったことを思い出す。ゾンビを見たことで精神的に参ってしまい、カソとコロポックルの言葉に甘えて少し眠らせてもらったんだが……この暗さだともう深夜か?と思いながらベッドから立ち上がる

 

「おう、楓も起きたか。水いるか?」

 

雄一郎は既に起きていたようだ。涙の後がまだ残っており痛々しいが、それでも普段通りに振舞っている。皆が不安にならないように気遣ってくれているのは直ぐに判ったので、あえてそれには触れない事にする。そもそも雄一郎を追い詰めたのは俺なのだから、それを口にする権利は俺には無いのだから

 

「ああ。貰えると嬉しい」

 

ほれっと軽い感じで投げられたミネラルウォーターの封を空け、それを少し口に含み保健室の床に座っている桃達の方へ移動する。椅子に座らないのは椅子に座ると外から見つかる可能性を考慮しているんだろう、もし保健室が襲撃されたならベッドや水が使える安全な場所を失う事になる。そうならないように警戒するのは当然の事だ

 

「楓、気分はどう?」

 

俺に気付いた桃が心配そうに俺の顔を見つめながら様子を尋ねて来る。確かに気分はいい物ではないが、さっきと比べれば頭痛も治まりある程度落ち着いて来ている。俺は桃へと微笑みかけながらその隣に座る、良く見ると薬のメーカーのダンボールが敷かれているのに気付いた。これも体温を奪われないようにする措置だろう、少しでも体力を温存しなければ何が起きるか判らない。細心の注意を払う必要がある

 

「大分楽だ。それよりも大分暗いけど……今何時くらいだ?」

 

「8時20分かな……まだまだ夜は長いよ」

 

まだ8時か……確かに夜明けまでは全然長いな……こんなにも朝が待ち遠しいと思ったのは初めてかもしれないなと苦笑する。夜目が効かないから夜はこうして隠れて過ごすしかない、これはこれでストレスが溜まるかも知れないな……なんにせよ。明日は久遠教授の第二研究準備室を目指して行動するべきだろうな……ただ出来ればゾンビは遭遇したくないかと考えていると美雪先輩が俺達の目の前におにぎりやパンを置きながら

 

「楓君と笹野君も起きましたし、ここで夕食にしましょうか」

 

まだ夕食を食べてなかったのか……俺達が寝ている間にてっきり食べていると思っていたのだが、待たせてしまったようで悪い事をしてしまったと罪悪感を感じていると桃が慌て手を振りながら

 

「ううん、皆食欲が無かったから全然大丈夫だよ。それに皆で食べたほうが美味しいから」

 

「ええ、ですから楓君や笹野君も気にしなくて良いですよ」

 

桃と美雪先輩の言葉に頷き、目の前に置かれたおにぎりへと手を伸ばすのだった……

 

「さてと食事も済んだ所で明日の行動の方向性を決めよう」

 

腹は空いているのだがあまり食欲が出ず、俺と雄一郎はおにぎり2個。桃と美雪先輩と久遠教授はおにぎりを1つずつと少なすぎる食事を終えた所で久遠教授がそう話を切り出す。久遠教授が居てくれて良かった……俺達だけではパニックになってどうすればいいのか判らなかっただろう。大人が1人いてくれるだけで安心感がまるで違っていた

 

「目的としては今日と変わらないが、食料を十分に確保することが出来た。だから大学の購買部を見に行くのは後回しにしまず私の第二研究準備室を目指す。ただ懸念もある、今私達が居るのは高校棟の1階。それに対して目的地の第二研究準備室は大学棟の3階だ。間違いなく悪魔やゾンビに遭遇する。つまり嫌でも戦う必要がある」

 

隠れながら移動する事が無理なのは判っている、同じ高校の中を移動するのにもあれだけの悪魔の姿を見たんだ。間違いなく戦う事になるだろう

 

「久遠教授。無理に研究室に向かわず、高校を脱出するのは駄目なんですか?」

 

雄一郎がそう提案すると久遠教授はそれも1つの手だがと呟いてから、申し訳無さそうな顔をして

 

「第二研究準備室に私の車の鍵が置いてあるんだ。無論道路が使えない可能性もあるが、移動手段を確保しておく必要はあると思うんだ。こんな事になるんだったら持ち運んでおくべきだったな……」

 

