GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。 作:桐生 勇太
あれから数週間がたった。いまだに政宗は見つけられていない。どこかでただの人間として生きているのか、それとももう魔物や野獣に食われた後かはわからない。
「まあ、どうでもいいがな」
「? 何がですか?」
「いや、気にしないでくれ」
現在私はイーグル国に戻っていた。魔王と魔神両方を倒した勇者として盛大に祭り上げられたからだ。
初めのほうはかなり道行く人にギャアギャア言われたが、数週間もすればだいぶ減ってきた。
今はこうしてアリアや仲間たちと宿で暮らしている。当然私とアリアは同じ部屋だ。処遇愛の巣だな。
「ふう、少し疲れたな………」チラッ
「はいはーい」
うむ、これを言うと必ずアリアは頭をなで、膝枕をしてくれる。至福至福。
「うむぅ…すまん、少し寝る…………グぅ」
その日の夜
ミスった。昼に寝すぎたせいで全く眠くない。アリアはもう寝てしまったし、適当にぶらついて時間を潰そう…宿の1階に降りると、ミリカが飲んだくれていた。何やっとんじゃこいつ…
「部屋で寝ろよ…おい起きろ。風邪ひくぞ」
「むきゅう? ふにゅう…むにゅう…きゅう…むぅ~…ぐぅ…」
いや、「ぐぅ」じゃないだろう、起きろこら。駄目だ。揺さぶっても起きな…起きた。
「うぅん? くろとぉ? お~よく来たよく来た~アンタも飲め~」
「飲まん。部屋で寝ろ」
駄目だ。まったくいうことを聞かない。宿の主人もいないようだし、勝手にミリカが飲んでいるんだろう。
「仕方ない奴だな。少しだけだぞ」
まあちょうどいい。こいつを暇つぶしに使ってやる。
「最近ね~好きな奴が居んのよ」
「そうか。かわいそうだな、そいつ」
鬼の形相でにらまれた。………サーセン。
「でね、そいつ彼女がいるんだけどね、そいつにばっかり甘えたり甘えさせたりすんのよ」
「彼女がいるのなら、諦めたらどうだ?」
「なぁに言ってんのよぉ! なら重婚よ、ジューコン」
重婚て………モロ犯罪だろう。酔った勢いで言っているだけだよな?
「無理だろう、そんなこと」
「あら? 知らないの? 一夫多妻なんて普通よ」
それは初耳だな…異世界すごい。
「知らなかったな…」
「へぇ~しらないんだぁ~…なら…へへへ…話し戻すんだけど、アタシが好きになったそいつってさ、滅茶苦茶強いのよ」
「ほう、お前よりもか?」
「うん、滅茶苦茶強い。魔王よりも、多分魔神よりも」
強いな…そいつがもう勇者でいいんじゃないか?
「でねでね、そいつは、初めてあたしのことを「きれいだ」って言ってくれたんだよ。それまでアタシさぁ、ずっと男みたいに扱われてたんだ。やたら強いし、ガサツだしね、それに、他はいいんだけど知力が低くてさ…」やれ「脳筋だ」だの、「オークだ」だの言われたたんだ。だけど、そいつは馬鹿にしてきたりもしたけど、とっても優しくて、強くて…「きれいだ」って言ってくれたんだぁ…へへ」
ほお…結構甘酸っぱい話だな…ん? 何か身に覚えが…
「おい、その好きな奴の名前を言ってみろ」
まさか…ねぇ?
「ん~? ふふ…檀 黎斗神、アンタだよ」
「………マジか………」
え? いや、本当に?
「嘘………」
言いかけたタイミングで、キスされた。あえて言おう、酒くせぇ。
「ふふ、ふぁあすときす…ていうんだっけ?」
何だ、急に…いったん落ち着こう、急な展開についていけない。
「言っとくけどぉ、クライシィもクリスも要も、たぶんだけどゲムムもアンタが好きだよぉ」
「ゑ」
全く気づかなかった…何だ、どうなってんだこれ?
私は、どうすればいい? 彼女たちの気持ちに、どう答えればいい?
私は、どうしたいんだ?
次の日の朝
「おいミリカ、昨日のことだが…」
「あ゛?」
「なんだ? いやに機嫌が悪いな」
「ぢがう…飲みずぎだ………気持ぢ悪い゛…」
そういやこいつ、下戸で悪酔いだったな。
「あれから皆に直接聞いたんだが、お前の言ったとおりだったぞ」
「…なにが…?」
ふむ、覚えていないようだな。
「昨日の晩のこと、忘れたか?」
「何゛?」
唇を軽く触り、ニヤリと笑う。
「昨日、私に告白したうえ、キスしただろう?」
「え………?」
そのあとは大変だった。真っ赤になって喚く喚く。なだめようとして近づくと、さらに真っ赤になって逃げ回る始末だ。出来る限り刺激しないように、でも何があったかしっかり伝えた。
「…………ふにゅう………」
今ミリカは、恥ずかしすぎてフリーズ状態だ。少しそっとしておいてやろう…
お読みいただきありがとうございました。
平和な世界…いいですねぇ~