「仁起きなさいよ、重いんだけど」
身体を揺さぶられる感覚で目を覚ます。
詩乃は恐らく俺が寝返りをうったときに下敷きになったんだろう、寝る前は俺の上にいたのに今は俺が詩乃の胸に抱きついていた。
「もうちょいこのまま」
「うわぁい」
背中に手を回しぐるりと詩乃を上にやってまた瞳を閉じる。
心地いい抱き心地、温かみと柔らかさ、そして重さ。
あーこのまま布団にならないかな、詩乃布団お値段プライスレス。
いや何やってんだよ。
「なんかごめん」
「そうよね、おかしいと思った」
寝ぼけは怖い、いつか夢で母さんがグレネードを飲み込んでる夢を見ているときに母さんに起こされてグレネード吐き出せ、とか言った覚えがある。
確かその日の前にGGOでダインがフラグを使い切って苦戦したというエピソードがあってその影響だろう、と結論付けた思い出がある。
「まぁそうだろうと思ったわよ、おかしいもの仁がこう言うことするって」
「完璧寝ぼけてたんだよ、まだ外暗いじゃねぇか何時だよ」
「まだ3時よ、仁が重いから起こしたのよ、悪かったわね」
「適当に押しやっときゃいいんだよ得意だろ」
「えぇ次からさせてもらうわ、でも寝ぼけて胸揉むのは違うんじゃない?」
さっきからもぞもぞしてるのはそのせいか。
寄せて上げる、シティハンターのエンディングみたいだな。
「あぁめんどくさい」
「あぁ動くな動くな狭いんだから」
とうとう腕を服の中に入れて調整を始める。
「どうしてこんな狭いのよ、そっち行ってよ」
「俺ぁテントに顔当たってんの、詩乃もそっち行けよ」
「私だってこっち狭いのよ」
チラと起き上がって詩乃のスペースを見ると空いていると少しではあるが空いている。
「空いてるじゃねえか、行けって」
「ここ石が背中に刺さるのよ、このまま寝たらヘルニアなっちゃうわよ」
「大丈夫、ヘルニアだかクラミジアだか知らんがどうなっても詩乃は詩乃だから、世話ならいくらでもするから。な、そっち行こう」
「そんなクソみたいなプロポーズ聞きたくなかったわよ、嫌よ痛いの」
詩乃はやっとポジションが極まったのか袖から手を出し眠りの準備を取り始める。
「もー実際何回か起きてんだって、テントで何回も息止まってんだぞ、痛さ感じる前に死ぬわ、自殺とかやりたくねぇよ」
「仁が死んだら私も死ぬ、だからそのまま」
「誰かの歌に俺より先に死んでくれるな、とかあったけどこう言う意味じゃねぇからな。いいから行けって、もしくは俺が行くって」
「ダメ、どっちもダメ」
詩乃は話をぶった切り俺に背を向ける、これ以上話すことはない、無呼吸症候群に苦しみながら眠れ。
そう言わんばかりの態度である。
「道理が通らねぇよ、背中向けんなし」
「うるさい、眠たいの」
「あぁくそう、いいさそうくるなら俺もこうする」
今俺の見えるのは詩乃の背中のみ、そして背中の中心にある突起。
まぁブラのホックだが。
それを引っ張って離すとそこそこの痛さ。
「あ痛!」
バシン!といい音が詩乃の背中から出る。
所謂ブラパッチン。
「やめてほしいか?」
「やめなさいよ!胸も背中も、あと擦れていろんなとこ痛いのよ!」
急に襲った衝撃やら驚きやら痛さで少し涙目になっていたのが暗闇でもわかった、なんか罪悪感を感じる。
しかし俺は既に第二射の準備をしている。
「そっち行く?」
「行かない」
「じゃあこうする」
指パッチンの要領でホックをいじるとホックは手から外れる、ただブラパッチンではなくブラホック外し、俺はこれだけなら世界を取れる、高校始めにやりまくったおかげで誰よりも早い自負がある、そして同学年の女子から嫌われている自負もある。
「ちょ!?マジ何やってんのよ」
「いや、涙目だったから悪いなぁって思って。ごめんな詩乃、痛かった?」
「もう!・・・あ」
詩乃は余計なことを思いついたようだ、短いが濃い付き合いだそれくらいわかる、その予感は正しかったようで詩乃がまたもぞもぞしたあと俺の手に何かを握らせる。
「それあげる、使いたいなら使っていいよ」
いやブラごときで抜けねぇよ。
「・・・」
「仁?」
「返す」
「えぇ」
ちょっとやり過ぎたか。
寝よう、無呼吸になっても皮膚呼吸があるから大丈夫だろ。
「ねぇ仁、何か言うことないの?」
「・・・」
「ねぇ」
「・・・」
「・・・」
詩乃は静かに眠りについた。
早く寝とけ、寝ないと胸も大きくならないぞ。
ブラパッチンは自分の学校ではゼル伝のフックショットをもじり、ホックショットと呼んでました。