それに車で動いていれば生存者と会う事もあるだろうし他にも役立つ物も置いてある。それを置いていく訳にはいかないと付け加えられる。車で移動することで悪魔に見つかるリスクもあるが、久遠教授の車は確かフィールドワークの為に4WDだった筈。多少の悪路も強行突破出来るだろうし、悪魔に攻撃されても耐える可能性もある。歩きで高校を脱出するよりも遥かに生存率が上がるのは言うまでもない

 

「確かに車は欲しいですね……となると行くしかない訳か……」

 

憂鬱そうに呟く雄一郎。確かに早く高校から脱出したいが、その思いだけで脱出し後で苦しい思いをすることになるのなら、今の内に準備を万全にした方が良いのは言うまでもない

 

「ただし悪魔と戦うのはあくまで最終手段だ。隠れて移動できる間は出来るだけやり過ごす方向で動く。行きは良くても帰るに帰れないと言う状況は避けなくてはいけないからだ」

 

カソ達が居ても俺達の体力が尽きれば移動することは出来なくなる。無理や無茶は避けるそれは生き残る可能性を高めるために必要なことだな……とここまで考えた所で出入り口の所で警戒してくれているカソ達を思い出し

 

「そう言えば、お前達腹減ってないのか?なんか食べるか?」

 

パンとかおにぎりを差し出しながらそう尋ねるとコロポックルが苦笑しながら首を振る

 

【ワシらは契約者であるお主らが居れば飢える事も、死ぬことも無い。じゃからワシらの食事は気にしなくて良いぞ】

 

ニコニコと笑うコロポックルにそうかと返事を返したのと同時に、廊下の奥からズシッと言う重々しい足音と獣の息遣いが響いて来る

 

【あいつが来た……隠れて!】

 

ピクシーが悲鳴にも似た声で叫ぶ。あいつ……間違いなく睦月を食い殺した狼男だろう。慌てて蝋燭を消して荷物を持って保健室のベッドのほうに隠れる、だが隠れた所で気が付いた。もし見つかって狼男が入ってきたら完全にアウトだ。逃げ道が無い場所に隠れる……そのリスクを考えると額から大粒の汗が流れるのが判る。桃と美雪先輩は頭を抱えてベッドの近くに蹲っている

 

「静かに、私の犬避けで嗅覚が完全に死んでいる筈……下手に動かなければ見つかることは無い筈だ」

 

判りましたと頷き、狼男が通り過ぎるのを待つ。唸り声と重々しい足音……それだけで心臓が大きく脈打つのが判る

 

【グルルル……】

 

ズシャ、ズシャっと言う音を立てて通り過ぎていく狼男の足音……全員が緊張する中。永遠とも思える数分が過ぎ狼男の気配が完全に遠ざかった所でやっと一息付く事が出来た。今あの狼男と戦う事になったら間違いなく全員死ぬ……今は何とかやり過ごすことが出来たが、絶対にあいつはどこまでも追いかけて来るだろう……それはさっきの何かを探しているような素振りを見れば嫌でも理解した

 

「訂正だ。車の鍵を取るだけじゃ足りない、あの狼男を倒さす手段を探す必要もあるな」

 

久遠教授も同じ考えなのか疲れた様子でそう呟く、脱出よりも遥かに難しい問題を今まで忘れていた事を思い出し……激しい疲労感を感じた……そして今の段階ではどうしてもあの狼男を倒す手段が無い。そしてどれほど考えてもあの狼男を倒す手段が思いつかない……あれは俺達にとって最悪の敵だ。それが俺達を探して歩き回っている……その恐怖を今初めて知った……

 

「もう今日は休もう。カソ……また頼む」

 

【アア、マカサレタ】

 

今日一日が何年にもなったように思える……俺はよろよろとベッドに身体を預けた。ベッドの数は4つしかないので、本当は美雪先輩と桃、そして久遠教授にベッドで眠ってもらい、俺と雄一郎は順番で見張りをするつもりだったのだが、精神的・肉体的疲労で起きている事が出来ず。俺と雄一郎を気絶するようにベッドに倒れこみ、そのまま深い眠りへと落ちていくのだった……

 

「……やっと眠ったか。今の所想定内で動いているが、それでは困るな……さてさてどうするか」

 

全員が寝静まった頃。久遠教授はニヤリと笑っていた……闇の中だというのに、その瞳は血の様に真紅に光り輝いていたのだった……

 

 

 

