GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。   作:桐生 勇太

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第10GAME:黎斗神、トキオウに着く

「見えた! 見えたぞ!」

 

 あれがトキオウ街か、城壁もあって「これぞRPGの街」という感じがあるな。好きになれそうだ。

 

「黎斗神様、そんなに急がれなくても街は逃げませんよ」

 

 む? いつの間にかスピードを上げていたらしい。いつにもましてテンションが上がってしまったな。

 

「ふふっ…子供だねぇ」

 

 あぐ、ミリカに笑われた。っくそっ最近私の威厳がなくなってきてやしないか? 何? もともとだと? おのれ、なんと無礼な…って私は誰としゃべっているんだ? うむぅ…疲れてるのか?

 

「黎斗神様、とりあえず街につくのにあたって、これを付けてください」

 

 いったん休憩していると、クライシィに何か渡された。これは…金髪のカツラか?

 

「なんだこれは? 被ればいいのか? 何のために?」

 

「あら? ご存じありませんか?」

 

「何を?」

 

 何の話だ? 金髪以外の方お断りとかいうんじゃなかろうな…

 

「この世界では黒髪の人間は1人もいません。 黒髪は、魔物だけです」

 

「なんと…じゃあ私が街に黒髪の状態で街に行った場合、どうなる?」

 

「門番に速攻で首を切られます」

 

「 わお 」

 

 異世界怖っ。どんだけ黒髪嫌いなんだよ…

 

「本当にいないのか? 1人も?」

 

「いるにはいると思いますが…すぐに殺されます」

 

「ゑ?」

 

 殺される? なぜ? 何の意味が?

 

「黒髪は魔物を引き寄せると言われていますから… 信じている人はほとんどいませんが、やはり両親などは近所からの冷たい目線がありますね…それに、森などで狩人などが魔物と間違えて殺してしまう例もありますし…ちなみにその場合、罪には問われません」

 

「…なぜ?」

 

「……それは 「黒髪で生まれたのが悪い」 という考えのせいですね」

 

 私の中にどろりとした「もの」が落ちた気がした…怒りだ。「それ」はやがて大きな炎となり、私の体がかあっと熱くなった。無意識に拳を血が出るほど握り、ひびが入るほど歯を食いしばった。

 

「…ッ」

 

「く、黎斗神様…」

 

「!」

 

 む、いかんいかん、いつの間にか変な表情になってしまった。いったん落ち着こう。3人ともすっかりおびえてしまっている。

 

「すまん、もう大丈夫だ。 …それで、このカツラだが、やはりつけんよ」

 

「ど、どうしてですか?」

 

「ちょいとアンタ、クライシィの話、聞いてなかったのかい?」

 

「聞いていたさ。 だからこそだ。 今私は勇者なのだろう? ならば、このまま私が活躍すれば、黒髪の人たちはみな大手を振って表を歩けるわけだ」

 

「……あっ」

 

「……へぇ」

 

「…なるほど…」

 

 ふふん、見たか、神の考えの深さを。

 

「黎斗神様、素晴らしいお考えです!」

 

 その後、結局勘違いした門番に私の首が飛ばされた事を書いておこう。

 

「残りライフ96…あの門番、許さん」

 

「まあ、仕方ないですよ。あれが仕事ですし…」

 

 クライシィはそういうが、やはりあっちの世界で生きてきた私にはこの常識は異常だと思う。

 

「しかし、屋台が多いな、この町は…どれもおいしそうだ」

 

「こういう街の入り口は大体こうなってるよ。中に入ってきた商人や旅人、冒険者が食べていくからねぇ」

 

 なんだミリカのやつ、物知りだな。知力7のくせに…

 

「このくらい、常識さね」

 

 あ、何だ、常識か…常識なら…いや、初対面の人間に剣を振り回すようなやつに、常識?

 

「さて、黎斗神様、そろそろ行きましょう」

 

「ん? どこにだ?」

 

 おいおい、まさかもう次の街に行くとかか? できれば一泊していきたいんだが…

 

「神殿ですよ。挨拶しに行きましょう」

 

 挨拶? …ああ、引っ越しの時に家の近くの神社や寺に行くあれみたいなものか。大方「この旅に幸多からんことを~」みたいな説教の紛い物だろ?

 

「よし、わかった。早速行こう」

 

「あ、あの、黎斗神様?」

 

 歩き出した私をクライシィが呼び止めた。

 

「どうした?」

 

「いえその…神殿はこちらです」

 

 まっすぐ行けば着くと思っていたが…右に行くのか…あ、後ろでミリカとクリスが笑ってやがる。

 

「よ、よし、い、行くぞ」

 

「ふふふ、はい」

 

 く、クライシィにまで笑われた…畜生…

 

 

 

 

 

 神殿の中に入ってみたが、ほう、なかなか掃除も行き届いてるな。何より上品な装飾物がいい味を出しているな。

 

「黎斗神様、こちらがこのゲムム神殿の神官長のクリティカ・クルルセドイ様です」

 

 人のよさそうな老人がいつの間にか目の前に立っていた。結構瘦せ身だな…私生活がいい証拠だろう。

 

「うむ。檀 黎斗神だ」

 

「クリティカ・クルルセドイと申します。ようこそトキオウ街へ」

 

 挨拶もそこそこに、奥の部屋へと連れられた。どうやらここで祈るようだ。ふむ、どうもこの世界は1神教のようだな。「ゲムム」以外の神の名前は聞いたことがない。それにしても、結構人がいるな…みんな1心に祈りをささげている。さて、やるか………………

 

「さあさあ!! 祈るなら私に向かって祈るがいい!!! 私は神だぞ!!!!!!」

 

 その後、私は俗にいう「神の冒涜者」として結構やばいことになりかけたが、クライシィ達が意外と必死に逃げてくれたおかげで捕まることはなかった。

 

 いやぁ、やっぱりさすがに無理があったか、ナハハ………

 




お読みいただきありがとうございました。

書けば書くほど黎斗がバカになっていく気がしましたので、今回は少しだけかっこいい描写を入れました。
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