「クソクソクソクソクソクソ!」
暗闇の中悔しさで枕を何度も叩く。
あの適当野郎、あんな手段で僕を倒しやがって、まともに平地で戦えば僕が負けるはずないんだ。
「うるさいぞ、恭二」
「あ、ごめん昌一兄さん」
怒りから我を忘れてしまったのか、昌一兄さんは不快そうにも思ってないような色のない表情で僕の部屋に入ってきた。
「どうした、恭二、何かあったのか」
表情や声色には一切揺らぎはない、でも兄さんの声だから落ち着く。
「ゲームのイベントで負けちゃって、それが卑怯な手段で僕を倒したんだ、そんなの許せないよね」
「あぁ、許せないな」
兄さんは僕の隣に座り肩を抱いてくれる、やっぱり僕は正しいんだ、昌一兄さんだってこう言ってる。
「どうにかしてあいつを倒したいんだけどどうすればいいかわからないんだ・・・どうすればいいの?」
僕は縋る思いで兄さんに尋ねる。
すると兄さんはなんてことないようにこう言った。
「殺せばいい」
「え?」
聞こえていた、でも僕の倫理が聞き取るのを拒否していた、でも僕は改めて書き直した。
その心地いい言葉が聞きたくて。
「殺せばいい」
昌一兄さんは表情を変えずそう言った、確かに『殺せばいい』と言った。
「そんなのダメだよ、人を殺すのは犯罪だよ!」
ダメだそんなの法が許してくれない。
「俺だって、SAOの世界では、大勢殺してきた、でも捕まってない、今回も同じだ」
抑揚のない声でそう懇々と囁く。
SAO事件の時兄さんは大勢の人の命を奪った、所謂レッドプレイヤーらしい。
「でもそれはゲームだから・・・」
ゲームだから許させたこと、その言葉に尽きる。
しかし昌一兄さんは話を続ける。
「そうじゃ、ない、リアルで人を殺すことと、SAOで人を殺すこと、何が違う」
「それはゲームで・・・」
「人が、死んでいるのに?」
「・・・」
背筋が凍った、確かに今ここにいるのは連続殺人犯だ。
でもなんで牢屋にいないのか、実際に殺した訳じゃなくて茅場明彦が作ったSAOが殺したから。
「俺たちは、気に入らない奴、目に付いた奴、誰でも殺した、お前もムカつく奴が、いたら、殺したくなるだろ、さっきみたいに」
「うん、うん」
「人を、殺すことは、楽しい」
真っ先に浮かんだ顔は二つゼクシードそしてジン。
あいつらが死んだら、僕も嬉しい。
「俺が、言いたい、ことは、結局、やり方、次第って、ことだ」
「そっか、見つからなきゃいいのか、でもやり方が」
僕にはそんな頭はない。
「それは、俺が考えてやる、お前が、心配すること、じゃない、俺に、任せとけば、全て、上手くいく」
そっか、昌一兄さんに任せれば全部うまくいく。
全部、ゼクシードも、ジンも、ムカつく奴ら、そしてシノンも。
「クククク」