昨日眠った時間が早かった事もあり、全員日の出と殆ど同時に起き出した。そこから全員でトイレへと移動し順番で用を足す、直ぐ近くに楓君や笹野君が居るので気恥ずかしい物があったが、悪魔が襲ってくる可能性もあるのでそれは我慢する事にしたが、やはりお互いに恥かしいのか、顔はお互いに真っ赤になっていたが、誰もそれを口にすることは無く。暖かい物を食べれば気分も落ち着くという理由でカップラーメンを朝食とした

 

【ふむ。ワシらの力を使うと疲労を感じる……か。そうじゃったの、そこまで説明してなかったな】

 

すまんすまんと謝るコロポックル。今朝笹野君と楓君が言い出したのだが、カソの力にしろ、コロポックルの力にしろ使用すると疲れる。その理由を知りたいとコロポックルに尋ねるとコロポックルは悪い悪いと謝りながらその理由を口にした

 

【普通に存在する分には問題無いのじゃが、炎や氷を扱うにはお前さん達の魂の力を借りている。それが疲労の原因じゃな、契約によって魂が結ばれているのでこれは仕方ないことじゃ。じゃが契約によってお前さん達にもメリットがあるんじゃよ】

 

メリット?私達を護ってくれている以外に他にもメリットがあると笑ったコロポックルは楓君と笹野君の方を向いて話し始めた。

 

【契約と言うのはお互いに影響のある物じゃ、ワシらは存在する為の力をお前達から貰い、お前達にはワシらの力が少し譲渡される。実感はあんまり無いじゃろうが、少なくとも悪魔の一撃で死ぬことは無いぞ?試してみるか?】

 

コロポックルのからかうような言葉に楓君達は慌てて首を振り、でも試してみたいと言う事で私と桃子さんに離れるように声を掛けてから

 

「うっし、来い雄一郎」

 

「ああ。いくぞッ!!!」

 

笹野君が大きく拳を振りかぶり、楓君の腹に叩きつける。楓君は驚いた表情で

 

「全然痛くない!信じられん……」

 

「俺が信じられんぞ……結構全力で行ったのに無傷とかな」

 

だがこれで悪魔と契約すれば身体能力が上がることが判明したのだが……コロポックルは追加で契約についての説明を付け加えた

 

【打撃が効かないのはカソの特徴じゃからな。ワシの契約者はそこまで防御力は上がっていない筈じゃ】

 

つまり契約している悪魔に応じて、身体能力の強さは変わるとの事だった。となるとピクシーと契約している私はそこまで打たれ強くはなっていないと言う事ですね

 

「ふむ。悪魔と契約し身体能力強化か……興味深くはあるが今は止めておこう。浜村君のように制御できない悪魔が出てきても困る。もしやるんだったら第二研究室準備室にあるあれを取ってきてからだな」

 

あれ?あれって何だろうか?車の鍵の他に役立つ物があると言ってましたけど、それが何か私達は当然知らない。しかし母さんがここまで自信を持って言うのだからきっと役立つ物が……そこまで考えたで唐突に思い出した

 

「か、母さん……確か研究用の日本刀とか置いてましたよね?」

 

えっ?と楓君達が驚いた表情をしている。第二研究準備室は危険なものがあると言う事で高校生は原則立ち入り禁止だが、確か何処かの博物館から年代を鑑定して欲しいと言う事で日本刀を預かっていたような

 

「何を言っている?刀はもう返したぞ?」

 

そ、そうでしたか……良かったと安堵の溜息を吐いていると母さんは穏やかに笑いながら

 

「戦国時代の槍を預かっているけどな」

 

……母さんの取りに行きたいと物が歴史的価値のある武器とある事を知り絶望した。もし破壊したら責任を……あ、でも。その責任を追及できる人も死んでるかなあ……生き残るためと言う理由で槍を振り回しても大丈夫かなとか色んなことが脳裏を過ぎる中。母さんはしれっとした表情で

 

「必要な事だ。金属バットが通用する間は良いが打撃が何時まで有効か判らないんだぞ?寧ろこれから生き残ることを考えるのならば刀などの刃物を手にするべきだ。それに武器のスペアは幾つあっても足りないぞ?悪魔は電撃や炎を使う。壊される前提で考えていたほうが良い」

 

「た、確かにそうですけど……」

 

私が母さんに考え直すべきだと進言する中。楓君が私の肩を掴んで首を振る

 

