GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです。   作:桐生 勇太

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これはかつて作者が設定のみ作り、本編を進めるために出番を消されてしまったキャラクター達のお話です。

「せっかく設定があるのに出さないのもったいなくない?」と思い立ち、最終回のその後の物語を舞台にした「未公開話」の場を借りて登場していただきます。基本的にバトル描写は絶無の予定ですのでそこだけご容赦ください。

 まさしく日常パートその物。

※現在は未公開話を不定期で書き続けますが、現在書いている三部作が終わったら、この作品「GM(ゲームマスター)は異世界に行ってもGMのようです」の『真の最終章』を書かせていただきます。その時までお楽しみに。


未公開話:子供達の国

「さあ、ここが私の国だよ。まあ、私の国と言っても統治しているわけでもない。人を集めて作っただけだがね」

 

 目の前に広がる街並み。楽し気に駆けている子供たち。

柔らかい芝生で覆われた大通り………そして所狭しと立ち並ぶ露店の数々…

王都の城下町と同じくらいの大きさが広がっている。ここが黎斗様の…

 

「あの、どうしてこんなに子供たちばかりが?」

 

 侍女のシャナが私より早くこの状況の不思議さに気が付きました。言われてみれば、露店のお店番をやっているのも子供達ばかりです。

 

「いろいろな国々から身寄りのない子供をかき集めたのさ。今はここがこの子たちの故郷だ」

 

「ひょっとして…勇者王の風のうわさ…子供を攫うというのは…」

 

「このことだね。生活環境を整える気概が国にないからこっちが動いてるのに、とんでもない誤解だ」

 

 黎斗様は不機嫌そうに腕を組みましたが、すぐにまた笑顔になってにっこりと私に笑顔を向けてくださいました。

 

「さあ、私の屋敷へ案内するよ。妻たちが私の帰りを待ってるんだ」

 

 上機嫌で鼻歌を歌いながら黎斗様が私の手を引いて歩きだします。黎斗様の奥様方…ここで奥様方とうまく関係を築かねば私に未来はありません。自然と体が緊張で強張ります。

 

そんな私の変化に気が付いたのか、黎斗様は私の顔を覗き込んで「大丈夫さ」とささやきました。

 

しばらく歩くと、平均的な貴族のお屋敷くらいの大きさの建物が見えてきました。

 

「黎斗様、ここが…?」

 

「ああ、私の家だよ。帰る時間はだいたい事前に知らせていたから皆ももういるはずだ」

 

 黎斗様は意気揚々と門をくぐり、屋敷の玄関を開きました。

 

「ただいま皆!愛してるよ!」

 

「「「「「「お帰りなさい……って」」」」」」

 

「お、お邪魔いたします…」

 

 直前まで黎斗様の姿を見て笑顔になっていた6人の女性たちの表情が私の顔を見た瞬間無の表情になってしまいました。ああ、た、大変なことになるのかも………

 

「あなた、その人は?」

 

「侯爵家令嬢のアルテだよ。婚約した! こっちはアルテの侍女のシャナさんだ!」

 

 いたたまれない雰囲気にまるで気が付いていないのか、黎斗様は笑顔で私とシャナを奥様方に紹介する。奥様方の鋭い視線が………あ、あら?視線が黎斗様の方に?

 

「あなた、ちょっとこちらへ」

 

「うん?どうしたんだいアリア…えっちょっ、ミリカ、何故私を羽交い絞めに!?」

 

「座ってください」

 

「え、でもアリア、椅子無いけど…」

 

「正座」

 

「はい」

 

 黎斗様は奥様方に逆らえないのか、小さく丸まるようにしてその場に座り込んでしまいました。信じられない………女性が男性に命令するなんて。

 

「いくつか確認したいことがあります」

 

「フッ、私の君たちへの思いなら、今更確認する必要など…」

 

「静かに」

 

「ぁはい」

 

「今回のお出かけは何の目的でしたっけ?」

 

「世界を救った記念に、イーグル国で貴族のパーティーに勇者王としてお呼ばれしました」

 

「ではなぜ女性と婚約を結ぶようなことに?」

 

「それは………あれだよ、魂が共鳴したのさ!」

 

「なぜ女性を口説きまくる癖が治らないんですか、あなたは………」

 

 黎斗様を糾弾していた女性が一つ大きなため息をつき、「まあ、それがあなたですものね」とだけ言って微笑を浮かべました。

 

「分かってくれたか…良かった。さあアルテ、屋敷を案内しよう。君の部屋も用意しないとね」

 

「あ、はい。宜しくお願いします…」

 

 直前まで怒られてしょんぼりしていた黎斗様はすぐに立ち直り、意気揚々と私の手を取って歩き出しました。

 

「ここが庭で、あっちが厨房、一階はまあいろいろで、二階は妻たちの部屋。三階が使用人さんたちの部屋だけど………アルテとシャナ君は仲がよさそうだし、ひょっとしたら一緒の部屋の方が良いかい?」

 

「あ、そうしていただけるなら、それでお願いします…」

 

 黎斗様は「そうかい」とだけ答えてにっこりと笑った。そして暫くして階段の隣のお部屋に案内された。

 

「慣れたら別の場所でもいいけど、屋敷に慣れるまでは角部屋にしよう。ここの階段なら玄関から入って真っすぐの階段を上ってすぐだし、迷うこともないだろう」

 

「それはありがたいのですが、あの、でもこのお部屋………」

 

 そのお部屋には「ミリカ」と書かれた名札がぶら下がっていて、明らかにすでに使用中のお部屋です。流石にここから部屋替えはちょっと…と思っていると、不意に黎斗様がまたあの鎧を装着して壁に手を添えました。

 

「【CREATE・NEW・ROOM】」

 

 黎斗様がそう言うと同時に急にお屋敷が揺れ始めました。私の住んでいた国では地震は特になく、知識のみでしか知らなかったので驚いてしまい、思わず黎斗様にしがみついてしまいます。

 

「あ、すまない驚かせたね」

 

 黎斗様が少し慌てたように私に話しかけましたが、失礼ながら答える余裕がありません。怯えながらも目を開けると、なんと目の前のお部屋の扉がズリズリと横にずれて………

 

「部屋を新しく「創った」から、今日から君がこの部屋を使ってね。一応間取りは他の部屋と同じだけど………」

 

 ………このとんでもなく規格外な力、私が慣れる日は来るのでしょうか………

 

「じゃあ、必要なものをそろえようか」

 

 この後は早いもので、普通なら間取りを調べてからほしい家具のサイズを検討して、そこから実際に家具を用意したりするのですが、黎斗様はその場で私のリクエストに合ったものを創ってしまいました。

 

「よし、必要なものもそろったね。本も何冊か置いておくけど、まあ折を見て外に買いに行くのもいいし………じゃあ、今日からよろしくね。アルテ」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」

 

 元の姿に戻った黎斗様がにっこりと笑いながら手を差し出す。私もすぐにその手を取り、深々と頭を下げた。

 

しかし、私はその直後に黎斗様が言った言葉に固まることになる。

 

「まだ私を好きでなくともいいから、そのうち好きになってくれるのを楽しみにしてるよ」

 

 




お読みいただきありがとうございました。
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