GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。   作:桐生 勇太

51 / 55
これはかつて作者が設定のみ作り、本編を進めるために出番を消されてしまったキャラクター達のお話です。

「せっかく設定があるのに出さないのもったいなくない?」と思い立ち、最終回のその後の物語を舞台にした「未公開話」の場を借りて登場していただきます。基本的にバトル描写は絶無の予定ですのでそこだけご容赦ください。

 まさしく日常パートその物。

※現在は未公開話を不定期で書き続けますが、現在書いている三部作が終わったら、この作品「GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです」の『真の最終章』を書かせていただきます。その時までお楽しみに。


未公開話:神罰

「………認めない………とは、どういうつもりで言ったのですかな?王太子殿」

 

「そいつ、これまで散々王子である俺に不敬を働いてきた!だから、今日恥をかかせたんだ!邪魔することは許さんぞ!」

 

「王太子殿が婚約を破棄した、その後に彼女が私と婚約した。何も問題ないと存じますが?」

 

「そんなことはどうでもいい!命令だ!今すぐ取りやめろ!」

 

 なんてとんでもないことを言う方なんでしょう。こんな人と結婚していた可能性があったと思うと怖くなってきました。

 

「私はこの国の住民と言うわけではありませんので、いかに第一王子と言えどもその命令には従いかねますね」

 

「何だと!?貴様!!俺は第一王子だぞ!」

 

「だから君に私の行動決定権はないと言っているだろう。しつこいな」

 

「貴様ァ!この無礼者!!」

 

 まともに会話が成り立たない第一王子に嫌気がさしてしまったのか、黎斗様が若干粗暴な言葉遣いになってしまっている。何だかとんでもないことになる予感が………

 

「無礼だと?元とはいえ自分の婚約者を裏切り、あまつさえ未来まで踏みにじろうとする愚か者には言われたくない言葉だな」

 

「貴様!剣の錆にしてくれる!」

 

 激昂した第一王子が腰に差していた剣を抜き、黎斗様に切りかかる。

しかし黎斗様は大きく飛び上がり、闇雲に剣を振り回した第一王子の真後ろに降り立った。

愚かにも第一王子は「消えた!?」などと喚いている。

 

「やれやれ………とんでもなく甘やかされて育ったようだな」

 

「い、いつの間に後ろに…!? お、おのれ!何をしてる衛兵!こいつを叩き切れ!」

 

 第一王子の叫びに壁で待機していた兵達が一斉に黎斗様を取り囲む。周りにいた貴族達は叫びながら距離を取る。しかし黎斗様は慌てた様子もなく、冷ややかに衛兵たちを見回しています。

 

「国の兵隊は王の奴隷ではない。愚かな主に剣を捧げるために君たちは衛兵になったわけではないだろうに」

 

「………………」

 

「……無視か。まあいいさ………変身ッ!」

 

【HYPER CREATOR GOD X!!

HYPER CREATE OF ガシャット!ガッチャーン!!!

レベルアップ∞!!!!!!

創世の騎士よ! 照らせ! 太陽の如く!! 最強の創世ゲーマー!!!

HYPER 無限!!!!!! 幻夢!!!!!!】

 

 眩い光が煌き、黎斗様は鎧?のようなものを身に着けた。広間の端まで逃げた貴族達から驚きの声が上がる。

 

「予め断っておくが、私は一時には歴代最強とまで言われた魔王を討伐した勇者王だ。これ以上私の邪魔をすれば、何だったら国ごと吹き飛ばしても構わないが………?」

 

 流石の衛兵達も動揺し、お互いに目を合わせ、じりじりと黎斗様から距離を取る。唯一事の重大性が分かっていない第一王子だけが自分の命令を無視して退こうとする衛兵たちに罵声を浴びせている。

 

「もういい、俺がやる!!」

 

 癇癪を起した第一王子が振りかざした剣を、黎斗様は今度は避けませんでした。なんと第一王子が振り下ろした剣は、切るどころかあっさり黎斗様の着る鎧にはじき返されてしまいました。

 

「ッ…なッ!?」

 

「………気に食わない女性は人生を狂わせ、不敬な男は殺すとな………貴様、救えんな」

 

 次の瞬間、私は息をのんだ。第一王子の剣を掴んだ黎斗様の手が淡く光ったのと同時に、第一王子の剣が溶岩のように白熱し、ドロドロと溶てしまった。

 

「!!!?ほ、宝剣が…!」

 

「貴様のように女性の美しい髪を罵倒するような輩には………」

 

 震えてしまいそうになるほどの暗い声で第一王子に語り掛けながら、黎斗様の右手がゆっくりと第一王子の頭を覆いました。

 

その直後、噴煙と共に大きな爆発音と光が散った。

 

「ぎゃああああ!!!!!」

 

 第一王子の断末魔のような叫び声がとどろき、煙の中から悠々と黎斗様のみが現れました。

 

「大丈夫。殺したわけじゃない………ただ、我ながら傑作ができたと思うよ(笑)」

 

「………………?」

 

 やがて煙は徐々に晴れていき、広間にいた他の貴族達もかたずをのんで見守る中、現れた第一王子の姿は………

 

「うう………こ、こんな………お、俺の………髪がァ!!!?」

 

 元のプラチナブロンドの髪の毛は見る影もなく、俗に言う「ハゲ」の状態。あまりの喜劇的な変化に、広間内に初めは遠慮がちに、やがて大きな笑い声が起きた。

 

「若ハゲは苦労するぞ?これはそういう呪いだ。いつか万が一君がかつての行いを卑下し、心の底から悔い改めればやがてまた髪は生える。今までわがまま放題した分反省するといい」

 

 いつか風のうわさで聞いたことがある。自由に魔法、呪いを新たに作り出す「魔法創生」という異能を持った者がいると……でもまさか、黎斗様だったなんて………

 

「仇はとった。さあアルテ!逃げるぞ!」

 

 黎斗様は私と隣にいた従者シャナを抱え、颯爽と壁をすり抜けて夜空へと飛翔した。

 

「あ、あんなことをして良いのですか!?」

 

「問題ない。国どころか世界を破壊しかねん勇者王だ。向こうも強くは出れないだろう」

 

 それを聞いてほっとすると同時に、ではここから一体どこへ向かっているのかが気になった。

眼下を見ると大陸を超え、海の上を飛んでいる。

 

「ところで、これはどこを目指しているのですか?黎斗様………私、海を初めてみた気がします………いったいどれほどの速度で………?」

 

「はは、まあマッハで言うと100………いや、分からないか。まあともかく、君たちにはこれから私の国へ来てもらうよ」

 

 

「「……………国?」」

 

当然と言えば当然だが、私もシャナもまるで想像ができないことが、この先に待っていることを、私は想像だにすることができませんでした。

 

 




お読みいただきありがとうございました。
この未公開話、まだまだ続きます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。