「美雪先輩。生き残るためって言葉を免罪符にしたらいけないと思いますけど、生きる為です。もうある程度は常識を捨てるべきですよ」

 

だって悪魔やゾンビが居るんですよ?もしかすると警察だって持っている銃を武器にして戦っている可能性だってあります。もう銃刀法がどうとか言っている場合じゃないんですよと言われる

 

「確かにな、俺も楓も悪魔と遭遇したから言えるが、金属バットだって何時折れるか判らない。刃物のほうが武器として有効だと思いますよ」

 

うっ……そこまで言われるともう反論できない、私や桃子さんは楓君達に護られている側だ。護ってくれる楓君と笹野君が必要だと言うのなら私達には何も言うことが出来ない

 

「でも久遠教授。保健室から出発するのは良いんですけど……居ない間に保健室を悪魔に襲われたらどうするんですか?」

 

桃子さんが手を上げて母さんに質問する。確かにその通りだ、戻ってくる場所を失えば休息をすることが出来ない。かと言ってここに誰か残るのも危険すぎる……となると荷物を全部持って移動すると言う事になるが、中々の重量になる。それを運んで移動するのは危険すぎる……母さんは笑いながら問題無いと言い切りロッカーから箒を取り出して

 

「ここら辺に居る悪魔は大して賢くない。だから全員外に出た後に、コロポックルに外からこれでドアを押さえて貰う、その後はコロポックルは消えれば保健室の中は無人。戻って来るときはコロポックルにまた外して貰えば良い」

 

……そんなんで大丈夫なんでしょうか……でもこれだけ自信満々で言う母さんに大丈夫ですか?と言う訳にも行かず。その言葉を飲み込み、母さんの指示通り保健室の扉をコロポックルに箒で押さえて貰って私達は大学棟3階の第二研究準備室を目指して移動を始めるのだった……

 

 

 

 

ゾンビを見たからか、それともコロポックルの話にあった契約で身体能力が強化されるという話を聞いたからかは判らないが、俺と楓は時折遭遇する餓鬼をバットで殴殺しながら進んでいた。罪悪感も何も感じないことに等々ここまで来たかと苦笑する。

 

「雄一郎。そこまで気にするな」

 

「あ、ああ……」

 

俺が殺したその罪悪感は暫く消える事はないだろう。いや一生消えることが無いかもしれない……ならそれは俺の罪として背負おう。その為にはまずは皆で生き残り、この高校から無事に脱出する……考えるのはそれからだ。飛び掛って来た餓鬼の顔面にバットを叩きつける。

 

「おっらあッ!!!」

 

ふらついている餓鬼の頭に楓が踵落しを叩き込み首をへし折る。暫くすると餓鬼の姿は消え去り、魔石が地面に転がっている。それを拾い上げて鞄に詰め込んだ楓は振り返り

 

「久遠教授。今日はグランドを通るのは危険そうなので渡り廊下でいいですね?」

 

窓からグランドを見たが、今日は餓鬼や見たことの無い悪魔がグランドを埋め尽くしている。とてもではないが、通れる雰囲気ではない。久遠教授は何かを考え込む素振りを見せたと思ったら急に慌て始めた

 

「急ごう、もしかすると最悪の事態になっているかもしれない」

 

そう言って俺と楓を追い抜いて走って行く。それを見て全員で慌てて久遠教授の後を追いかけ渡り廊下を抜け。大学棟に入ったとき。俺達の目の前に広がっていたのは昨日の綺麗な状態からは想像出来ないほどに荒れ果てた校舎の姿

 

「ちっ!やっぱりか!グランドの悪魔はあの狼男に追い出されたんだ!つまり今この大学棟は……【ウォオオオオンッ!!!!】奴の住処だ……!!」

 

何処かから響く狼の遠吠え。それはかなり遠いが、大学棟に奴が居ると言う証拠だった

 

「母さん!引き返しましょう!」

 

「馬鹿を言うな!ここまで来たら階段を上れば私の研究室は目の前だ!全員で走るぞ!!!」

 

そう言って走り出す久遠教授。これは着いて行くしかない、久遠教授をここで失う訳には行かないから。俺達は階段を駆け上がっていく久遠教授の後を追って、階段を駆け上がっていくのだった……

 

 

チャプター5 Lからの手紙へ続く

 

 

 




今回はここで終わりとなります。次回は「Lからの手紙」メガテンを知っている人なら誰からの手紙か直ぐに判ると思います。礼のあの人です、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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