GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。 作:桐生 勇太
…嗚呼、黎斗のおバカパートが書きたい……
次の日になった。あの騒動のおかげで私は表に出るときはいちいちカツラを付けなければならなくなり、少し不便になった。その代わり仲間たちはだいぶ優しくなった気がする。このところやらかしてばっかりだったからな。よかったよかった。
「檀様! こんにちは。あの、その、 今日1緒にお出かけしませんか?」
部屋で時間をつぶしているとアリアが入ってきた。ふむ、すっかりなつかれてしまったな。
「いいぞ。どこに行きたいんだ?」
「はい! ええと、私、あの、その…ううん、て、適当にお散歩できたらなあと…」
ふむ、いいかもな。この街をしっかり歩いて回ったこともないし。せいぜい屋台を食べ歩きしたぐらいだ。
「よし、そうしようか。早速行こう」
「はい!」
宿の外に出るときに、クライシィたちに出かけることを伝えると、なぜか全員フリーズしてしまった。何が起きたのだろう?
「とりあえず、適当にぶらつくか」
「はい!」
とは言ったものの、どこに行こうか。…ふむ、こういうことは初めてだしな。サッパリわからない。
数時間後
「…いい天気だな」
「はい! とても!」
「…元気だな」
「はい! とても! …ただ、生まれつき体が強くないので…」
「…そうか」
「はい」
会話が続かない…! っく、共通の話題があればいいのだが、ここで元の世界のゲームの話をしてもな…どうしよ。
「そういえば、あの後は大丈夫だったか?」
「はい! おかげで、元どうり、いえ、カツラを付けなくなった分、前以上に快適になりました」
「そうか、それはよかった…む? あのお店は?」
「あれですか? あれはお裁縫のお店ですね。行きましょう!」
ふむ、裁縫か…悪くないな。どうやら体験教室のようなものもやっているようだし、行ってみるか。
「いらっしゃいませ~お買い上げでしょうか? 自分でお作りになられますか?」
「私は自分で作ってみたいが…アリアはどうする?」
「私もやってみたいです!」
よし、そういうことならやってみよう。ワクワクするな。
数十分後
「…………できた」
「あら、お客様は玄人ですか? よくできてますね」
「檀様、素敵です! とても愛らしいですね!」
私はマイティアクションXの暗い色のマイティと普通のマイティを作った。おまけに髪の部分にベルトを通して肩にかけられるようにし、髪の後ろにチャックを付けて小物入れにし、肩掛け財布を作った。
…ふふん、1人暮らしが長かったからな。この程度ならば、いくらでもできる。
「意外とうまくいったな。アリアはどうだ?」
「私は素人ですので…こんな感じになりました」
これは…なんというか、ただの模様がついている布といったところか? 文字のようだが…なんと書いてあるのやら。
「檀様、手首を出してくださいませんか?」
「む? ああ」
「これをこうしてっと…」
これは…腕バンドか。なぜ私に?
「それ、プレゼントです。クライシィさんたちから聞きました。檀様は勇者様だったのですね。その布には、おまじないが書かれています。「檀様の旅が無事に終わりますように」という思いを込めました」
「…そうか。なら私からもプレゼントだ。この「肩掛けマイティ小物入れ」をやろう」
「……いいのですか?」
「ああ」
「…大切にします!」
うむ、よかったよかった。なかなかに良対応だったんじゃないか? 楽しめたようで何よりだ。
「さて、じゃあ今日はもう解散とするか。送ってやろう」
「あ、ありがとうございます」
しばらく神殿に向かって歩いていると、アリアが口を開いた。
「私、明日の朝にこの街を出ていくんです」
「…何?」
「別にまだ私のことを狙っている方がいるわけではないのです。でも、自分で決めました。これからは檀様が言っていたように、黒髪の方々が大手を振ってお外を歩けるようにしたいんです。だから、自分の治療魔法を使って、いろんな人たちの助けになりたいんです。とりあえず、最初はダラエ山のほうに行って、山を越えていろいろなところへと行こうと思っています」
「…それはクライシィ達から聞いたのか?」
「いえ、檀様から直接聞きました」
「…?」
あれ、アリアに言った記憶がないぞ。勘違いか?
