GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。 作:桐生 勇太
「せっかく設定があるのに出さないのもったいなくない?」と思い立ち、最終回のその後の物語を舞台にした「未公開話」の場を借りて登場していただきます。基本的にバトル描写は絶無の予定ですのでそこだけご容赦ください。
まさしく日常パートその物。
※現在は未公開話を不定期で書き続けますが、現在書いている三部作が終わったら、この作品「GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです」の『真の最終章』を書かせていただきます。その時までお楽しみに。
「アルテ、お前の婚約者が決まったよ。この国の王子様だ」
「ほんとう!?すてき!」
昔、大好きな絵本があった。いたってどこにでもある内容。
主人公の少女が怖い魔物に連れ去られ、なぜか急にぽっと出てきた白馬の王子様に救われ、急激に結婚するというもの。今読み返してみ見ればかなり無茶な内容でした。
それでもその本が大好きでした。子供ながら、そういう出会いには誰しもあこがれるでしょう。
だから、未来の結婚相手である婚約者がこの国の王子様と知った時は本当にうれしかった。
「なんだこいつ、黒髪じゃん!オエッ 気持ち悪!!」
………そこにいたのは、絵本のような優しい王子様ではありませんでした。
言葉を選ばずに言えば、傲慢な男。
お茶請けを出すのが遅いとか、紅茶の量が微妙に少ないだの言っては、従者を蹴飛ばし、殴りつける。
恐ろしい男性。
子供心に、あの人は恐怖の象徴になった。
素行も最悪だった。
我が儘三昧、散財し放題。気に入った女性がいれば抱きこもうとしてそれを私に咎められる。するとあの人は決まって言った。
「黙れ、魔物の出来損ない」
この世界には、普通の人間とは別に魔物もいる。人間の姿をした魔人や人間に化けている魔物などを見分ける方法は一つ。髪の毛が黒であるか否か、それだけだ。
しかし、もちろんそれは正しい方法とは言えない。
両親の髪の毛の色にかかわらず、黒い髪の毛の子が生まれる可能性は数万分の一以下だがいないわけではない。
私は、その黒髪だった。両親とも美しい蜂蜜色の髪の毛だっただけに、自分はかなり浮いていたと思う。
私は、自分の黒い髪の毛が大嫌いだった。これさえなければ、或いは私はあの人と良好な関係を持てていたかもしれないとさえ思った。
そして、私は我が家に代々伝わる魔法具、より正確に言えば邪念器と言うものに封印されている「逆転の呪い」を試してみました。
その道具は、簡潔に言えば体の一部分、何処でも好きに「真逆」に出来ると言うものでした。
「男」を「女」に変えることも、切り落とされて「無くなった」腕を「また生やす」事も可能と言ったものです。
しかし、良いことばかりではありません。
願いをどれだけ正確に伝えようとも、最終的に実行するのは邪念器の中にいる悪魔のさじ加減。
事実かどうかはわかりませんが、右腕をなくした人が「この切り落とされた右腕を逆転してくれ」と頼んだところ、右手は無事に生えたけれど、代わりに左腕が再び切り落とされたという逸話もあります。
要するに、切り落とされた腕を右から左に変えただけと言う散々な結果です。
そして、願いの最期には「~を逆転して」と言わなければならず、失敗を恐れて絶対大丈夫なように願いの内容を長くしすぎても無効になるという厄介な代物です。さらに、一度願ったが最後、どんなことをしても元には戻せないことも条件のうちの一つです。
私は意を決し、願いました。
「この黒髪を逆転して!」
もしかしたら、あのまま「髪の毛がある」状態から「無い」状態に変えられていたかもしれません。ですが、上手く行きました。
気を失っていた私は目覚めると、銀色の髪の毛になっていたのです。
私は大喜びしてあの人に会いに行きました。
きっと、これで彼は私と言う人間をきちんと見てくれると思っていました。………でも
「………何か老婆みたいだ。前よりキモくなった」
そのあとのことはよく覚えていません。
その場にうずくまって泣いたかもしれませんし、ショックで屋敷に逃げ帰ったかもしれません。
とにかく、私はその日、愛されることを諦めました。
お読みいただきありがとうございました。