グロッケンに戻るとシノンとシュピーゲルはカフェで試合のモニターを見つつお話していらっしゃった、あそこには戻りたくねぇな。
あ、ダインじゃん。
「ようダイン、これ出てんの?」
「あ? 出たけどクジ運悪くてゼクシードにやられたよ、あいつなんて武器持ってんだ」
通りがかりのダインはどうやらゼクシードにやられたらしい、ゼクシード気合い入ってたからねぇ、XM29だっけ?なんかグレポンも一緒についてるからレギュレーションとしてはOKとか。
「まぁ運が悪かったな、取り敢えずお前よりは勝ち上がってるから今度から俺に敬語使えよ」
「そんなこと言う奴敬いたくはねぇよ」
「お前から敬われたら寒気がするから俺も遠慮しとく」
「なら言うんじゃねぇよ」
「どうせ暇だろ、少しは話に付き合えよ」
「シノンはどうした」
「ん」
「あぁ」
俺は目線でテーブルを見やればダインは納得した、掲示板見たらこの間のバーの言い合いが痴話喧嘩とかで盛り上がってやがった。
多分ダインも知ってるんだろう。
さっきチラと見たときシノンは助けて欲しそうな顔でこっちを見てた、俺が行ったら火に油だろ。
「何だよあの子、喧嘩してたんだって?」
ダインは少し声を潜め俺に尋ねる。
「まぁビルドのせいにして自分が弱いとか言ってるからな」
「あぁAGI特化な、成る程な、ゼクシードに謀られたパターンのやつな」
そういやゼクシード発祥だったかAGI特化最強説。
てっきり闇風先輩かと思ってた。
「ゼクシードの言ってる事とか考えなくても間違ってるってわかるだろうにな」
「シューター系初めてなんだろよ、他の感覚でやっちゃあぁなるよな。しかも闇風の例があるしな」
「んだんだ」
ダインも同意見で俺は訛りつつ同意する。
「おいジン、そろそろ行ってやれよ」
「そうだな・・・負けられない戦いがここにある」
「それ4年おきに言ってねぇよな」
「今年は勝ったからOK」
「おめでとう」
俺はダインと別れを惜しみつつカフェへ足を向ける。
「例えばジンがこう出たら僕はこう動いて、こう出たらこう出る!」
シュピーゲルは身振り手振りを使いシノンに熱の入った説明をしている。
「M14は一発当たったらノックバックしちゃうけどそれはどうするの?」
「あんな取り回しの悪い銃当たんないよ! 狙われてもどうせ予測線が出るから躱せるよ!」
シノンの的確なアドバイスを見事に踏みにじる、別に当たらないなら正しいけどな。
「それでね、僕の移動速度に追いつけなくてジンは負けるって訳!」
QED。
やけに適当な証明だな、ノーベル賞取れるんじゃね?
数学ならフィールズ賞? あれ?この場合はノーベル賞?
いや知らんし知らなくていいし。
「ただいま〜」
「おかえり」
シノンの横に座ると机に隠れてボディが入れられた。
「どうだったの?」
「まぁラッキーだったな、すぐに終わったよ」
バカで、もしくは雑魚でという含みは言わないでおこう。
壁に目あり障子に耳あり、そしてここにはシュピーゲルあり。
そしてシノン、足を退けてくれ。
「よかったですね狙ったところに敵がいて、僕からすればあんな勝ち方認めれませんけど」
いや壁抜きとか普通にやる事じゃね?
いや、ここで反論するのは良くない、面倒になるだけか。
「シュピーゲル君はビルドを生かして敵を圧倒してたね。すごいね少し体力削られてたけど」
ヨイショヨイショ。
「あれは相手のラッキーヒットだったんですよ、あなたと戦うときもあんな感じで完璧に勝ちますよ」
「すごいなー憧れちゃうなぁー」
どっちがラッキーだったんだか。
「これで僕の実力がわかりましたか、あなたみたいに適当にやって適当に勝ってるわけじゃないんです」
「やりますねぇ」
シノンこれに耐えてたのか、凄い。
あんなことして少し罪悪感がある。
「シノンごめんな」
「わかればいいのよ」
ぼそりとシノンに聞こえる程度に囁くとやっと足を退かしてくれた。
シュピーゲルは正直若い頃の自分です、胃が痛い。
特に誰かに迷惑かけたわけではありませんが本当に申し訳ありませんでした。