「…そうか、応援しよう。頑張れよ」
「はい。…………………………………………檀様、私は1時はあなたと共に旅に出たいと思っていましたが、持病を抱えて体力のない私には無理です。ですから、いつか、私の病気が治って、そしていつかお会いできたら、どうか私もあなたと共に…」
「分かった。1緒に冒険をしよう。約束だ」
言いながら、小指を差し出す。指切りについては、やはり知らないようだな。
「これは私の故郷でのおまじないのようなもので、「指切り」という、約束の時にするものだ。「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます、指切った。」とお互いの小指を絡めあって言うんだ」
「は、針を千本も飲ませるんですか…」
少しアリアが引いている。まあそんなもんだろう。
「それどころか、嘘をついたら拳こつ1万回の上、針千本飲ませるからな。大変だぞ」
「こ、怖いですね……」
「まあ、そのくらいの気持ちで約束は守れということだろうな。さすがに1万回も殴られて、そのうえに針を千本も飲ませられたら残りライフ95の私も危ないかもしれないしな」
「そういう問題ではない気が……………」
「む? そうか? …ふふっ」
少しの間、2人でひとしきり笑いあった。
次の日の朝
私はクライシィ達とアリアの見送りにきていた。どうやら馬車で行くようだ。
「では、檀様、またいつかお会いしましょう。その時に伝えたいことがあるんです」
「そうか、なら、また会おう。約束だ」
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます、指切った。」」
「さようなら。檀様」
「いや、またな。アリア」
「! はい! また、いつか!」
こうしてアリアとは別れた。頑張れよ、アリア、君の水晶の輝きで、人々を1生懸命照らしていきなさい。
「…アタシら、来た意味あったのかね?」
「…さあ」
「微妙なところだな」
その日の昼頃
私は1人広場の近くで屋台で買った食べ物を食べていた。その時、ふいに近くの奴らの話声が聞こえた。
「何でも、ダラエ山のほうに大きな魔龍が出たらしいじゃない。魔龍っていったら、成龍よりはるかに強いっていうじゃないかい…怖い話だねぇ」
私の頭の中で、アリアの言葉が蘇った。
[とりあえず、最初はダラエ山のほうに行って、山を越えていろいろなところへと行こうと思っています]
私の目の前が、ふいに真っ暗になった。
宿屋
「あ! 黎斗神様! 聞きましたか!? ダラエ山のほうで…」
「知っている! その山までの地図を早く持ってこい!!!! それとミリカ、お前はナイフを!」
「は、はい!」
「わ、わかったよ!」
まさか…いや、そんなことは…いや、思い過ごしだろうが、1応確かめに行かなくては…
「これです!」
「持ってきたよ!」
地図の大体の位置はわかった。これで行ける。
「よし! 早速行ってくる!」
「でも、相当遠いよ? それに、ナイフなんか何に…」
ミリカが言い終わらないうちに、ナイフを腹に突き刺した。
「な!? アンタ、何して…」
「ぐっ…ちっ、腹じゃ無理か」
今度は首に突き立てた。うお、めちゃくちゃ痛い。
「必ず戻ってくる。だから、待ってろ…!」
【 GAME OVER 】
私のGAME OVERには、特徴がある。それは、土管を出す際、出す位置を任意で動かせるということだ。例えば、少し前なら屋根の上に、元の世界にいたときにはパラドの目の前にといった具合になる。今回は、超長距離の移動になった。ここまでの移動は初めてだ。
「っ、ここがダラエ山の麓か…」
成功したようだ。周りを見回そうとした時、ふいに後ろから匂いがした。強烈な、人の焼けるに匂いだ。まさか…いやそんなはずはない。だってこれからじゃないか…これから彼女は、ようやく自分の人生を…………約束しただろう? また会うと…………
[さようなら。檀様]
ゆっくりと振り向く。視線の先に、優に40Mはあろうかという真っ赤なドラゴンと、砕けた馬車が見える。馬は食べられたのか、それとも逃げたのか、いない……誰かが血まみれになって倒れている。女性だ。修道服、見慣れたマイティの肩掛け財布に、黒い髪。私は彼女を知っている。彼女の名は…………
「……………………………アリア…………………………」
そこには血まみれのアリア・クルルセドイが倒れていた。
お読みいただきありがとうございました。
ここで1つ年齢設定
檀 黎斗神:32歳
クライシィ・イーグル:18歳
クリス:20歳
ヘイロン:(人間年齢)20歳
ミリカ=ローデン:24歳
アリア・クルルセドイ:15歳