GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。   作:桐生 勇太

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これはかつて作者が設定のみ作り、本編を進めるために出番を消されてしまったキャラクター達のお話です。

「せっかく設定があるのに出さないのもったいなくない?」と思い立ち、最終回のその後の物語を舞台にした「未公開話」の場を借りて登場していただきます。基本的にバトル描写は絶無の予定ですのでそこだけご容赦ください。

 まさしく日常パートその物。

※現在は未公開話を不定期で書き続けますが、現在書いている三部作が終わったら、この作品「GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです」の『真の最終章』を書かせていただきます。その時までお楽しみに。


未公開話:閉ざされた島へ

 飛び続けてほんの数分、と言ったところでしょうか。

目の前に広がり始めた大陸に向かって、黎斗様が徐々に高度を落とし始めました。

 

「あ、あの!この島が、目的地なのですか!?」

 

「そうさ。この島は海流をいじってあるから外から船が入り込むことはまずない。どの国の海図にも載っていない、独立した国なのさ」

 

 黎斗様が話し終えるころには地面に限りなく近づき、ふわりとした浮遊感と共に綺麗な砂浜に下り立ちました。この島でこれから暮らす、ということでしょうか………?

 

「少し歩こう。この砂浜の向こうに森が見えるだろう?多分森に入って少しすれば、すぐに見回りの警備に見つかるはずだ」

 

 森に向かって歩を進めると、木の木陰から10歳ほどの子供達が槍のようなものを持って私たちの前立ちふさがりました。

 

「「「誰だ!」」」

 

 明らかに警戒している子供達に黎斗様は優しく微笑み、懐から何かの模様が描かれた木の板を出しました。

 

「私は行商人の黎斗だよ。隊長はいるかい?」

 

 子供達は黎斗様が差し出した板を見た途端、何やら話し合い、やがて「ちょっと待ってて!」と言い残して森の奥まで引っ込んでしまいました。

 

「あの、黎斗様、それは………?」

 

「通行許可証のようなものさ。これがないと奥に行けない」

 

 しばらくその場で待っていると、茂みを大きく揺らしながら、クマのように大きな獣人が、丸太ほどの大きな槍を持って現れました。獣人に見慣れていない侍女のシャナが気絶しそうになっていますが、私もあまりの事にその場から動けません。

 

「久しぶりだな!檀のアニキ!」

 

「ああ、久しぶり。今日は物販のほかに、ここに住まわせたい人たちがいるんだ。アルテ、シャナ君、ここの森の警備隊長をやっている狼人族のガエンだ」

 

「よ、よろしくお願いします。わ、私は元イーグル国、ベロニカ侯爵家令嬢のアルテ=フレンツェ・ベロニカと申します」

 

「そ、そのお付きの侍女、シャナです………」

 

「俺はガエンだ! この森の警備隊長をやってる! よろしくな!」

 

 咆哮と間違えるほどの大声に足ががくがくと震えるけれど、気さくな挨拶をしてくださっている殿方の前で粗相は許されません。何とか笑みを作り、こくこくと頷いて見せます。

 

「しっかし………見たとこいいとこのお嬢ちゃんっぽいじゃねぇか…なんかあったんだな。でももう大丈夫だぜ!」

 

 にかっと笑ってサムズアップをした彼の右腕には、人差し指と中指がありませんでした。

 

「おっと………へへっ悪い、変なもん見しちまったな」

 

 そんな彼の頭を、黎斗様が物凄い勢いで叩きました。軽いスパァンという音が辺りに大きく響きます。

 

「いちいち気にして引っ込めるんじゃない。そんな程度の事を不快に思うような人物を、私がここに連れてくるわけがないだろう?」

 

 後から聞いた話ですが、この隊長は、かつて遠くの大陸で流族(決まった住居や土地を持たず、狩りなどをして拠点を移しながら生活する獣人の集団)の長をやっていたそうです。

大層な弓の名手として名をはせたらしいのですが、その大陸の大貴族が獣人に対して迫害を行ったために戦争にまで発展し、その戦火の中で仲間をかばった時に敵の兵隊に切り落とされたそうです。

 

戦争には勝利を収めたものの、弓を引くことができなくなった彼は失意の中に流族を去り、一人で旅をしていたところを黎斗様に勧誘されたようです。

何でも、かなり強引に連れられたとか。

 

「そうか………そうだなぁ! この怪我よぉ、漢の勲章なんだぜぇ!」

 

「見せびらかすな。アホ」

 

 再びスパァンという軽い音。「どうすりゃいいんだよ!」と非難されていましたが叩いた黎斗様の方は「確かに隠す必要はないと言った。だが見せろとは言っていない」と的確な論破。この二人は、きっとお互いをとても信頼し合っているのですね。こんな気安い会話ができるなんて、きっと親友のような間柄なのでしょう。

 

「にしても二度も叩く必要なかったろ。くぬやろくぬやろぉ」

 

「こ、こら離せ! 足踏むぞ!」

 

「そんなこと言って~…痛てぇ!? 本当に踏む奴があるか!」

 

「そっちが先にヘッドロックしてきたんだろう!?」

 

「大体お前が先に俺を………!!」

 

「あれは教育的指導だ!」

 

「何が指導だ!ただの体罰じゃねぇか! 食らえ!暴力反対パンチ!!!」

 

「一瞬で矛盾するな!」

 

 ………前言を撤回します。この二人、そんなに仲が良くないかもしれません。

二人とも、お互いに首相撲をしながら蹴り合いを始めてしまいました。

 

「あ、あの………黎斗様? そろそろよろしいですか?」

 

「ん? ああ…分かった。じゃあそろそろ行こうか。………後で覚えてろこの悪オオカミ」

 

「ああ? 覚えるも何も、誰だぁオメェ?」

 

「くっ………なかなか、挑発スキルがいい完成度じゃないか」

 

「誰かさんのおかげでキレッキレよ」

 

 再びじぃっとにらみあい、やがて同時に「「ふんっ!」」と言って視線を切ってしまいました。初めはあんなに仲良さげに話していたのに………

 

シャナは私に「ああいう兄弟のような仲の良さも良いものですね」と耳打ちしてきましたが、そういうものなのでしょうか?

 

 黎斗様につられるままに森の獣道を歩いて行くと、門のようなものが…正確には、門だけが見えてきました。

 

「黎斗様、これはなんでしょう?」

 

「転移するための転移門だよ。これで森の奥まで、島の中心部まで一気に行ける。転移系の魔法は初めてだと立ち眩みのようなものを起こす。さ、私の手を握って」

 

「は、はい………」

 

「侍女の君も、私の手を、ほら」

 

「し、失礼いたします」

 

「それじゃあ………【転移:子供達の国】へ」

 

 黎斗様が呪文を唱えると、転移門が開き、優しい光が私たちを包み込みました。




お読みいただきありがとうございました。
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